色の魔術師!一色、一色温もりに想いを足して染め上げる SOU・SOU京都の染工場 八幡染色編

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若林代表インタビュー編に続きまして、帆布や伊勢木綿などSOU・SOUの製品を中心に、数多くの製品を染色している八幡染色さんへお邪魔しました。八幡染色さんは、創業1939年の歴史ある京都の染色工場です。八幡染色さんの工房から、SOU・SOUの製品が1枚1枚丁寧に、丁寧に染められていく現場をとくと御覧ください。

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本日、しゃかいか!編集部が身に着けていた柄も、ここ八幡染色さんで染めてられているそう。これは楽しみです!

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八幡染色代表の山口泰戊さん、この道40年以上の大ベテランです。
「SOU・SOUさんとは、バスタオルの『染料』からお付き合いが始まりました」と出会いを振り返る山口さん。『顔料』染めだと、バスタオルのごわつきの影響で染まりにくく、『染料』で染められる工房をSOU・SOU代表の若林さんが探されていたそうです。そこで、八幡染色さんにお声が掛かりました。

染めには大きく分けて『染料』と『顔料』の2つがあります。
・『染料』は、繊維と化学的に結合させ、繊維の内部にまで色を染めます
・『顔料』は、色のついた細かな粒子が粗いために中まで染み込まず繊維の表面に乗せて染めます

バスタオルに始まり、伊勢木綿の小幅や地下足袋用の8号帆布と、SOU・SOUの数多くの製品を染めているそうです。

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今までのSOU・SOUの柄が積み上げられています。積み上げられた高さが歴史を物語っていますね。

「できない」は禁句
「毎回『これでやってみて』と、若林さんが面白いものを探してきましてね。それで、ちょっと無理かもと言うとね、『失敗してもいいから、もしかしたらできるかもしれないからやってみて』って若林さんが言ってくださるんです。それで引き受けてしまうんですが、なんだかんだ毎回出来上がっていてね」と山口さん。若林さんは、出来ないことも承知の上で、失敗した分もお金を払うからと環境までを整えてくれたそうです。

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全部の色が特注
まず最初に、SOU・SOUで作成された色の指示書を見ながら色を混ぜ、サンプルを作っていきます。指示書をもらうたびに色の実験がはじまります。毎回、全部の色が特注です。

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魔法の道具、色見本
山口さんの色作りに使う魔法の道具がこの色窓。色窓を見ながら、これとこれを足そうかなと山口さんの頭の中で、繰り返し色を混ぜ合わせて、最終的な色を決めていくそうです。これぞ至難の技!

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暮らしの中の色も頭の中で混ぜて作る
たくさんの色窓があって、混ぜ合わせるだけでも大変!山口さんは、街中で見る広告やポスターの服の今までにない色合わせに出会うたびに、頭にインプットしていくのだそうです。日常生活のさまざまなモノに対して、山口さんは色の認識を研ぎ澄ましています。例えば、草だったら、あの色とこの色を混ぜ合わせて作れるなと想像しながら日々を過ごされているんだとか。とても素敵な暮らしですね。

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色の再現性が重要
色が決定した後も試行錯誤は続きます。天然素材の生地を使用するため、生地の状態によって色の発色が異なったり、さらには、気温や湿度によって糊の硬さにも影響がでるため、毎回、同じ色を出すことが大変難しいそうです。

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「SOU・SOUさんとのお付き合いも長いので、だいたいの色の好みもわかってきて、この色によせていった方がいいかなと、SOU・SOUさんの伝えたいことが分かってきますよ」と山口さん。

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この日、しゃかいか!カメラマンが着ていた『いもばん』の柄は、ブルーの濃淡のかすれを表現するために3回刷っているんだそうです。薄いほうから順番に刷っていきます。SOU・SOUのテキスタイルデザインを描く脇阪さんの筆のタッチ(かすれ具合)を忠実に再現するために、同じ色でも、何度も色を重ねていくそうです。

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ほがらか』の柄の色の指示書。色を試行錯誤していった変遷が指示書にまとめられています。

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靴の生地『SO-SU-Uとりどり』の指示書がとても分厚くなっています。色が増える分、刷る回数も増えていきます。

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糊は生もの
次は色糊の調合工程です。作った色(染料)と糊を混ぜて、色糊を仕上げていきます。混ぜる糊は古いと痛んでしまうので、早く使わないといけないそう。1日、2日で色の出方に影響が出る糊もあるそうです。綿やポリエステル、アクリルと糊を素材ごとに使いわけています。

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糊の原料は海藻。触ってみるとプヨプヨ!生きている気がしてきました。

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染料の香り漂う工房には、目にも鮮やかな世界が一瞬にして広がります。伊勢木綿の手ぬぐい『間がさね 宮美(みやび)』を手㮈染*(てなっせん)で染めています。今は7回目、最後の工程です。

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一版ごとに手の温もり伝わる優しい色
手㮈染*とは、1版(1色)ごとに型を作り、色糊を「スケージ」を使い、手作業で生地に刷り込む染め方です。色ごとに版を変えて色糊を刷り込むため、色落ちしにくく手の温もり伝わる優しい色に仕上がります。

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紫の色糊をのせている版は、シルクスクリーン印刷で焼き付けられた版です。「プリントごっこ」のように版自体に柄を焼き付けて、穴をあけています。

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『間がさね 宮美(みやび)』の彩りの川が、まるでどこまでも続いているかのように広がっています。

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生地に手をあててみると熱く、かすかに台から生地が浮かんでいます。台の乾燥機の温度を70度に調整し、しなやかに熱を入れていきます。季節によって温度を調整していく必要があるそうです。まさに経験が生きてきますね。

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巻き取りの作業は圧巻
生地の乾燥後は、台の上3列板に貼られた生地3疋(1疋、25.5メートル)を巻き取っていきます。

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7回の手捺染を終えて巻き取られた生地をよしよしと大切に抱える山口さん。愛を込めて仕上げられていることが伝わってきます。

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手捺染台の上から水が出て来て、残った染料を洗い流してくれます。こうする事で一日に同じ台で、3.4回の染めが可能です。

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道具を使ってていねいに洗います。

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手ぬぐい用の生地を上から順番にぐるぐると3列に貼って、再び作業開始です。

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染め職人の刀
先ほど、色糊を刷り込んでいた「スケージ」という道具は、染め職人の七つ道具なんです。杉本さんいわく「染め職人の刀」ということで、この道40年の杉本さんの名刀をご披露いただきました。

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柄や生地の素材で「スケージ」の硬さやエッジの丸さを使い分けていて、職人さん各々使いやすい刀があるそうです。

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「スケージ」が摩耗してきたら、ペーパーで研いで常によい状態を保てるようにしておきます。

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400柄の版コレクション
シルクスクリーン印刷された版の部屋へ案内していただきました。今まで使用されてきた400版以上のSOU・SOUの版が保存されています。SOU・SOUは新柄を増やしつつ、昔に出した柄も繰り返し使い続けるため、常に柄が増えていくそうです。

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版に記されたSOU・SOUの文字を発見しました。今までの柄が、全てここに集結していると思うと感激です!

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「古くなってきた版があれば、新しい版を作り柄を生き返らせます」と嬉しそうに山口さん。

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次は、染料を作る工程。左から順に、熨斗目色(のしめいろ)、鴇色(ときいろ)、萌黄(もえぎ)と和の色を調合して作っていきます。

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この調合作業は、まさに色の実験室で行われます。染料を測りで細かく計量、調合していきます。

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代表の弟さんです。染料の計量は細かくデータとして残していきます。

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薄い色をつくるときが最も難しいそうです。さじ加減で色が違ってしまうので薄い色をつくる場合は、10倍に色を薄めて作業するそうです。

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こちらの部屋が色のサンプルだけを作る部屋です。

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オリジナルですべてに色の番号が付けられています。色の番号を言っただけでなんと山口さんは、「ピュアなレッド」「青目がかった綺麗なピンク」と、どのような色なのかをすらすらと覚えていらっしゃるんです。どの色とどの色を混ぜて、この色が生まれてくるのか、全て頭に入っているんだそうです。色の魔術師、山口さん流石です!

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戦後に建てられた歴史ある工房から、新たな色が生まれ旅立っていきます。その色を生み出す色の魔術師、山口さんの職人技には圧巻でした。本日はありがとうございました。

【詳細情報】

八幡染色有限会社

電話番号:075-691-6413
住所:京都市南区東九条西明日町48-2

(text:坂田、photo:市岡)

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