Design Week Kyoto ゐゑ 2016(デザインウィーク京都)に行ってきた(2日目)

Design Week Kyoto ゐゑ 2016レポート、2日目のスタートは、
蘇嶐窯「蘇嶐窯(そりゅうがま)」の工房で、陶芸体験。ものづくりを間近で触れたり、体験できるイベントがたくさんあるのもDesign Week Kyotoの魅力です。

蘇嶐窯イメージ蘇嶐窯は京都の代表的な陶磁器、清水焼(きよみずやき)の由来にもなった東山区清水にあります。初代涌波蘇嶐(わくなみそりゅう)さんは京焼の第一人者諏訪蘇山に師事し薫陶を受けて以来、伝統を代々受け継ぎながら、京焼の技を守り続けています。

説明風景陶芸教室がスタート!僕を除いてみなさん陶芸の経験者。勝ち負けとかはないけど、負けないぞ。

涌波さん四代目の涌波蘇嶐さん。「蘇嶐」というのは代々受け継いできた名跡です。

工房イメージ焼き物は、粘土で形を作って、高台や側面を削る、乾燥(一週間ほど)、800〜900度で素焼き(6時間炊く)、釉薬をかけて色付け、1,230度ほどで本焼き(12時間ほど)、ゆっくり冷まして窯出し、そして完成というのがばっくりした流れです。今回の陶芸教室では、高台づけと側面の加工まで。残りの焼いたり、色をつけたりするステップは先生がやってくれます。

粘土今回の陶芸体験では、お茶碗ともう一つ、自分の作りたい作品(湯呑やお皿など)の二つを作ることができます。
素材となる粘土です。一般的な陶器は2種類、土の粉でできた粘土と、有田焼などに使われる石の粉でできたガラス質の磁土があります。焼いたときの仕上がりがちょっと違うそうで、今回は粘土を使います。

鍛えるこの粘土の玉をみんなで鍛えていきます。土の組織をならし、柔らかさを均一にし、水分量をいきわたらせる。

鍛えた鍛えられました!

綺麗な山型その後、ろくろに粘土をセットします。山の形にするのは、器は下から作っていくから。円筒状だと上手に行かないのだそうです。山型にした後は、ろくろと粘土を密着させます。

穴を開けていく指を入れて口をつくります。

器はそこからできていく器は底からできていく。
この段階では、出来上がりのイメージは頭だけに持っておきます。まずは器の側面の厚さを均一に保つことに気をつけて器の原型作り。この段階では高さを作っていくことと側面の厚さを同じにしておくことが大切です。
「今日のキーワードは均一さですよー」と先生から声がかかります。

高さを作っていく高さが出来上がると、徐々に形作りに進んでいきます。口は最後に広げることができるので、底から順番に大きさや形を作ります。焼くとサイズが約一割縮むのでそのへんも考慮しないといけません。

器に個性が出るみんな立ち上がる
同じお茶碗を作っているはずなのに、作る人によって形がこんなに違います。口が小さく高さのあるものから、口が広く丸っこい大盛り対応のものまでさまざま。「焼き物は個性がでるんです」と先生。
しかし、みんな立ち上がって作業するのは同じ。もちろん座ってやっても良いのですが、上から見ないと全体像が確かめられないので、みんな立ち上がる。この時点で作品作りに没頭してしまい、この記事を書くことはすっかり頭にありませんでした、スイマセン。

スポンジでならしていく底の部分(高台)の高さを2cmほど残しておいても、まだ底の方が厚くなりがちなので、指で底をしっかり押していきます。その後、お椀の内面を平滑にするために。水を含んだスポンジで全体的に拭きます。

口を切っていく口を切っていく口の高さを揃えるために、先生に線を引いてもらって、口の縁を削っていきます。

指でつまんでいく口の角を指でつまんで丸くしていく。

先生がそこを切って底を切ってもらって、形作りは完了。

後は焼いて完成その後、ドライヤーで乾燥した後、カンナで削って高台作り、削って表面の仕上げをして、作業は終了。

釉薬を選ぶ釉薬選び、決めかねます…
色の見本を見せてもらって釉薬の色をチョイス。白にもマット系や少し黄みがかったものがあったりで、出来上がりをイメージしても「あれ!やはりこっちがかも」となかなか決めかねます。

釉薬がけは、素焼きの後。
本焼きの方法も電気釜で普通に炊き上げる酸化焼成「OF」と、温度を上げ、ガスバーナーで酸素を燃やし、窯の中を一酸化炭素でいっぱいにして炊く還元焼成「RF」があり、本焼きの炊き方によって、使用する釉薬も異なります。

先生いわく「焼き物の色の出し方は、土と釉薬と炊き方、この3つの要素で決まってきます。必ずしも計算通りのイメージになることはありませんが、そこがプロの腕の見せどころで、焼き物の面白さ、楽しさなんですよ」なるほど、わかりました!

できた!できた!
あとは先生に託します。よろしくお願いします!

自分にとって初めての陶芸教室。テレビや雑誌で陶芸ブームが取り上げられてた時期は、何が楽しいかわかりませんでした、申し訳ありません。しかし、実際に体験してみて粘土を触るのが楽しくて仕方がありませんでした。指から伝わる感触や、頭の中で考えている形が手や指先を通して、イメージ通りになったり、できなかったり。できなくても「まあ、これもいいかも」と思えたり。出来上がりに近づくにつれて高まる思いなどなど。体験してみると楽しいことがたくさん。ハマる理由が実感できました。涌波先生有難うございました!

工房入り口最後の見学は「奏絲綴苑(そうしつづれえん)」、平均年齢70歳といわれている西陣織の世界に飛び込んだ20代の織り手と図案家の女性二人組のチャレンジ企画です。

トークショーまずは、お二人のお話から。
西陣織にもさまざまな手法があり、彼女たちが挑戦しているのは、西陣織の中でも最も歴史があり、微妙な色合いを表現する「綴織」といわれる技法。正式名称は「西陣爪掻本綴織(にしじんつめがきほんつづれおり)」、爪で織る芸術品だといわれています。

工房イメージ綴織は伝統的な機(はた)と手と足でギッコンバッタン、職人さんが織り上げていきます。機械を使わない理由は、手織りでしか表現できない繊細なぼかし表現。職人は多彩な色の糸を綴り合わせて、新しい色を作っていきます。たとえ元の図案が同じだとしても、職人さんの個性や感性によって、仕上がりは全く異なってくるのだとか。
機械で均一的にたくさん製造するのではなく、手織りでしか受け継いでいけない理由です。

小川さんプロフィール織り手の小川聖令奈(こがわせれなさん)さん。大学を卒業し、海外に留学。そこで日本の伝統の良さを改めて認識し、改めて「日本っぽい」ことを仕事にしようと決意。帰国後、京都の伝統工芸の後継者育成プログラムに参加し、西陣の綴織に触れ、この世界に入りました。綴織の魅力は職人さんの感性が詰め込めるところと、表現の広さ。

嶋岡さんプロフィール図案家の嶋岡知美(しまおかともみ)さん。学生時代から日本画を勉強、和柄を始めとする日本的な美術表現を追求するため、大学卒業後、図案家の先生に弟子入りし修行中。京都の伝統工芸の後継者育成プログラムに参加し、そこで出会った小川さんと着物産業の世界に入りました。

帯柄(綴織説明用)この技法で生み出される綴帯は、一本120万円ほどのものもザラで、彼女たちも実際に現場に携わるまでは、その価値を実感することはできませんでした。機械で織った「綴織」の製品は数十万円で買うことができます。「同じ綴織なのにこんなに違うのはなぜなのか?、それをもっと発信して価値を知ってもらいたい」というのが、この見学会の目的のひとつ。
そして、まだまだ修行中の彼女たちは、自分たちの作品を作る機会を与えられていません。綴帯の生産自体が減っていく中、図案を決めるところから織り上げるところまでを自分たちでやってみたい、そのチャンスをもらえるようにスポンサーとの接点づくりが、もう一つの目的です。

図案の説明図案には肩や約束事が実はある
「着物や帯の図案家は意匠を自在に描くに表現者というよりも、デザイナーに近い」と小川さん。帯という暮らしの一部に溶け込ませて使ってもらうものを作る、観賞用の絵と異なり平面ではないので締められた状態の帯を想像しながら作っていくことを学びました。
表現の上では、着物や和柄は締められると図柄そのものが立体的になるので、洋画で重視される芸術性の高い写生的表現とは違い、輪郭部分には影をつけずに地の色を残すことで形を出していく、また、花びらは平面で表現し全て同じ方向に向いている、ボカシや垂らしこみ技法はものの質感をだすために使う、などなど。
このように日本の装飾表現のアプローチには、ある一定の型や約束ごとがあることを学びました。

図案説明用絵師の世界では「三年運筆」といわれる、お手本の絵をひたすら写し続ける、それを3年間続ける、という言葉があります。こういった型をまずは覚えるところからスタートしないといけません。しかし、この型やパターンが増えることによって、お定まりの古典的な図案の中から「選んで」帯を織る、つまり、いいものを使い回し、図案代を節約するとことにつながり、その結果、新しい図案を生み出す機会が減ってしまう、技術が発展しなかったり後継者も育たない、という困った状態になってしまいました。
今回の見学会の目的「図案を決めるところから織り上げるところまでを自分たちでやってみる」といったコンセプトの背景はこういった事情もあります。
今回の見学を通して、出会った人に綴織の良さを知ってもらい、より発展的な循環を生み出していこうというミッションを自分に与えた嶋岡さん。手織りの良さがよりわかる図案を生み出し、表現の型を守りながらも、新たなアイデアやモチーフに挑戦したいと考えています。

糸織り手は糸選びから始まる
その図案を受けて綴っていくのは、小川さん。
現在修行中の小川さん、この工房を修行の場に選んだのは、しっかり勉強できる場があることはもちろん、糸の種類が豊富だったから、という理由もあります。
図案をもらうとそれを実際に綴っていくために、どの色の糸が最適かを考える。
もしも、適したものがなければ、糸の染屋さんに新たに作ってもらわないといけません。

糸にいろんな表情がある例えばこのベージュの糸、右手に持った二つの異なる糸の色を一つの糸に持たせ表情をもたせたい、というリクエストで染屋さんにお願いして出来上がったのが、左手で支えている糸です。
写真では微妙は風合いや雰囲気は伝えにくいのですが、間近で見ると確かに二つの色が混じっている、単に一本の中でグラデーションになっているだけではなく、糸の束としてみたときにムラやまだらの割合やその結果現れる雰囲気も全体的に伝わってきます。

織の実演そうして選んだ糸を編み上げていく!
実演が始まると職人さんの目になって、びっくりしました。

織り機正面手と足と機で綴っていく
機械織りでは一本一本の糸が細いために、縦糸の数も多くなります。これをギュウギュウに詰めて編んでいくので、縦糸が見えず、近づいて生地を見ると目がドット状になっていきます。

縦糸横糸一方、綴織は手間をかけて一色一本で織っていくので、縦糸に負担がかからず切れにくいので、強度が増す編み方なのだそうです。

裏側綴織の裏側は太い糸で案外隙間が多く、あかりにかざせば光が透けて見えるほど。でも丈夫なんです。

柄の説明「綴織は、おばあちゃんからお孫さんまで三世代つかってもらえます」と小川さん。

柄難しい柄だと一日で数センチしか進まないこともあります。
でも、折り方の技術が現れるので、無地を編むのが実は一番難しいのだそうです。

図案を語るお隣では、商談の真っ最中。

後でこっそりと「どうやって値決めするの?織り手の取り分で小川さんと喧嘩とかしない?」という下世話な質問をしてみたところ、「その辺の値ごろ感も今日探ってみたいんです。お話を聞いてくれた人がどんな風に思ってくれたかな、という反応を見ながら。図案だけでは今は食べていけないので、工場内作業の短期バイトをすることもあるのですが、そのときのマニュアルなんかはすごく勉強になります。作業のやり方がまとまった現場の手順書ってとても効率的で、伝統工芸と製造現場は違うかもしれないけれど、これを生かして、作業時間や手間と値段などもこれから考えないと」と、とてもしっかりした回答。
若手の職人さんとあなどるなかれ。この人は綴織の世界全体をすでに冷静に見極めようとしているということがわかりました。すいませんでした!

先生こちらがお二人の先生の平野喜久夫さん。大手織物会社に勤務後、ご自分の工房を立ち上げ、織りの世界に携わって合計60年。
ご商売としての売れるもの、技術の継承、両輪で綴織を考えるプロデューサーであり、二人のお師匠さん。お二人には技術を伝えることのほか、伝統産業が生き残るための術や考え方といったこともしっかり伝授されているのだな、と実感。柔和で優しい語り口でほっこりさせていただきました。

ワークショップもやっている奏絲綴苑では、今回のような見学や「綴織塾」という体験イベント・ワークショップなどのPR活動、技術の継承や後継者育成に向けた活動をしています。

女子高生ピースやんけ最後は笑顔でピース!
ギャルなピースサインをする綴織職人は、まさしく伝統と革新のシンボル。いいと思います。
今日は綴織のこををたくさん勉強させてもらいました。小川さん、嶋岡さん本当に有難うございました。これからも頑張ってくださいね。

「Design Week Kyoto ゐゑ 2016」に行ってみた感想
自分にとっては「伝統」「職人」というイメージが強く、さぞかしディープな歴史を感じるツアーになるのだろうと思いきや!実際に参加してみると、デザイン化された武具、伝統ある和紙と日本酒&茶の湯のコラボイベント、改装を待つ町家、京焼の体験会などこれまでの京都を発展させていく志向性と、外国人トリオのビール工場、ゴリラボーイ、若手の女性ユニットが挑戦する西陣織など、これまでの枠におさまらない全くことなる異質の試みでも、こころよく「おいでやす」と受容しつづける器の大きさに出会うことができました。「伝統」「職人」という記号だけで考えていたことがちょっと悔しい。

48041ee01da52cff3e0e9249f831d5ac78fdd5d4std のコピーテーマである「ゐゑ」には、京都という大きなお家の敷居をどれだけ超えられるか?という意味も込められています。
「構想段階では西陣だけに絞った町の催しにするつもりでした。しかし、地元の信用金庫やお寺などとお話ししていく中で協力も得ることができ、初回なのに100箇所以上も参加してもらってびっくり。
初回はあくまで試み。『オープンハウスに参加した京都の人たち同士、そしてその人たちと国内外の人たちが繋がって新たな動きに繋がっていって欲しい。今後はオープンハウスを軸にやっていきたい。』というのが今の気持ちです」と主催者の北林さん。

「京都」という巨大なブランドがあって、それを守ろう、発展させよう、変えよう、と参加する人の思いも目論見もさまざま。いろんな人がいて、多様な産業が集積、歴史がある街だからこその難しさもあると思いますが、多彩な切り口と数、そして一つ一つの見学の質の高さは京都ならでは。来年はどんなのになるだろう、と今から楽しみなイベントです。

【詳細情報】

Design Week Kyoto実行委員会 事務局

住所:京都市北区紫野上柏野町10−1 COS101ビル

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