友禅の美を暮らしの中で楽しむ。革友禅ブランド“SOMEA”を生んだ「池内友禅」に潜入!

突然ですが、こんなお財布を見たことがありますか?

「かわいい!欲しい!」と思った方も多いはず!

実は、京友禅の工房で作られているお財布なのです。

友禅染の伝統技法を生かして革を染める独自の技法で、色鮮やかな革小物を作られています!

今回お邪魔したのは、京都が誇る観光地・嵐山のほど近くに工房を構える池内友禅さん!

池内友禅さんは1980年の創業以来、江戸時代から伝承されてきた手描友禅染の技術を用いて、着物や帯の制作を行われています。

手描友禅染では、白い絹の生地に手描きでひとつひとつ柄を描いていきます。

「友禅の技術を使って、もっと暮らしに身近なものを作りたい!」という思いから、2018年にSOMEAというブランドが誕生しました。本来は絹に染めるものである友禅染を革に応用。他では見られない独自の技法を用い、デザインにもこだわった美しいアイテムを展開されています!

 SOMEAは、「染める/SOMERU」と透明感を意味する「CLEAR」を組み合わせたもの。透明な心で明るく彩りあるものをお届けしたい、という想いから名付けられました。

今回記事を担当させていただくのは、しゃかいか!インターン生のかずなです。
私は京都の大学に通う2回生で、大学では機械系のコースに所属しています。

長年日本の伝統的なものづくりに興味があり、大学入学を機に京都に来てから様々なものづくりに触れ、楽しい日々を過ごしています。

「Kyoto Crafts Exhibition DIALOGUE 2023」という工芸の展示販売会に行き、そこで出会ったのがSOMEAです。普段の暮らしにも馴染む素敵なデザインや色の美しさに心惹かれました。

実は、しゃかいか!もDIALOGUEの取材に行っていました!記事はこちら↓

今回ずっと興味のあったSOMEAについて話を伺えるということで、ワクワクと緊張でいっぱいのなか取材させていただきました。

お話を伺ったのは、池内友禅の二代目・池内真広さん。工房に早めに着いてしまった私たちの声を聞きつけわざわざ出てきてくださるなど、とっても優しい方でした。

今回の取材では、SOMEAの魅力や誕生秘話、池内さんご自身についてなど、たくさんのお話を聞くことができました。実際に染める作業も見学・体験させていただいたので、その様子もじっくりとご紹介していきます!

いざ、工房へ!SOMEAの魅力に迫る

工房に入ると、たくさんのSOMEAのアイテムがお出迎えしてくれました!

まずはそのSOMEAの魅力をたっぷりとお伝えします!

いちばん驚くべき特徴は、革を用いているということではないでしょうか?

友禅染は、本来絹の生地に染料で染めていくもの。その技術を革に応用されているのはSOMEA独自のものです。開発はもちろんゼロからの挑戦だったそうなのですが、詳しくは後ほど。

また、アイテムを目にしてパッと惹かれるのは、その鮮やかな色です!

色の綺麗さ、組み合わせは池内さんが最もこだわられているポイント。プリントとは一味違う色合いになっているそうです。

これは池内友禅さんが手掛けられた着物。この着物のように花やかな色彩は、池内友禅さんの特徴のひとつです。絹と革では染めたときの発色が変わってくるそうで、革でも綺麗に見える色を使うということにこだわられています。

デザインにも要注目です。美しい色合いに気を取られて気づかれていない方も多いかもしれませんが、実は伝統の縁起柄をベースにしたデザインなのです!

例えばこの雲のような柄、SOMEAのなかで最初に考案されたデザインだそうですが、「彩雲縞(さいうんしま)」という柄がもととなっています。

太陽の近くを通りかかった雲が、緑や赤に彩られる光景を文様化したものを"彩雲文様"といい、古くから幸運の前兆を意味する縁起柄として愛されてきたのだそうです。

縁起の良いアイテムをさりげなく持ち歩けるなんて、なんだか気分が上がりそうではありませんか??

さらに、触り心地がとっても優しいのです!

その理由は、「顔料」を使わず、「染料」で色をつけているから。
私にとってあまり馴染みのない言葉でしたが、お話をうかがってみるとその差は歴然!

「顔料」は絵の具のように、革の上に塗り重ねていくイメージ。ほとんどのレザー製品はこの「顔料」で加工されているので、革自体が硬くなっていることが多いそうです。

対して「染める」のは生地の中に色を浸透させていくこと。だから革の触り心地をほとんどそのまま感じることができるのです。

素材は違えど、「染める」という点では着物もSOMEAの革製品も共通しています。

また「染め直し」ができるという点も着物と一緒。
染め直しは、池内友禅さんの得意技でもあります!

染め直し前のお着物

染め直し後の様子

こちらは着物を濃い色から薄い色に染め替えたケース。
濃くするのではなく、薄い色に変えることができるなんて、驚きでした!
ガラッと印象が変わってどちらも素敵ですよね!

では、革製品のSOMEAの場合は、染め直しによってどのように変わるのでしょうか?

一般的な革製品では、顔料を使っているため素材に蓋をしているような状態になり、上から色を塗り重ねるくらいしかできなくなってしまいます。

しかしSOMEAのアイテムは「染め」のみのため、まだ色が入っていく余地があり、新しく染めるのと同じような形で色を染め直すことができるのです。

こちらは、2年間使われたフラグメントケース
染め直しで復活した後の姿

金箔が新たに貼られて、雰囲気も少し変わっています!

染め直しをして長年使い続けることができるのも大きな魅力ですね。

SOMEAはどのようにして誕生したのか?

ここからはSOMEAの誕生について深掘りしていきます!

前述した通り、SOMEAの開発は「友禅の技術を使ってもう少し暮らしに身近なものを作りたい!」という思いから始まった取り組み。可愛らしい色合いのアイテムが多いSOMEAですが、実は当初、男性用のものを考えられていたそうです!

というのも、着物は元々女性のためのものがほとんど。池内さんご自身が使えるものがなかったそうです。そこで、「自分が普段づかいできる友禅のものを作りたい」と財布を作り始めました。

ご自身が使いたいものを作られたからこそ、SOMEAの「使ってみたい!」と思うアイテムの数々が誕生したのですね!

今では革に染めるというのがSOMEAの大きな特徴ですが、最初は絹製。作っていた帯をそのまま小さくしてお財布にしたものでした。

「革に染めてみよう!」となったのは、意外にもお客様の意見がきっかけ。当初は池内さんご自身も、まさか自分が革を染めることになるとは思ってもみなかったそうですよ!

そういうわけで、「全部わからないところから」始められたという、革へ染める技術の開発。
始めてみると、同じ「染め」でも革に染めるのは、絹とは異なる難しいことがたくさんあったそうです。

まず、用いる染料が異なります。革に染めるとき染料によっては色が入らないことがあったり、日光に対する強さが必要になったりと、克服しなければならなかった課題がたくさん。原因がわからず上手くいかないことだらけの中、何パターンも試されて今の形になりました。

研究から完成まで、1年ほどかかったそうです。

また、模様を染めることも難しかったことの1つでした。

写真のようなアイテムには、部分ごとに異なる色で染める「染め分け」という友禅染の技法が応用されています。はじめは革の上で色がムラになってしまったり、別の部分に色がはみ出してしまったりと綺麗に染め分けるのが難しかったとか。

それが安定してうまくいくようになったときの喜びは格別だったそうです!

染め方を開発された際、いちばん楽しかったのは、色が綺麗に染まったとき。
黒やグレーといった色に比べ、緑や紫など鮮やかで綺麗な色はよりコントロールが難しいそう。
そういった発色にこだわりを持って開発されたからこそ、今のSOMEAの美しい色合いが生まれたのだろうなと感じました!

そして、SOMEA開発の後押しになった出来事の1つが、新型コロナウイルスによるパンデミック。SOMEAは、池内友禅さんが販売されている製品ですが、その開発には財布メーカーさんやタンナー(製革業者)さんなどの協力が不可欠でした。当時、経済が止まってみんなが暇になったおかげで、時間に余裕が生まれ研究が進んだそうです!

コロナのおかげでSOMEAが誕生したなんて、コロナにも感謝しなければいけないなぁと思いました。

継いだのは「たまたま」!? 2代目の池内さんのお話

池内さんはどうして友禅の道に進まれたのでしょうか?お話を伺いました。

私は池内さんのお話を聞く前、伝統工芸というと子供のころから代々の仕事に触れて学び、後を継いでいくもの、というイメージがありました。

しかし、池内さんが友禅の道に進むと決められたのは大学3回生くらいのこと。それまではびっくりなことに、友禅を意識すらしていなかったそうです。というのも、お父様の仕事場は自宅とは別のところ。池内さんは友禅染と縁のない生活を送られていたのだそうです。

転機はお父さま、池内路一さんの作品展。池内さんが将来の仕事はなにかものを作る仕事がいいなと思っていたときにお父さまの作品に触れ、友禅染の美しさに魅力を感じ、自分もやってみたいと思われました。それ以降、友禅以外の道は考えなかったそうです。

進路を考える中で「たまたま」身近にあったのが友禅でした。

実はお父さまが友禅を始めたのも愛媛から京都に出てこられた後、友禅の先生と「たまたま」出会われたからだそう。お話を聞いていて、ご縁や出会いってすごいな、大切にしようと感じました。

家業を継ぐことでご家族はたいそう喜ばれたのだろう、と思いきや、お母さまは「めっちゃ嫌がって」いらっしゃったそうです。「学費払って大学まで行かせたのに、い、家!?」とのこと。伝統に関わるお家は幼いころから継ぐように言われるというようなイメージを持っていましたが、ひっくり返されました。

他とは違う!ひとりひとりに合わせた着物づくり

池内友禅さんはSOMEAというプロジェクトだけでなく、従来の着物の染めでも他とは一線を画しています。

友禅染にはさまざまな工程があり、京都の友禅染は分業がほとんど。しかし、池内友禅さんは図案を書くところから仕上げまで一貫して行っている数少ない工房です。

そのためお客さんの希望を聞き、雰囲気や個性に合わせたお着物の制作が可能。

例えばこちら。なかなか普段見ることのできない図案を見せていただきました!

七五三のお着物の袖の部分だそうです。

白鷺(しらさぎ)の柄は、まずお子様を見た時の飛翔するような雰囲気から、鳥が良いかなというイメージを持たれました。それとお父さまが前田利家好き、というエピソードをもとに調べたら、前田利家が桶狭間の戦いで白鷺を探しに行ったという情報、前田利家の所蔵品の中に白鷺の小袖があったという情報にたどり着いたのだそうです。

ご依頼されたお父さまが武家のような雰囲気をお持ちの方だったそうで、それにもピッタリですね。
また、息子さんがちょうど亀にハマっていたことから、縁起の良い亀を取り入れられました。

完成品はこちら。とても美しいです!

子どもの、特に男の子の着物は鷹や兜といった柄にほとんど決まっているそうです。見せていただいたような着物はデザインのベースとなる図案がほとんどないため、0から制作されました。完全オリジナルで、一生の記念になるようなお着物ですね。

ちなみに池内友禅さんの臨機応変さはSOMEAの取り組みでも見られます。

こちらは別注カラーのアイテムだそうなのですが、このカラーから何を思い浮かべますか??

正解は...バームクーヘンです!

依頼された社長さんの会社で作られている、リンゴバームクーヘンをイメージしたカラーだそうです。持っていたらお腹が空いてきてしまいそうな可愛らしい色ですね。

展開されている色もどれも素敵ですが、自分だったらどんな色が良いか、と想像が膨らんでしまいます。

筆を使って染める、手描友禅の伝統技法を体験!

実際の染めの作業を見せていただきました!

今まで「染め」と聞いても、想像がつくような、つかないような…。曖昧な感じだったので、ワクワクでいっぱいです。

手描友禅の特徴は、「糸目糊置防染(いとめのりおきぼうせん)」というもの。

漢字連発で、なかなかにゴツい名前ですが、おおざっぱに言うと、ノリで輪郭を描いてから染めていく方法です。

写真の水色の線が見えますか?
この細い線が「糸目」です。

このようにノリを置いておくことで、色が他のエリアまでにじんで出てしまうことを防いでくれるため、手描友禅の多彩な表現が可能になっているのだそうです。

この糸目の枠の中に一色一色染めていきます。なんだか塗り絵みたいで楽しそうだと思ってしまいました。

しかし、実際のお着物をつくるには、例えば振袖だと写真のような生地がなんと16メートルも!
全部手描きでこの細かい柄を一つ一つ染めていくのを想像すると、気の遠くなるような作業ではありませんか?

美しいお着物は、たくさんの手間がかかって出来上がっているのだなと改めて実感しました。

手描友禅の手法は300年も前に京都で生まれたそうです。元々、染物自体は外国から伝来したものですが、日本にやってきてから繊細な技法に進化して、友禅の美しさが生まれたんですね!

色は、粉になっている染料を混ぜ、水で溶かして用います。

絵の具のようにドロッとはしておらず、サラサラだったのが驚きでした!
複数の染料をどう混ぜるかが微妙に変わるだけで色が変わってくるので、細かく言うと何万色にもなるそうです。

乾いたときの色、糸目が取れたときの仕上がりを考えながら色を混ぜ合わせるのが腕の見せ所です!

手描友禅のもう一つの特徴は「ぼかし」。平たく先が斜めになった筆と水を使って動かしていきます。

「ぼかし」によって生まれる奥行き感。友禅が「絵画的」と言われる所以だそうです。

色によって筆を使い分けるそうで、工房には筆やハケがたくさんありました!

染料を入れる容器もたくさん!

染料は乾いて粉に戻ってもまた水で溶かせば使えるため、ある意味「エコ」だそうです!

お話を聞いていたら、いつの間にか猫ちゃんが!近所の猫が毎日おやつをもらいにやってくるそうです。平然と座って落ち着いている様子に、しゃかいか!メンバーも癒されました。

なんと!池内さんのご厚意で私たちしゃかいか!メンバーも体験させていただきました!

実際に筆を持つと糸目の枠からはみ出さないようにと、とっても緊張しました。

筆が生地に触れた瞬間、染料がスッと入っていく、不思議な感覚でした。

画用紙に絵の具で塗る時の、紙の上に色をのせていく感じとは全く違う、どちらかと言えば書道に近いような感覚...ぜひ味わってみていただきたいところです!

「染める」のは「塗る」のと全く違うのだな、と実感しました。

革を染める作業も見せていただきました!

革も友禅と同じように糸目による「染め分け」がされているのがわかりますね。

実は私は「革に色を入れる」と言われても、正直色をはじいてしまう姿しかイメージがついていませんでした。やはり単なる水だと水たまりのようになってしまい、浸透してくれないのだとか。企業秘密の研究の成果でこのように革を染められるようになったのだそうです。

実際に作業を見ていると、色がスーッと革に入っていくではありませんか!

むしろ絹の生地よりも染み込みやすく、にじみにくいのだそうです。

新たな挑戦を続ける池内友禅さん

池内友禅さんは、現在もさまざまな挑戦を続けられています!

最近のプロジェクトは、SOMEAの「brume」シリーズ。初代のSOMEAのアイテムは友禅の「染め分け」の技術を用いていますが、「brume」では「ぼかし」の技術を用いています。こちらもとっても美しいです。

今後の池内友禅さんの進化にも要注目ですね!!

しゃかいか!のトレードマークの青いヘルメットを褒めていただいたりと、終始温かく対応してくださいました。ありがとうございました!!

SOMEAのアイテムたちは、2024年1月31日まで京都河原町にあるcotoiro 立誠ガーデンヒューリック京都店さんでポップアップ出展もされています!

この機会に訪れてお手に取ってみるのはいかがでしょうか?

池内友禅
〒616-8362 京都府京都市右京区嵯峨五島町37

Web:https://www.ikeuchi-yuzen.com/
Tel:075-882-9768
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SOMEA
Web:https://www.somea.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/somea_kyoto/
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text:竹村和菜 photo:篠原豪太

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