織りの仕事を体験し、丹後を選んだ人たちの理由を聞く ─ 産地インターン「WEAVE TO MEET / TANGO TEXTILE JOURNEY」【中編】

2025年度から新たに始まった、丹後織物の未来をつなぐ人材プロジェクト「TANGO TEXTILE JOURNEY」

今回取材したのは、そのプロジェクトの一環である2泊3日のフィールドインターン「WEAVE TO MEET」です。 

1日目の様子をお届けした前編に引き続き、丹後織物産地で働く”リアル”を体感する、イベント2日目から3日目の様子をお届けします。 

1日目は、京都府織物・機械金属振興センターで、丹後織物について学び、kuska fabricさんの工房見学を通じて、素材と風合いにこだわった手織りの美しさに出会い、丹後織物に関わる「先輩」とのトークに花を咲かせました。

多様な織元を巡り、織りの仕事を体感し、丹後地域の多くの方と交流する。WEAVE TO MEETの旅は、まだまだ続きます。

みなさん、こんにちは!
しゃかいか!インターンのもねです。
では早速、2日目の様子を見ていきましょう!

丹後で行われる二泊三日のフィールドインターン「WEAVE TO MEET」の2日目は、就労体験からスタート!参加者さんは、それぞれ5社に分かれ、半日かけて織の仕事を体感します。

私たちしゃかいか!チームは、そのうちの3社を回りました。

自社一貫生産で、白生地の生産で業界でも一目置かれる田勇機業さん
藤の蔓から布を作る、太古から伝わる藤布の技術を今に継承される遊絲舎さん
世界でも唯一無二のリボン織り技術で、多様なテキスタイルを生み出される創作工房糸あそびさん

それぞれの事業所さんの特色や、魅力をたっぷり知ることができました。

糸づくりから織りまで、一貫生産!田勇機業の圧倒的スケールと、一つ一つの工程にこだわり、積み重ねるものづくり

最初に訪れたのは、田勇機業さんです。

一日目の夕食のトークイベントでもお世話になった、田茂井仁哉さんに工場をご案内いただきました。

田勇さんを訪れて驚いたのですが、工場が本当に広い!!

工場が3カ所に分かれていて、それぞれに機械がずらりと並びます。

田勇さんの特色は、織物の糸を準備する段階である、撚糸、整経から、製織過程、さらに製品加工に至るまで、すべての工程を自社で一貫して行われていることなんです。

私たちが訪れた際、田茂井さんは、整経(せいけい)、つまり「経(たて)」糸を「整」える作業の準備をされていました…!

具体的には、新しいたて糸を整え始める際に、前の糸と結んで行く作業とのこと。

結び目が目立たないように特別な結び方で、つないでいきます。

その数、なんと4000本…!

この段階で、糸をきれいに結べないと、織りの段階で、結び目が目立ったり、糸がほどけたり、と問題が起こってしまいます。そのため、何千本もある糸を慎重に、かつ手早く結んでいく必要があるんです。

一旦外に出て、道路向かいの別の建物へ。

こちらで行われていたのは、よこ糸を整えていく作業。

複数の糸を合わせて一本の糸にする合糸や、糸に撚り(より)、つまりねじりをかける、撚糸が行われています。

このよこ糸の準備段階を一つとっても、多様な機械があり、必要なよこ糸の太さや特性に合わせて、使い分けられています。

こちらは、田勇さんの高い技術力を象徴する機械の一つ、水撚り八丁撚糸機です。

水を落としながら、よこ糸に1mあたり3,000〜4,000回の強い“撚り”をかける、つまりねじり合わせる作業を行います。

こちらの作業では、なんと、糸のわずかな違いに合わせて、下のおもりの重さを一つ一つ変えて調整しているんだそう!その見極めは、職人さんの経験則に基づく、まさに職人技です。

ふと目線を上げると、壁沿いに重りがずらり。もうこの重りを作っているところがないそうで、大切に保存されています。

たて糸、よこ糸の製造段階での工夫に加えて、加工前の糸にもこだわりが。

こちらの棚には、すべて異なる糸が入っているそう。これらの糸を使い分けて、多様な製品づくりを行われています。

途中で、インターン組と、代表取締役の田茂井勇人さんと合流。

最後に、織機の並ぶ工場を一緒に見学します。空間いっぱいに、たくさんの織機が動くさまは、圧巻です。

織機を覗いてみると、繊細で美しい織物が織られていきます。

田勇さんは、白生地の製造を専門とされる機屋さんで、難易度の高い柄物の織物の製造にも対応できる数少ない工場なんです。

田勇さんは、八丁撚糸と、他の糸の組み合わせの工夫、そして織り方を通して、多様なシボ、ちりめんの質感をつくられています。田勇さんの、多様な製品づくりを可能にする充実した設備と技術、そして一つ一つの過程に工夫を凝らして丁寧に取り組む姿勢が、高品質で、業界からの信頼の厚い、田勇さんならではの織物づくりにつながっているのだと、知ることができました!

縄文から続く、幻の原始布!「藤布」を織り続ける遊絲舎さんのものづくり

続いて訪れたのは、遊絲舎さんです。

遊絲舎さんの特色は、藤布(ふじふ)と呼ばれる、藤の蔓からつくられた布を織られること。その技術を受け継ぐ、数少ない織元さんです!

小石原将夫さんは、4代目の織元さん。小石原さんの代に藤布の取組をはじめられました。

藤布は、現代に伝わる最古の原始布であり、幻の技術でもあります。

その起源は、なんと縄文時代まで遡ります…!

しかし、江戸時代中頃には、木綿の普及に伴い、衰退していき、一度は日本から消滅した技術と考えられていました。

しかし、継承が途絶えたと思われていた技術が、丹後の山里に残っていました。

上記のような、藤布で織られた袋が、生活の中で用いられていたんです。

その技術を丁寧に継承するのが、遊絲舎さん。

藤の蔓を採集するところから、昔ながらの手法を守っています

そして、藤糸を製品の一部に用いるなど、藤布の技術を合わせて、多様な表現ができるのが、遊絲舎さんのすごいところ…!現代の織物と融合した、美しい作品の数々を制作されます。

こちらの美しい反物の一部にも、藤糸が使われます!

私たちが訪れた際には、映像を見ながら、参加者に藤布を作る過程のご説明をされていました。

私も動画を拝見したのですが、藤布ができるまでには、びっくりするほど多くの過程がありました。

まず、藤布づくりは、藤の蔓を採集するところから始まります。

続いて、小槌で叩いて皮をはぎ、内皮を灰汁で煮炊き、川水でしごき、米ぬかを溶かした湯にくぐらせて乾燥させることで、糸を作るための繊維が出来上がります。

ここまででも、なかなかの工程数…!昔の方は、このように時間をかけて織物をされていたのだという発見とともに、藤の蔓を採集するところから取り組まれている、小石原さんにも驚きです。

その繊維を撚りつないで、一本の糸にしていく作業を、「藤うみ」というのですが、就労体験に来ていた参加者が、この工程を実際に体験。

小石原さんの実演に続いて、挑戦すると…

ねじり合わさって、2本の糸がきれいにつながりました…!

これには、小石原さんも、「こんなに早くできる人はなかなかいない」と感心の様子。

この過程を繰り返して、一本の長い糸をつくり、そこに撚りをかけて、さらに強い糸にしていきます。そのようにしてできた糸を、織ることで藤布は完成です。

実際に見学することはできなかったのですが、その後、藤糸を用いたコースター作りも行ったとのこと!

その完成品がこちらです。アクセントとして入っているのが、藤糸だそう。とっても素敵!

遊絲舎さんでは、藤布を用いた珍しい織物に出会うことができました。また、太古からの技術を丁寧に継承しつつも、現代のライフスタイルに合った作品を作り続ける唯一無二の織元さんでした!

世界に2台だけ!唯一無二のリボン織りが生み出す、糸あそびさんの多様なテキスタイルデザイン

最後に訪れたのは、創作工房糸あそびさんです。

私たちが訪れると、糸あそびさんで作られている、多様なテキスタイルの紹介をされていました。

就労体験を担当されていたのは、こちらもトークセッションに出られていた山本昇汰さん。

それぞれの生地を見ていくと… 

このように、デザインも風合いも異なる多様なテキスタイルが。一つ一つの生地の表情や質感が全然異なります!

こちらの生地の裏側を見てみると…

びっしりと糸が!表の美しい柄を織るために、こんなに多くの糸が使われていることがわかります。

糸や織り方の工夫で、こんなにデザイン性あふれるものができるのかとびっくりです。

織物の多様な表現に加えて、特筆すべき点が、糸あそびさん独自の技術

こちらがリボン織機

なんと、世界にたった2台しかなく、その2台ともが糸あそびさんの工房に並んでいるんです…!

こちらの織機では、絹リボン糸と呼ばれる、4ミリ幅の平たい糸を作ることができます。

この糸をグラデーションに染め上げ、織り上げることで、多様なオリジナル生地を作られているんです。

先程のこのクッションも、リボン織りで作られています。確かに、こんな織物、他に見たことない!

山本さんが、リボン織機で、糸が切れた時に結び直す作業を実演してくださいました。

4段もある、たくさんの糸の中から、まずは切れた糸を見つけ出します。

私は横から見ていても、どの糸が切れたのか、さっぱりわからなかったのですが、山本さんは、すいすいと見つけて結び直されました。

糸あそびさんの、唯一無二のリボン織りの技術と、それを活用した多様なデザインのテキスタイルは、「織物ってこんなに自由で、素敵な表現ができるものなんだ!」と、丹後織物の奥深さを感じさせてくださいました。

また、山本さんは、テキスタイルの魅力を伝えるために、自分でパターンを引き、服作りを行われているとか。ゆくゆくは、自社ブランドを作り、世界に発信していきたいとのこと。

糸あそびさんの素敵なテキスタイルが、今後どのように世界に広がっていくのか、とても楽しみです。

そして、就労体験の移動中に、空を見上げると虹が!

2日目の気候は、どんより雲に覆われていて、雨が降ったり止んだり、雪混じりのあられが降ったりと、「丹後らしい」気候でした。

丹後ちりめんの肌触りや風合いを支える、丹後織物工業組合を見学

それぞれの就労体験を終え、集合した一同。続いては、みんなで丹後地域の絹織物産地を支える、丹後織物工業組合に向かいます。

こちらでは、「精練(せいれん)」といわれる工程の加工現場を見学しました。

「精練」とは、生糸に含まれている不純物とたんぱく質の一種である「セリシン」を、石けんなどの薬品を加えた熱湯の中で洗い落とす工程をいいます。

精練は、丹後ちりめんを作る上で、不可欠な過程です。

というのも、精練を通して、よこ糸の撚りがもどることで、手触りの柔らかさや風合いの良さ、丹後ちりめんらしいシボと呼ばれる独特の凹凸感が生まれるんです!

まずは、織元より届けられた生地を吊るしていき、準備が整ったら、精練に移ります。

こちらの広い空間で精練、つまり生地を洗う工程が行われます。

訪れた際には、その日の精練作業は終わってしまっていたのですが、それでもその規模感、現場の風景を知ることができました。

その後、洗い上げられた生地が乾燥されると、整理、検査が行われ、織元へと返却されます。そのすべての過程が、3泊4日で行われるのだとか!早い!

精練前後の生地を見比べてみると…

精練の後の生地は、真っ白

色の違いがしっかりわかります。

このように、TANGO OPEN CENTERでは、絹織物精練の過程をしっかり学ぶことができました。

今でも見どころ満載ですが、今後も、現在の精練加工場、常設の直営ショップを中心に、丹後織物の一大観光施設「TANGO OPEN VILLAGE」をつくる構想があるのだとか。完成したら、ぜひ行ってみたい!

最後に、ボタンづくりのワークショップが行われました。

たくさんある、丹後織物の生地の中から、お気に入りの一枚を見つけます。

たくさんの選択肢に、大いに悩みつつ、一枚を選んで…

ぎゅっと型にはめると…

素敵なボタンの出来上がり!

インターンの思い出に、とっても素敵なお土産ができました!

丹後に移住した3名が語る、暮らしと仕事のリアル

丹後織物工業組合の見学が終わった後は、夜ご飯とトークセッションに移ります。会場となったのは、地域の交流拠点「かや山の家」。2日目夜のトークセッションでは、丹後に移住された先輩として、3名が丹後での暮らしや仕事、地域との関わり方について、お話ししてくださいました。

(右から、坂田真慶さん、福崎智子さん、足立樹律さん)

トークセッションは、皆さんの自己紹介からスタート。

坂田真慶さんは、丹後において、人と人を結びつける仕事を行われています。

「丹後暮らし探求舎」で移住や空き家に関する相談窓口を担う傍ら、「まちまち案内所」というカフェ兼ワーキングスペースを運営しているそうです。

福崎智子さんは、与謝野町岩滝のATARIYAという施設で、ラーニングツーリズムを担当されています。ラーニングツーリズムとは、学びを取り入れた観光の形態のことで、地域のものづくりに特化した、新たな旅の形を提案されています。

足立樹律さんは、京丹後市峰山町の14世帯の限界集落で、古民家をリノベーションしてアウトドアサウナを運営されています。

三者三様、バラエティー豊かなお仕事と移住に至るまでのバックストーリーを持たれており、丹後への移住の多様性を垣間見ることができました。

トークセッションの最初の話題は、「移住して、丹後に混ざれた、馴染んだと感じた出来事」について。

まず、挙げられたのが、地域の集まりへの参加。毎月の寄り合いに参加した際に、歓迎会を設けてもらったときや、丹後地域の事業所への集まりに参加した際に、丹後に馴染めてきたと感じたそう。

日常の中での地域の方との関わりの中でも、距離が近づいてきたことを感じさせる瞬間があるといいます。アウトドアサウナで川に入っていた際に、近所の方に声をかけられ、きゅうりをもらったというエピソードも飛び出し、丹後地域の皆さんの距離の近さや、フレンドリーな性格が垣間見えました。

続いて、「丹後のおすすめの場所」をテーマに、地域の交流拠点についてお話を伺いました。

坂田さんが運営する「まちまち案内所」は、年間約6000人が利用する交流の場です 。多様な人が混ざり、その人に合わせた紹介ができる場を目指されており、月に一度の食事会も開催されています。

足立さんの「蒸-五箇サウナ-」も、月曜日の開放日には地域住民が500円で利用できるなど、多世代が混ざり合う場となっています 。名前も知らない関係性の中で近況を話し合うような、「ゆるいつながり」を大切にされており、最近では地元の豆腐屋や鍼灸師と連携した新たな試みも進んでいるのだそう。

そんな両拠点の愛好家である福崎さんは、「人に会って何かに挑戦したい時にちょうどよい空間」として活用したり、サウナで地域の方が魚を買う光景を目にしたりしているそうです。

お話を通じて、移住者の皆さんが、地域の憩いの場を作ったり、地域に新たな文化をもたらされていることが、伝わってきました。そしてその背景には、その新たな試みを受け入れ、応援されている丹後地域の土地柄、人柄もあるようにも、感じました。

お話に続いて、かやの家で、夕食会が開かれます。

事前に、丹後の方々に、「かやの家のご飯は、本当に美味しい」というお話を聞いていたので、期待値大で望みます。

口に入れて、みんな目を見開くほどのおいしさ!

丹後に来てから、幾度となく聞いた「丹後はご飯が美味しい」というお話を、よくよく実感しました。

夕食とともに、トークセッションに参加くださった移住者のみなさんとの会話も盛り上がります。

御三方とも、もともと丹後とは縁もゆかりも無かったところから、偶然にも移住されたということで、丹後での暮らしや移住しての実感など、気になるリアルを聞かせていただけました。

移住者の皆さんとのお話の中で感じたのが、「ウェルカムな土壌の丹後には、どんな人にも合う余白がある」ということ。

インターン参加者の皆さんは、「織手になりたい!」という方もいれば「織物について詳しく学ぶのは初めてで、どんなキャリアを進むべきか迷っている」という方までさまざま。ですが、多様な経緯で移住された方々の存在や、織物産業に限らない仕事の幅広さ、さらには新たな挑戦を後押ししてくれる風土を知ることで、丹後での暮らしや選択肢の広さを実感する一日となったようでした。

丹後の海に惚れ込んで移住。小嶋庵の提灯づくり

TANGO TEXTILE JOURNEYも、ついに最終日。最後は、小嶋庵を訪れ、丹後に移住し、京提灯職人をされている、小嶋俊さんのお話を聞きました。

小嶋さんが、丹後への移住を意識されたのは、海の風景がきっかけだといいます。

「夏のめちゃくちゃ晴れた日は、海にほんまに何もなくて、フラットなんです。それがすごくきれいで。こんなとこあるんやと、その時点で、ここで仕事がしたくなった」

もともと小嶋さんは、京都市内で老舗の家業を継いで、京提灯づくりをされていました。しかし、コロナ禍で、人が集まる機会がなくなり、仕事がゼロに。

そんな中、家族で網野町を訪れる機会があったといいます。

「子どもたちが楽しそうで、自分も楽しかった。コロナ禍の今だったら、準備する時間もある。これは今しかないな、と」

そうして丹後への移住、独立を決断。移住されてからまる4年が経ちます。

「自営だからこそ、形になるまでは、怖い。何年も『どうするねん!』ってことがあった」といいますが、そのタイミングで良い出会いがあり、「なんとかなった」のだとか。

18歳で、高校卒業後すぐに提灯づくりの世界に入り、事業の「底」も経験してきた小嶋さんは、「何が起こっても、意外となんとかなるんですよ」と明るく話します。

ご家族との仲も良好で、ご実家の老舗から独立された当初は心配の声もあったそう。ですが、丹後で事業が形になってきた今では、仕事の面で助け合える関係となり、「逆に良かった」と言ってもらえるようになったといいます。

現在では、フルタイムで働く方に加えて、地域の子育て中のお母さんや学生さんなど、色んな方が働きに来られているそう。その働き方も、とても柔軟で「来られる日に来てもらう」スタイル。「珍しいやり方かもしれないけど、それがみんなしんどくなくていいかな」と思いを教えてくださいました。

「お金は必要やけど、そんなにはいらんやん」というのが、小嶋さんの考え方。

今丹後の地域に最低限のものはあり、生活に困ることはないといいます。時間とお金を等価で考えていれば、丹後はとても生活しやすいところなのだそう。

「今やったらわかるんですけど、たぶん都会の生活が向いていなかったんですよね」と小嶋さん。

丹後に来てから一人で使えるスペースがとても広く、静かな環境に、居心地の良さを感じたといいます。

「畑をやりたいといえば、地域の方が教えてくれる」など、京都市内に住んでいたら絶対にやっていなかったことをやれている、今の暮らしを気に入っているのだそう。

子どもたちが、思い切り叫び、ボールを投げ、走り回れる。ちょっとしたことで、周りに文句を言われることもない、そんな子育てがとてもしやすい環境でもあるとのことです。

小嶋さんは、「正直、図工も嫌いやったし、ものづくりのタイプじゃないと思ってます」とおっしゃいますが、それでも京提灯を続けているのは、家が提灯屋で、働く祖父や父の姿を見てきたからだといいます。

始めたきっかけは、「なんとか自分の世代でもやっていきたい」という気持ちが大きかったそうですが、今は提灯づくりに面白さを感じて、日々取り組まれています。

(息子さんが字入れをされた提灯。Cが2つで、WEL「CC」OMEになっていることに気が付き、工房での見本に。)

京提灯は、一般的な螺旋状の提灯とは違い、木枠の型に一本ずつ竹を入れていく製法。時間も手間もかかりますが、その分、強度の高い提灯になります。

移住とか、新しいことやりたいなら、一回、田舎でチャレンジしてみるのもいい」「今の都会の生き方には、息苦しさもあると思うので」

丹後への移住を考える参加者に、自らの実体験をもとにそのように呼びかける、小嶋さんの言葉には、とても説得力がありました。

2日3日のイベントの最後に、お金では測れない、生活の中の丹後の豊かさを聞くことができました。

2泊3日の旅の最後は、丹後の海で締めくくります。

小嶋さんのお話の後、工房を出て歩いていくと、すぐに海が広がっていました!

丹後の方とのお話の中で、何度も出てきた、丹後の海の魅力。冬は荒れ模様なことが圧倒的に多いそうですが、私たちが訪れた際には、穏やかで美しい青い海が広がっていました。

この海に惚れ込んで、戻ってこられた、移住された方々の気持ちが少しわかった気がします。

よそよそしい雰囲気が流れていた最初の頃が思い出せないくらい、イベントが終わる頃には、すっかりチームワーク抜群。時間が本当にあっという間に過ぎてゆき、丹後を離れるのが、仲間と別れるのが、寂しく感じました。

この3日間、丹後の魅力をめいっぱい知ることができました。

1日目の京都府織物・機械金属振興センターや、丹後織物工業組合の見学からは、丹後の織物産地としての独自性、丹後ちりめんに必要なたくさんの工程をすべて賄う、丹後の産地としての豊かさを学びました。

織元さんの見学や就労体験を通じて知った、それぞれの事業所さんが持つ、オリジナルで多様な表現と高い技術力

方向性は異なれど、皆さんが新しい試みや、丹後織物を広めていこうという熱い思いをもって、行動されていることが、ひしひしと伝わってきました。

1日目と2日目の夜の、織手としての「先輩」、移住の「先輩」とのトーク。

そして3日目の小嶋庵さんの訪問からは、丹後に住む皆さんの人柄の良さとフレンドリーさ、新しい挑戦や移住者を暖かく迎え入れ、後押しする丹後の懐の深さと余白を実感することができました。

取材という立場で参加した私ですが、丹後の土地と人の魅力に、何度も「丹後に移住したい!」と本気で思い、丹後に惚れ込んで移住された皆さんの気持ちが、よくわかりました。

このプログラムは、織手としての働き方を中心に、丹後地域での働き方を見ていきましたが、織手だけでない、丹後織物や丹後地域との多様な関わり方を知れた3日間でもありました。

イベントの中でお話を聞いた方は、丹後に移住され、新たな事業を始められた方であったり、織元の代表、またはそれを継ぐ後継者のみなさんだったりと、「雇われて仕事だから」という立場ではなく、「自分たちで、会社の、丹後の未来を切り開いていく」という立場で、その意識を持っておられる方が多くいらっしゃいました。

その皆さんが、新しい挑戦や目標を語られ、それらを熱意と行動力によって、実際に実現に向けて進まれている姿は、とても刺激的で、「自分は何を達成したいのか」と、今後のキャリアを見つめ直す契機にもなりました。

取材に協力してくださった皆さん、ありがとうございました!

丹後織物産地の魅力を詰め込んだ、フィールドインターン「WEAVE TO MEET」には、「丹後産地の魅力を届けたい」「未来の織り手を育てたい」という主催者の皆さんの熱い思いがあります。

後編の記事では、イベントの主催者の思いと、参加者の振り返りインタビューを取り上げます。

このイベントが、どのような思いで始まったのか、そして参加者の皆さんは、3日間を受けて何を感じ取ったのか、ぜひ合わせてお読みください!

「TANGO TEXTILE JOURNEY 2025 2nd STEP WEAVE TO MEET– 産地インターンプログラム –」
主催/シルクテキスタイル・グローバル推進コンソーシアム
(事務局:京都府商工労働観光部染織・ 工芸課)
WEBサイト:https://kmtc.jp/ttj/

宮眞株式会社
〒629-2262 京都府与謝郡岩滝町字岩滝1166
WEBサイト:http://tango-miyashin.com/

創作工房糸あそび
〒629-2311 京都府与謝郡与謝野町字幾地1222
WEBサイト:https://itoasobi.jp/

田勇機業株式会社
〒629-3104 京都府京丹後市網野町浅茂川112
WEBサイト: https://www.tayuh.jp/

柴田織物
〒629-2313 京都府与謝郡与謝野町三河内869-2
WEBサイト:https://shibata-orimono.net/home

遊絲舎
〒629-3102 京都府京丹後市網野町下岡610
WEBサイト:https://www.fujifu.jp/

(text:河野萌音、photo:市岡祐次郎、edit:前田恵莉)

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