家族や恋人が訪れても恥ずかしくない工場に。全国から見学者が続々やってくる“誰もが絶句しちゃう工場”ことコプレックに潜入!

静岡県掛川市に、全国から見学者が絶えない工場があります。

「日本が生み出す製品の品質は素晴らしいのに、その製品を生み出す工場が暗いのはどうしてだろう?」とモヤモヤを抱いた株式会社コプレックの代表・小林永典さんは、代表を受け継いだ10年ほど前から「工場を、誇ろう。」を掲げ、アクションを起こしてきました。

社員制度や工場、ウェブサイト等のリニューアルをコツコツと続けてきた結果、2024年には日経BtoBクロストレンドマーケティング大賞の初代大賞・GOOD DESIGN賞2024を受賞。他にもForbes NEXT100選出、グッドデザイン賞や、一橋ビジネスレビューなど数多くのメディアで小林さんの活動が取り上げられています。

また2026年5月29日(金)には、小林さんが代表理事を務める一般社団法人 Factory Pride Associationで団体として初となるサミット 「Factory Pride Summit 2026」 が開催されます。

コプレックさんが考える「工場の誇り」とは一体どんなものなのでしょうか? サミットに向けて準備中の小林さんのもとへ今回も青いヘルメット持参で、お邪魔させていただきました!

ここは……工場ですか!?

今回お話を伺ったのは、精密板金総合加工事業を行う株式会社コプレック 代表・小林永典さん。ここで鉄板から加工された製品が次の工場へと旅立ち、最終的には電気の配電盤や分電盤、LED照明設備の傘や加工機械部品など幅広い場所で活用されています。

コプレックさんは、会社のビジョンに「工場を、誇ろう。」を掲げています。「工場を、誇ろう。」という言葉は理解できますが、実際にはどのような活動をしているのでしょうか?

「社長に就任する以前から、工場で働く人たちへの扱いってひどくない? と問題意識を感じていました。世界中から日本品質の素晴らしさは認められているのに、コストダウンの矛先はまず工場から。うちも以前は、コスト削減のためにと工場の余計な照明は全て決して、最低限の明るさで製造するように努めてきました。それが製造業の当たり前だったんですよね。『従業員が人生の多くを過ごすこの工場がこんなに暗くていいのか?』という葛藤から、ものをつくる人たちのプライドを高め、掛川から製造業全体の地位をポジティブに上げていこうと『工場を、誇ろう。』プロジェクトをスタートさせました」(小林さん)

小林さんが社長に就任した2013年から、コプレックでは2つの価値観を大切にされてきました。

「10年ほど前から、2つの価値観を大切にして事業を展開しています。1つが『誰が来ても絶句される工場にしよう』もう1つが『家族や恋人が来ても恥ずかしくない工場にしよう』です」(小林さん)

「実際に見てもらうのがいいかな」と、小林さん。『絶句される工場』『誇れる工場』とは一体どんな工場なのか、早速のぞいてみましょう!

階段を降りて、隣の工場へと向かっていくと……

真っ白な外観の工場が現れました。中に入ってみると……

明るくて広々とした空間だー!

私たちがイメージするような窓がなく全体的に暗い色が使われている工場ではなく、テーマパークに入った時のようなワクワク感が感じられました。真っ白でキラキラするほどの明るさに圧倒されます。

どうしてこんなにスッキリと整ったかっこいい空間にできたのでしょうか?

工場ってどこか煩雑な印象がありますよね。それはどうしてか社員みんなで考えまして、『色』だ、ということに気づきました。そこで人が着るユニフォームは青、道具や機械を赤、エリアを区切るのが黄色、空間を白と色の整理整頓を行ったんです」(小林さん)

使われている色を用途や場所ごとに整理するとこんなにもスッキリするんですね。

また驚いたのは天井です。なんとこの天井材は裏表を逆に使っているそう。一般的には外に向く屋根部分が白く、内側がグレーっぽい色味になっているのですが、逆に取り付けても大きな問題はないとのことで“あえて”白い面を内側にして取り付けたと教えてくださいました。

また白さを保つ工夫のひとつとして、機械のコードやケーブルが上手に柱の間に隠されています。細かいところまで気を配っているからこそかっこよさを保てるんですね。

でも機械を多く使う工場の中で、わざわざ白を選ぶって稀なことですよね。本来工場の床には機械のオイルが染み込んでいるため、ただ白いペンキを塗っただけでは、キレイな白にならないそう。しかし小林さん……ここで諦めるような人ではありませんでした

「床を白くしたいとペンキ屋さんに相談したら、いいペンキを使っても床の油と反応していずれ剥がれてしまうと断られてしまいました。ペンキ屋さんも近い将来に剥がれてしまうペンキは売れませんからね。そこで、私から『プロのペンキ業者さんが使っている機械を全て買わせてください』と、頼んだんです。そしたらペンキ屋さんも喜んじゃって(笑)。俺たちが指導してやる! ってペンキ屋さんの気合いたっぷりな指導のもと、社員総出で床を塗っているうちに、壁もやりたいねって壁も白に塗ってしまいました」(小林さん)

一箇所がキレイになっていくことを体験したことで、あっちも、こっちもと視野が広がり、自分たちの誇れる工場へと進化させたのですね。

トイレから作業場まですべて社員が清掃する。毎日20分の磨き込みが働く人たちのモチベーションを変えた

工場見学を進めていくとある部分の美しさに、大興奮してしまいました!

見てください、このピッカピカのシンク!!!

我が家の水回りと比べものにならないくらい美しい……。

蛇口だけでなく、シンクも鏡もピカピカだったんです。

「もしかして??」と奥のトイレへと足を運ぶとそこにも美しい空間が広がっていました

真っ白な男子トイレは、社員さんが毎日しっかり掃除をしているとのこと。オフィスビルで働いていると、清掃員さんがいらっしゃって掃除してくれることが当たり前ですが、コプレックさんは、自分たちが使うトイレは自分たちで掃除をすることが当たり前なんですって。素晴らしい……!

一番のポイントは、床です。トイレの床は汚れやすいので、一般的には白にしないのですが、あえて白にしています。それは、なぜか? このトイレはうちにしかできないトイレだからです。こんなに整理整頓が行き届いたトイレは、コプレックにしかない。その誇りが仕事にもつながっていくと考えています」(小林さん)

また奥行きを見せるために、あえて上部部分を鏡張りにしたといいます。カメラで撮影すると「鏡だ!」とわかりますが、実際に中に入ってみると上部部分には窓が鏡に映り込み、明るさを倍増させてくれていたので、鏡があることに気づきませんでした。

掃除用具室も整ってるぅー!

浮かせて設置することで汚れもつきにくく、美しさをキープできるんですね。

正直、このキレイさを保つって仕事をするよりも大変なことなのでは? と思ってしまいますが、これらは「毎日20分、徹底的に磨き込む環境整備活動の成果」とのこと。

「コプレックでは10年以上『環境整備活動』を続けています。これは、毎日20分間狭いスペースを徹底的に磨きあげて、汚い場所とキレイな場所の差をつける取り組みです。差がつくと何がいいかというと、本当のキレイさがわかるだけでなく、他もキレイにしたいという気持ちが派生してくるんですよね。70人の社員たちがどんどんキレイにしたいと毎日磨き込んでいくと、みるみる工場も美しくなっていきました」(小林さん)

たった20分? と思いますが、その20分がこの圧倒的な明るさや空間の美しさにつながっていく。毎日コツコツと積み重ねていくことの大切さを教えていただきました。

3Dプリンターは、勝手に使ってOK! 

コプレックさんの工場内には「どこに売っているの?」というオリジナルグッズをそこかしこで見かけます。

実はこれ、すべて社員さんたちの手作り!

勝手に3Dプリンターを使って、ほしいものを作っているというのです。

「休憩室の近くには、3Dプリンターとレーザーカッターがあるのですが、どの社員でも自由に使っていいルールにしています。業務内だけでなく、業務以外の用途でも自由に使ってOKとしているので、子どもと遊ぶおもちゃを作ったり、趣味用のパーツを製作したりしています。もちろん材料費もかかりません。使いたい社員は、全員無料で使えます」(小林さん)

休憩所の隣には、3Dプリンターがドーンと置かれてありました。これを自由に使ってOKとは、楽しすぎます……!

「好き勝手作っていいと言っていますが、社内で使う看板やサイネージなどはデザインのルールを設けるようにしました。これは当社のデザイン規定集である『イエローブック』にすべて記載しています。そのため、工場にある3Dプリンターで作った製品も統一感を保てているんですよ」(小林さん)

『イエローブック』には、フォントの規定やコーポレートカラーなどデザインガイドラインが記されています。自由に好き勝手使ってOKとしながらも、社内で使うものにはデザインの規定を作っていくことで、細部にまで『絶句しちゃう工場』が徹底されているんですね。

突然ですが、ここでクイズです。工場見学中にあった自動販売機ですが、「どこか変だな?」と思いませんか?

「本当はこの自動販売機って、通常は紺色なんですよ。でもコプレックの工場なんだから白くしたいでしょ?(笑)営業さんに『白じゃないとな……』ってお伝えしたら、後日白い自動販売機を持ってきてくれたんです」(小林さん)

妥協のなき徹底ぶり!

「これくらいいいでしょ」と思わずに、可能な限りこだわる。白さにこだわり、徹底する姿勢は、10年以上続く『環境整備活動』の成果なのかもしれませんね。

研修のフィードバックは不要! やってみたいことはどんどんやってOK

さらに小林さん、こんな話も聞かせてくれました。

「教育研修にも力を入れていまして、新人研修にかける一人当たりの研修費用って全国平均3.8万円と言われているのですが、コプレックでは諸々合わせると一人当たり20万円を超えています。AIに関しても機械学習の頃から、勤務時間内に使っていいよと解放しています。Claude Code(クロードコード)のアカウントは30くらいあって、約半数の従業員が使っているんじゃないかな? 僕も最近はClaudeの画面しかみていないかも(笑)。例えば、プログラミングを勉強してみたいという社員がいたら、うちは受講料も負担するし、勤務時間内に講習を受けることもOK社員がやってみたいと思ったことは、業務と関係のないことでも受講させるようにしているんですよ」(小林さん)

3Dプリンターでも驚きなのに、業務外の研修までOKにしているんですね。どうしてそこまで寛容なのでしょうか?

「結局、道具と正しい教育を与えることができれば、みんな勝手にものづくりに専念してしまうんですよね。自らのアイデアを形にすることがものづくりの本質ですからね。当然のことながら、繰り返していくほどにレベルは上がっていくので、応援する文化を浸透させ、社員たちの知恵を信頼し、知恵に頼ることを心がけています」(小林さん)

働く人たちがものづくりに専念できるようにコプレックさんの社内には、FOXGYMという名のジムがあったり!?

屋上にはバーベキューができるテラスまで!? ありました。

社員さんの「働く環境」を楽しくしていくために、ジムやバーベキューテラスまで作ってしまった小林さん。福利厚生ってなんだっけ? と思ってしまうほど充実した環境があると、自然と「頑張って働こう」という気持ちがわいてくると感じました。

「工場を、誇ろう。」を世界へ

楽しくキレイな工場を見学させていただきましたが、何よりコプレックさんの工場で働いているみなさんが「かっこいいなー」と感じました。求職者が年々増えていることにも頷けます。小林さんはなぜ『工場を、誇ろう。』を掲げ、強い信念を持ち続けることができたのでしょうか?

「ちょっと偉そうな言い方になるかもしれないけれど、ちゃんと働いている人を人として見たいっていう気持ちだけなんですよね。働く人たちを、工場の仕組みにしない。これまで工場労働者は、社会からも“仕組み”として見られていた過去があるので、まずはその考えを取り払うこと。お互いが人間として向き合うことができれば、この人には家族がいて、恋人がいて、大切な人がいる背景も想像できるでしょ?」(小林さん)

コプレックさんでは、「BLUE BOOK」と呼ばれる会社が大切にしている価値観や重点方針が記されている冊子を全社員に配っています。スケジュール帳のようなサイズで、常に持ち歩くことができ、カレンダーには全従業員の誕生日も記載されているのだとか。

「BLUE BOOKの中には、クレーム対応に関する方針やパートさんに関する方針についても書いています。ガチガチなルールを決めて守らせるのではなく、あえてふわっとした方針にすることを心がけているんです。余白があるほうが良心と良心が重なるような組織になるのかな? と思って」(小林さん)

続けて「現場のことは、そこで働くみんなの方がわかっているから、みんなでルールを決めてそれを守ってくれればいい」と、小林さん。働いている人たちを誰よりも信頼し、どうしたら気持ちよく、そしてかっこよく働けるかを考え続けているからこそ出てくる言葉のように感じました。

コプレックでは、社員のみなさんが家族に工場で働いていることを誇れるようにと年に3名の社員さんを表彰する仕組みを取り入れました。ただ表彰状を作るのではなく、その人がどれだけ活躍して、どのようなお客様から信頼を得て、仲間たちから尊敬されているか、会社での様子を余すことなく表彰状に書き記し、表彰しているというのです。

「本人がうれしいっていうのはもちろんなんですけど、表彰状もらったよって家に持ち帰りますよね? そうするとご家族が、その人の働きぶりを知ることができる。本人も家族に誇れる働き方をしたくなるんです。ちなみに、表彰者は社員からのアンケートで決めているので、『〇〇さんの仕事ぶりを知ってくれ!』とか『〇〇さんのココがすごい』と社員同士の推し活みたいになっていますよ」(小林さん)

さらにすごいのが、アンケートの結果を表彰された人だけでなく、全社員分印刷して配布しているということ。仲間たちから、どんな部分を見られているのか知れるのはとても励みになりますよね。家族からも「来年は社長賞とれるように頑張ってね」と応援されるなんてことも生まれそう!

全国から見学者が絶えずやってくるコプレックさんの工場は、広くて美しいだけでなく、そこで働く人の思いがしっかりと息づいていることがわかりました。誇りある人が働くことで、誇りある工場へと発展していくのでしょう。

最後にこんなお話を教えてくれました。

「うちに転職してきて15年くらいになる社員の松浦さんからある手紙をもらったんです。彼は、40年ほど工場で溶接を中心に働いてきたのですが、工場で働く人たちの扱いや地位の低さは“こういうもの”で、特に反発してこなかったと。ただ『工場を、誇ろう。』というプロジェクトに、何かこれまでにはない希望を感じると書いてくれたんです。おそらく日本には、松浦さんと同じような気持ちを抱えている人が山のようにいると思うんです。自分の過去の仕事に誇りを持ち、自分の業界の未来に希望を持ってもらえたら、日本の幸せの総数も爆発的に増えていくと思います」(小林さん)

工場で働くことがこれまで以上に魅力的になり、そこで働く人たちの意識が変わっていけば、日本のものづくりのパワフルさはより一層高まっていくと感じました。

家族に、恋人に、そして自分自身が工場で働くこと、ものづくりに携わっていることを心から誇れる、そんな社会にしていきたいですね。小林さん、たくさんの楽しいお話、本当にありがとうございました!

株式会社コプレック
住所:静岡県掛川市下垂木2361
Web:https://www.coprec.co.jp/
一般社団法人 Factory Pride Association
Web:https://factory-pride.jp/

(text:つるたちかこ、photo:市岡祐次郎)

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