渋谷で探求し続けるドライトナーの可能性。おせっかいな千葉印刷が届ける「さかなかるた」

突然ですが、皆さんは、今までどのくらいの魚と出会い、何種類の鱗を触ったことがありますか?
私は、水族館を訪れたり、ダイビングをした経験はあるのですが、そこにどんな魚がいたのか、その名前や特徴はほとんど覚えていません。さらに鱗を触ったことのある魚となると、あら汁を作った鯛だけな気がします。
そもそも、漁業関係者、釣り人以外で水の中で泳いでいる魚に触れる機会なんて、ほとんどないのではないでしょうか?
しかし!
千葉印刷さんの「さかなかるた」なら72種類の魚がどんな特性を持った魚でどんな模様をしていて、どんな鱗をしているのかが家にいて遊びながら知れちゃうんです!

さかなかるたとは、魚の表皮(模様や色)のみで、どの魚かを当て、遊びながら魚の漢字や雑学まで学べるかるたです。千葉印刷さんの特殊な印刷技術で再現された日常では見ることのない魚の模様や鮮やかな色彩、ウロコの凹凸も楽しむことができます。
そんな「さかなかるた」の秘密と、それを生み出した千葉印刷さんについて知りたくありませんか・・・?
今回の記事では、60年の歴史で育まれた企業カルチャー、ドライトナーを駆使した独自の印刷技術、そして渋谷という立地。その「人・場所・歴史」のすべてがバチバチッとはまっている街の印刷屋、千葉印刷さんをたっぷりご紹介します!

こんにちは!本記事を担当するしゃかいか!インターンの秋山です。
早稲田大学社会科学部2年。高校時代は、地元群馬県伊勢崎市の伝統的工芸品である伊勢崎絣に強く惹かれ、技術を学んだり、全国の土地に息づいてきたものづくりを見たりしてきました。私のワクワクは、「知らない」を探求し続けること。今は、ものづくりを通して見えてくるその土地だからこその無意識の知恵や創造力の差異とその要因について興味があります。
さて、今回の取材は、公益財団法人日本デザイン振興会さんとのコラボ企画。
日本デザイン振興会さんは、グッドデザイン賞の主催をされていますが、実は、地域のデザインを盛り上げる支援もされているんです!
今回は、東京都が主催、日本デザイン振興会さんが事務局としてサポートしている「東京ビジネスデザインアワード(通称 TBDA)」を過去に受賞した企業にお邪魔させていただいています。

「東京ビジネスデザインアワード」は、都内中小企業が持つ優れた技術や素材と、デザイナーからの企画提案のマッチングを通して、新たな事業の可能性を生み出すコンペティションです。受賞して終わりではなく、受賞後も知財・販売の専門家によるアドバイスや事務局による支援が続き、アイデアを事業としてカタチにするところまで一緒に伴走しているのがアワードとしての大きな特徴です。

今回はその中で、「おせっかいな印刷屋」として印刷に対する好奇心と探求心に溢れ、さかなかるたまでつくれてしまったその技術と人柄に興味が湧き、2020年度TBDA最優秀賞・2022年度グッドデザイン賞【グッドデザイン・ベスト100】【グッドフォーカス賞「技術・伝承デザイン」】を受賞された千葉印刷さんに取材をさせていただきました。

今回の取材でお話を伺ったのは、代表取締役の柳川満生さん(兄・写真真ん中)と専務取締役の柳川康生さん(弟・写真右)と社内デザイナーの成田学さん(写真左)。
ざっくばらんになんでも言い合える関係性だからこそ、どんな無茶ぶりでもとことん向き合い、最高なものができるのだと納得させられる素敵な会社でした。
そんな3人の印刷へのアツい想いと好奇心が活き活きと伝わったら嬉しいです!
先代の父が魅せてくれた「印刷の面白さ」

千葉印刷があるのは、東京都渋谷区。JR渋谷駅から徒歩9分のところにあります。
人が行き交う道玄坂を進んで、左に曲がると、少しローカルさと個性溢れるお店が並ぶ通りがあります。その一角に千葉印刷がありました。
かつては、創業者の千葉さんと3人の女性社員が活字を拾って打ち込む和文タイプの会社だったという千葉印刷。転機となったのは、柳川さんのお父さんが和文タイプの修理に訪れたことでした。この出会いが、のちに柳川さん達が千葉印刷を受け継ぐきっかけとなりました。
お父さんが会社を受け継ぎ、まずは弟の康生さんが千葉印刷に入社。一方、兄の満生さんは当時、大手銀行系コンピューター会社で働いており、印刷に対してはあまりいいイメージはなかったそうです。
しかしあるときに、お父さんが千葉印刷でつくった印刷物について自慢気に語ってくださったことが印刷の面白さを知る大きな転機に!その後、印刷の世界に入る決意を固めたのだそうです。

そうして家族を中心に試行錯誤しながら印刷屋であり続けてきた千葉印刷ですが、お父さんの代から変わらずに受け継がれているスピリッツがあります。
それは、お客さんの身近な存在としてアドバイスを重ねながら、”いいもの”を作っていく「おせっかいな会社」であること。
一般的に、印刷業界は社内に外部の人を入れることに抵抗があると言われる中、お父さんが引き継いでから一貫して、お客さんがすぐ相談に来れるオープンな店構えを大切にしていたそうです。30年ほど前には、なんと店の外観をコンビニ風にするなど、常に身近な印刷屋でいるための工夫をしてきたそうです。
データをもってきてもらった際に、「ちょっと待っててね。」とすぐに印刷してみせられる。そんな「おせっかい」について迫っていきたいと思います!
お客さんをワクワクさせる「おせっかいな印刷屋」とは?

千葉印刷のホームページを開くと真っ先に目に入ってくるのが、「おせっかいな印刷屋」というキーワード。これは、かつていらっしゃった社員さんが考えられたそうです。
はじめは、「おせっかい」という単語に対してネガティブなイメージを持たれていたという満生さん。しかし、日頃お客さんと接する中で、お客さんのやりたいことを満足に再現してあげるためには、お客さんが何をしたいのかに最大限寄り添い、提案しながら、最終的にベストなカタチで印刷してあげられる「おせっかい」の重要性に気が付いたそうです。

そして、なぜ「印刷会社」ではなく「印刷屋」なのでしょうか?
満生さんが社長に就任した当初は、組織としての体制を整えた「印刷会社」にしていかなければという思いが強く、「印刷屋」と名乗ることに葛藤を感じていたと言います。
しかし、渋谷という変化の激しい街で多様な注文に応え続けるなかで、少しずつ意識が変わっていきました。
「ちょっとそこの印刷屋に行ってきます!」とお客さんがすぐに相談に訪れ、印刷の質感に肌で触れながら一緒に悩める。そんな距離感の「印刷屋」であることも悪くないと思えるようになったそうです。
満生さんは当時の心境を振り返り、「今思うと、自分は印刷会社ではなく、印刷屋になりたかったんだろうな」とも語ってくださいました。
渋谷にこだわり、拠点を置き続ける理由
昭和40年に創業してから、5回の移転を繰り返しながらも、ずっと渋谷区にこだわってきたという千葉印刷。

私の中で、渋谷は最先端のトレンドと観光客、若者が多く集まる変化の激しいまちというイメージがあり、61年も続く老舗の印刷屋さんがあることが初め不思議でした。また、家賃が高いなかで、なぜ、渋谷にこだわり続けているのかの理由もすぐには想像がつきませんでした。
しかし、取材でたっぷりとお話を伺う中で、千葉印刷は渋谷に居続けることで「千葉印刷らしく」いることができるのだと納得できました。
渋谷にこだわってきた理由は、「おせっかいな印刷屋」でいるため。
「立地だけで考えたら、割に合わないのかもしれない。けれど、お客さんに寄り添い、応え続けるおせっかいな印刷屋でいるためには、常にトレンドを捉えられる環境がすごく大事。それは、渋谷だからこそできることだと感じている」と満生さんは言います。

「今の時代は、パソコンでデータを送ればすぐに印刷できるかもしれない。けれど、世の中にある紙や、印刷できる方法は無限にある。日々新たな表現、素材が出来ている業界だからこそ、どんな印刷をしたいかは実物を見てもらわないと分からない。
渋谷にいることで、お客さんに気軽に相談に来てもらえるし、紙をもって来て欲しいと言われたときにも、トレンドも踏まえて理想にあった紙を選んで持っていってあげられるんです」
そう嬉しそうに話されている姿がとても印象的でした。
お客さんが画面の中や頭の中で想像してきたものを、一緒に悩みながら「印刷物」としてカタチにしていく。そのプロセスをとても大事にして、お客さんの期待に応え続けるためにトレンドや技術を探求し続けていく。常にその時々の最適な提案で、お客さんとともに無限の可能性に挑戦している姿に、印刷屋としてのプライドと情熱を感じて、ワクワクしました!
「とりあえずやってみる」ドライトナーが引き出す千葉印刷の瞬発力
基本は「できないかもしれないけど、とりあえずやってみてから考えよう」と無茶ぶりから始まるトライアンドエラーの繰り返しだという千葉印刷。

そのカルチャーの歴史は、3階建ての建物の中で、至るところにきれいに陳列してある紙の在庫からも分かります。その数は、300種類以上。
お客さんがなんとなくでもイメージがあれば、「ちょっと待っててね」とイメージに合った紙ですぐに一枚印刷し、完成形をあっという間にお客さんに見せることができるように、今まで使った紙は全て保管しているそうです。
工場内は、今までお客さんに応え続けるために、機械を導入したり、道具を作ったり、素材を探求してきたことが分かる空間と、紙の保管技術が整っており、印刷のテーマパークのような場所でした。

そして、この「とりあえずやってみればいいじゃん」スピリットは、気軽に1枚から印刷ができ、どんな素材にも印刷ができる特性を持つドライトナーの印刷機がメインになっているからこそできることです。

ドライトナーというのは、別名レーザープリンターと呼ばれる仕組みのこと。
紙にインクが染み込むことで印刷するオフセット印刷とは異なり、固体であるトナーを紙に乗せ、熱を加えて固めることで印刷します。そのため、ドライトナーはどんな素材にも印刷でき、小ロットでも安価に印刷することができます。すぐに印刷でき、乾いた状態で出てくるため、スピード感を持って提供できるということが強みです。

しかしその一方で、1枚だけを印刷することは割高で、気軽に印刷できないという特徴もあります。版とインクで印刷するため印刷物が出来上がるまでに時間がかかったりし、オフセットをメインに使っていた時はイライラすることが多かったそうです。
しかし、1枚からでも気軽に印刷でき、色の再現度も高い現在の5世代ドライトナーを導入してからは、気軽に印刷して試してみることが可能になりました。
「出力機の特性と、会社のカルチャーがバチッとあっちゃった!」と嬉しそうに、愛おしそうにドライトナーについて語る姿が印象的でした。

「うちが挑戦しているのは、いろんな紙に対してどうトナーがのるかを全部研究すること。研究していると、印刷機の限界と特色が見えてきて、お客さんに最適な提案を持っていける。お客さんに感動してもらえるような提案をし続けるために、とことん負けず嫌いで挑戦してきました」
技術担当の康生さんは、印刷をこよなく愛し、失敗を恐れず、ドライトナーの可能性に挑み続けています。たとえ、失敗したとしても、その試行錯誤の経験が知恵となって満生さん、康生さん、千葉印刷の社員の皆さんの頭の引き出しにしっかり記録され、必ず次に繋がっていく。そんなお客さんを喜ばせるための全力の姿勢に、胸が熱くなりました。
お客さんの期待や要望にドライトナーとともに応え続け、感動を生み出してきた千葉印刷は、2020年ついに「ドライトナーの究極の作品」である「さかなかるた」を生み出しました!
ここからは、さかなかるたの誕生秘話と、そこに込められた創意工夫をご紹介します。
職人技と印刷への愛が生んだ、驚きの「さかなかるた」誕生秘話
「さかなかるた」は、満生さんの経験と知識の引き出しと、康生さんの粘り強い技術から実現したプロダクトの一つです。

そんなさかなかるたが生まれるきっかけとなったのがは、東京都が主催し、日本デザイン振興会が事務局としてサポートしている「東京ビジネスデザインアワード(通称 TBDA)」でした。
周りの応募企業は、社員が50人以上いて、大きな機械を扱えるすごい会社ばかり。そんな中、社員10名の会社が参加することに、始めはとても不安を感じたそうです。
しかし、当時はコロナ渦。外に誰も歩いておらず、千葉印刷の大きな特徴である「おせっかいな印刷屋」の力を発揮できない日々が続いていました。仕事も激減し、社内でもどんよりとした雰囲気が漂っていた中、「この状況を変えたい」という後押しもあり、まずは、満生さん一人で挑戦してみることになったそうです。
「今まで、提案やおせっかいを続けてきた印刷屋のプライドとして、デザイナーからアイデアや提案をもらえるきっかけがあれば応えられる自信はあった」と満生さんは振り返ります。
しかし、応募にあたって、自社の強みをアピールすることを求められたときに、「ドライトナーの良さ」をどう伝えればいいのか分からなかったと、その当時の不安も教えてくださいました。

結果として、自社の強みは、42億色を鮮やかに表現する「オンデマンド印刷技術」、アピール文は「メタリック(銀の上にカラーをのせられる技術)がドライトナーでできます」という分かりやすい一言になりましたが、当時は一件も提案が来ない未来を千葉印刷の誰もが想像していたそうです。
しかし、その予想は良い意味で大きく裏切られました。
「提案募集の締切後、全国のデザイナーやクリエイターから多数の提案が寄せられたと聞きました。私たちの印刷技術が、クリエイターの想像力を刺激し、新たな表現の扉を開くきっかけになれたのだと感じました。」
その後、TBDAの審査会側から、企業とデザイナーの相性も考慮し、全提案の中から絞られた提案を見せられたとき、満生さんは、直感的に「SANAGI dedign stadio」さんの提案「さかなかるた」がいいなと思ったそうです。
そしてそこから、「印刷屋魂に火が付きました」と満生さんは語ります。企業の技術とデザイナーの感性という互いの強みが掛け合わさることで、アイデアが動き出した瞬間でした。
コロナ禍ですぐに対面で会えなかったからこそ、「デザイナーさんと対面で会ったときに驚かせたい!」と、満生さんがまず目を付けたのが、たまたま会社にあった「ユポ紙」でした。
ユポ紙とは、ポリプロピレンの合成樹脂を主原料とした、紙の質感とプラスチックフィルムのような強い耐久性、耐水性を併せ持つ合成紙のこと。

実際に、その耐久性を体感させていただきました。
家族の中で一番力が強く怪力ともいわれる私が、力いっぱいユポ紙を破ろうとしても全くかなわない耐久性でした!
そんなユポ紙を使い、満生さんたちは、デザイナーさんから提案されたアイデア案を再現してみました。
するとまたもや、満生さんのアイデアの引き出しが開き、「鱗の所を盛り上げて凹凸を作ってみたらもっといいじゃん!」ということに!
そして、何度も印刷機に紙を通しできたのが、今のさかなかるたの原型となる、1枚のカードでした。
この「盛り上げる」という発想は、以前、社員の方が間違えて二回印刷機にかけたことで、凹凸ができてしまった、という失敗の経験から来たものだそうです。その経験が満生さんの頭の中にしっかりと残っていたことで、今回それが知恵になり、盛り上げてみるという挑戦に至ったそうです。

ここにも、失敗までも糧にして「とりあえずやってみればいいじゃん」と挑戦し続けてきた千葉印刷のカルチャーがありました。
そして、ついに迎えた、デザイナーさんと初めて対面する日。できあがった1枚の出力を持って「はじめまして。はい。できました。」とみせたそうです。そのスピード感と創造力、完成度にデザイナーさんはびっくり!そして同時に、「これなら、水の中に入れても大丈夫ですね!」という予想外の一言をもらったのだそうです。
そして、次は水の中での印刷の耐久実験が始まりました。
技術担当の康生さんは、何度も重ねた印刷が水の中で剝がれずに耐えられるのか自信がなかったと言います。しかし、何回もお湯にカードをいれた結果、印刷がはがれることはなかったそうです。そこで初めて、ドライトナーの新たな凄い一面を発見することができました。

「このスピード感こそ、千葉印刷だよな」と、ワクワクする少年たちのように誇らしげに、三人が顔を見合わせて話されている姿がとても印象的でした。
「誰にも真似できない」構想から3年、ドライトナーの究極の表現
そして、このアイデアが2020年度TBDA最優秀賞を受賞し、より多くの枚数を印刷してみることになりましたが、「本当の大変さはここからだった」と言います。

ユポ紙に鱗の盛り上げ加工を施し、メタリックの印刷を重ねようとしたところ、1枚単位ではうまくいったものの、10枚続けて出力すると大きなムラが出来てしまい、うまくいかなかったそうです。
そんな中、「賞をとったらおしまい」と思っていた満生さんは、SANAGI dedign stadioのデザイナーさんから「反響を見るためにクラウドファンディングをやってみよう!」という提案を受けました。
まだ、1枚の試作品しか出来ていなかったため、クラウドファンディングに対する不安もあったそうですが、いざやってみると想定を超える大きな反響が集まりました!!
印刷の技術は持っていても、商品を売ることは未知の世界。それでも、TBDAで出会ったデザイナーたちが販売の経験やノウハウを持ち寄り、一緒に考えてくれる存在だったからこそ、踏み出せた一歩でした。
これはどうにかして、納得いくクオリティで大量に再現し、注文していただいた分を作らないといけない。ここで再び、印刷屋魂とプライドに火がついたそうです。
ここから、SANAGI dedign stadioのデザイナーさんは、図書館に通いつめ、本や図鑑から魚の特徴を捉え、それを千葉印刷が全て印刷に落とし込んでいく日々が始まりました。
プロダクトデザインのプロとしてたくさんの提案をもらい、お互いにより良いものを作ろうとブラッシュアップを重ねていけたことが、何より嬉しかったと言います。
結果として、鱗の凹凸を表現するために、なんと7回もドライトナーに通すことになりました。しかし、プラスチックのユポ紙に静電気を帯びさせ、熱を加えて固めるドライトナーの印刷手法では、静電気がたくさん発生し、最悪の場合は故障の原因になり、使用出来なくなる恐れもあり、それを制御しながら創り上げていく作業は、康生さんの職人技だからこそできることです。

盛り上げ加工についても、腸炎になるほど、最後の最後まで悩み続けたという満生さん。
その結果から生まれたのが、カードとしてシャッフルやスライドがしやすい「滑らかさ」と、カードを触ったときに気になって何度も触ってしまう「凹凸具合」という絶妙な鱗の盛り上がりでした。
印刷の課題がクリアできた次に待っていたのが、どのようにカード型に切り抜くかという問題でした。
ゴムのような特性を持つユポ紙は、熱が加わると収縮、膨張してしまい、印刷にずれが出来てしまいます。一般の方法で切り抜くと、均等に切り抜くことがとても難しかったそうです。
しかし、理想の形を追い求め、朝から晩まで様々な切り抜きの工場や機械を見て回り、検品し続けた結果、ようやく理想の機械に行きつくことができました。

そうした紆余曲折を経て出来上がった「さかなかるた」ですが、安定して製造出来るまでに3年の歳月がかかったそうです。
しかしその分、「誰にもマネできない」と胸を張って言えるほどの自信作となりました。

やらざるを得ない状況に追い詰められたからこそ、知恵を絞り、どうすれば作れるんだろう?と必死に考えて完成した渾身のプロダクト。だからこそ、「ドライトナーの究極の作品で、私たちにしか作れない」という絶対的な自信があふれていました。
「さかなかるた」から広がる未来。可能性に挑み続ける千葉印刷
「さかなかるた」を販売するようになってから、お客さんを大事にしつつ、工場を維持管理し、技術も安定させることがどれだけ難しいかを実感したという満生さん。
「製造業は、サービス業なんだなと思った」と語ります。
SNSや出展会場でお客さんから教えてもらった「さかなかるたが生み出した温かいエピソード」や「広がっていく人の輪」を嬉しく感じる一方で、社会の厳しさと対面したのだと言います。
どんなにすごい技術があったり、テレビなどのメディアに取り上げられたり、賞をとったりしても、物は見られ続けないと売れない。だからこそ、人々の関心が持続するようなアクションを起こし続けなくてはならないのだと実感したのだそうです。

そして、そんな人々の関心を持続させる役割を担うようになったのが、社内デザイナーの成田さんです。
さかなかるたは当初から「子どもが楽しめる、家族で楽しめる」をコンセプトに掲げており、知育玩具としての展開も構想の中にありました。プロモーションの面では、成田さんが動画撮影・編集・SNS運用・Amazonページのブラッシュアップまでを一手に担い、「お風呂で遊べる」「入りたがらない子どもが一緒に入ってくれる」といったエピソードを地道に発信。販売プラットフォームをさかなかるたの世界観に合ったものに絞って出品したことも追い風となり、知育玩具としての認知が広がっていきました。
そうした地道な努力もあり、現在は、「お客さんから提案されてそれに応える」という本来の社風と、さかなかるたによって確立された千葉印刷独自の技術が重なり合い、ドライトナーの可能性の幅が広がっていっています。
次は、さかなかるたを10年売り続け、同じく日本デザイン振興会が主催する、長年社会に貢献したデザインに与えられる「ロングライフデザイン賞」の受賞を目指していると目をキラキラさせながら語ってくださいました。

いつでも相談しに行ける身近な存在の「おせっかいな印刷屋」として渋谷にワクワクする創造を生み出し続ける千葉印刷さんは、まちの印刷屋として、印刷をこよなく愛し、ドライトナーの可能性を探求し続ける印刷の研究所でした。
最先端のトレンドが集まる街・、渋谷で、トレンドをキャッチし続ける千葉印刷さんから、今後はどんな印刷が生まれていくのか、想像するだけでもワクワクします。
いつか印刷について相談したいときが来たら、絶対に千葉印刷さんに行きたいです!
みなさんも今後もし印刷に悩んだら、ぜひ渋谷駅から徒歩9分の千葉印刷さんに行ってみてください。
また、千葉印刷さんのようなものづくり企業と、デザイナーをつなぐ東京ビジネスデザインアワード(TBDA)では、現在2026年度の企業応募を6月25日(木)まで受け付けています!
自社の技術や素材を活かした新しい事業の可能性を探したい都内中小企業の方は、「2026年度東京ビジネスデザインアワードのテーマ企業募集」をぜひチェックしてみてください。
取材させていただき、本当にありがとうございました!
株式会社 千葉印刷
住所:東京都渋谷区円山町25-5 YMプリントタワー
WEB:https://www.chiba-print.co.jp/
(text :秋山友花、photo:市岡 祐次郎)
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