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お湯ですぐに食べられるフリーズドライ!でも、作るのはとても大変だ 八戸東洋
こんにちは。“Smiles for All.” のマルちゃんでおなじみの東洋水産の工場「八戸東洋株式会社」さんにお邪魔しています。
今日は全国の生協の組合員さんや職員さんが集まって商品の製造現場を見学する「ラブコープ商品 工場・産地見学会」に、しゃかいか!もお呼ばれしてお邪魔しています。ウェルカムボードもバッチリ!
こちらの工場は、青森県八戸市の中心から車で20分ほど、桔梗野団地の中にあります。
八戸東洋のみなさん、今日はよろしくお願いします!
この工場で作られているのは、CO・OPマークのついたフリーズドライのスープたち。
たまごやもずく、野菜などさまざまな味があります。
特に、たまごスープは1994年の発売以来、大人気のロングセラーアイテム。
最近では、フリーズドライ製品は、缶詰やレトルト食品などとともに普段から備蓄し、製造日の古いものから使い、使った分は新しく買い足す、これを繰り返しながら常に非常時に備えておくという「ローリングストック」という考え方の浸透もあり、軽くてかさばらないフリーズドライ製品は特に災害時の備蓄用としても注目されています。
ということで、今日はフリーズドライのスープができるまでを勉強!
フリーズして、ドライするからフリーズドライ
ラインの中に入る前に、少しだけフリーズドライについて予備知識を注入。
フリーズドライのスープの製造工程は、大まかに言って7つ。
(1)スープの「仕込み」
(2)スープと具材をトレイに「充てん」
(3)冷凍庫に入れて「急速凍結」
(4)真空乾燥のマシンの中に入れて「真空乾燥」
(5)検品
(6)包装・梱包
(7)出荷
です。
このうち、(3)の急速凍結が「フリーズ」(4)の真空乾燥が「ドライ」だから「フリーズドライ」と呼ばれているんです。
フリーズドライは、もともと軍隊の携行食として缶詰に代わって生まれた製法で、缶詰やレトルト食品など他の保存食とは違い、素材の味、食感、香り、栄養成分が生きるのが特徴。
粉末や顆粒スープ、レトルトなどは高い熱や圧力を加えて素材に大きなダメージを加えなければならない製法なのですが、フリーズドライは、低い温度で乾燥させることで、素材の変性が起こりにくく、味、食感、香りが生き、そのままおいしくいただくことができる、という利点があります。
では、工場用の白衣に着替えて、早速見学へGO!
こちらが、工場をガイドしてくださる八戸東洋の品質管理課の斎藤課長です。よろしくお願いします!
製造区画に入る前には、手洗いとローラー掛け、そして、アルコール消毒。
不審者が入ってこないようにカメラもありますよ。
さらに、吸着ボードでの細やかなホコリを取ってから。
たくさんの人が食べるから、安全に向けたたくさんの手順が必要。
八戸東洋の桔梗野工場では、品質マネジメントの国際規格ISO9001、環境マネジメントのISO14001を取得。
さらに、より安全な食品を作り食品事故などを防ぐため、FSSC22000を2015年12月に認証取得しました。
こちらがたまごスープの原料となるたまご、「液卵(えきらん)」です。たまごの工場から割卵してこした状態で届きます。
こちらで使われるのは、食感や風味を保つため、冷凍ではなく契約養鶏場の割ってこしただけの卵。安全性を確保するために、厳しい検査をクリアしたものだけを使用しています。
たまごの花が小さくなってしまわないように、という工夫。
たまごスープのおいしさは、なんといってもかき玉のふわふわな食感。口に入れた時にふわっと口に広がるあの感じにはいくつか秘密があり、原料段階からこだわっています。
ふわふわ感を実現するためには、卵にストレスを与えないようにすることが大切なのだそうです。
新鮮な卵を「ニーダー」という煮込み釜で調味料を加え、撹拌し仕込みます。
このスープを仕込むニーダーでは、かき混ぜ方、時間・温度、量などが細かく厳格に管理されています。ふわふわ食感を保つには、とても大切な工程。
そして、仕込まれたスープは、調味料などの誤計量がないか?を1バッチ(作っている単位)ごとにチェック。検査部門が糖分や塩分、pHなどの異常がないことを理化学分析します。
検査には、機器を使う他にも、人の舌で味わう「官能検査」というテストもあります。
検査部門に所属する検査員のみなさんは、年に一度実施される甘・酸・旨・苦・塩を識別する「五味検査」というテストをクリアしないといけません。
今日も異常無し!
20年以上ほとんど味の変わっていない「親子スープ」
このスープ、完成するまでになんと100回以上!の試作が重ねられました。
ふわふわなたまごとチキンブイヨンを合わせた「親子スープ」はどんな料理にも合います。これが主婦のみなさんに長く支持されている秘密の一つなのですが、この味の変更は1994年の発売以来、これまででたった一度きり。少しあっさりめにチキンエキスとブイヨンのバランスを少しだけ変えたただけで、ベースの味付けはほとんど変わっていません。
担当の方が幾度か味をリニューアルしようと挑戦したことがあるのですが、味を比べるモニター試験で利用者のみなさんが「やはり、いまの方が美味しい、このままにしておいて!」ということで、20年以上、ほとんど味がかわっていないのだそうです。
「長く支持されているので、なかなか変えられない味なんです」とのこと。
このおいしいスープは、次の充てんのステップへ。
お隣ではスープに入るかやくたちがスタンバイ。
わかめ、カニカマ、ネギが綺麗に並んで運ばれていきます。
充てんの手前では、ブロックにかやくが入ります。
かやくの量を人の手で整える。
たまごスープのかやくは、量が決められていて、その量が適切かを判定するのは、なんと人なんです!
かやくは、足りない分は加えられ、多いものは少し減らされます。
かやくの量が多すぎ、はみ出しがあるとフリーズドライスープの小袋が破れ、安全が損なわれるという衛生面からの理由もあります。
かやく並びにたまごスープは、ブロックの型に充填されます。
このまま飲んでしまいたい、と思うくらいおいしそうな匂いがしています。
もちろんここで飲むと怒られますが、フリーズドライは保存用に味の加工は特に必要ないので、この段階でいただくことができます。少し熱いけど。
たまごの量がちょっとうれしいです。
たまごスープに入っている卵は1個で3食分、約17.5gです。
みなさん、ご家庭で作るとたまご1つのかき玉で4人分くらいではないでしょうか?
ちょっと得した感じでうれしい、たまごスープ。
スープが均一になるように、そして包材に穴を開ける原因(ピンホールといいます)となる、わかめなどの飛び出しがないように、表面を人の手で丁寧にならしていきます。
このトロリーにはスープのトレーを差し込んで、トロリーごと工場の上に据え付けられたレールで運ばれます。まだスープは乾燥前。液体でとても重いし、こぼれないように運ぶのは大変です。
オーライ!
凍結庫に入っていきます。
フリーズドライの「フリーズ」の工程。
スープは、この凍結庫の中で、一晩過ごします。マイナス40度の超低温で急速凍結!
「キャー寒いわー!」
凍結したスープは、真空乾燥庫へ。
たまごスープはこの真空乾燥でもさらに1日過ごし、液体から固体フリーズドライになっていきます。
「中は真空!」
ここで理科の勉強です。みなさん思い出しましょう!
八戸東洋の島崎常務に先生になっていただき、フリーズドライの原理を解説!
フリーズドライは水分を蒸発させて保存しやすくする製法です。
我々が住むこの地上では、100度で水は沸騰します。
しかし、登山の経験がある方はご存知かもしれませんが、富士山の頂上など標高の高いところでは、気圧が低くなり、低い温度で沸騰しやすくなります。だいたい地上の2/3くらいの気圧になり、沸点は87度。これを突き詰めていくと1/165気圧の世界では0度で沸騰します。
そして、この乾燥庫の中は、なんと1/1500気圧まで一気に気圧を下げることができます。
つまり、凍結したスープの中の水分が氷の状態のまま、水蒸気になり乾燥します。
これがフリーズドライ製法の原理です。
その証拠が、これだ!
フリーズドライのブロックにある小さな穴。この穴は水分が氷の状態から蒸発した跡。
湯戻しの時にこの小さな穴の中にお湯が入り込み、スープに復元されおいしくスープがいただける、というわけです。
このように、フリーズドライのたまごスープは、高温で沸騰させることなく、ダメージを受けず、スープの時のおいしさをそのまま保つことができるのです!
たまごスープがフリーズドライになりました。
包装工程の前にブロックのトレーを持ち上げています。
これは何をしているかというと、乾燥後の検品。
フリーズドライのスープにかやくが入っているか、過剰乾燥(こげ)がないかを確認します。
安心してください、ちゃんとかやくも入っています。
問題なし!とチェックを通過したたまごスープのフリーズドライは包装のラインへ。
製品同士がぶつかって割れたり欠けたり破損することがないように、ライン上でスピードを調節。
実はこれからもさらに、検査が繰り返されます。
金属探知機に、
X線検査機。
重量検査。
5個入り用に数がセットされた後、個包装の袋がきちんとシールされているかを、またもや目視で確認します。
シールに不具合があると、フリーズドライ製品は湿気を吸ってNGだからです。
一つも見逃してはいけない、という緊張が強いられる作業。大変だ!
賞味期限の印字の確認。
マシンで自動包装。
パッケージには記号で、製造年月日のほか、時間もわかるようになっています。
カメラで製造ロットを記録しておくことで、何らかの事故が発生した際にいつでも追跡できるような仕組みになっています。
そして、一袋ごと丁寧に包装状態を確認しながら箱詰め。
皆さんの食卓へと運ばれていきます。
今日は、たまごスープの他にも野菜スープやもずくスープの製造工程を見学することができました。こちらは野菜スープの具材となるキャベツ、玉ねぎ、ねぎ、さやえんどう、人参と5種類のかやくたち。
「野菜たっぷり!」
原料は仕入先でももちろん検品されているのですが、スープの充てん工程でも念には念を入れて確認。
どうしても入ってしまう、変色した野菜、野菜の端、虫が入っていないか女性2名体制で点検。
ピンセットで除去します。
さらに、もずくスープも見学!
もずくスープは加工前の検品がとても重要!
産地から到着したもずくは、長期保存のため塩漬けされた「塩蔵(えんぞう)」という状態。塩分が含まれているので、まだしょっぱい。
仕入れられたもずくは、まずは洗われます。バブリング洗浄といいます。
人の手で行われる「台選別」という作業。
もずくをはじめとする海藻は海の中にあるため、もずく以外の海藻やごく小さい小エビといったいろんな異物が入っています。取りきらないと食べる時に大変なので、もずくの選別は特に力を入れています。
こちらの女性の従業員の方は、勤続15年のベテランさん。台の上で目をこらしながら、異物を見つけていきます。
とても目が疲れる作業なので1時間ごとに交代で作業しているそうです。
さらに台の上で選別されたもずくはベルトコンベアで運ばれ、水に浮かべられ、さらにチェック。「流水選別」といいます。
水に浮かべるのは見やすくするのと、眼に見えないようなとても細かい石のかけらなどの硬質異物を落とすという効果もあります。
工場に運ばれてくる前にもチェック!
八戸東洋では、もずく収穫の際に混入する異物を少しでも減らすために、定期的に産地に出向いて、生産者である漁師さんと品質管理に関する学習会を開いています。
漁師さんたちに「あなたたちが作ってくれるもずくが、こんな商品になって、多くの消費者に食べてもらい喜んでもらっている」と、顔をつき合わせ情報交換しあうことによって、生産者の品質への意識も向上しました。
工場の敷地の中にビニールハウスがあります。
この中で栽培されているのは、もずくスープに入っているみつば。
「みつばハウス」というかわいい名前です。
もずくスープに使うみつばは年間35〜40トン。そのうち、このみつばハウスで作っているのは約1/3。残りは契約農家さんに作ってもらっています。
ハウスは二つあり、こちらは先週植えたばかりの若い芽の方。
収穫間近のみつば。
立派に育っています。夏で40日、冬は90日くらいで収穫できます。
ここ八戸市は氷都(ひょうと)と呼ばれるほど冬の寒さが厳しいところなので、ハウスには暖房の設備もあります。
このみつばも、残農薬や官能検査などしっかり管理されていて、工場のみんなで自信をもって栽培しています。
これにて工場のラインの見学は終了!
そして、次はお楽しみの試食会!
こちらの工場で作られた製品の試食に加えて、アレンジレシピもいただくことができました。
ミネストローネ風の野菜スープをイタリアン風に仕上げたリゾットなど、アイデアレシピの発表。
チーズをかけるといいわよ!
荏胡麻(えごま)を振りかけたもずくスープは、参加した組合員さんのアイデアです!
そして、もずくスープを使っただし巻き玉子。スープ1個に、お水70ccとたまご3つだけで作ることができます。
想像以上に人の手と手間がかかっているのにビックリ!!
工場の中では、充てんの機械や真空乾燥庫など最新の設備にビックリしたのはもちろんですが、印象に残ったのは工程の多さと、検査の厳しさ。原料の選別、スープの官能検査、包装などいくつもの工程で人の手がかかっていました。
ガイドしてくださった斎藤さんはじめ、八戸東洋のみなさんが異口同音におっしゃっていたのは「品質や安全を保つための検査という大切なステップは、最後はやはり人がチェックしないといけない」ということ。お湯を注いですぐ食べることのできるフリーズドライのスープだけど、作るのに想像以上の手間がかかっていることをリアルに感じ取ることのできた今日の見学でした。
八戸東洋のみなさん、今日は有難うございました!
【詳細情報】
日本生活協同組合連合会
生協の組合員さんと八戸東洋さんとの勉強会の様子はこちら(コープ商品サイト)
八戸東洋株式会社
電話番号:0178-20-4860
住所:青森県八戸市桔梗野工業団地3-6-5
URL:http://www.hachinohetoyo.jp/
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