まちを見守る紋章は、福井の小さな工場で手間暇かけてつくられてました。 廣部硬器

粘土の切れはし片手に、こんにちは!

福井県在住、しゃかいか!ライターの髙橋です。

突然ですがみなさん、これ、どこかで見たことありますか??

提供:廣部硬器

そう、これは警察署や交番に掲げられている「警察紋章」です。

実はこの紋章、福井にある小さな会社が国内生産の7割以上をつくっているんです。

ということで今回は、福井県福井市にある株式会社廣部硬器(ひろべこうき)さんへ工場見学にやってきました!

ちっちゃなタイルのモンスター?

めちゃくちゃかわいいウェルカムボードにお出迎えいただきました。

本日はよろしくお願いします!

器をやかない「やきもの屋」

廣部硬器は、昭和31年創業、セラミックス造形により紋章や家紋、シンボルマークなどの製作を手がけてこられた会社です。創業から60年余年を経て、現在ではセラミックス製警察紋章の国内シェアトップに。消防署などに掲げられる紋章も同様に取り扱っており、北は北海道から南は沖縄まで、廣部硬器の紋章が全国に広く納められています。

そもそもセラミックスとは、私たちの身の回りにある様々な材料のうち、鉄やアルミなどの金属、プラスチックやナイロンなどの有機物を除いた材料のことを指します。セラミックスと聞いて一般的にイメージされやすい陶器や磁器はもちろん、シリコンやダイヤモンド、ガラスなども広義にはセラミックスと呼べるのです。

一方、狭義では陶石、長石、粘土など、天然の鉱物を用いて混合して、成形、焼成する、いわゆる「窯業」で生産される製品の総称としても認知されています。すごく簡単に言ってしまえば、「焼き物」ですね。廣部硬器はこちらの「焼き物」としてのセラミックスを扱う会社なのです。

セラミックスは硬くて衝撃には弱いという弱点がありながらも、腐食しにくい、寒さに強い、塩害にもつよい、凍害にもつよい!などなど、木や樹脂や金属など他の素材に比べて優れている点が多いのが特徴。

そこに、廣部硬器独自の技術である「純金焼成」が施された紋章は、半永久的にその美しさを保つことが可能となります。

廣部硬器では紋章のほかにも、校章・校名文字、公共建築物の館名文字・シンボルマーク・陶壁・レリーフなど、様々なセラミックス製品のオーダーに応えています。

今回は紋章づくりのお話を中心に、じっくりと工場を見学させていただきながら廣部硬器のものづくりの魅力に迫っていきたいと思います。

ご案内いただくのは、廣部硬器の廣部すぐ里さん。今日はよろしくお願いします!

さっそく、廣部硬器が全国に届ける警察・消防紋章の基本を。

一口に紋章といっても、実は意外とサイズの幅があります。一番小さいものだと直径90mm、一番大きいものだと直径950mmにもなるそう。建物の規模などによって異なるサイズを納めます。

「一番出るのは警察紋章の250mm~300mmのものです。一番大きい950mmのものは一年に1回注文があるかどうかですね。」とすぐ里さん。

警視庁、警察、消防団。紋章の値段は用途・サイズごとに細かく決められています。消防の紋章は、関東と関西でも形が違うんだそう。

アルミ製と分け合う紋章のシェア

「東京警視庁の物件ですと、アルミ製の紋章とセラミックス製が半々くらいかなと思うんです。うちのがまだ少ないくらい。これからアルミ製のものをセラミックスに変えていこうっていう流れあるという話を聞いたことがあるので、もうちょっと割合が増えていくんじゃないかと思います。」

そう、実は廣部硬器として国内トップシェアを誇るのは、セラミックス製警察紋章の話。全国の警察署や消防署に掲げられている紋章にはアルミ製やステンレス製のものもあり、それらを含めると半分程度のシェアになるそう。

ただ、廣部硬器としてはこれからセラミックス製紋章の需要の増え込みも予想しています。

「アルミは金属なので、どうしても劣化していきます。長持ちさせるという意味ではセラミックスに勝ち目があるなと。(セラミックスの)弱点としては、割れ物ということ。ごく稀に取り付け現場で落としてしまったとか、無理な力を加えて取り付け業者の方が割ってしまって、大至急送ってくださいと言われることもあります。値段の高いものほど対応は大変ですね。」

設置完了までに破損してしまうリスクはあれど、一度設置してしまえば長持ちするのはセラミックス。これから紋章のシェアがどのように移り変わっていくか、楽しみですね。

 

7つの工程を経て完成する廣部硬器の紋章

さて、次は実際の紋章づくり作業を見学。
紋章づくりは、大きく分けて以下の7つの工程に分かれます。

 ①原型づくり(原稿をもとに、型をとるための原型をつくる)
 ②型作り(原型に石膏を流し込み、石膏型を制作)
 ③鋳込み(石膏型に泥漿を流し込み、型から外すところまで)
 ④乾燥(粘土が白色になるまで)
 ⑤研磨(表面の凹凸をなくしていく)
 ⑥釉薬かけ(色と艶をたしていくために釉薬をかける)
 ⑦本焼き(本焼き焼成1300℃、金窯800℃それぞれ4日)

これらの工程を経て、発注を受けてから納品までに、小さな製品で約1ヶ月程度、大きなものになると3ヶ月〜半年以上の時間を要します。

 

製品の基礎をつくる「鋳込み」

本来は原型づくりと型作りを見せていただくところですが、紋章についてはすでに型が出来上がっているので、今回は石膏型に泥漿(でいしょう)と呼ばれる液状の粘土を型に流し込んで製品の素体をつくる「鋳込み」という3つ目の工程からみていきます。
鋳込みの工程で行うことは大きく4つ。

①泥漿を型に流し込む
②はみ出た粘土を切り取り、形を整える
③壁面への取り付け金具をつけるための支えを設置する
④ある程度水分を飛ばしたのち、型から製品を取り出し、乾燥の工程へと送り出す
ここまでの作業を鋳込みと呼びます。

鋳込みの作業を教えてくれるのは、入社6年目の大草さん。よろしくお願いします!

撮影:髙橋

ホースの先から出ているのが泥漿。専用のホースを使って、泥漿を石膏型へと移していきます。

入りすぎた泥漿は、棒やおたまなどを使って外に出していきます。

少し盛り上がるくらいに泥漿を石膏型にいれたものを置いておきます。数時間置いておくと、石膏型が水分を吸収し、液状だった泥漿が個体に近い粘土となって型に残ります。

さて、ここからが職人技。石膏型から溢れた粘土を型の面に合わせてきれいに切り取っていきます。

スッ、スッ、スッ。気持ちよいくらいなめらかに刃がはいり、あっという間に型の輪郭が現れてきました。簡単に見えて、これが結構難しいんです。

せっかくなので編集長もチャレンジ!やっぱりちょっと難しいかも?

なんとか切り取れました!記念写真は撮っておきましょう。

次に、壁に取り付けるときに必要になるネジ穴を確保するため、この写真のように「支え」と呼ばれるパーツを取り付けていきます。

輪郭がきれいに出てきたところに、型に合わせてつくられたガイドを合わせて数カ所目印をつけていきます。

目印をつけた場所に、先ほどの写真と同じような形になるようにブロック型に固めた粘土(支え)を配置。

接着した支えは、高さを合わせるために糸を使って切断。あとは、型にいれたまま、また数時間水分を飛ばします。

ある程度水分が飛び、このように型から取り出せる状態になったら、乾燥の工程へと移ります。

焼成に進めるかどうかは、乾燥を経て判断

鋳込みの次は、乾燥です。芯まで乾かさないと焼いたときに形が崩れてしまうので、いかにしっかりと乾燥させられるかがこの工程のポイント。

乾燥時間は大きさによって様々ですが、大きいものだと3週間ほど置いておくものもあります。

自然乾燥も行いつつ、効率化を図るために遠赤外線での乾燥も導入。自然乾燥よりも圧倒的に乾きが早いそう。製品までの距離と電圧で、乾燥の具合を調整していきます。

効果のありそうなものは積極的に試していくのが廣部硬器スタイル。

うん、あったかい!

これだけ手間をかけても、この段階で焼成には進めないと判断されるものも出てきます。

「これはもう使えないものです。これだけいろいろやっても、もう修正がきかないので再利用に回ります。」と、一見きれいに仕上がってみえる大きな紋章を見ながら説明してくれるすぐ里さん。

鋳込みでしっかりと形をつくっても、乾燥の段階でヒビが入ったり形が歪んでしまったりすると、その品物は焼成まで進めることができないのだそう。ただし、焼く前のものならまた粘土として再利用できるので、ここで焼成まで進めるかどうかを判断する必要があります。

職人の感覚で仕上げる「研磨」

乾燥を経て水分がなくなり、表面が真っ白になったら、次の「研磨」の工程へと移ります。

乾燥を終えた紋章の表面は、滑らかなようで実は細かい凹凸がまだ残っています。それをサンドペーパーを使いながら、焼成の際の粘土のわずかな縮みも計算して丁寧に磨いていきます。どのように磨いていくかは、職人の感覚次第。視覚と触覚をフルに使って、表面の状態を確かめながらキズや歪みが出ないよう作業を進めます。

大きいものだと1日に2つ、小さめの紋章なら1日に5つか6つほど仕上げることができるそう。手作業だとやはり手間暇がかかりますね。

こちらは紋章とは異なり、大きな平面を研磨するときの様子。もともと形状として凹凸のある紋章の研磨も難しいですが、このように広い平面を綺麗に仕上げるのもかえって難しいのだそう。

微細な凹凸をなくしていく研磨の作業は、シンプルながらに技術と集中力を要するのです。

しかし、窯入れは基本的に月1〜2回(納品が混んでいる場合は毎週の場合も)。あまり熱中しすぎてしまうと数をこなせなくなるので、キリのいいところをみてやめるようにしているのだとか。できるだけ多くの製品を一回の窯入れで焼成するため、クオリティと作業時間のバランスもしっかりととっていきます。

さて、こちらは無事に乾燥と研磨を終えた紋章たち、次の工程へと移っていきます!

釉薬かけ。思いがけず、釉薬の奥深い世界にふれる。

そろそろ仕上げに近づいてきました。

本焼きの前に行うのは、研磨を終えたあとの釉薬かけです。
釉薬とは、「うわぐすり」と呼ばれることも多い、焼き物の表面にかける薬品のこと。陶磁器の表面をガラス質の膜で覆うことで、素地に水や汚れが染み込むことを防ぎます。また、焼成後の色や質感も釉薬の種類によって異なるので、使い方ひとつで製品に様々な表情を生み出すことができます。

紋章の場合は、このようにろくろに乗せ、色のない透明な釉薬を吹き付けていきます。かけムラのないよう、均等に。

釉薬かけと、釉薬の調合を主に担当するのは、工場長の砥山さん。この道33年のベテランです。

せっかくなので、紋章以外の製品に使う釉薬も見せていただきました。

「ちょっとこっちへ」と呼ばれた先の倉庫には、廣部硬器の歴史を感じさせる数々の釉薬が並びます。

こちらは、工場長がこれまでに調合してきた釉薬のテストピース。

様々な色の釉薬をどれくらいの割合で配合するかによって、焼き上がりの色も微妙に違ってきます。

3キロ分の配合を決め、定番の釉薬はバケツにいれて保管しておきます。このバケツがどんどん増えていってしまうのは、悩みのひとつ。

できた釉薬を上手に塗り分けると、こんなにたくさんの色をつかった製品を焼き上げることができます。塗り分けが細かい!

廣部硬器に入社する前も、似たような仕事をしていたという工場長。

「もともとぼくは板金塗装とか、そういう方面の仕事をやってたんです。ただ、自動車は塗ってるときに色の具合がわかるけど、ここの仕事は窯から出てくるまでわからない」

同じ釉薬を使っていても、窯の中での熱の回り具合などで色味に微妙な違いが出てきてしまうのだそうです。

「一番苦労するのは、10文字分のタイルだったら10文字分全て同じ色にするとか、そういうこと。火の当たり具合で色が違って見えたりね」

さらに、思い通りの色を出すことと、焼き物としての品質を両立させることの難しさも教えてくれました。

「お客さんと相談しているといろんな要望が出てくる。もう少し明るくならんか、とか。低温で明るい色を出すことはできることはできます。ただ、仮に仕上がったとしても、低温で焼いたものは20年もつかというと、そうではない。綺麗な赤とか黄色はとくに」

「これは絶対うまくいったなという作品は30年以上やってるけどなかなかない。毎回毎回勝負なんで。同じことやってるように思うけど、なかなかね」

お客さんの要望に応えたい思いと、焼き物としての品質を担保したいという職人としての思い。それらに折り合いをつけながら、日々焼き物と向き合う工場長でした。

紋章に輝きを与える、本焼き

さて、釉薬かけを終えた紋章は、いよいよ最後の工程「本焼き」へと移っていきます。

廣部硬器がつくる紋章の最大の特徴は、なんといっても紋章に半永久的な美しさを与える「純金焼成」。

工場長、純金焼成について教えてもらえますか?

「金の焼き付け自体は誰でもできるんだけど、ちょっとしたノウハウがあって。社長がある加工をしないと2年ももたない。社長が何してるのかは、ぼくは全く知らない。笑」

知らないんかーい!と突っ込みたいところですが、もともと純金焼成については廣部硬器の企業秘密なのでした。

紋章づくり最後の工程である本焼きは、大きく2つの段階に分かれます。

まずは、研磨して釉薬かけを終えた状態の紋章を焼き上げる本焼焼成。

約1300℃で、なんと4日間も焼き続けます。

本焼焼成が終わった紋章。事前に塗布した釉薬がガラス質となって紋章の表面を覆います。

次は、その状態の紋章に金液を吹き付けて乾燥させ、さらに焼き上げる純金焼成へ。

こちらが、本焼焼成がおわり、純金焼成へと移っていく紋章。

なんと焼成前は濃褐色!金液を塗布した状態は、こんな色なのですね。

「以前はこの状態のものも公開はしていなかったんですけど、数年前から社長のOKが出たんです」とすぐ里さん。

提供:廣部硬器

この状態の紋章を、再び窯に入れて焼成していきます。

温度は約800度、焼成期間はこちらも4日間です。

4日間の窯入れを経て、焼成を終えた紋章たち(中央の車輪のようなものは輪宝紋と呼ばれる家紋のひとつ)。濃褐色だった金液が、見事な金色となって現れました。

これこそが、廣部硬器がつくる紋章の真骨頂。

耐腐性や耐寒性にすぐれ、塩害や凍害にもつよいという特徴をもつセラミックスに純金焼成を施した紋章は、落としたり硬いものがぶつかって割れたりしないかぎり、半永久的にその美しさを保ち続けます。

この紋章たちが、警察署や消防署のシンボルとなって、全国各地で輝き続けるのです。

商品を送り出すことの難しさ

紋章をはじめ、様々な工程を経て完成する廣部硬器の商品たち。うまくできあがったものはそれぞれのお客様のもとへと送られていきますが、いつも焼成がうまくいくわけではありません。使用する粘土が数年前に変わってからは特に、うまくいかないことも増えたそう。

「以前は九谷の土だったんですけど、九谷の粘土屋さんが廃業してしまって。探しに探して、いまは瀬戸の土です。粘土によって特徴が全然ちがうようで、昔はうまくあがってたはずのものが、なんでこんなところが割れるんやろという、割れ方があったりします。もちろんいいところもあるんですけれど。ときには真っ二つに割れて出てくることもあるので、ショックです。納期が決められてるものなので、もう謝るしかない。それが私の役目なので(苦笑)」

また、基本的にはひとつの製品を納品するまでに、同じ形のものをいくつもつくります。

「(ものによっては)採算合わないなって思うときもあります。とある90センチクラスの商品を作らせてもらったときは、造形が複雑だったので、ちょっとヒビが割れているところを目立たないように補修をして仮納品をさせていただきました。結局しばらくして完成品ができてお客様に連絡をしてみたら、『今ついているので別にいいですよ』ということになって、一番きれいに出来上がったものがいま会社の廊下に置いてあります(苦笑)それが(同じ製品の)13個目の作品だったかな。それぐらい作ったのに一番いいものがお嫁に行けず…。そういうことも稀にあります」

警察や消防の紋章以外は基本的に一点ものなので、転用もききません。

シンボルとして何十年も残り続ける商品をつくるためには、相応のコストが伴うのですね。

社長であり職人。ものづくりへの愛と、止まぬ探究心。

先ほど研磨の現場でお会いしたこちらの男性、実はこの方が、廣部硬器の社長である廣部耕一さんです。

もともとは大学で陶芸を学んでいた耕一さん。大学を出て3年半は陶芸家に師事しますが、創業者であるお父さんの跡を継ぐため25歳のときに廣部硬器へ入社します。

「継げとは言われなかったけど、ありありとわかったね、継いでほしいと思ってるのは。」

現在は専務である弟さんとともに、廣部硬器の大黒柱として会社を経営。

現場の第一線で、ひとりの職人としても廣部硬器のものづくりを支えています。

今回の見学では見ることができませんでしたが、実は廣部硬器がつくる紋章や家紋、シンボルマークなどの造形は、お客さんからもらったデザインをもとに耕一さんが原型をつくります。もともとものづくりが好きだったという耕一さんは、職人さんでもあり、アーティストのよう。耕一さんによってひとつひとつ手しごとでつくられる原型は、工業製品というよりは工芸品に近い気がします。

提供:廣部硬器

一方で、乾燥を早めるための遠赤外線をいち早く導入するなど、新しい技術を取り入れることには柔軟で積極的な一面も。

「世の中には新しい技術がどんどん出てる。それをいかに取り入れてやっていくか。(今までは)原型から型から全部自分らでやってきたけど、今はそういう時代じゃない。私になにかあっても、3Dの機械があればちゃんとしたものができるでしょ。高くつくけど、どうしても自分でつくるものはちょっとだけど角度が違ったりする。3Dならそれがない。今はそういう時代。」

3Dプリンターに関しては実際の導入はこれからですが、まだまだつかってみたい技術がたくさんあるという社長。

「うまくいくかは別として、いい話があったらまずやってみること。」

廣部硬器を支える3人の娘たち。新事業への挑戦も。

社長の耕一さんを囲むのは、廣部家の3人の娘さんたち。

長女のすぐ里さんをはじめ、社会人として経験を積んだ娘たちはいつの間にか自分の意思で廣部硬器の社員となり、会社を支えていました。

「ぼくも嫁さんも、娘たちに会社を手伝ってほしいと言ったことはないんだけどね」

そう言いながらも、娘たちに囲まれて嬉しそうな耕一さんです。

紋章をはじめとしたセラミックス製品を取り扱う廣部硬器ですが、近年では娘さんたちの若い感覚を生かしたタイル製品の展開、そしてイベントへの出店などにも積極的に取り組んでいます。

『スイッチ×タイル』は自宅やオフィスなど様々な場所で活躍

新事業に取り組み始めたのは、三女のえりなさんが帰ってきてからのこと。

会社に入ったばかりのころ、倉庫をウロウロしていたときに、中からたくさんでてきたタイルの色見本からヒントを得たと言います。

「色見本の中にデニムっぽいものを見つけて、何か用途を持たせられないかとバラバラのタイプのものをつくっていたら『一枚ものをつくってほしい』という要望をもらって。それで一枚もの(のタイル)をつくりはじめたんです。」

『デニム表札』というシリーズは、特殊な加工でタイルに本当のデニムを張ったような質感をもたせたもの。インテリアショップで取り扱ってもらうことで、家を建てたばかりの人や家具を買い求める人の目に留まって注文をもらえることが多くなったそう。

「表札といえばホームセンターと思ってはじめはホームセンターにおいてもらっていたけど、なんかちがうなと。以前は漠然と『販路開拓や!』と思っていたけど、最近は少し絞れてきてます。」

新しい事業に取り組んで約5年。進むべき方向性も、見えつつあります。

また、イベントにも積極的に出展して物販やワークショップを実施することで、お客さんからの声を聞く時間を大切にしているというえりなさん。

「(お客さんから)こんなんできますか?という問いかけをきっかけに、いろんなものができる。ありがたいなと思います。自分だけで考えててもダメ。だから、対面販売って、私にとってはすごく大事。」

様々な形のタイルを組み合わせて創造力を高める『タイル de 脳トレ』

「これ(タイル製品の展開やイベント出店)をやってるのは、焼き物のいろんな可能性を広げてくれるようなつながりを生むためのものかなって。売り上げをだすというよりは、これを通して会社に興味をもってもらったりとか、こんなのつくりませんかって声かけてもらったりとか、紋章に限らず(他の事業も)やっていかんとあかんのかなと思って。」

紋章のシェアに甘えることなく、変化する時代に取り残されないために、自社の新たな強みを模索していきます。ものづくりを楽しみながら仕事と向き合う姿は、社長である父の耕一さん譲りですね。

「ちゃんとクラフトイベントにも警察紋章の写真はもっていきます。実はこういう会社ですっていうのを伝えるために。本業につながるようにするのが一番大事」

会社の広報も兼ねる、新事業の展開。娘たちの存在が、着実に会社を支えています。

タイル製品は自社でも積極活用。

耕一さんの妻、満子さん。事務として会社を支えています。

午後イチからお邪魔した今回の取材は、気づけば終業の17時を回っていました。

セラミックスという素材の魅力とともに、製品として送り出されるまでの手間暇、そして職人さんの試行錯誤がよくわかる工場見学となりました。

世代を超えてやきもの屋としての可能性を広げ続ける廣部硬器さんの今後も、とても楽しみです!

遅くまでありがとうございました!

廣部硬器の事務所で見つけた、社員の集合写真。

日本中の警察・消防紋章、そして様々な施設や建物のシンボルがこの場所で生み出されてきました。

みなさんが口を揃えておっしゃっていたのは、「日本中、どこに旅行にいっても自分たちの仕事を見つけることができる」ということ。

まちを見守る廣部硬器の紋章。

みなさんのまちの警察署や交番、消防署にも、この小さな工場でつくられた紋章が掲げられているはずです。

【詳細情報】

株式会社 廣部硬器 電話番号:0776-59-1422 住所:福井県福井市深谷町5-15 URL:http://www.hirobe-kouki.co.jp/

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