第4世代の農法「植物工場」で野菜の未来を見た! 大阪府立大学 植物工場研究センター

大学正門今日は大阪府堺市の大阪府立大学の学園祭「友好祭」!
実はこの友好祭では、植物工場研究センターの見学ができるんです。

向かいます芝生の広場に集合して植物工場研究センターのある施設へ移動。今日は学園祭ということもあって家族ずれや、地元のおばあちゃんなどたくさんの方が参加しています。
てくてく歩いて研究棟へ。

C21棟B棟に到着C21棟へ到着。

着席して待ちます見学の前に基本的な知識をDVDでお勉強です。

第4世代の農法「植物工場」ってなんだろう?
植物工場は第4世代の農法と呼ばれています。
第1世代は自然栽培でこれは古くから行われてきた「自然栽培」。季節の野菜など旬があるのですが、気温や気象条件によって左右されてしまいます。そこで生まれたのが第2世代の「温室栽培」。農家さんがビニールハウスなどで育てているあれも温室栽培です。
次に生まれたのが、1960年代頃に生まれた「水耕栽培」。
水耕栽培とは、栽培溶液を栽培ベットと呼ばれる容器に循環させて植物を栽培する方法。

育っています生産性を高める、まさに植物の「工場」
そして、1990年頃から研究されはじめたのが、第4世代の「植物工場」。
この方法は温度や養液(の濃度)・光を最適な状態にしておくことで、生産性を高めることができます。光の最適な状態とは、普通の農地は太陽の光を浴びるために、畑を上下に重ねることはできません。植物工場の場合は、工場の中の空間で植物を育てる棚を重ねて、光を照射する角度や時間を調節し、約半分の時間で収穫できるので約2倍に生産効率がアップ、さらに10段で栽培すると面積は10倍になり、計算上は約20倍の生産性の向上が可能になります。
また、工場になることで技術移転が容易になる、といったメリットもあると思います。

装置を見学ホウレンソウやミズナなど葉菜類の育苗から収穫までの栽培実証を行っている閉鎖系植物生産装置。
LEDなどの省エネ光源を採用してコスト削減や栽培品目の拡大、衛生管理の実証に取り組んでいます。

洗わずそのまま食べられる!安心・安全な野菜も
また、菌の少ない空間で工場の作業をロボットに代わってやってもらうことによって、人間が持ち込む菌を防ぎ、農薬を使わない栽培が可能になり、栄養価が高く摘み取って洗わずにそのまま食べられる野菜といった安全・安心といった食べる側への利点もあります。

青いロボットレタスの栽培実装を行うのがこの青いロボット。この働き者のロボットが、上の段の植えつけられた苗のトレイを、毎日1段ずつ下に移動し一番下の収穫ラインで毎日収穫。

こちらは、栽培環境シミュレーター室。
栽培環境シミュレーション室3棚の高さの間隔も3つのサイズがあり、植物の草丈に合わせて実験できるようになっています。

ユニバーサルデザイン室3たくさん採れるだけじゃないよ、社会の課題も解決する植物工場
ユニバーサルデザイン室たくさん短時間に野菜が採れるというメリットに加えて、立地条件を選ばないので、例えば塩害を被った地域でも野菜の栽培が可能になるといった災害復興の側面や、工場にすることによって障がい者・高齢者といった重労働がむずかしい人たちの働く場を作り出す研究も行われています。総合リハビリテーション学科の先生と共同で作業環境の人間工学の検証や作業が与える生理的影響、作業環境づくりや施設設計などにも取り組んでいます。さすが大学!
ユニバーサルデザイン室2植物工場は、こういった社会的な課題の解決にも貢献することが見込まれています。

てくてくてくてく続いて、C22棟のグリーンクロックス新世代植物工場へ。

学園菜学園菜だって!
工場野菜だから農薬は使っていないよ。
「グリーンクロックス新世代植物工場」では、産官学連携に参加している企業と大阪府立大学がタッグを組んで、施設整備から量産実証評価を行っています。
つまり学術や技術的な研究だけではなくて、植物工場の運営や採算がとれるか?といったよりビジネスに近いミッションに挑戦しています。

楽しみ!楽しみ!ヤサイ楽しみだー

栽培室の中1日に5,000株の野菜が栽培されています
この中ではロボットも働いていますが、学生さんとパートさんたち15人くらいでこの施設が運営されています。ロボットは電源ではなくバッテリー化することで省力化、人件費の削減など工場のオペレーション状況を見ておくこともビジネス上たいせつな指標。

装置の中LEDがランニングコスト削減に貢献
植物には光合成するので光がたいせつ。植物工場の最初の光源は高圧ナトリウムランプ。この高圧ナトリウムランプは放熱が多いので温度のコントロールに影響するということで、次に使われたのが蛍光灯。放熱は小さいのですが、光源と野菜の距離が短くなるので、棚の重なった施設ではたくさんの蛍光灯が必要になるなどの課題がありました。
そこで目をつけたのがLED。
最近のLEDの普及によって、適正な光合成の促進を実現しながらコストも削減することができるようになりました。
写真だと赤っぽくなっていますが、光は赤・青・白・無色の組み合わせのものが使われています。

センター棟の模型他にも光合成を促進するための炭酸ガスの供給装置や、しっかりした形状を生みだすための温度格差(例えば昼間は25℃、夜間は20℃)をコントロールする空調などなど、植物の生育条件を最大化する工夫と知恵がたくさん詰まっています。

C22棟には直売所もあります。
大阪府立大学 植物工場研究センターで栽培された野菜は、学内の直売所で買うことができます。地元のみなさんには大人気なのだとか!
C21棟では、フリルレタスやグリーンリーフ、ルッコラ、赤ホウレンソウ、シュンギク、イタリアンパセリなどなど葉野菜を中心に10種類の野菜が栽培されていました(現在はレタスのみになっています)。

学園菜2最新の施設をみせてもらって感激!野菜が安全でおいしい!といいことづくしの植物工場ですが、様々な施設・装置などを導入するための初期投資や生産時の採算性といったコスト面の課題や、経営・技術面を担う人材の育成など、実は課題もまだあります。

これからは施設や技術の標準化やビジネスモデル化に向かって大学と企業、国や地方が力を合わせて取り組みが進んでいくことになります。

学生のみなさんとピースガイドの学生のみなさんとピース!今日はとても勉強させていただきました。有難うございました!
おいしい野菜が安定的に供給される未来が楽しみです。

【詳細情報】

大阪府立大学 21世紀科学研究機構 植物工場研究センター

大阪府堺市中区学園町1番1号
電話番号: 072-254-9409
URL:http://www.plant-factory.21c.osakafu-u.ac.jp/

(text:西村、photo:加藤 ※一部の写真は植物工場研究センターさん提供)

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