RENEWと越前鯖江が歩んだ10年。産地をひらき続けた先に見えてきた、ものづくりの循環を生む新たなかたち

2015年から毎年開催されている、持続可能な地域づくりを目指す工房見学イベントRENEW
しゃかいか!では、開催初年度からその動きを追い続けています。

「来たれ若人、ものづくりのまちへ」というコンセプトのもと、越前漆器や眼鏡の産地である福井県鯖江市で始まったこのイベントは、今やこの土地に新しい人の流れを定着させる確かな原動力となっています。

そんなRENEWも昨年節目となる11年目を迎え、延べ来場者数は34万人!
日本を代表するオープンファクトリーイベントへと成長を続けています。​​

今回の記事ではものづくりのまち・越前鯖江と共に歩んできた軌跡と、これから挑む未来​​​​のビジョンをしゃかいか!インターン生のあやのがお届けします!

私は大学生活で、学生が本気で商売を学び実践する47都道府県地域産品セレクトショップ​​「アナザー・ジャパン」に参加していました。

もともと伝統工芸や地域産品に興味がありましたが、自ら15箇所以上も現地に足を運んで地域産品を仕入れる経験をしたことで地域の面白さや工芸品の進化を学びました。
今では家で南部鉄器でお茶を入れる生活もしてしまうくらいハマっています・・・

なので「RENEW」にはずっーーーと行ってみたいと何年も片思いしていました。今回そんな念願が叶って参加することができてとても嬉しかったです!!

「工芸が続いていく産地」とは何か。
活動を重ねるなかで考え続けてきたこの問いを手がかりに、RENEWで見えてきた風景を、ところどころ個人的な実感も交えながら綴っていきます。

イベント当日は、地元企業の人、県外からの来場者、学生など、さまざまな世代が同じ空間に集まっていました。

2025年度は、過去最多となる122社の事業者が参加し、約80社の工房やショップが開かれました。
職人から直接、ものづくりの背景や工夫を聞ける工房見学をはじめ、漆塗りや紙漉き、オリジナルめがねづくりなど、各社が工夫を凝らした体験プログラムも用意され、RENEWならではの魅力が随所に感じられます。

こちらは越前和紙の製紙所「滝製紙所」さんの工房見学の様子。
職人さんも来場者の質問に楽しそうに答えていて、ものづくりへの愛と探究心を感じました。

私はこれまで、仕入れのために全国各地の工房を訪れてきましたが、ここまで多様な技術と人が、同じ地域に密度高く集まっている場所はそう多くありません。
「産地」と一言で言っても、その内実はさまざまですが、越前鯖江は間違いなく技術が循環している産地だと感じています。

また2025年は、目玉企画として「KOGEI COMMONS」という新たなイベントが、RENEWの会場内で開催されました。

全国各地のオープンファクトリーが越前鯖江に集い、会場には運営者やものづくり事業者が出展。多くの来場者でにぎわいを見せていました。

今回は、そんなRENEWの最終日に開催されたトークイベント「RENEWのこれまでとこれから」に参加してきました!

地域でどのように人と人がつながり、イベントが根づいていったのか。
そこにはどんな裏側があったのか。
そして次の10年、RENEWはどんな姿へ向かうのか。

「ものづくりの現場をひらく」ことから始まり、今では、日本を代表する地域発のものづくりイベントへと成長してきたRENEWの歩みに迫ります!

RENEWのこれまでとこれから

(写真左から新山直広​​さん、瀧英晃さん、江澤藍莉さん)

今回のトークイベントに登壇したのは、RENEWの運営に関わるこちらの3名です。

・新山直広(RENEWディレクター)​​さん
鯖江のまちで「デザインが地域を変える」という信念を持ち、ものづくりの現場をひらいてきた、RENEWディレクター・新山直広さん。
デザイン事務所「TSUGI」を立ち上げ、伝統産業のリブランディングやプロダクト開発、若手職人のネットワークづくりなどを通じて、福井の“ものづくりの未来”をデザインしてきた。「RENEW」はその象徴ともいえる取り組み。職人と来場者が直接つながる場をつくり、地域に新しい風を吹かせている。

・瀧英晃(RENEW実行委員長)さん

福井県越前市にある老舗和紙メーカー、株式会社滝製紙所の7代目。

越前和紙の伝統を守りながら、現代の暮らしや産業に合った新たな紙づくりに挑戦し続けている。「RENEW」の実行委員長として、ものづくりの現場を開き、産地の魅力を市内外へ発信する活動を牽引。職人・企業・行政・クリエイターが交わるプラットフォームをつくり、地域を巻き込む大規模イベントへと育て上げてきた。

・江澤藍莉(RENEW事務局長)さん

RENEW事務局長。一般社団法人SOE所属。
福井県鯖江市を拠点に、オープンファクトリーイベント「RENEW」の企画運営を中心に、地域産業と人をつなぐ活動を行う。
職人や企業、行政、来場者など多様な立場をつなぐハブとして、現場に寄り添いながらRENEWの基盤を支えている。「誰もがこのまちの“つくる”に関われる」環境づくりを目指し、産地の未来を担う次世代メンバーの一人。

RENEWのこれまでとこれからに深く関わってきた3名が、RENEWが生まれた当時の話を語ってくれました。

「現場をひらく」という挑戦。RENEWの誕生秘話

RENEWが誕生したのは2015年。

「つくる現場をひらく」というコンセプトのもと、鯖江市を中心に、地域のものづくりの現場を一般公開する取り組みとして始まりました。

当時の立ち上げメンバーは口をそろえて、「最初は文化祭のような気持ちでやっていた」「工房の方も、まちの人も、“何が起きるか分からないけど面白そう”と感じていた」と振り返ります。その一歩が、地域に新しい風を吹き込みました。

この「現場をひらく」という発想が生まれた背景には、産地の深刻な危機感がありました 。かつて、越前鯖江の伝統産業の売上は右肩下がりとなっており、日常的に倒産情報が届く状況だったそうです。
職人たちの間では「売れないのは時代のせいだ」という後ろ向きな会話が交わされ、ものづくりの誇りが失われかけていました。

この閉塞感を打開しようと動いたのが、RENEWディレクターの新山直広さんでした。

2015年 しゃかいか!取材時の写真

新山さんは「ものづくりが元気にならないと地域は元気にならない」という信念のもと、谷口眼鏡の谷口康彦さんと共に、自分たちの仕事を知ってもらうためのアクションを起こしました。

(新山さんと共に「RENEW」を立ち上げた谷口眼鏡代表取締役​​ 谷口康彦さん​​)

2015年の第1回開催は、わずか22社からのスタートでした。予算がほとんどない中、チラシを並べてバナーにするなどの工夫を凝らした手弁当の運営でしたが、そこには「自分たちの仕事の意味を伝えたい」という確固たる意志があったのだといいます。

2015年 しゃかいか!取材時の写真

そして開催初年度、決定的な出来事が起こります!

遠方から訪れた来場者が、職人の技術を目の当たりにして「すげえ」と声を漏らしたのだそうです。
このシンプルで力強い一言が、職人たちの心に火をつけ、失われかけていた自負を蘇らせたのだと、新山さんは振り返ります。

回を重ねるにつれて、訪れる人たちの姿にも変化が生まれていきました。

最初の頃は、多くの人が「見学者」として工房を訪れ、職人の手仕事を「知る」ところから始まっていました。

しかし、RENEWは次第に、単なるオープンファクトリーにとどまらず、職人の想いや産地の課題、地域の空気感までもが伝わる「ひらかれた場」へと変わっていきます。

2018年 しゃかいか!取材時の写真

「この人たちと一緒に何かをつくりたい」
「ここでなら、自分の力が役に立てるかもしれない」

そんな気持ちが芽生える瞬間が、あちこちで生まれるようになりました。

職人が自分の言葉で語り、工房が普段のままの姿で開かれる。
その積み重ねによって、「ただの見学者」ではいられなくなっていったのです。

さらに運営チームが、商品開発やワークショップ、プロジェクト参加、移住・インターンなど、外の人が関わりやすい仕組みを整えていったことで、来場者は少しずつ“関わる側”へと変わっていきました。

実際に、見学に訪れた人が翌年には現場に立つスタッフとなり、職人とともに商品開発に挑戦するクリエイターが現れ、地域に移り住んでプロジェクトに加わる人も出てきています。

私自身もアナザー・ジャパンでの経験を通じて、「買う側」から「一緒につくる側」へと意識が変わった実感があるからこそ、この変化には強く共感しました。

2018年 しゃかいか!取材時の写真

RENEWは、「見るイベント」から 「関わるコミュニティ」へ。
時間をかけて信頼関係を育んできたからこそ生まれた変化です。

こうした積み重ねの中で、「見に行く場所」だった工房は、「誰かの挑戦が始まる場所」へと性質を変えていきました。

まち全体が外にひらかれ、新しい挑戦が生まれる土壌が育っていったのです。
このプロセスこそが、鯖江にとっての大きな転換点だったといいます。

「10年やってきて実感するのは、RENEWが "まちの文化"になりつつあるということです。イベントのために動くのではなく、日常の延長線上にRENEWがあります。それが、これからのまちづくりの形なんだと思います。」と新山さん。

工房や職人たちが一歩を踏み出したことで外との接点が生まれ、新しい価値や関係が広がっていきました。
実は、事務局長の江澤さん自身も、RENEWをきっかけに移住してきた一人なのだそうです。

当初、十数社から始まった参加企業は、今では100社を超える規模に。
まちの飲食店や宿泊業も巻き込みながら、「産業観光」という言葉では収まりきらない広がりを見せています。

見学者から関わり手へ。「自分ごと」が生まれてきた背景

運営に携わる瀧さんは、RENEWを10年続けてきた裏側にある、見えない努力を静かに語ってくれました。

「10年やってきたからこそ、次の形を模索する時期に来ていると感じます。出展者・来場者・地域住民のそれぞれがRENEWを“自分ごと”として考え始めている。その変化が何よりうれしい。」

瀧さんが言う「努力」とは、派手なものではありません。

例えば、職人一人ひとりと丁寧に話し、工房を開くことへの不安を一緒に解消していくこと。
来場者が関わりやすい仕組みを作るために、運営メンバーが産地に足を運び続けること。
地域住民からの声に耳を傾け、ときには誤解や摩擦が生まれても、対話を重ねながら乗り越えていくこと。

そうした地道な積み重ねがあったからこそ、RENEWは「イベント」から「地域のプロジェクト」へと育ち、人々が“自分ごと”として関わる土壌ができていったのだと感じました。

アナザージャパンでの経験から、私は「ものの価値は、背景を知った瞬間に実感を伴うものになる」ことを何度も実感してきました。RENEWでは、まさにその瞬間が工房のあちこちで生まれていました。

職人が自分の言葉で語り、来場者が真正面からそれを受け取る。その関係性が、工芸を遠い文化から自分ごとへと引き寄せているのだと思います。

また、江澤さんは「もっと若い世代が、“地元で何かを始められるんだ”と感じられる場にしたい。RENEWはその入口になると思っています。」と語りました。

柔らかくも芯のある言葉に、「ものづくり」を超えた地域の未来への希望を感じました。

学生として地域に関わってきた立場から見ると、この「見学者から関わり手へ」という変化は、決して偶然ではありません。最初から「担い手になれ」と言われても、人は動けない。

でも、現場がひらかれ、言葉を交わし、「ここなら自分も何かできるかもしれない」と思えたとき、人は自然と一歩踏み出します。RENEWは、その入口をとても丁寧につくってきたのだと感じました。

産地をつなぐ、未来をひらく。RENEWの次なる挑戦

10年の節目を迎えたRENEWは、次の10年に向けて新たな歩みを始めています。

これまで個々の熱意と地域の結束によって支えられてきた運営体制は、いま「組織として持続可能にする」段階へと進みつつあります。2022年にはRENEWの運営メンバーが中心に、越前鯖江の観光地域づくり法人「一般社団法人SOE」を設立。若い世代が主体的に関わり、役割やノウハウが共有され、RENEWという地域の営みが個人に依存しない形へと少しずつ進化しているのです。

その変化を後押しするように、SOEの副理事に就任した新山直広さんの視野も、いまや鯖江や越前地域にとどまらず、日本全体へと広がっています。
地域で育まれたものづくりや産業観光のモデルを、国内各地へと接続し、これからの日本の地域再生の「ひな型」として提示していこうとしています。その視座の変化は、RENEWが担う役割の広がりそのものでもあります。

その新たな動きの代表例が、「SUKU」「KOGEI COMMONS」です。

SUKUは、2025年11月に今立エリアにオープンした越前和紙の宿。
今回のRENEWでは、来場者を対象に内覧会が開催されていました。

伝統的な技と現代のデザインが調和した空間で、和紙づくりの精神や手仕事の美しさにふれる時間を過ごせます。また宿の周辺には今なお40軒近い工房が点在し、まちを歩きながら職人たちの暮らしやものづくりの現場にふれることもできます。

年に一度のRENEWだけでなく、いつでも産地を楽しんでもらいたいという思いから、産業観光の次のステージを目指してオープンしたそうです。

「KOGEI COMMONS」は、RENEWを運営する 一般社団法人SOE、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ、一般社団法人関西イノベーションセンターの3社が立ち上げた、日本の工芸産地に新たな循環をつくるプロジェクト。
当日は会場に全国のオープンファクトリーのブースが集結し、盛り上がりを見せていました!

それぞれの産地が持つ知識・技術・課題を持ち寄り、学び合い、そこで得た気づきを自分たちの地域に持ち帰ることで、新しい展開を生み出していくことを目的としているそうです。

私はこれまで全国の産地に足を運び、「産地同士がつながる場」がいかに貴重かを実感しました。競争ではなく、学び合いとして工芸を捉える視点は、日本の伝統工芸をいかに繋いでいくかという観点でこれからの時代に不可欠なのではないかと感じています。

10年という節目は単なる区切りではなく、地域とともに成熟したRENEWが、次の未来へ踏み出すためのスタートライン。地域に根を張りながらも、視野は日本全国へ。
この新しい動きこそ、これからのRENEWの可能性を何より雄弁に物語っていました。

「RENEWの価値は、規模の大きさじゃなく、"続いていること"そのもの。
開いて、つないで、また次につなげる。その積み重ねが、地域の未来をつくっていくと思います。」江澤さんは、「続けることの意味」を強調します。

そして、新山さんの「開くことをやめない。それが、RENEWの一番の強さだと思います。」という力強さに満ちたこの言葉で、トークは締めくくられました。

未来の展望を語るみなさんはとても笑顔で、私もぜひその一員になりたいと思う機会でした。
実際、RENEWを支える事務局メンバーの多くは20代が占めており、来場者の約半数も30代以下だといいます 。一般的な工芸イベントと比べても、驚くほど多様で若い世代の視線がこの産地に集まっているのです。

越前鯖江のまちと共に育ってきたRENEW。その歩みは、単なるイベントの歴史ではなく、地域が自分たちの手で未来を紡いでいく物語です。

RENEWはまだ完成形ではありません。
関係人口の広がり、若手の台頭、他の地域との連携。
そのすべてが“次のRENEW”を形づくるための種になっています。

10年の節目を超え、ものづくりの現場がまちをひらく力を証明した10年からRENEWは新たなステージへ。
次の10年も、“つづく”をつくる仲間たちとともに。「開くことからはじまるまちづくり」の挑戦は、これからも続きます。

終わりに

私は、新山さんが当時を振り返る言葉が印象的でした。

「最初の頃は、“地域の人たちに理解してもらう”ところからのスタートでした。
工房を開放することに不安もあったけれど、“誰かに見てもらう”ことで職人さんたちの誇りが少しずつ高まっていったんです。」

この言葉を聞いて、RENEWが大切にしてきたものが、少し見えた気がしました。
オープンファクトリーは、単に製造現場を公開するイベントではありません。
そこには、地域と外の人をどうつなぎ、どんな関係を育てていくのかという、丁寧な試みがあります。

RENEWが歩んできた10年は、まちの未来を信じる人たちが、試行錯誤を重ねてきた時間でもありました。
工房をひらき、言葉を交わし、少しずつ関係を積み重ねてきた先に、越前鯖江は「訪れる場所」から、「関わり続ける場所」へと変わりつつあります。

これまで私は、学生として「地域に関わる」とはどういうことなのかを模索してきました。
RENEWで見たのは、完成された成功事例ではなく、試行錯誤を続けながらも「開くこと」をやめなかった人たちの姿でした。
工芸も、地域も、誰かが一方的に守るものではなく、関わり続ける人がいることで未来につながっていく。RENEWは、そのことを現場で教えてくれる場所だったように思います。

これからRENEWがどんな形で「ひらく」ことを続けていくのか。
その歩みを、これからも見つめていきたいと思います。

RENEW
主催:RENEW事務局
URL:https://renew-fukui.com/
Instagram:https://www.instagram.com/renew_fukui/

(text:吉田彩乃、photo:市岡祐次郎、edit:前田恵莉)

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