全国のローカルプレイヤーたちが大集結!RENEW特別展「まち/ひと/しごと-Localism Expo Fukui-」が教えてくれたこと。

しゃかいか!編集部でも、2015年の開催初年度からその動きを追い続けているRENEW

越前漆器や眼鏡の産地である福井県鯖江市河和田地区で始まったこのイベントは、「来たれ若人、ものづくりのまちへ」をコンセプトとして、確かな人の流れと気づきをこの土地に生み出してきました。

3年目となる2017年は、中川政七商店とのコラボレーションが実現し、RENEW×大日本市鯖江博覧会」として過去最高の4万2千人を動員。一地方の小さなまちに大きなムーブメントを起こし、改めてその名を全国に轟かせました。

▼RENEW2017の様子はこちらから。

3年目の勢いもそのままに、4年目となる2018年は、越前打刃物や越前箪笥、越前和紙、越前焼、繊維などの産地にもRENEWの熱が伝播。

鯖江市に隣接する越前市や越前町も開催エリアとして拡大し、RENEWのキービジュアルである赤い水玉模様が福井県丹南地域各所のものづくり産地にはためきました。

量質ともに着実な進化を遂げる「RENEW2018」の目玉となったのは、特別企画「まち/ひと/しごと-Localism Expo Fukui-(以下、「まち/ひと/しごと」と表記)。RENEWとして初の取り組みです。

“ものづくり・食・教育・福祉・コミュニティ・IT・防災”といったキーワードで、全国のローカル経済圏で行われている社会的意義の高い活動を紹介するショップ型の博覧会と位置付けられたこの企画には、北は山形から南は鹿児島まで、日本各地から21もの出展者が集まりました。

今回の記事は、そんな「まち/ひと/しごと」について。

お届けするのはしゃかいか!編集部の髙橋(福井在住!)です。

「ぼく」こと髙橋(写真左)がこの特別企画の存在を知ったのは2018年9月のこと。

出展者の名前をみたら、「こんな人たちがこんなに一度に集まっちゃっていいの…?」ってくらい、豪華なラインナップ。RENEW公式Facebookページの投稿をみて、たいそう興奮した記憶があります。

これは見逃せない!ということで、会期中にしゃかいか!編集部として現地で潜入取材を行なっていたのですが…。

結論から先に言ってしまうと、本当にすごい空間がそこには広がっていました。こんなに熱量高く、濃密な時間の流れる場所があっていいのかというほどに…。

このレポートから、ほんの少しでも現場の熱気を感じていただければ幸いです!

RENEW2018は、10月19日から21日までの3日間に渡って開催。

特別展の「まち/ひと/しごと」は1日早い10月18日からの開催でした。

さて、こちらがRENEWのメイン会場、うるしの里会館。1年ぶりです。

さっそくいってみましょう!

入り口では素敵な笑顔でスタッフがお出迎え。

RENEWの運営には若いボランティアのみなさんも数多く関わってくれています。スタッフのマネジメントは写真右側の森くんが。みなさん、よろしくお願いします!

会場に向かってずんずん進んでいると…

先生「はいみなさんここで一旦とまって整列して~!」

なんと、小学生の社会科見学!

RENEWのキービジュアルと同じ赤い水玉に見えなくもありません。

その流れに任せて、会場へGO!

みんなちょっとびっくりしてます(笑)

はい改めて。こちらが「まち/ひと/しごと」の会場。

全国から集まった錚々たる出展者の面々が所狭しとブースを構え、ぼくたちを迎えてくれます。

「まち/ひと/しごと」の大きなコンテンツは以下の4つ。

1.MARKET

全国から集まった出展者のみなさんが、自分たちの手がける商品や地域の産品をセレクトして販売。個性豊かな商品たちが会場に並びました。

2.EXHIBITION

来場者は、展示や出展者とのコミュニケーションを通して、外からはなかなか見えにくい、それぞれの活動の想いや魅力に触れることができます。

3.WORKSHOP

出展者からものづくりやデザインといった活動についての想いを直に聞きながら、全国各地のものづくりの技術を体感できます。

4.TALK

地域やデザイン、社会課題の解決など、様々なテーマでトークを開催。会期中、合わせて10のトークイベントが開催されました。

このように、「まち/ひと/しごと」では用意された豊富なコンテンツによって、様々な角度から出展者の思いに触れることができます。

さっそくぼくたちも、会場の中を周りながら、出展者のみなさんにお話を伺っていきました。

東京:HUMORABO

ブースをひとつひとつ訪ねて、

山形:山の形

出展者のみなさんの話を聞いていきます。

熊本:熊本地震ブルーシードプロジェクト

持ってきてくれた商品にも触れながら、

石川:Next Commons Lab 加賀

話を聞いて、

石川:HATCHi 金沢-THE SHARE HOTELS-

聞いて、

知り合いとの遭遇も楽しみながら、

福井:Hana道場

もっと聞いて、

滋賀:防災ガール

もっともっと聞いて、

東京:tokyobike/HAGISO

たまにお買い物も楽しみながら、

大阪:graf

まだまだ聞いて、

鹿児島:東シナ海の小さな島ブランド株式会社

ひたすら聞いて、聞いて、聞いていきました。

・・

・・・

・・・・

・・・・・

・・・・・・

・・・。

ちょっと、休憩させてもらってもいいですか。

RENEWさん、やりすぎですねこれは。欲張りすぎです(笑)

どの出展者のみなさんも単体で記事が書けるくらい、それぞれ地域に根を張り、あるいは自らのテーマを貫きながら、芯のある活動をされています。

冒頭にも書きましたが、これだけのメンツが一堂に会する機会は、全国を見渡してもそうそうありません。

はい、全部この人の仕業です。

RENEWディレクターであり、鯖江に拠点をおくデザイン事務所「TSUGI」の新山さん。

よくぞこれだけの出展者を集めてくれました。

▼RENEWの成り立ちと、TSUGIに関してはこちらをチェック!

「まち/ひと/しごと」がRENEWで開催された意味。

実は、この「まち/ひと/しごと」の開催にあたっては、開催費用を調達するためのクラウドファンディング が行われていました。目標としていた100万円には会期開始を待たずして到達。90名以上の支援を得て終了となりました。

プロジェクトページはこちら▶︎https://readyfor.jp/projects/machihitoshigoto-fukui

プロジェクトページでは、先ほど登場したTSUGIの新山さんがRENEW、そして「まち/ひと/しごと」への思いを綴っていますが、その中で「まち/ひと/しごと」を通して2つの気づきをこの場所にもたらしたい、と語ってくださっています。

1つ目は、産地の外側に向けた、「こんなまちがあるんだ」という気づき。

これは、自分たちが手にする商品の裏側にいる人や技術、想いを知ることで、「産地のファン」が一人でも増えてほしいという思いからです。実際、「まち/ひと/しごと」では、全国でものづくりに携わる出展者のみなさんから、ものづくりと、その背景にあるそれぞれの思いを聞くことができました。

例えば、「シーラカンス食堂」の小林新也さんは、地元である兵庫県小野市の刃物産業を「播州刃物」としてリ・ブランディングし、小野市の刃物産業の機運を高めることに成功しました。でもはじめは、素晴らしい刃物産業が地元にあることも詳しく知らなかったといいます。

地場産業の本当の価値がまったく伝わっていない。その根底にあったのは、問屋と職人の上下関係や、商品を安く売らざるを得ないといった業界全体の問題、そしてそんな業界の中にいる職人自身の諦め感でした。

「こんないい商品が、あり得ない値段で(安く)売られてましたからね」と小林さん。

何とかして商品の価値をあげないと業界の仕組みを変えていけないと思った小林さんは、小野市でつくられるハサミや包丁を全部ひっくるめて「播州刃物」としてブランディング。さらに、市場を日本ではなく海外に求めます。

結果、「播州刃物」は海外で高い評価を得て、それは国内での評価の高まりにもつながりました。

文章にしてしまえばこれだけですが、これだけの結果を残してきたのには、小林さんのただならぬ行動力があったことは間違いありません。

小林さんから直接お話を伺うことで、「播州刃物」が生まれる兵庫県小野市の刃物産業の質の高さはもちろん、シーラカンス食堂、ひいては小林さんという人間の「味」もセットで商品の素晴らしさを実感できたのでした。

「東シナ海の小さな島ブランド株式会社」のヤマシタケンタさんの場合は、鹿児島県の甑島を拠点に様々な活動に取り組まれています。そこで生まれてくる商品やサービスはすべて、ふるさとである島の「原風景」を未来へと残して(あるいは、つくって)いくため。

故郷である甑島に戻って生活をする中で、島の豊かな風景が失われていくことに何もできない虚しさを感じることも多くあったというヤマシタさん。登壇されたトークイベントでは、「これまでの経験の中の悔しさが原点みたいな部分もある。最後の最後まで諦めの悪い大人がひとりいてもいいなって。自分がそういう存在になれたら」と、単純な郷土愛だけでは語りきれない、執念のようなものが自身の中にあることも語ってくれました。

そんな話を聞いたあとにもう一度ここに並んでいる商品に目を向けると、これらの商品に詰まっている思いやストーリーが、新たな価値となって見えてきます。ヤマシタさんが住んでいる甑島にも、いってみたくなりますよね。

熊本地震によって図らずもブルーシードバッグの「つくりて」となった「熊本地震ブルーシードプロジェクト」。ブルーシードバッグは、一見すれば廃棄されるブルーシートうまく利用したアイディア商品のようにも思えますが、そこには被災者であり「つくりて」であるブルーシードプロジェクトのみなさんの願いが詰まっていました。

ひとつは、「熊本地震を忘れないでほしい。熊本とつながってほしい」という願い。

「売るのが第一目標じゃない。知ってもらうのが一番。熊本から福井ってなかなかこないですから。呼ばれて嬉しいです」。そう語るのは、代表の佐藤かつあきさん。

「(活動のモチベーションは)いろいろあるけど、ぼくの場合は出会いですよね。いろんな人と出会えるのが最高です。熊本地震で一番感動したのは、いろんな人が日本中からきてくれて、優しくしてくれた。これはすごいことだなと。こういう人のつながりを絶やしちゃいかんなっていう気がしたんです」。

もうひとつは、「災害を自分ごととして捉えてほしい」という願い。

「熊本の人たちも、まさか熊本で地震が起こると思ってなかったんです。でも3.11を東京でみていた私からすると、それはすごくもどかしくて。こんなにいろんなところに災害があるんだから、少しでも自分のこととして捉えて、情報を集めてほしい」。そう語ってくれたのは、熊本地震で自身の実家も被災し、現在はUターンして熊本に戻ってきたという村上直子さん(写真右)。

当事者だからこその思いを聞けたことで、活動全体の解像度がぐんとあがりました。「こんな活動があるんだ」という気づきは、熊本という地域、あるいは災害復興や防災といったところに興味をもつきっかけとなります。

2011年の東日本大震災をきっかけに活動を始めた「防災ガール」は、「防災」という言葉の概念自体を変えていこうとしています。

「防災」を日常から切り離すのではなく、日常の中に当たり前に「防災」がある社会。それが防災ガールの目指すもの。そのために彼女たちが生み出す商品は、「日常」と「防災」に境目のない、素敵なプロダクトばかりです。

でも、代表の田中美咲さんは「続けていくことに価値があるんではなくて、続けていった先にどれだけ社会が変わるかに価値があると思っています」と、決して現状の活動に満足しているわけではありません。まさに、こういった取り組みを目にしたぼくたちが、気づき、行動することが何より大切なわけで。

2018年2月には、37年ぶりの大雪に見舞われた福井。

さらに思い返せば、RENEWの開催地である河和田地区で様々な取り組みが行われるようになったきっかけは、2004年の福井豪雨でした。

福井に住むぼくたちにとって、とうの昔に人ごとではないはずの災害と防災。日本に暮らしている私たちが忘れてはいけない思いを、ブルーシードプロジェクトと防災ガールにもう一度思い出させてもらったような気がします。

「こんなまちがあるんだ」という気づきは、「こんな人がいるんだ」という気づきの先にあるように思います。

人を通して、まちが見える。

「まち/ひと/しごと」は、そんな時間をぼくたちに与えてくれたのかも。

「まち/ひと/しごと」でもたらしたい2つ目の気づきは、産地の内側に向けた、「自分たちの商品の価値と、人々が求めているもの」への気づき。

「まち/ひと/しごと」の会場には、全国から本当に素敵な商品たちが集まりました。会場に訪れた人たちは、それぞれのブースを思い思いに眺めては、違うまちで生まれた商品たちの魅力を感じ取っていきます。

それはたとえば、「TRUNK DESIGN」が扱う、淡路島のお香であったり。

たとえば、「シーラカンス食堂」が扱う、島根県「亀谷窯業」の瓦湯のみであったり。

 たとえば、「うなぎの寝床」が扱う、福岡県「筒井時正玩具花火製作所」の線香花火であったり。

決して目新しい商品でなかったとしても、確かな質と伝え方をもってすれば、多くの人がしっかりとその魅力を受け取ってくれます。

「まち/ひと/しごと」の会場は、まさにそれが明らかになった場所であり、新山さんが福井の人々に見せたかったのは、この光景だったのでしょう。

本会期よりも1日早い10月18日から開催されていた「まち/ひと/しごと」。それは、地元に暮らす職人にもこの場所にきてほしかったからだと新山さんは言います。

今回の「まち/ひと/しごと」がRENEWで開催された一番の意味はここにあるように思います。

つまり、「まち/ひと/しごと」の出展者のみなさんは、違うまちからきた「よそ者」でありながら、実は福井という産地を映した「鏡」でもあったのではないかと。

「まち/ひと/しごと」に起こる人の流れ、この場所で聞ける話、この場所に集まった思い。

それらはすべて、遠いまちの話ではなく、自分たちのまちにもすでにあるもの。

会場に渦巻く膨大な情報と熱量の中から、そんなメッセージを受け取ることができた気がします。

では改めて、全国から集まった出展者のみなさんをご紹介!

はじめは「山の形」さん。

読んで字のごとく、山形からの出展。今回最北端です。「山の形」は、2014年にデザイナーである柴山さん(写真右)と須藤さんの二人によって結成されたユニット。山形の工房をめぐり、出会い、見聞きしてきた手仕事と、暮らしをつなぐ、新しい「道具」づくりに取り組まれています。

普段は自らの店舗はもたず、「山の形ストア」として各地でポップアップストアを展開。あくまでも軽やかに、「山形らしさ」を各地へ届けようとしています。「ものづくりがしたいということだけでもないし、ものづくりを通して山形の魅力を伝えることようなことがしたいんで。そのために手法をいろいろ探しているけど、今はこの形が一番面白い。」と柴山さん。

山形のコマ屋さん「つたや」の飾りコマ。


お次は東京から、「HUMORABO」の前川さんご夫婦。

「福祉とあそぶ」をテーマに、福祉施設などと連携しながら社会課題と楽しく向き合うデザインユニット。

もともと障害のある方のアート作品や授産商品などを扱うHUMORAというお店をディレクションしていたお二人は、東日本大震災後、宮城県南三陸町の福祉施設と紙づくりに取り組み始め、施設の名前を「NOZOMI PAPER Factory」に、出来上がる紙を「NOZOMI PAPER®︎」としてブランディング。「商品の背景とか、人の繋がりみたいなものが震災を超えても繋がるといいなと。紙だけでそれを伝えるのは難しいから、自分たちがそういう情報も含めて発信しています」と夫の前川雄一さん。

東京を拠点とするお二人は、定期的に南三陸町に通って施設と伴走しながら、別プロジェクトとして珈琲×活版×福祉をテーマに異分野三者による「 COFFEE PAPER PRESS 」などにも取り組まれています。

「まち/ひと/しごと」には、「NOZOMI PAPER®︎」を中心に、ぬくもりと優しさ、そしてユーモアあふれるアイテムをたっぷりと。

「NOZOMI PAPER Factory」の「NOZOMI PAPER®︎」。


同じく東京から、谷中エリアに拠点をおく「tokyobike」「HAGISO」の合同出展ブース。

昔ながらの風情を残しながらも個性あるお店が点在する谷中で店舗を構える自転車メーカー「tokyobike」と、カフェやギャラリーが併設する文化複合施設「HAGISO」は、日頃から従業員同士がお店を行き来しあうほどの仲よし。

海外、特にヨーロッパからの個人旅行客が多いという谷中は、大々的な観光地というよりは、少人数でゆっくりと楽しみたいエリア。レンタサイクルを扱うtokyobikeとカフェや宿を運営するHAGISOは、お店にきたお客さんを紹介しあうことで、従業員だけでなくお客さんもふたつのお店を行き来しているといいます。

ご近所同士手を取り合いながら、谷中という町の魅力を高め合う素敵なチームです。

2017年のRENEWで登場した漆琳堂とのコラボバイク「TOKYOBIKE 漆塗りエディション」。


ハタフェス_富士山が大きく見えます

山梨県富士吉田市からは、「ハタオリマチフェスティバル」さん。

しゃかいか!でも取材させてもらったハタオリマチフェスティバルさんですが、今会期中はブース展示のみとなり、お会いすることができませんでした…。代わりにこちらの記事をどうぞ♪


新潟の上古町という歴史ある商店街に店を構える「hickory03travelers」さん。

「日常を楽しむ」というコンセプトのもと、のびのびとしたデザインで新潟のまちを明るくしてくれています。ぼくも一度だけお店におじゃましたことがありますが、ヒッコリーさんのコンセプトどおり、どこか遊び心のある親しみやすいデザインの商品が、眺めているだけで気持ちを楽しくさせてくれたのをよく覚えています。

今回のRENEWには、後継ぎがおらずなくなる寸前だった貴重な砂糖菓子をデザインの力で見事に復活させたというストーリーをもち、今やヒッコリーの看板商品となった「浮き星」を中心に、カラフルで楽しげなアイテムをたくさん用意してくれました。

さわやかでかわいらしく、どこかゆるさのある商品たち。日常感。


こちらは「パンと日用品の店 わざわざ」さん。

長野県東御(とうみ)市の山の上にポツンと佇む小さなお店は、今やローカルビジネスの急先鋒として全国から注目されています。

お店のオーナーである平田はる香さんが登壇した会期中のトークイベントは、会場に人が入りきらないほどの超満員だったとか。

「まち/ひと/しごと」では「長くつかえるもの、飽きのこないもの、暮らしに寄り添うもの、きちんと作られたもの」という4つのコンセプトに沿いながら、かつ「自分たちが欲しいもの」としてつくられたわざわざオリジナル商品を多数ご用意いただきました。

色々な靴下を作る中で出る残り糸を使った「残糸ソックス」。


福井のお隣り石川県からは、「HATCHi 金沢-THE SHARE HOTELS-」さんがきてくれました。

HATCHi 金沢は、株式会社リビタが運営する、全国に5つあるホテルの1号店(2018年10月時点)。

金沢の観光地である東茶屋街のすぐ近くのオフィスビルをリノベーションした施設で、カフェやポップアップスペースなども併設。「北陸ツーリズムへの発地」をコンセプトに、ディープな北陸旅の窓口として様々なきっかけをつくってくれています。

人が集まり、出会いが生まれる場としても、北陸の中心都市である金沢という街の中で貴重な価値を生み出しています。

北陸旅の窓口らしく、北陸Tシャツ。


こちらもお隣り石川県から、「Next Commons Lab 加賀」のみなさん。

さまざまな領域で活動するメンバーが集まり、プロジェクトを通じて地域社会と交わりながら、ポスト資本主義社会を具現化する議論と実行の場である「Next Commons Lab」。現地コーディネーターが起業家をラボメンバーとして各地から募り、地域おこし協力隊の制度を活用しながら3年以内の起業をサポート、新しいコミュニティとネットワークをつくっていくという仕組みになっていて、全国にその拠点を増やしつつあります。

加賀市は全国で3番目の拠点。現在加賀では10名のメンバーがプロジェクトを走らせ、3名のコーディネーター、2名の本部スタッフという計15名のコミュニティができあがっているそう。

今回のイベントでは、ラボメンバーがブランディングを行なった加賀紅茶「茶図 」や、山中漆器の現代的な使用方法を提案する「ARABIKI」など、それぞれのメンバーが各プロジェクトを通して生み出してきた商品を紹介していただきました。

加賀の紅茶ブランド「茶図 」の商品たち。


地元福井からは「XSCHOOL」のみなさん。

「次代のデザイナーとための小さな教室」として福井市で2016年秋に開校した「XSCHOOL」は、全国から集まった専門性の異なる参加者が、福井のものづくり企業とともに土地の風土や文化を読み解きながら、新たなプロジェクトを生み出していく約120日間のプログラム。

福井に新たな事業を生み出していくことはもちろん、プログラムを通して福井とつながりをもった参加者が、プロジェクト終了後も福井に足を運ぶようになるという、確かな人の流れをこのまちに生み出しています。

今回は、過去2年間の中で生まれてきた様々なプロジェクトの紹介とともに、XSCHOOLから生まれて2018年に商品化に至った「福井 絵巻味噌」の販売を行なってくれました。

「おいしい絵巻編集部」と福井の味噌屋「米五」がつくった「福井 絵巻味噌」。


同じく福井から、鯖江市の「Hana道場」さん。

地域を担う人材育成を目指して「鯖江市地域活性化プランコンテスト」などを開催するNPO法人エル・コミュニティが、スポンサーを集めてつくったのが、ITものづくり拠点としての「Hana道場」。

基本的に未成年は無料で施設を使用でき、小学生が3Dプリンターをつかってものづくりに取り組む光景が日常的に見られるという貴重な場所です。プログラミング教材「IchigoJam」を使ったプログラミング教室を行なったり、鯖江市内の小学校で出張授業を行なったりもしています。

今回は鯖江市のかわいらしいお土産とともに、IT教室での制作事例などを用意してくれました。

IchigoJam」でプログラミングを始めた中高生が開発した「さばえカニロボット」。すごい。


大阪からは、ものづくりを通して暮らしを豊かにするクリエイティブユニット「graf」さん。

大阪の中之島と豊中を拠点に、家具や空間、プロダクト、グラフィックのデザインからカフェや音楽イベントの運営に至るまで、「暮らしのための構造」をキーワードに、暮らしにまつわるあらゆる事柄に向き合いながら実践を続けています。「デザイナーと設計者と大工さんと家具職人、芸術家、調理師っていうそれぞれの分野を生かしたお店作りをしたら、自然と暮らしにかかわる店ができていったって感じですね」と手塚さん(写真)。

「まち/ひと/しごと」にも、食器やカトラリーを中心に、ぼくたちの暮らしに寄り添う素敵なアイテムを揃えてきてくれました。また、”うづくり”という木目をスタンプとして楽しみ、木に親しむワークショップも開催。

grafによるデザイン、新潟県燕市でつくられたカトラリーシリーズ「SUNAO」。

ワークショップで使われた「うづくり」スタンプ。


こちらも大阪から「Co.to.hana」さん。

非営利団体や地域社会の様々な課題に対し、デザインの力で解決に取り組むNPO法人です。

代表の西川亮さん(写真)を中心に、震災の記憶を未来に伝え人と人のつながりを育む「シンサイミライノハナPROJECT」、農作業やイベントを通して所属や世代を超えた人が繋がる小さな農園「北加賀屋みんなのうえん」、子どものための“まちの学びの拠点”「TUMUGUBA」の運営など、様々な活動を展開されているCo.to.hanaさん。

会期中はトークイベントのみの登壇となり、ブースではほとんどお話することができませんでしたが、会期終了間際に写真を撮らせていただくことができました。ラッキー!


滋賀県からは「防災ガール」のみなさん。

滋賀・東京を中心に、全国を股にかけてその活動を展開している「防災ガール」。全国各地に100名以上の仲間が散らばっているそう。「防災が当たり前の世の中をつくる」をビジョンに掲げ、WEBメディアでの発信や、普段の生活の中に自然と「防災」が溶け込んでいるような、そんなプロダクトを生み出しています。大事にしているのは、自分たちが身に付けたいものかどうか。普段から使えて、いざというときには防災グッズにもなるというコンセプトでものづくりに取り組みます。

RENEWでは「#be ORANGE(ハッシュビーオレンジ)」という津波防災啓発プロジェクトから生まれたラウンドタオルやミサンガ、災害があった際にはボランティアブーツとしても女性が気持ちよく使えるゴムブーツなど、普段から愛用したくなる素敵な防災グッズを紹介していただきました。

緊急時にはミサンガを解き、さまざまな用途で使える「#beORANGEミサンガ」。


同じく滋賀県から「仕立屋と職人」のみなさん。

と言ってもここにはお一人しか写っていませんが、普段は4人で活動されているユニットです。「職人の生き様、仕立てます!」をキーフレーズに、伝統工芸の職人の哲学や葛藤、ものづくりへのこだわりや愛を「生き様」として可視化。その過程で生まれてくるアイディアがあれば、プロダクトとしても世に発信しています。

どうすれば職人さんと一緒に走っていけるのか?を掴むために、「弟子入り」するところから始まる職人とのコミュニケーションは、深い信頼を得てその後の活動へとつながっていきます。

「職人って人間くさい。ビジネスっていうよりも仁義みたいなことを大事にしている人が多いから、自分たちのことを知ってもらうのにも早いんですよね。信用してもらうのも早いし、次の展開を考えるのにも」と、ワタナベユカリさん(写真)。

「まち/ひと/しごと」には、福島県郡山市で300年続く伝統工芸「張り子」に新たなコンセプトを与えた和紙ジュエリー「harico」を引っさげて登場。拠点としている滋賀の伝統産業「長浜シルク」のプロダクトは、現在着々と開発中だそう。


奈良県からは、言わずと知れた「中川政七商店」さん。

もともとは「奈良晒」という麻織物を扱うお店として1716 年に創業された老舗中の老舗。現在は工芸をベースにした商品の製造・卸・小売までを一手に手掛ける「SPA業態」を確立し、全国に52店舗の直営店舗を展開しています。

記事の冒頭での触れたとおり、昨年は「RENEW×大日本市鯖江博覧会」としてRENEWと大きくタイアップするなど「日本の工芸を元気にする!」をビジョンとして、様々なアプローチで工芸産地に寄り添いながら活動を展開されています。

「まち/ひと/しごと」には中川政七商店の定番商品である蚊帳生地を使ったふきんを中心に、各地のセレクトアイテムを用意してくれました。

日本各地の工芸産地から集まったセレクト商品たち。


兵庫県は神戸市垂水から、「TRUNK DESIGN」さん。

兵庫の地場産業がもつ質の高い製品や技術に新たな視点から光をあて、魅力を再編集し、より届きやすく時代に合わせたプロダクトデザインを行なっています。

淡路島のお香産業がもつ高い技術により誕生した和紙のお香「Ku」や、淡路のお香と播磨のマッチが出会って生まれたお香スティック「hibi」など、 並べられた商品はぼくたちの日常に溶け込みながらささやかな幸せを自然体で与えてくれるものばかり。

会期中のトークイベントでは、代表の堀内さんが「町の中に溶け込む町の大工さんのようなデザイン事務所でありたい」とおっしゃっていて、会社としてのコンセプトとプロダクトの一体感がとても気持ちよかったです。

兵庫県のふたつのものづくりの伝統が出会って生まれたお香スティック「hibi」。


同じく兵庫県から「シーラカンス食堂」さん。

兵庫県南西部の「播州」に根付く刃物産業や島根の石州瓦のブランディングをはじめ、自分たちと縁のある工芸品に新たな価値観を生み出し、現代のライフスタイルにあったものづくりと販売を展開するデザイン会社。海外では「MUJUN」というブランドでの展開もおこなっています。

シーラカンス食堂の仕事は、デザインを通した問題解決(それは例えば、後継者不足であったり、ものづくり企業としてのマインドの問題であったり、業界全体の体質の問題であったり)であり、目に見えるデザインは仕事の表層的な部分でしかないと代表の小林さんは言います。

「シーラカンス食堂」という変わった名前は、仕事の本質のほとんどが目に見えないところにあり、その様相がシーラカンスの脊髄に似ていると感じたことから。食堂とついたのは、デザインという一連の作業を、素材を生かしてお客さんを楽しませる料理のように捉えているからだそう。

小野市の刃物産業の高い技術力によって生まれた「播州刃物」のひとつ、「芽切鋏」。


徳島県上勝町から「RDND(アール・デ・ナイデ)」さん。

人口2000人に満たない四国で一番小さな町・上勝町で「Cafe polestar」やオンラインショップ「BuY Kamikatsu」、イベント「上勝百年会議」の企画運営などの事業を展開。「上勝町で2週間飽きずに過ごすには?」という問いの答えを探り「あったらいいな」を創りだす。その先に、自然と楽しさに惹かれて人が集まる町ができ、100年後も1,000年後も存在している町になる。そんなビジョンのもとでの活動されています。社名の「アール・デ・ナイデ」は、阿波弁の「あるでないで(あるじゃないか)」という意味から。

RENEWには上勝町の一部の山間地でのみ受け継がれて生きた伝統の「上勝晩茶」と、上勝町の木を使った布「KINOF」をもってやってきてくれました。世界でも珍しい乳酸発酵でつくられる「上勝晩茶」は、親から子へと受け継がれてきた上勝町ならではの家庭の味。RDND代表の東さんは、外の町にでて初めて緑茶の存在を知ったそう。ぼくも試飲させていただきましたが、独特の香りは紅茶にも近いような。ほのかな酸味とすっきりとした味わいで、とても美味しかったです。


九州勢!福岡県八女市からきてくれた「うなぎの寝床」さん。

九州ちくごのものづくりを伝えるアンテナショップとして2012年にお店をオープンさせたうなぎの寝床。「地域文化商社」として「つくりて」と「つかいて」の間に立ち、メーカー、小売、コンサルティング、デザイン制作、企画まで幅広く活動されています。地域文化を継続させるために経済的な領域を回す、ということの重要性をこれまでの活動から肌で感じてきたうなぎの寝床だからこそ、その実践は止まることがありません。

「まち/ひと/しごと」では、うなぎの寝床の代名詞とも言えるMONPEを中心に、筑後地方のものづくりによって生まれた良質なアイテムをたくさんもってきてくれました。

会期中には、購入したMONPEをさっそく履いているお客さんや運営スタッフも会場にチラホラ。いいものって、すぐ身に付けたくなっちゃいますもんね。

「宮田織物」の国産綿入れ半纏。あったかそう。


熊本からは、「熊本地震ブルーシードプロジェクト」

熊本ブルーシードプロジェクトは、2016年に発生した熊本地震をきっかけに、クリエイティブの力で災害復興に少しでも役に立てないかと始まったプロジェクト。「創造力は、奪えない。」をコンセプトに、前向きな気持ちとクリエイティブさで災害と向き合う「一般社団法人BRIDGE KUMAMOTO」が運営母体です。

熊本地震の際、被災した家屋を守るために使用されたたくさんのブルーシート。それは、一見悲惨な出来事の象徴のように見えますが、そこに前向きでクリエイティブな視線を向けたとき、それは被災地にまかれた復興の青いタネ(ブルーシード)のようにも見えました。捨てられるはずだったブルーシートは、熊本と各地をつなぐ「ブルーシードバッグ」として生まれ変わり、熊本地震を未来へ伝えるキーアイテムに。

箱付きのものは今回のRENEWで初お披露目となる「ブルーシードコサージュ」。


そして最後は、鹿児島から「東シナ海の小さな島ブランド株式会社」さん。

本拠地は、東シナ海に浮かぶ甑島(こしきじま)列島。島内での米作り、島の豆腐屋「山下商店」、島時間の流れるカフェ「コシキテラス」、小さな島宿「FUJIYA HOSTEL」などの運営や、甑島の漁師と出会う参加型フェス「KOSHIKI FISHERMANS FEST」の開催など、人口1,000人ほどの小さな村を拠点に、「日本のおいしい風景をつくる」をミッションに様々な活動を展開されています。RENEWには「とうふ屋さんの大豆バター」や「太陽のきびなご」など、鹿児島の”よかもん”をたくさんお持ちいただきました。

豆腐屋として人々の「朝」に寄り添うには?という思いから生まれた「とうふ屋さんの大豆バター」。


ほかにも、こんな素敵な商品がありましたよ〜

山の形:結工房の「ピアス」

HUMORABO:「MOAI キーホルダー」

tokyobike:「クリスタルベル」

Next Commons Lab 加賀:「ARABIKI」

Hana道場:「めがねサイダー」

graf:「自家製カヌレ」

防災ガール:「#beORANGEラウンドタオル」

うなぎの寝床:ヘルメット潜水株式会社の「やわらか湯たんぽ」


 さぁ、もう終盤。

せっかくのRENEWの記事です。実は少しだけ工房見学にもいけたので、締めにいく前にほんの少しだけ、越前和紙の産地である越前市今立地区にお邪魔したときの様子をみなさんにお届けします!

長田製紙所にて。襖紙の製造過程です。ぼくたちが見学している間、互いに全く言葉を発することなく黙々と共同作業を行うお母さん方。阿吽の呼吸とはまさにこのこと。

長田製紙所の長田泉さん。帰ってきた実家で精力的に活動中。突然お邪魔した我々にも快く元気に対応してくれました。和紙産地の未来。

 こちらは1875年創業の滝製紙所。越前和紙の大紙を製造されています。ライブで大紙に模様がついていく様は圧巻。2019年秋には、世界的な芸術家であるテオ・ヤンセン氏とのコラボレーションも決まっています。

無駄にせぬよう。仕事をしていくうえでの、大切な心がけ。

全国で唯一、「紙の神様」を祀る大瀧神社にもいってきました。今立の地に紙漉きを伝えたとされる川上御前が祀られています。造形がすごい…。

大瀧神社の鳥居前で記念撮影。ぼくは一人だけ半袖で寒かった。

お客さん、出展者、スタッフ。みんなにとって大切な時間となった「RENEW2018」

ぼくにとっては3回目となるRENEWは、「まち/ひと/しごと」に取材側として関われたことも含めて、とても楽しい時間でした。

ぼく自身が福井での素晴らしい取り組みにふれることができたということもありますが、何より、RENEW、そして「まち/ひと/しごと」に関わっている出展者、スタッフ、会場にきていたお客さんも、みんなが終始楽しそうにしていて。人々の熱量とともに、幸福感にも溢れる空間がそこに広がっていました。

イベント終了後の出展者のみなさんのSNSを追っていくと、中には「RENEWロス」あるいは「鯖江ロス」に陥る人たちもいたりして、RENEWでの時間はそこにいた「みんな」にとって大切な時間だったんだなと改めて感じることができました。

繰り返しにもなりますが、きっと、出展者のみなさん同士も、お互いが鏡に見えていたんじゃないかと思います。活動する場所が違っても、根底にある思いにはどこか共通するものがあって。それをこの会期中に感じられたからこそ、「まち/ひと/しごと」という特別展全体の熱量がぐんとあがっていったんじゃないかなと、勝手ながらそう思っています。

その熱量はきっと来場者のみなさんに(少なくともぼくには)伝わったはずだし、誰かの心の中にも未来への火種として宿ったはず。

2019年のRENEWでは、どんな景色が見えるでしょう?

そんなわくわくした気持ちを与えてくれるRENEWに感謝しながら、今日も福井のまちで暮らします。

ありがとう、RENEW。

また、会いましょう。

▼RENEW2018の様子をより楽しみたい方は、こちらからどうぞ。

【詳細情報】

主催/RENEW実行委員会

問い合わせ:info@renew-fukui.com
URL:http://renew-fukui.com/

(text:髙橋、photo:市岡、髙橋)

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