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知られざる漆の魅力を大発見!漆の新たな可能性に挑む「堤淺吉漆店」へ潜入

今回は京都市下京区にある「堤淺吉漆店」さんにお邪魔しました!

こんにちは!しゃかいか!インターン生の渡辺です。

私は京都の大学に通っている二年生です。しゃかいか!の取材ももう5回目。毎回、取材先の方々が個性のある考え方や取り組み方をされていて、お話を聞くのが楽しいです!

今回取材する堤さんは、漆の精製をされています。私はこの取材をすることになって初めて、漆の精製をする会社があるということを知りました。

きっとこの記事を読んでいる皆さんの中にもそういう方がいらっしゃるんじゃないかなと思います。

知識ほぼゼロの状態を武器?に、漆のことめっちゃ知るぞ!全部吸収するぞ!という気持ちで臨みました!

写真に写っているのはなんと漆塗りのサーフボード。サーフボードに漆を塗るなんて、初めて聞いたという方も多いのではないでしょうか。

新しいチャレンジとも言えるこの取り組みにまつわるお話もご紹介しますのでお楽しみに!

京都駅から歩くこと20分ほどで到着!

意外と住宅地にあって、目の前に花咲稲荷神社という小さい神社があります。なんだか縁起がよさそう。

今回お話を伺ったのは、堤淺吉漆店4代目の堤卓也(つつみ たくや)さん。

京都生まれ京都育ちの堤さんですが、北海道で大学生活を送り、卒業後は北海道が大好きだったこともありそのまま道内で就職されています。ところが27歳になった頃、突然、お父さまから「精製が大変だから手伝ってほしい」と電話が。

それまで継いでほしいとは言ったことがなかったお父さまからのSOSに、「困っているなら助けたい!」と思い、京都に帰ることを決意したそうです。

というのも、当時の北海道や大学時代ワーキングホリデーで訪れたニュージーランドの生活では「困っていたらみんなが助けあう」という文化が強くあったのだそう。その環境にすごく影響を受けていたとのことでした。

また、幼い頃からおじいさんの仕事姿がすぐそばにあり、「かっこいい」と感じていたことも、きっかけのひとつだったそうです。

早速お話をうかがいます。

まずはこちらの漆の木!横向きにたくさんある黒い筋が漆を採った痕です。

こちらの漆カンナという道具を使って漆の木を傷つけることで、木がその傷を修復しようとして漆をじわじわと出します。人でいうかさぶたみたいなかんじ。

桶に集めていきます。最初から深く傷をつけてしまうと、その傷を治そうとする前に木が死んでしまって漆が採れなくなってしまうので、最初は浅めの傷をつけ、道具を変えながら徐々に傷を深くしていくそうです。

また、傷をつけるときには、「生き道」が意識されています。

「生き道」とはいわゆる道管や師管のことです。水分や栄養を運ぶこれらがすべて傷つけられてしまうと、深く傷をつけたのと同じように木が死んでしまいます。

一直線に伸びるこの生き道を、ある程度残しながら傷をつけることで漆を採り続けることができるんです。この道管や師管、小学生か中学生くらいのときに習ったな…と懐かしくなりました。こんなところで出てくるとは。

漆は樹液ですが、樹液ってあまりたくさん出てくるイメージじゃないですよね。樹液というと、じんわり出ているところに、カブトムシが集合している…という状況が思い浮かびます。実際、どのぐらいの量が採れるものなのでしょうか…。

なんとなんと、1本の木から採れるのはわずか牛乳瓶1本分ほどの量。1つの傷からは1~3gくらいだそうです。少ない…!

漆掻きさんは、その1~3gをひたすら集めます。1回のシーズンで5巻目桶と呼ばれる約20㎏の桶4本分採れたら一人前とされているそうですが、現在では4本も採れる人はなかなかおらず、多くて3本分だそうです。

漆掻きさんも年々減少していますが、かんなやさじなどの道具を作る人も、もう一人しかいないという危機的な状況。堤さんは、道具を作る技術を残していくための活動も考えているそうです。

漆がいっぱい!日本産漆と中国産漆のちがいとは?

奥へ進むと…

漆の入った桶がたくさん!

冷蔵庫もあります。1つ目の冷蔵庫には成分などの検査を終えた漆が!

8-10℃という一定の温度で保管します。

ちなみにこの桶たち、漆でコーティングされるので何か再利用する方法はないか考え中とのこと。漬物用の桶というのが有力候補!

サステナブルな活動にも積極的に取り組まれています!

2つ目の冷蔵庫には中国からはるばるやって来た漆。

外で保管されているのは、検査などは終えていない漆の木からとってそのままの漆。荒味漆(あらみうるし)と呼ばれます。

ところで、日本産と中国産の違いはあるのでしょうか。

堤さんに聞くと、中国では日本の3倍ほどの量の漆を採ることができ、産地ごとに選別されたものが1トンほどの量で混ぜられてから届くそうです。なので、どの桶も中身はほぼ同じ。

一方で日本の漆は、採取した人や時期によって桶ごとに分けられて届くので、桶ごとに乾きやすさだったり、色合いだったり、特徴がかなり変わってきます。

研究によって、日本産の方が「ウルシオール」と呼ばれる漆特有の成分が濃いという結果が出ているそうですが、前述のとおり日本産漆はとても多様性に富んでいるので、中国と同様に均質化すればあまり変わらないかも、とのことでした。

また、漆を入れる桶を研いで繰り返し使う中で、「日本産漆を入れている方が塗膜が硬くなるな~」という感覚が堤さんの中にはあるんだそう。日本産は後から一気にグッと乾き、中国産は一貫して乾いていくというイメージの違いを感じられるそうです。

値段的には中国産のほうが安く、日本産の5分の1程度なんだとか。質も均質化されているので精製のしやすさもあります。一方、国産漆は個々に違うウルシの樹液を精製する難しさもありますが、そこが漆屋の技術の見せどころでもあります。

また驚きだったのが、歴史的な部分では中国よりも日本の方が古いかもしれないということです!

様々な文化や風習が中国から日本に渡って来ているので、漆もそうなのかなと思っていたのですが、実際に漆が使われていたことがわかる漆の痕跡は日本の方が古いんだそう!

中国はすごく広いので、日本より古い痕跡がどこかに眠っている可能性ももちろんあるのですが…

「そこはロマンですね。」

とのことでした(笑)

さて、ここまで散々「国産が~」という話をしていますが、では具体的に日本のどこで生産されているのでしょうか。

実は、国産の漆の8割以上がある地域で生産されています。

皆さんどこだと思いますか?

正解は…

岩手県の北部にある「浄法寺」という地域!

そもそも日本で主に流通しているのは中国産で、国産はわずか5%ほどですが、そのほとんどを占めるのが岩手県の浄法寺です。茨城県や長野県、岡山の備中や京都の丹波でも少量採られていますが、木があまり育っておらず採る人も少ないため、国産漆と言えば浄法寺産となっています。

気候など全く違いそうな地域なのに、同じように漆が採れるのか不思議だったのですが、やはり質が変わってくるそうです。

一概には言えませんが、浄法寺の漆は色が濃く乾くのが早い、温かい備中や丹波は乾くのが遅く透け感がある傾向があります。

では、乾きの早さや遅さは何で決まるのでしょうか?

重要なのが温度と湿度!

通常、塗料は水分が抜けることで乾きます。つまり、体積が減ります。一方で漆は、水分から酸素を取り込んで乾くんです。「乾く」なのに、水分取り込むってドユコト?と思った方もいらっしゃると思います…。「硬化する」と考えた方がわかりやすいかもしれません。浄法寺は気温が低く湿度が低いので、漆は湿度に飢えてたくさん湿度を取り込もうとします。そのため、硬化するのが早いです。

一方、備中や丹波地域は温度が高いので、硬化が遅くなります。漆はタイやミャンマーでも栽培されますが、これらの地域は誰もが知っているように湿度が日本より断然高いですよね。日本の漆とは成分が異なり、硬化が遅い漆になります。

「うーんここまでで、頭パンクしそう…」

と皆さん思っていることでしょう。

知れば知るほど、漆って奥が深い…!実は私も取材後に復習してやっと理解できました。

こちらは漆塗りのお椀。

そういえば、漆の特徴として「肌あたりが柔らかい」「ふっくらしている」「赤ちゃんの肌みたい」ということがよく言われますよね。これは先ほどの説明のとおり、水分を取り込むことで体積が大きくなるからなんです!

人間も半分以上水分でできているので、自らの性質と近い漆に対して心地よさを感じると考えられます。この、ふっくらしている感じが堤さんの推しポイント。生き物のような、ジブリっぽさがあって思い通りにいかないところが、京都に帰ってきて感じた、漆の面白さだそうです。

というわけで、漆は人にとって心地よい存在ということがわかりました。

しかも、漆は強度もスゴいんです!なんと、車の塗料より強い。さらに、ほとんどの金属を溶かすことができると言われる、あの王水をかけても大丈夫。(え!?)

さらにさらに!自然物なので紫外線に分解されて土に還ります。肌になじむし強いし、自然に還るしすごすぎます!!

また、漆の質は気候だけではなく採り方や採る時期にも左右されるとのこと。時期でいうとシーズン初めはどろりとした漆、半ばは質のいい時期で色濃くさらっとした漆、終わりにはまた初めのような質感になるそうです。

はるばるやってきた漆を見るだけでこの漆はあの人が採ったんだな、ということが大体は分かるそうで、漆って繊細なんだなあとしみじみ感じました。

漆の精製ってなにするの?その1 「漆漉し(うるしこし)」

こちらは、まだ不純物やゴミが入った状態の荒味漆!

精製前なのに、つやつやできれい。鏡みたいです!

とろっとしていて、他の取材メンバーからは「はちみつみたい」という声が。

すると「なめてもいいですよ、自己責任だけどね(笑)」と堤さん。

漆はかぶれることで知られていますが、粘膜に触れる部分がかぶれることはないんだそう。科学的には効果の証明はされていないけど、国によっては漆を薬として飲んだり、漆の木を料理に入れたりするところもあるそうです。

そもそもなんでかぶれるのかというと、漆の成分がタンパク質と反応するから。

最初からタンパク質を混ぜ込むことでかぶれにくい漆もあるそうですが、あくまでかぶれにくいというだけで、かぶれないわけではないそうです。また、先にタンパク質を混ぜ込むと、つるっと綺麗に塗ることができず、どうしてもハケ目がたってしまうというデメリットもあります。

普段から漆に触れている堤さんでも、体調が悪かったりお酒を飲みすぎたりすると、かぶれることがあるのだそう。自分の体調のバロメーターにもなり、戒めでもある。

かぶれなかったらいいのに、ではなく、かぶれるということも、漆の大切な要素のひとつとして考えているそうです。

次は作業場へお邪魔します!

冷蔵庫でも匂いはしていたのですが、より強い塗料っぽい匂いがします。

「これが漆のにおい…!よくある塗料と同じようなにおいがするんだなぁ」とうきうきしたのですが、私が思っていたのは漆のにおいではなくシンナーのにおいでした…。掃除をするのにシンナーを使うそうです。

漆は甘くて少し渋いような香りだそうですが、今回はよく分からずじまいでした。無念。

柱にはお札が。

こちらは京都の嵐山にある法輪寺のお札です。

実は、11月13日は漆の日で、毎年虚空蔵(こくうぞう)法輪寺うるし祭が開催されています。

平安時代、第55代文徳天皇の皇子である惟喬(これたか)親王が、漆の製法を本尊である虚空蔵菩薩に教えてもらったことが由来。

お祭りには漆の関係者が集まり、狂言などが奉納されるそうです!

話を戻しまして…

ここにも漆が入っているらしき桶がたくさんありますが、ここにあるのは荒味漆から不純物やゴミを取り除いた状態で生漆(きうるし)と呼ばれます。

不純物やゴミを取り除く方法がまた変わっていました。荒味漆に綿を入れて混ぜ、遠心分離器にかけます。すると綿が不純物やゴミを絡めとって、綺麗な漆になるそうです。

この作業を、「漆漉し」と呼びます。綿を使うので、あちこちふわふわとした綿のかけらが。

漆漉し後はというと、こんなかんじ。カフェオレみたいです!

全体がカフェオレ色になっているわけではなく、綿を入れて攪拌したことで漆が泡立ってこんな色になっています。

漆の精製ってなにするの? その2 「ナヤシ」

この次の工程が、「ナヤシ」という練る作業。漆の粒子を細かく、均一化していきます。この工程で、漆の粒子を細かくするとつやつやに、荒くするとマットな艶消しの漆になります。

艶ありと艶消し、どちらが人気かというのは決めがたく、地域ごとで異なるそうです。定番は艶ありですが、それだと塗料のように感じる人もいて、特に海外では目新しい艶消しが人気の傾向にあるそうです。

こちらは艶ありの漆!

堤さんが独自の精製技術で開発した漆の代表として、「光琳」と呼ばれる漆があります。

撥水性やツヤに優れており、日光東照宮などの修繕にも使用されているのですが、こちらもナヤシの作業においてめちゃくちゃ粒子を細かくすることで実現されているそうです

具体的な方法に関しては「さすがに秘密ですね(笑)」との回答でした。

この光琳ですが、事前調査で驚いたのが「食洗器に入れても大丈夫」というところ。

左が「光琳」を塗装したテスト前のお椀、右が塗装後に1155回全自動食器洗い機を繰り返したテスト後のものなのですが、右と左、どちらも変わらないくらいつやつやですよね。すごい…!

ちなみにですが、漆器が食洗器NGなのは漆の質以外にも理由があるそう。内側が木材で作られている漆器は道管や師管が通っているので、空気を含んでいますよね。食洗器は熱湯で洗浄するので、その空気が熱膨張して傷みに繋がってしまうんです。

要は空気をなくせばいいので、真空バキュームを用いて漆を塗るとより強い漆器を作ることができるんだそうです!

光琳を使って、真空バキュームで塗ればきっと最強ですね!食洗機がNGな理由は漆だけの問題だと思っていたのでこれも衝撃的でした!

漆の精製ってなにするの? その3 「クロメ」

次が「クロメ」と呼ばれる工程!

クロメというのは、ナヤシをした漆に熱をかけて余計な水分を取り除く作業。漆の精製全体のことを指す場合もあるようで、このあたりの名称も曖昧なことが多いんだそう。

この工程で、生漆の状態から、水分が3%ほどになるまで水分を飛ばします。3%まで減らしてやっと、ハケで綺麗に塗れるそうです。

写真は黒く色づけした漆。漆の最もポピュラーな色は黒ですよね。でも、塗料みたいにのっぺりとした漆黒とは違うような。なんとなくクリアで奥行きのある独特な黒色は、色を付けるのに顔料ではなく鉄粉を使うことで生み出されています。

漆の精製ってなにするの? その4「調合」

最後に調合!ガラス板につけて確認します。

調合は、桶ごとに違う特徴を活かして行います。漆が使われる現場の環境だったり、作家さんの要望だったりで調合を変えるそうです。

同じ漆は二度と作れないそうで、前のものに近くなるように考えて調合していきます。

面白いなあと思ったのが、兄弟でやっている作家さんでも、それぞれ違う調合をしているというお話!その理由は、1階と2階で作業場が異なるから。

経験したことがある方もいらっしゃると思いますが、特に夏場、1階と2階では気温が全然違いますよね…。ロフトなんてあると地獄です。

つまり、1階と2階で気温や湿度が異なり、漆が同じだと違うものが出来上がってしまうので調合で対応しているということですね!

なんでだろう?と思いましたが納得でした!!

ある程度混ぜたら、こちらのロールミルでより粒子を細かくしていく!

やっと完成。

漆に消費期限のようなものはなく、精製漆には寝かしておくことでより綺麗な漆になるものもあるそうです。綺麗になるのを狙ってわざと置いておくこともよくあるそう。

漆をもっと知ってもらいたい!これまでの取り組みと新しいチャレンジとは?

ここからは、漆をいろんな方に知ってもらうための様々な取り組みについてお話を伺います!

こちらの「うるしのいっぽ」を作ったのが一番初めの取り組み。

京都に帰ってきて漆と向き合う中で、数字として見える漆業界の未来に、絶望感を持った堤さん。自身にとっては幼い頃から身近にあった漆が、多くの人にとっては遠い存在になっていることに気づき、「この状況を変えたい!本当は近い存在であるということを伝えたい!」という想いが込められているのがこちらの冊子です。

うるしのいっぽへの反響は大きく、人前で話す機会も増えたそうです。

しかし、話をする相手のほとんどが工芸関係者だったため、漆を知らない人にはお椀などの従来の漆製品だけでは伝えたい想いを届けることができないのではないかと感じたんだそう。

そこで始めたのが、スケートボードやサーフボード、自転車に漆を塗る「BEYOND TRADITION」。

これらのストリートカルチャーは、堤さん自身の趣味のひとつ。北海道時代にスノーボードを始め、はまっていったそうです。

また、ワーキングホリデーで訪れた、温暖な気候であるニュージーランドでサーフィンをはじめたのだそう。意外だったのですがニュージーランドではスノーボードも盛んだそうで、夏はサーフィン、冬はスノーボードを楽しんでたとのこと!

この経験が、現在のストリートカルチャーへの想いに繋がっています。

このBEYOND TRADITIONという取り組みによって、これまで漆を知らなかった人にも漆に興味を持ってもらえるようになり、映画を作ったり、海外の方と一緒にサーフボードを作ったりするきっかけにもなったそうです。

さらに、最近は新たな活動も…!

2023年3月、京都・京北町の廃校舎を活用し、”森とつながるシェア工房”「ファブビレッジ京北」をオープンしました。

こちらの工房を拠点に、地域の⽊材を使ったワークショップを行ったり、「つくること」と社会との関係性を考える研究を行っていくそうです。

日本中の様々な工芸品を組み込んだり、廃校を活用したり、通常捨てられてしまうような木材を使ったりなど、堤さんのこだわりが詰まっています。

また、この「ファブビレッジ京北」での活動を通して、漆をとったあとのウルシの木を使った何かを作りたい!と考えているそうです。

今まで注目されてこなかったウルシの木ですが、樹液だけではなく幹の部分も活用することでより幅広く漆の存在感を示すことができるのではないか、とのことでした。

京北では他にも、ウルシの木などの植樹・育林事業をされています。これらは、「工藝の森」として、モノづくりの源流である「森」と人が自然と関わり続けることのあらわれである「工藝」を繋ぐことを目指して取り組まれています。

植樹ってどんなかんじだろう?廃校を活用?など色々気になります…!

今回は京都市内にてお話を伺いましたが、また京北にもお邪魔させていただきたいと思っています!

堤さんにとってやりがいとは?今までにない漆の使い方もチラ見せ

今回堤さんに取材をさせていただく中で驚いたのが、やりたいと思っていらっしゃることを次々とお話してくださること。それも、すごく楽しそうにお話されるんです!

サーフボードはもちろん、下京区の事務所を工場が見やすいように改装したり、茶器を作ったり、若手の就職先として機能できるようにしたり…。

漆業界は、他の工芸品にも言われているのと同様に、作り手の高齢化が進んでいます。業界として厳しいから若手雇えない、すると若手が増えない、の悪循環です。

若手を支えることによって、漆業界を支える!ということにも積極的に考えていらっしゃいます。

また、SNSのプロモーションにも力をいれたいと考えているそうです。堤さんのHPはとても洗練されていて素敵だったので、SNS全般に力を入れているのかなと思っていたのですが、なかなかそこまで手が回らないのが現状だそう。

多忙な日々を送るなかで、やりがいのようなものはどこにあるのでしょうか。

とっても素敵なお答えをいただきました。

「漆を知ってもらって好きになってもらえることがいちばん嬉しい」

堤さんには息子さんがいらっしゃって、授業参観でのエピソードをお話してくださいました。

授業参観と言えば、教室のうしろに保護者がぞろぞろとやってきますよね。懐かしい。

そのときはコロナだったので、順番で教室入ると…後ろに子どもたちの将来の夢が掲示されていて、息子さんのところには「うるし屋さん」と書いてあったそう。

「さすがに、思わずうるっときました」と堤さん。

息子さんの作品たち(ほっこり)

堤さん自身継いでほしいとは言われたことがなかったこともあり、息子さんに対してもそう声をかけることはないそう。ただ、結果として漆に関わってくれたら嬉しい、と仰っていました。

休日には、色んなものに漆を塗ってみているそうです。

こちらはカフェの使い捨て紙コップ。いい色!

他にもいろいろ。

お皿は写真で見ると陶器のように重そうに見えますが、持ってみると、!?となるくらい軽いです!!なぜなら、使い捨ての紙皿に漆を塗っているから。また漆を塗ると、繰り返し使えます。

こんな発想もあるのかとびっくりです。欲しくなってしまいました。

ここで豆知識。漆は、暗闇でこそ美しさを発揮すると本で読んだことがあります。

暗闇で細いロウソクの光に照らされると、どこか柔らかさや温かみが感じられて美しい、とのことでした。

この取材でふいに思い出しまして、ちょうどこの間キャンドルを買ったので試してみようかな~と思っています。たまには電気を消してみるのも楽しいかも!?と思ったり…。仕事や学校で疲れたとき、よかったら皆さんもぜひ!

今回、漆の精製や今まで知らなかった魅力、漆の現状などを知って、漆への興味が跳ね上がってしまいました。

漆製品はお箸と汁椀しかもっていないので、違うものにも挑戦してみたいと思います!

堤さん、貴重な体験とお話をありがとうございました!

堤淺吉漆店
〒600-8098 京都市下京区 間之町通松原上る稲荷町540番地

Web:https://www.kourin-urushi.com/
Tel : 075-351-6279
Fax : 075-351-6270
Mail : urushiya@kyourushi-tsutsumi.co.jp

営業時間:8:50~17:30
定休日:日・祝・第2・4土曜 (12月、1月は土曜休みが変わります)

Instagram:https://www.instagram.com/tsutsumi_urushi/
Facebook:https://www.facebook.com/tsutsumiasakichi.urushi/

協力:京都市伝統産業未来構築事業
https://kmtc.jp/sfc/

協力:Kyoto Crafts Exhibition DIALOGUE
https://dialoguekyoto.com/

Text:渡辺史香 Photo:市岡祐次郎、本田コウイチ

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