機織りの町のお祭りは、音楽会&夜のお楽しみ&学生さんのワークショップと盛りだくさん! 富士吉田市のハタオリマチフェスティバル(後編)

角田医院

ハタオリマチフェスティバルの後編の記事は夜からスタートです。
前編でご紹介したハタオリ工場祭やバスツアーの他にもまだまだ盛りだくさんの催しが用意されているハタオリフェスでは、音楽会もやっています。

「音楽会 ハタオリマチニヒビクウタ」の会場はこちら、旧角田医院というところ。味わいのある建物が多く残る富士吉田の中でも文化財に相当(持ち主の方が面倒がって登録していないけど)する建物なんです。

角田先生

こちらが建物のオーナーの角田さん。
昭和初期85年前くらいに建てられたこの建物はもともとは高級織物を追って仕入れにくるお客さんを接待する高級料亭。戦後、料亭は廃業し、おじいさまが町の診療を始めて角田医院になり、戦後から40年ほど診療されていた、現在は別の場所に角田医院は移転したので「旧」角田医院なんです。
普段からきれいにメンテナンスしてくれていることもあり、今日はご厚意もあって音楽会に使わせてもらうことになりました。
(主催者側は「ビビりながら使っています」とのことでした)

中村不折の額

中村不折(なかむらふせつ)さんの額。中村不折は三鷹の森鴎外のお墓の字を書いたり、中村屋のかりんとうの字も書いた北の丸美術館に入っている書家さん。角田さんのお話だとこの額の裏には「昭和2年」って書いてあるそうです。建物のなかはほかにも細かいところは本当に贅沢な細工になっております。

音楽会はじまるよ

お座敷で演奏会が始まるのを待ちます。照明もそとからボワっと当てているのもたまらなく良い雰囲気です。

座布団

お座布団ももちろん富士吉田で生まれた織物。

アーティスト紹介

音楽会が始まりました。
演奏は音楽家の田辺玄さんとピアノの弾き語りの森ゆにさん。普段は山を越えて1時間弱の甲府市に在住し、音楽活動を行っています。
この音楽会を甲府の二人が富士吉田で開催するきっかけになったのは、実行委員長で富士吉田でゲストハウス「SARUYA」を運営する赤松智志(後で登場します!)さん、同じくハタフェスの広報担当の土屋誠さん(後で登場します!!)と仲良しだからです。
赤松さんのゲストハウスSARUYAで田辺玄さんのバンド「WATER WATER CAMEL」がライブをしていてるのでもともと富士吉田とかかわりがあったのに加えて、土屋さんが編集している、山梨の織物職人の人や暮らしを伝えるフリーペーパー「LOOM」の甲府で行われた完成記念のお披露目音楽会「ハタオリのうたがきこえる」でも森さん田辺さんコンビが演奏。
さらに森さん、田辺さんがハタオリをテーマにした書き下ろしの「LOOM」という曲を、ハタフェスの行政担当の方(後で登場します!!!)が聞きに来てくれて感動、ぜひとも富士吉田のお祭りでも演奏して!と直談判されこの富士吉田のお祭りにも登場してもらうことになった、とこういうわけなんです。

音楽会雰囲気

透き通った声とアコースティックギターの音がちょうどよく心にしみてくる。
歌声をお聞かせできないのが残念です。

田辺玄

ギターの音色もやさしい。

森ゆに

ハタオリの音が響いているのが音楽のようだ
富士吉田の町のこと「ハタオリの音が響いているのが音楽のよう、風景や人も魅力的」と歌の合間のお話で語ってくれました。

機織りの歌

ハタオリにちなんだ曲「LOOM」も披露。織機の音が響く心地よいリズムの曲でした。

濱田英明

Longtempsで写真展を開催した濱田英明さんのムービーがこの曲の背景に採用されました。
(濱田さんも富士吉田の人たちと仲良し!)

泣いてる人もいた

音楽会のチケットはほぼ即日完売。オーディエンスはほとんど地元の人なのだそうですが、涙を流しているおじいさんやおばあさんもいました。
1時間半ほどでこの音楽会は終了。工場祭やバスツアーとはまた違った富士吉田を耳と目で実感することができた素敵な曲たちでした。

まるさんかくしかく

続いては、お昼に工場祭が行われていた新世界乾杯通りに戻り、

乾杯〜

かんぱーいー。
ハタオリフェスのレセプションに参加させてもらうことができました。

名司会者

司会はもちろんこの方、バスツアーでもお世話になった渡小織物の渡辺太郎さん。

県の人

山梨県の県の方のご挨拶。実はこの人、ハタオリ産地の技術向上や継承のため講習会や研修会の開催したり、新技術の開発や高度化を研究する山梨県富士工業技術センター繊維部(通称シケンジョ)の五十嵐哲也さん。
ヤマナシハタオリトラベルの皆さんがお世話になっている方なんだとか。五十嵐さんの取り組みについてはこちらでご覧ください!

お料理

素敵なお料理が並ぶ。

お料理全般 キッシュ おいしそうだわ

おいしそうだわ。

甲州鳥もつ煮

B1グランプリを獲得した、甲州鳥もつ煮も。

名物吉田うどん

吉田うどんはハタオリ職人さんと切っても切れない関係
ここで富士吉田名物の「吉田うどん」が登場。
モチモチ感と独特のコシがありとても腹持ちが良いうどんは、郡内織物産地だからこそ生まれたご当地のソウルフードなんですよ。僕も今知ったんですけど。

明治初期に生まれたとされる吉田うどん。当時は機織りがまだ手織で織っていて、食事の準備をするのは男性の仕事。機織りで鍛えられ力のある男性が打つうどんは、独特のコシを持ち太くて硬さのある麺になったとさ。その後、織物を買い付けに来る人も増え、賄いではなく吉田うどんを名物にしたお店がが少しずつ増えていったとさ。現在もその数は増えているそうな。
ご当地の食べ物と機織りが関係しているなんてとても面白い発見。誰かにすぐ言いたい!

乾杯 テンジンの小林さん

ここで二度目の乾杯!おや、テンジンの小林さんが音頭をとってますね。

トリオ勢揃い

と、ここで挨拶のマイクを握る帽子をかぶったトリオが登場。
彼らが実はこの実行部隊なんです。
左から藤枝大裕さん、赤松智志さん、土屋誠さん。

藤枝さん

藤枝さんは、ハタオリ工場祭という企画を担当。
「秋に富士吉田でお祭りをやりたいから手伝わないかとお誘いいただいて、織物の産地だから織物をテーマにお祭りをしたいということでスタートしました。織物だけではなく、道具市や音楽会の企画があって、やっていく中で地域の人たちもどんどん参加してくれて、輪を広げるようにしていった結果、こんな風に盛りだくさんで贅沢なイベントになりました。エネルギーが充満しているこの感じ。ここまでできるのが富士吉田のふところの深さ、だなぁと思います。このイベントをきっかけにいろいろな人がこの街の魅力に触れて、人と人がつながっていってもらえたらうれしいです。」と藤枝さん。

土屋さん

土屋誠さんは、山梨の人や暮らしを伝えるフリーマガジン「BEEK」の編集長で、やまなしのアートディレクター。あの豪華版フリーペーパーLOOMの企画構成から取材、撮影、デザインまで担当したBEEK DESIGNの代表です。このお祭りでも、情報を外へきちんと編集して発信したりいろんなところで写真を撮ってPRを担当。外から人を呼んできたりもしました。

赤松さん

ハタフェス実行委員長の赤松さんは、学生時代にstudio-Lというコミュニティデザイン会社にインターンとして参画後、地域おこし協力隊に着任し、ここ富士吉田市に移住。富士山が世界遺産に登録された後もシャッター通りが目立つ町の中心部に、「hostel&salon SARUYA」をオープン。単なるゲストハウスではなく、ゆっくりお茶をしながら地元の人と宿泊客が交流、お話などができるスペースを1階のサロンに開設。また、地元の若者が中心となって企画を行う「ハモニカ横丁げんき祭」という催しを行いながら、町づくりに携わってきました。

赤松さん

好きなようにやりたいことができた
この秋祭りのいいだしっぺは富士吉田市役所の勝俣さんという担当の方で、ハタオリ、飲屋街を応援する若い人がわーっと集まってハタオリと若い人たちがマッチングしたようなイベントにしたいな、と考えていました。
移住して4年、空き家の改装、移住者の受け入れなどで付き合いがあったおかげでその辺の信頼関係はすでに築くことができていたのが良かったのかな、と思います。他はほとんど何にも指摘されずに好きなようにやりたい放題でした。
評価はいろいろ基準があると思うんですが、僕が大事にしたいのは、元々ハタオリにあまり興味がない人が、どれだけ来ているかというところ。
これまでのハタオリは産業としての位置づけでしたが、これからは観光的な要素も担っていくと思っています。
観光資源としてハタオリをどのようにして外に発信していくか。その第一段階が、町を見てもらうことでした。例えば、職人さんも自分たちの工場を見せることは意外と嫌がらずに、「すごいだろっ」と胸を張ってくれる工場もあった。撚る人、染める人、織る人、町の中にハタオリに関わる生業が全て揃っているのが富士吉田の特長。それがこれからも欠けないように、続けていければいいなと思います。

産業としての工場や町も見せる、そして夜の町も見せちゃう、地元の人も外の人もごった煮のお祭りは、この3人の強固なタッグがみんなを巻き込んで生み出したものだったんですね。
お酒を飲んでいい気持ちになりながら、ちょっと涙がでそう。

夜の街

レセプションの後は「富士はしご祭り」というもう一つの催しにジョイン。
ショーワな雰囲気の盛り場を、1000円のお得なチケットで飲み歩く街バル的なお祭りです。

はしご祭り はしご祭り はしご祭り

機織り職人さんや織物を仕入れにきた仲買さんの気分になってお店を回りながら、富士吉田のお祭り第1日目は終わりました。

ハタオリフェス看板

ということで元気に2日目スタートです。
おはようございます!

お祭り2日目

吉田のまちの道具市が開かれている小室浅間神社。

御神馬 ひとなつこい馬

猿ではなく、人なつこい御神馬もいます。

道具市の説明(ヒキ) 道具市の説明(ヨリ)

骨董市かな、と思っていましたが、手ぬぐいやステーショナリーなどおしゃれな雑貨屋さんも出てます。

BOOKTRUCK

移動本屋さんもきてる。

フードも充実 フードも充実

フードも充実。

焼き菓子のCAFE_M

焼き菓子のCAFE Mさんでバウンドケーキをいただきました。

焼き菓子のCAFE_Mの人と

ここ富士吉田が地元で今日は出張販売にきているお店の方と記念写真を撮らせてもらいました。
ごちそうさまでした。

ワークショップ説明

ハタフェスのロゴが入ったロゼットを作れるワークショップに参加させてもらいます!

ワークショップ説明2

「ロゼット」はヨーロッパに伝わる勲章のようなもので、儀式などで相手を称える意味がある装飾物です。ハタフェスではスタッフのみなさんがつけていて、欲しいなぁつけてみたいなぁと思っていたのですが、ワークショップで自分で作ることができます。

大盛況だよ

大盛況。小さなお子さんたちに混ざってヘルメットおじさんもロゼットづくりに挑戦します。

ロゼッタワークショップ

まずはパーツのセレクト。

いろんな種類がある

ドレスやネクタイの生地、お守りに使うやつ、はたまたお座布団、色や柄、光沢までさまざまな種類の生地が用意されています。生地は全て郡内織物で織物工場から提供されたもの。
迷うー、でも楽しぃー。

迷うのが楽しい

やはり、大人だからな、ダンディかつラグジュアリーな中にも品と可愛らしさが演出できる生地を…

イメージでけた

イメージできた。

リボン選び

リボンも選ぶ。

これでいきます

生地はこれでいきます。

ハサミでカット

メインのお猿さんマークの外形をハサミでカットして、

先生に教わる

先生に教わりながら、

ぎゅっと落とし込む

ぎゅっと押し込む。

グルーガン説明

生地と生地をくっつけるのはグルーガン。スティック状のボンドを溶かしながら接着していく道具です。

のりをつける

はんだ付けの要領で糊づけしていく。

グルーガン

「もっと思い切ってぎゅっと握ってもらっていいですよ、男なんでしょ」

見えてきた

見えてきた。

できた

完成!生地選びからできあがりまで約15分。

先生との記念撮影

先生と記念写真。ロゼットを胸につけ、ようやくハタフェスの一員になることができた気がします。
先生の藤野寿朱菜(ふじのすずな)さんは、東京造形大学から創業1915年の老舗織物メーカーである株式会社川栄に「ものづくりの現場に飛び込むぞ、エイッ!」と就職。今回の「ロゼットワークショップ」も使用する生地素材の提供を織物会社にお願いしたり、準備から企画・運営まで中心的な役割を果たしました。
藤野さん楽しい時間を有難うございました!!

東京造形大学のみんな

このワークショップを運営しているのは東京造形大学の学生と卒業生のみなさん。機織りの産地にデザインや技術を勉強にきているんですって。
向かって一番左の井上美里さんは富士吉田での学生と機屋が共同作業で製品を作る「FUJIYAMA TEXTILE PROJECT」を経て、卒業後に生地メーカーで自社ブランドの傘の生地づくりや組み立てまでやっている槙田商店に就職。

菜と井上さん

そして、入社1年目で「菜 sai」という野菜をモチーフにした日傘を商品化してしまいました。とうもろこしや白菜、にんじん、紫おくら、えのき、まめ、はなまめなどをモチーフにした可愛らしく楽しい日傘です。
このアイデアは学生の頃に提案したもので、なんと平成27年度やまなし産業大賞で「ものづくり大賞部門優秀賞」を受賞。しかしこの日傘は伸縮性のある素材を使用しなければならないため、デザインしたものと実際の生地づくりとのギャップに苦労しました。これからは生産工程を考慮したプロの企画にチャレンジしていきます。

とうもろこしの傘

かわいいでしょ。

どこの産地も後継者の課題は頭を悩ませていますが、富士吉田はハタオリの現場と学生さんの人の循環がはじまっているようです。これからは彼女たちが新たなデザインや製品を生み出し、富士吉田の織物を支えていくことになるのでしょうか。なんだかワクワクしてくる試みだ。

いいだしっぺの勝俣さん

ハタオリフェスのいいだしっぺ、富士吉田市役所の勝俣美香さんにお話を聞くことができました。

市役所建物

富士吉田の市役所は富士山全面押し!

富士山課の人

勝俣さんは、その名も「富士山課」に所属。この富士山課は富士吉田市の観光のほか、登山者の安全対策なども行っています。他の課員のみなさんは、配属後には登山ができなくても仕事を通して登れるようになるそうです。

勝俣さん笑顔

最初はハロウィンやろうか、って思ってましたが、それは富士吉田を好きになってもらえないな、もちろん経済効果もカウントしなければならないし、やはり富士吉田ならではの魅力が伝わらないといけないと思って、今回のようなお祭りになりました。
地元の人たちの中には「富士吉田なんてたださびれた町、なんでわざわざ見てもらうんですか?」という意見もありましたが、それなら富士吉田の良さを出してもらうには、赤松さんをはじめとするよその人が入ってもらおうと思いました。
もともと赤松さんは、この町をとても好きになってくれてて、げんき祭も開催するなど盛り上げてくれていたのでうってつけでした。外の目線で「いかに若者たちに市街地に入ってくれるか、若者たちを意識した町をPRをしよう」というのが今回の出発点です。
そして、LOOMを作ってくれた土屋さん、藤枝さんという人たちがいてくれたのが幸運で、夜の町もお祭りに組み込んで、そこを達成してほしいというリクエストを伝えて、あとはおまかせ(笑)。やりたいことをまとめてくれました。

進める中で「こんなにスムーズにいっていいのかな?」というくらいモメごともなく!
上司も素晴らしく「自由にやっていいよ」ときちっと線を引いた中で進められるように私をコントロールしてくれました。
結果がなくてはボランティアになってしまうけど、そこは目標を共有しながら、みんながやりたいことを、お手伝いしていくという役割に徹したことがこんなに盛り上がる結果につながったのかな、と思います。

むむむ、レポートを書く立場としてはもう少しモメごとや苦労話を聞きたかったのですが...という思いは胸に秘め、今回のお祭りの運営でわかったことは、やりたいことを参加者目線で考えハッキリさせた、3人の地元の若者にタスキを預け自由に動くことのできる土俵を作った、行政は黒子に徹したというのがポイントのようです。

赤松さん

第一回めにしてこんなにも楽しかったお祭り、早くも来年参加するのが楽しみになってきましたが、ものづくりが地域の盛り上げのきっかけになっていることを知って、日本のどこでも毎日こんなお祭りが開かれているといいなぁ、次のお祭りはどこかなぁと期待に胸が膨らんだ富士吉田の見学でした。

富士吉田のみなさん、2日間楽しませていただき本当に有難うございました。
またぜひ来年も参加させてくださいね!

【詳細情報】

主催/山梨県富士吉田市・ハタフェス実行委員会

電話番号:山梨県富士吉田市富士山課  0555-22-1111
URL:http://hatafes.jp/

有限会社羽田忠織物/HADACHU ORIMONO

電話番号:0555-22-4584
住所:山梨県富士吉田市上暮地3-7-26
URL: http://hadachuorimono.jp/

有限会社テンジン(TENJIN Co.,Ltd)

電話番号:0555-22-1860
住所:山梨県富士吉田市下吉田7-29-2
URL: http://www.tenjin-factory.com/

有限会社 渡小織物

電話番号:0555-22-1885
住所:山梨県富士吉田市富士見5-5-52
URL:http://www.watasho-orimono.com/

流しの洋裁人 原田陽子さん

https://www.facebook.com/yoko.harada.7792

LONGTEMPS(ロンタン)

電話番号:0555-22-0400
住所:山梨県富士吉田市下吉田3-12-54
URL:http://www.longtemps.jp/

(text:西村、photo:市岡)

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