十勝の土壌をビジネスで耕し、新たな「繋がり」を拓く。100件の起業を支えた二人が今『KAIKON -開墾-』に込める想い

なぜ今、日本中のビジネスパーソンが北海道・十勝の現場に足を運んでいるのか。

十勝の中からも外からも、多彩なバックグラウンドを持つ人々が集結したビジネスイベント「KAIKON -開墾-」

前半記事では、定員40名が満席となった「一次産業の今」をめぐるフィールドキャラバンの様子をお届けしましたが、後半記事では、この場を創り出した運営チームにスポットを当てます!

お話を伺ったのは、公益財団法人とかち財団/LAND高橋司さん小田晃一郎さん

(左から高橋司さん、小田晃一郎さん)

これまでの6年間で、なんと合計100件もの起業を後押ししてきたという、まさに十勝のチャレンジを支えるプロフェッショナルなお二人です。

そんなお二人が、なぜ今あえて一次産業にこだわり、現場の熱量に直接触れるイベントを仕掛けたのか?

十勝という広大な土壌をビジネスの視点で耕し直す、"開拓者精神"に迫ります!

地域の外と中が混じり合うことで生まれる、新たな可能性

ーー「KAIKON -開墾-」の開催は今年度で2回目。そもそも、どういった思いでこのイベントを立ち上げされたのでしょうか?

高橋さん:元々僕らが所属する「とかち財団」では、十勝の事業者さんのものづくり支援や新しい挑戦、起業を後押しすることをミッションに活動しています。 

拠点である「LAND」を立ち上げて6年。今ではこちらから色々な働きかけをしなくても、新しい事業が次々と生まれており、6年間で約100件の起業をサポートしています。

ただ、そうした地域の中での取り組みが進む一方で、次のフェーズとして「起業した方が、事業をきちんと持続・拡大していけるような道筋を描けるか」という点に課題を感じていました。 
地域の中だけでできることもありますが、地域の中だけでは解決できないことも多いそれを解決したいと思ったことが、イベントを始めたきっかけです。

ーー1日目のキャラバンには、十勝の外からも多くの参加がありましたね。

高橋さん:そうですね。地域の中でビジネスを始める方は、どうしても地域の中をマーケットとして捉えることが多いのですが、実は、地域外の人と一緒にやらないと解決できない課題もたくさんあります。 

ですが、そうした出会いの接点は意外と多くありません。だからこそ、地域の外の方と中の方がいい感じに混じり合う場所があると、お互いにとってプラスになるのではないかと思いました。 

今回のキャラバンをあえて地域外の方を主対象として構成したのも、そのためです。まずは十勝の特徴であり、基盤でもある一次産業の現場を直接見ていただく場として企画しました。

(1日目に開催されたフィールドキャラバンの様子)

ーーキャラバンの訪問先は、どういった基準で選定されているのですか?

高橋さん:一つは、十勝の産業の根幹である「一次産業の現場をしっかり見ていただく」という点はブレずにキープしたいと考えています。

もう一つは、「複数の視点から今の十勝を見られるようにすること」です。

具体的には、アルプス技研さんのような、既存の農業者ではない方が十勝に参入して、新しいことに挑戦している現場。また、佐々木畜産さんのような、十勝を支えてきた歴史ある大規模な事業者さん。そして、なまら十勝野さんのように、高いバランス感覚で東京とも直接取引をし、新しい組織のあり方を実践しているところ

たとえ歴史のある事業者さんであっても、時代の変化に柔軟に対応されていたり、外との連携に対して「ウェルカム」な姿勢を持たれているかどうか。そこがベースの観点としてありますね。

小田さん: 東京にいらっしゃる方からすると、例えば「農家さんが抱えている健康ケアの課題」など、全くの異世界のように感じるかもしれません。そういった地域ならではのリアルな声やニーズをどう拾って、どう価値に変えていくかを重要なテーマにしています。

ーーキャラバン中も、事業者さんから「何かいいアイデアがあったらお願いします」と伝えていたのが印象的でした。

小田さん: 実は、視察先の佐々木畜産の佐々木社長は僕の高校の先輩なんですが、何度も猛プッシュした結果、無事視察を受け入れていただけました(笑)。

佐々木社長はもともと東京やアメリカでのご経験もあって、異分野と自身の事業をどう掛け合わせて価値を上げていくかを、常に考えているすごく積極的な方です。今回、初めて一緒にお仕事をさせていただいたのですが、外部からの提案に対しても「じゃあこれを使ってみるか」とウェルカムなスタンスでいてくれたのが、本当にありがたかったですね。

そのおかげもあって、参加者の方々の間でも、あちこちでコラボレーションのような前向きな話が次々と生まれていました。

「勝手に進む」のが理想。自発的な行動を引き出すための場づくり

ーーキャラバンもすぐに満員になりましたよね。管外から参加された多くの方は、どういった経緯でこのイベントを知られたのでしょうか? 何か特別な告知などを?

高橋さん: 基本的にはウェブサイトやSNSでの告知が中心ですが、僕らが運営している「LAND」に、たまたま出張でお越しになった方とお話しして、そこからご縁がつながることも日々結構あります。

ここはスペースとして開放しているので、日々新しい接点が生まれます。それが6年間少しずつ積み重なって、僕らの発信に反応してくれる方が少しずつ増えていっている感覚ですね。

(とかち財団が運営するオープン空間「LAND」。実は「しゃかいか!」編集部も、このスペースをコワーキング利用したことをきっかけに、今回の繋がりができました!)

高橋さん: 僕らにとって、イベントを開催すること自体は目的ではありません。「参加してくれた一人ひとりに何を届けられるか」「何かが届けば、それが次のアクションに繋がっていくのではないか」という部分を大切にしています。

だから2日目のカンファレンスも、単にトークセッションを聴いて終わりにするのではなく、心拍を計測するデバイスをつけて交流会を行ったりと、地域内外の人がより深く繋がれるような仕掛けを散りばめています。

(開墾2日目はカンファレンスイベントを開催。東京、札幌、そして十勝から7社のプレイヤーが登壇しました)
(デバイスで心拍を計測して、お互いのシンクロ度合いからマッチングを促進する交流会も!こちらは株式会社e-lamp.(東京都)が提供するソリューションを活用してのセッションでした。)

高橋さん: もちろん、すべてが狙い通りにいくことばかりではありません。でも、共通の目的を持った熱量の高い人たちが集まれば、そこから自ずといろんな繋がりが生まれていくのではないかと思っています。

ーー前回のイベントからはどれくらいの繋がりが生まれたのでしょうか?

高橋さん: 直後のアンケートで把握できているだけでも44件ありました。継続して僕らがサポートしているものもあれば、繋がった方同士で独自に進めていただいているケースもあります。

理想は、ここで出会った両者が僕らの手を離れてどんどん進んでいくこと。そういう動きを増やしていきたいですね。正直、把握しきれないのが課題でもありますが、見えないところで勝手にコラボが生まれていることが嬉しいです。

ーー まさにLANDという場所が、今の十勝の新しい繋がりを生むハブになっているんですね。ところで、小田さんご自身も、十勝のご出身でUターンされたとか?

小田さん:はい。Uターンして4年目になります。

元々は総務省にいて、大使館勤務で3年間海外へ行ったりと、情報通信や国際協力に関する仕事をしていました。

でも10年くらい前から、SNSを通じて地方で面白いことをしている人たちの活動が見えるようになってきて。都会で仕事をしていながら、ずっとそういう世界への憧れがあったんです。

東京にいた頃は「組織や仕事をいかに円滑に回すか」に面白みを感じていましたが、海外勤務も経験して戻ってきた時、次の目標がなかなか見出せなくて。そんな中、コロナ禍になって「もうどこでも仕事ができるなら、地元に戻りたいな」と。

「十勝は全国的に見ても、かなり面白いところだ」という確信がありました。

古民家を改装したり、新しい企みを起こしたり……。自分自身で大きなインフラを作るのではなく、そういう「動いている人たち」を応援して、一緒に作戦会議ができるような場所を作りたかった。

そんな時にLANDの存在を知ったんです。帯広に帰ってきて3週間ほどで声をかけていただいたので、本当にご縁だなと思いますね。

やりっぱなしでは終われない。二人が見据えるこれからの「開墾」

ーー最後に、今回の「開墾」を振り返ってどうでしたか?今後のビジョンについても教えてください。

小田さん:1日目のキャラバンの時から、参加者の皆さんの熱量がすごかったですね。

東京や札幌など、管外から自費で来られている方も多く、何かを学ぶ・掴むという目的意識の高さに驚きました。

去年と比べても参加者同士の交流が活発で、休憩時間のたびにあちこちで名刺交換が行われている光景は、見ていて本当に良かったです。

やりっぱなしで終わるのではなく、一番狙っているのは人々の「行動変容」です。ここでの出会いでどう行動が変わっていくか。そこを応援したい。今後は「どうすれば十勝の皆さんのハートに火をつけられるか」というテーマを追求しながら、マッチングの精度も高めていきたいですね。

高橋さん: イベント自体のビジョンというよりは、参加していただいた皆さんが、それぞれ目指す場所に辿り着けるようになること。そのお手伝いにこだわって、これからも続けていきたいと思っています。

ーー高橋さん、小田さんありがとうございました!

今回初めて訪れた十勝の地で出会ったのは、100年先を見据えて土を耕す農家さんや、新たな産業の仕組みに挑む事業者さん、そして全国から集まった熱意ある参加者の皆さん。

なにより印象的だったのは、その熱量を絶やさぬよう「開墾」の場を創り出す、最高に熱い運営チームの姿でした。

「イベントで終わらせない。ここから行動を変えていくんだ」というお二人の決意。それが参加者一人ひとりに波及していくことで、あちこちで新しい未来の種が蒔かれていくのだと感じます。

もし、今の仕事や環境に少しでも壁を感じているなら、一度十勝へ、そして「LAND」へ足を運んでみてください。
そこには、あなたの「やってみたい」を面白がり、一緒に挑戦してくれる頼もしいパートナーたちが待っています!

十勝という広大なキャンバスに、次はどんな面白いビジネスが描かれるのか。
これからの展開が、今から楽しみで仕方がありません…!

十勝で出会った皆さん、本当にありがとうございました!

「KAIKON -開墾-」

主催:公益財団法人とかち財団/LAND
URL:https://www.tokachi-zaidan.jp/index.php

(text:前田恵莉、photo:市岡祐次郎 ) 
※一部写真提供

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