「めんどうなこと」だから、やる。印刷のお祭り“心刷祭”が映し出す藤原印刷の信念

長野県松本市の印刷会社・藤原印刷が開催する、印刷のお祭り「心刷祭(しんさつさい)」。

ふだんは立ち入ることのできない印刷工場の見学ツアーに、8つのワークショップ。44店舗が出店する作り手から作品を直接購入できるマーケット、さらにはトークショーまで!

藤原印刷の工場をまるごと開放して行われる「印刷」の魅力をたっぷりと味わえるオープンファクトリーイベントです。

3回目を迎えた今回は、約900人が来場!

来場された方、出店者さん、藤原印刷のスタッフさんのあいだには自然と交流が生まれ、まるで会場が一体となったような空気に包まれていました。

当日のにぎわいの様子は、しゃかいか!でも取材させていただきました。

地域の夏祭りのような規模で、準備もとても大変そう。「採算度外視なのでは…」なんて噂も。

なぜ、印刷会社がこんなお祭りをしているのでしょうか?

この記事では、藤原印刷のキーマン「藤原兄弟」の弟さんにあたる藤原 章次(ふじはら あきつぐ)さんに、心刷祭にこめた想いを伺いました。

はじまりは、1台のタイプライター。藤原印刷の歩みと転機

藤原さんは、お兄さんで専務取締役の隆充(たかみち)さんとともに、会社の経営にかかわりながら東京支店で営業を担当されています。

藤原印刷の歩みは、1955年(昭和30年)から。藤原さんの祖母が、タイプライター1台で「藤原タイプ社」を立ち上げたのがはじまりです。

藤原さんが藤原印刷に入社されたのは、15年前。当時はお客様のほとんどが出版社で、法律や教育に関する専門書づくりが主な仕事でした。そうした案件の多くは、紙面のデザインから担当していたといいます。

というのも、創業当初は契約書のひな形をつくる仕事、今でいうレイアウトやデザインに近い仕事をタイプライターで行っており、もともとデザインからはじまった会社だから。そこから60年近くは、出版社との仕事が大半を占めていました。

藤原さんも、入社してからの2年間は出版社への営業を担当。ですが、「このまま同じ仕事を続けるのは厳しい」と感じていたといいます。

「その当時から、出版不況ははじまっていました。これから先も、ずっとこの仕事があるとはだれも思っていない。ですが、ではどうしようかと、実際に動いている人もいなかったんです」(藤原さん)

「うちなら絶対きれいにできる」赤字覚悟の初カラー案件

当時の藤原印刷は、新しいお客様を開拓するといっても、その大半が出版社でした。

ですが、藤原さんはまったく異なった営業先に目をつけます。

本づくりには、表紙をデザインしたり、文章を読みやすく配置するために、必ずデザイナーが関わります。本を出版するときは、デザイナーが印刷会社を決めることも少なくありません。

デザイナーという職種の方に営業すればいいんじゃないか、と思いついたんです。そこからは、ひたすらデザイナーさんに『もしよかったら、ご一緒できませんか』って声をかけ続けました」(藤原さん)

そんな日々のなか、藤原さんはネットであるニュースを見つけます。

それは、当時大学3年生の方が、水原希子さんを表紙にしたファッション誌『N magazine』を作ったという内容。創刊された1000冊すべてが即完売したこともあり、当時注目を集めていました。

そこで、藤原さんはすぐにTwitter(現在のX)のダイレクトメッセージで「この雑誌をうちでも印刷させてほしい」と創刊者に連絡します。

ですが、返ってきたのは「もうこの雑誌をもう一回印刷する気はない」という悲しいお返事でした。印刷の色の仕上がりに満足しておらず、意気消沈されていたのだといいます。

ですが、藤原さんはあきらめずアプローチを続けます。「うちでは絶対にきれいに印刷します!」と、創刊者だけでなく、雑誌のデザインをしたデザイナーにも連絡。そして、ようやく承諾をいただけることに。

そして、実際に印刷されたものがこちら。

写真の右にあるのが、藤原印刷で印刷した雑誌です。

色の鮮やかさ、肌の透明感がまったくちがう!みずみずしい美しさが伝わってきます。

表紙だけではなく、中身ももちろんきれいな色に。この雑誌に関わったクリエイターさんからも感激されたといいます。

藤原印刷の高い技術と、藤原さんの熱意がカタチになり、美しくよみがえった雑誌。

すごいなぁ…と感動していると、藤原さんから衝撃の一言が。

「でも僕、カラー印刷の案件、担当したことなかったんですよね
えっ…?

というのも、それまでの藤原印刷は、カバーがカラー印刷、カバー以外はモノクロ印刷なのが通常。中身までカラー印刷をするのは、会社全体で年に1回か2回ほどしかなかったといいます。

「だから最初に印刷された色が悪いって言われた雑誌を見ても、どこが悪いのか具体的にはよくわからなくて。だけど、きれいじゃなかったものがきれいになったら、お客様は絶対うれしいですよね。

『うちならもっときれいに印刷できます、前に印刷したときの半額で、その2倍の部数を作ります!』って創刊者に伝えたんです。藤原印刷からしたら、完全に赤字なんですけどね(笑)」(藤原さん)

おお、ものすごい度胸…!
しかも赤字が確定しているのに、どうしてそんなことを。

なんでも藤原さんは大学1年生のときから営業のアルバイトをされていたそうで「これが今後の営業資料として大活躍し、必ず今回の赤字分を回収できるくらい仕事を取れると確信した」からだといいます。

そんな営業の勘をもとに仕事を受注した藤原さん。ですが、現場からは非難轟轟で、猛反対にあったそう。

「全ページカラー印刷なんて、そんなの藤原印刷の仕事じゃない!って現場から言われたんです。色にこだわる仕事なんて、これまでやったことがないので、当然と言えば当然なんですけどね。

そのときに助けてくれたのは、ケンカした現場の管理職じゃなくて、印刷する機械の担当者だったんです。印刷物の色を見て仕上がりを整えるプリンティングディレクターと印刷オペレーターが、責任をもってきれいに印刷してくれたんです」(藤原さん)

そうして藤原印刷で増刷した雑誌は、当時藤原さんが確信したように、13年経ったいまでも営業資料になっているといいます。

16ページごとに違う紙を。こだわり抜いて仕上げた雑誌『NORAH』

「もうひとつ営業資料があるんですよ」と藤原さんが見せてくださったのが、こちら。

表紙が6パターン、中身が2パターン…?

変わった本だなと思っていたら、実はこれ、もっと複雑なつくりでした。

ことのはじまりは、藤原さんのもとに届いた「1ページごとに違う種類の紙を使って本を作りたい」というリクエスト。それは、青山ファーマーズマーケットを運営しているメディアサーフコミュニケーションズ株式会社の方から持ちかけられたものでした。

雑誌の名前は『NORAH(ノラ)』。コンセプトは「ノラ仕事」で、雑多な感じを紙面でも表現したい、という想いがあったそうです。

ただ、1ページごとに紙を変えるとなると、時間もお金もかかりすぎてしまいます。そこで藤原さんは、「本は基本的に16ページが1セットなので、16ページごとに紙を変えるのはいかがですか?」と提案します。

さらに、本文を白い紙からはじまるパターンと茶色い紙からはじまる2パターン、表紙もそれぞれ異なる紙で6パターン用意して掛け合わせれば、デザインは同じなのに紙が異なる12パターンの雑誌がつくれます、とも伝えました。

お客様は、この提案に「やろう」と乗り気に。こうして、本文や表紙の紙によって異なる表情をみせる、まさに「ノラ仕事」っぽさが感じられる雑誌が誕生しました。

ですが、この複雑な仕様を実現するのは、簡単ではないようで…。

異なる紙を使う場合、紙を入れ替えてすぐに印刷にかけることはできず、水の供給量のバランスやインキ量などを、紙を変えるたびに細かく調整するのだといいます。

たとえば、16ページごとに紙を変える場合、全部で160ページの本なら、10回分の紙替え、つまり10冊分の手間がかかる。さらにこの雑誌の場合、本文がはじまる紙も2パターンあるので、実質的には20冊分の手間がかかっているのだとか!

なんだか大変な作業…。これまた現場からものすごい反対されそう。

「ふつうの印刷会社は、こんな手間がかかることはやりませんからね。ここから『藤原印刷がすごいめんどくさいことやってる』みたいな噂が広まっていきました」(藤原さん)

色をきれいに印刷できること。
お客様の希望にとことん寄り添えること。

この2つを武器に、藤原さんはデザイナーさんに営業をかけていきました。

さらに、近年は「ひとり出版社」をはじめ、個人で小部数の本をつくる方も増えてきました。

ですが、少ない部数の印刷は断られてしまうこともしばしば。というのも、大量印刷を前提とした設備や工程では、どうしても手間やコストが見合わなくなってしまうから。

ですが、藤原印刷では、そうしたケースでも快く受け入れているといいます。

お客様のこだわりに、とことん寄り添う。それは言い換えるなら、手間がかかる、いわゆる「めんどう」な仕事をするということ。

ですが、藤原さんがそれをやり続けたことで、クリエイターたちの口コミで評判が広がり、どんどんお客様が増加。現場からも協力が得られるようになったといいます。

そして、いまや藤原印刷は、SNS上でもっとも多く名前があがる印刷会社に!公式SNSには毎週のように問い合わせがあるなど、「ぜひ藤原印刷さんに」という声が後を絶たないといいます。

きっかけは「印刷工場で本を売りたい」の声 

転機が訪れたのは、6年ほど前のある日のこと。

あるお客様が藤原さんに「本が生まれる印刷工場で、本を売るイベントがあったらいいな」とおっしゃったといいます。

藤原さんからすると、当たり前のように仕事をしている工場。ですがお客様にとっては、自分の大切な本が実際に印刷される、特別な場所。そこで自分の本を売ってみたい、ということでした。

藤原さんはその声に「お客様はそんなふうに思っているのか」と驚いたといいます。

そこで、社長や工場長にかけ合い、工場の稼働を1日止めて、これまで一緒にお仕事をしたお客様を集めて、お祭りをすることに。それが、心刷祭のはじまりでした。

心刷祭は、藤原印刷さんがはじめたわけではなく、お客様の声が出発点になっていたんですね!

回ごとに異なるテーマを設定。軸にあるのは「藤原印刷らしさ」

お客様の「やってみたい」の声から、開催を決めた心刷祭。

とはいえ、藤原印刷はあくまで印刷会社。工場をすべて開放して行うような大規模なイベントを企画・運営するのは、はじめてのこと。どんな内容にすべきか、どんな準備が必要なのか、手探り状態からのスタートでした。

マーケットに出店いただく方は、これまで藤原印刷と仕事をされたお客様に声をかけたといいます。その際に伝えたのは「出店料はいただきません」ということ。

「初開催でどのくらいの方が来場されるか、まったく予測がつかなかったからです。ですが、とにかくできる限りの集客努力をするので、出ていただけませんかとお願いしました」(藤原さん)

チラシの作成、地元のFM局への出演、SNSでの発信など、一人でも多くの方に知ってもらえるよう力を尽くしたといいます。

そして迎えた、栄えある第1回目の心刷祭当日。その結果は…?

「社員の多くから、人が来ないのではないかという不安の声もあがっていたんですが、ふたを開けてみると、想像をはるかに超える300人もの方にご来場いただいたんです。駐車場も常に満車の状態で。本当に大盛況でしたね」(藤原さん)

2019年にはじめて開催された心刷祭。コロナ禍を経て、4年後の2023年に2回目が開催されました。

初回の出店者は、主にひとり出版社の方など、本をつくっている方が中心でした。そのため会場に並んだのは、ほとんどが本ばかり。

ですが、2回目を開催するにあたり、出店のラインナップを一新したといいます。

「1回目はほぼ本だけだったんですが、それだと『本の藤原印刷』にしか見られない。だから裾野を広げて、藤原印刷にはこんな多種多様なお客様もいらっしゃるんですよ、ということを伝えたいなと思いました。

そこで2回目は、半分は本を扱うお客様、もう半分はパンやコーヒーなどの飲食物や日用品などを扱うお客様にしました」(藤原さん)

そして迎えた、3回目となる今年の心刷祭。
はたして、そのテーマは?

「『藤原印刷だからこそできるコラボ』です。僕たちが間に入るからこそ実現できる、おもしろい組み合わせってなんだろう?と考えて、出店者さんに打診して、同じブースに配置しました。この1日だけ、心刷祭だけのチームをつくったんです」(藤原さん)

この日限定のコラボレーション!なんだかわくわくする試みですね。

たとえば、トークイベントに登壇されたローカル編集者の徳谷さん・藤本さん・古川さんの3人には、同じブースに立っていただくことに。だれか1人に会いに来た人も、ブースを訪れれば自然と他の2人とも話すきっかけができるという仕掛けです。

「来場された方が、なるべくたくさんの方とお話しできるように」という意図があるそう。うれしい配慮ですね!

「カオス」が生み出す、心刷祭の一体感

1回目、2回目、3回目とそれぞれテーマは違うものの、一貫して大切にしていることがあるといいます。

「僕は常に、いい意味でカオスでありたいと思ってるんですよ。どういうことかというと、印刷会社は基本、デザイナーや編集者、写真家など一定の決まった職業の方と仕事をすることが多いんです。やっぱりそこに仕事があるから。

でも、僕は逆なんですよね。印刷物はだれでも作れると思っているし、印刷会社はどんな方とも仕事ができると思っています。個人でも法人でも、本を作ったことがある人も初めての人も、年齢・国籍・業界・職種に関係なく、どんな方でも。

それを伝えたいと思って、この十数年間やってきました。なので、いい意味でのカオスっていうことを常にテーマに、これからもやっていきたいですね」(藤原さん)

カオス、つまり「どんなお客様も大切にする」という考えが、心刷祭の雰囲気につながっているといいます。

たしかに、出店者さんが写真家やデザイナーの方ばかりだと、その界隈の人だけが集まる、初心者はちょっと参加しづらい雰囲気になってしまいそう。

「印刷物を年に1回出す方も10年に1回の方も、影響力のある方もそうでない方も、藤原印刷と一度でもお仕事をしたことがある方は、藤原印刷のお客様です。

いろいろな出店者さんが集まっているけれども、藤原印刷と仕事したという共通点があるから、すぐに打ち解けられる。あの心刷祭の、ひとつのコミュニティのような雰囲気は、あくまで『藤原印刷のお客様』という軸をぶらさないでやってきたからこそ、感じられるものかなと思っています」(藤原さん)

どんな人ともお仕事ができるし、どんな人でも藤原印刷のお客様。その考えが心刷祭の、さまざまな人を受け入れるオープンな雰囲気でありながら、一体感も感じるような雰囲気をつくっていたんですね!

赤字で手間もかかる。それでも心刷祭を続ける理由

それでも、イベント会社ではない藤原印刷がこうしたお祭りをするのは、ものすごく大変なことだといいます。

冷蔵設備を整えたり、シャトルバスの手配をしたりと、多くの手間がかかります。心刷祭の準備のために、前日は午前中までで一切の仕事を終了させるのだとか。

しかも…

「藤原印刷がお金をいただいているのは、工場見学とワークショップの参加費だけ。出店料やそれ以外の費用は一切いただいていません。心刷祭は、黒字にしたいなんて考えていたらできないんですよ」(藤原さん)

準備が大変で、ぶっちゃけ赤字。それなのに、なぜ開催を続けるのでしょうか?

そう問いかけると、藤原さんはしみじみと「やればやるほど、想像もしなかったいいことがあるからですね」と。

たとえば、タイピングのワークショップ。どれだけ早く正確にパソコンに文字を打ち込めるかチャレンジするこのワークショップは、「組版」の部署(印刷物のデザインを担当する部署)の社員さんが企画されました。実はここで使ったソフト、既存のものではなく、社員さんが自作されたものなんだとか!

さらに、当日はあいにくの雨。タイピングのワークショップは、屋外休憩スペースの奥にあるトラックの荷台で行っていたため、傘をさした来場者からは気づきにくい位置にありました。そこで、社員さんは看板を手に持って「この奥でワークショップやってます!」と呼び込みをされたそう。

組版は、藤原さんいわく「もっとも正確性が求められる、地道な作業」。シーンとした部屋のなかで、ひたすら修正やレイアウトデザインを行います。どちらかというと自分で考えるよりも、お客様からのリクエストに忠実に応えることが求められる仕事です。

「ふだん表立って前に出ない組版部署の人たちのなかに、ソフトを自作できるような人がいた。悪天候のなかでも、1人でも多くのお客様に喜んでいただけるようにと、みんなで考えて動いてくれた。

それは、心刷祭をやらなければ気づかなかったことでした。こんなふうに、『これまで見えなかった光景が見えるって、本当に素敵なことだね』って兄貴とも話していました」(藤原さん)

ほかには、こんな良いことも。

「心刷祭の2回目にお母様と一緒に来られた方が『こんな仕事があるんだ、おもしろそう!』と、うちに入社してくれて。今回の3回目では、お客様をもてなす側として参加してくれたんです」(藤原さん)

すごい、そんなことあるんだ!今回も、心刷祭の直後に「自分もこんな仕事がしたい」と、求人への応募が2人もあったそう。

さらに、出店者さんからもうれしい言葉をいただいたといいます。

「これまで数多くのイベントに参加されてきた著名な編集者さんが『これまでのイベントのなかで、いちばん本が売れた』って言ってくださったんです。2回目のときもそうだったんですが、売り上げが良くなかったという店舗がひとつもなくて」(藤原さん)

心刷祭には、長野県内だけでなく、東京や大阪など遠くから参加されているお店もたくさんありました。出張費などを考えると「どう考えても赤字」だと藤原さんはいいます。

それでも、40を超える出店者さんが集まるのは、なぜなのでしょうか?

「大事なのは、出店者さんとの関係性だと思います。これまでお仕事をさせていただいたなかで『藤原印刷のお祭りなら、ぜひ出てみたい』って思っていただけるかどうか。

実際に、売り上げとしては赤字だけれども、ほかの出店者さんたちを見て『自分もここに参加させてもらえてうれしかった』と言ってくださることも多いんです」(藤原さん)

来場されたお客様は、工場を見たり、印刷の仕事を体験したり、すてきな本や雑貨を買ったりして楽しめる。

出店者さんは、商品がたくさん売れたり、ほかの出店者の方と交流ができる。

藤原印刷の社員さんは、お客様の「すごい!」という声を聞いて、自分たちの仕事に誇りをもてる。

そして、藤原さんなど会社の経営者側としても、これまで見えなかった社員の新しい一面が見られたり、採用につながったりしている。

心刷祭、やっぱりすごい。どんな立場の人も、もれなく幸せにしている…!

「心刷祭は、本当に一言じゃ片付けられないくらい、いいことがたくさんあるんです。お金の損得だけで考えたら、やらない方がいいんです。でもやっぱり、出ていくお金以上に、毎回新しい気づきやうれしいことがあるからこそ、やり続けていますね」(藤原さん)

「めんどうなこと」こそ、積極的にやるのが大切

お客様の「やってみたい」の一言からはじまった心刷祭。準備が大変で、正直赤字だけれども、それ以上にうれしいことがあったから、やり続けている。

この「やったことないことでもやる」「手間がかかることでもやる」というのは、藤原さんが入社されてから、ずっと大切にしてきたことだといいます。

「めんどくさいことを積極的にやっていこう、という人は少ないなと感じていて。世間的にも、うちの社員にも言えることなんですが、どうしたら仕事が取れるかとロードマップを描こうとする人がすごく多いなと。

そういうことは、いまやChatGPTがすぐに考えてくれる。でも、AIは営業先のリストを作ったり、営業電話をかけたりということは、今の段階ではしてくれませんよね。実際に走ってみないとわからないこともある。なので、まず『やりはじめてから考える』ことが大切だと思っています。

僕が入社してからの13年間、お客様が100人いたら100通りの要望があって、それに全部真摯に応えてきました。だからこそ、いま多くのお客様に信頼していただいているのだと思います。

ちょっとめんどうなこと、手間かもしれないなと思うことを、積極的にやり続ける。それこそが『ぜひあなたにお願いします』につながるのだと、僕は考えています」(藤原さん)

たとえ手間がかかることであったとしても、すべてのお客様に寄り添い、そこにある想いをカタチにする。

それが藤原印刷の信念であり、それをまさしく体現したものが心刷祭だったんですね。

「心刷」

創業者が遺した「一文字一文字に心を込める」という意味のこの言葉は、藤原印刷の理念になっています。

部屋いっぱいに響く印刷機の音に、じっと文字を見つめる静寂に。
その想いは、いまも確かに息づいています。

藤原さん、熱いお話をありがとうございました!

藤原印刷株式会社

住所:長野県松本市新橋7番21号(本社)
Web:https://www.fujiwara-i.com/

Instagram:https://www.instagram.com/fujiwara_printing/
X:https://x.com/FJWR_printing
note:https://note.com/fujiwaraprinting

(text:小島 千明、photo:篠原 豪太)

関連するキーワード

最新訪問ブログ

訪問ブログ一覧へもどる