人生にワクワクを、世界に彩りを。友安製作所がデザインする「生きるをあそぶ」はたらき方

あなたの「色」は、何色ですか?

もっと自分らしい「色」を表現して、 仕事もくらしも楽しみたい!
そんなあなたへ、ちょっと気になる会社さんをご紹介させてください。

その会社は、株式会社友安製作所。
製造業がさかんで「ものづくりのまち」として知られる、大阪府八尾市に本社を構えています。

ネジを製造する小さな町工場としてスタートした友安製作所は、今ではインテリア・エクステリア商品の販売を中心に、カフェの運営や工務店事業、まちづくり事業などを手掛けるライフスタイルカンパニーへと進化。人生のあらゆるシーンを彩るモノやコトを生み出しています。

実は、この友安製作所さん、かなり変わった社風だというウワサ…。

150人ほどの全社員を巻き込んで「コアバリュー」なるものをつくったり、全社員が「デザイナー」を名乗っていたり。

いったいなぜ、こんな不思議な取り組みをされているんでしょうか?
大阪の小さな町工場から世界中に“彩り”を届ける、その秘密に迫ります!

いただきまーす!

じゃなくて、こんにちは!「しゃかいか!」編集部の小島です。

見てください、このおいしそうなハンバーガー!
しかもこれ、かぶりつけないほどのアメリカンサイズ。

こちらは、スパイスキーマカレー。ああ、これもおいしそう…!

ここがどこかって?
こちらは、友安製作所が運営している「友安製作所Cafe&Bar 阿倍野店」です!

(写真提供:友安製作所)

訪問させていただいたのは、14時ごろ。にもかかわらず、店内はお客さんでいっぱい!人気ぶりがうかがえます。

お食事のおいしさもさることながら、まるで結婚式場のような、思わずときめいてしまう内装も人気のひとつです。

ここがバースペース。おしゃれであたたかみのある内装!

注目ポイントは、右上。
照明に照らされた針金が、壁に友安製作所のロゴを映し出しています。なんて粋な…!

友安製作所がメインで行っている事業は、インテリア商品の販売。
このカフェは「生きたショールーム」という位置づけで、インテリアショップとしての役割も果たしています。

ここにあるインテリアは、すべてが友安製作所の商品!家具や雑貨についているタグのQRコードをスマホでかざすと、その場で購入することもできます。

このカフェはレンタルスペースとしても使われており、DIYワークショップなどを定期的に開催しています。
インテリアに興味がある人たちが集う空間にもなっているんですね!

非日常を感じるような素敵な空間に、ボリューミーでおいしいごはん…。
もう大満足!

お腹がいっぱいになったあとは、友安製作所さんのオフィスを訪問させていただきました!

こちらが、八尾にあるオフィス兼工場。

「こちらへどうぞ」とご案内いただき、 中にお邪魔すると…これまたおしゃれな空間が!

ドラマに出てくるオフィスだ…!

スタイリッシュで使い勝手の良さそうなデスクやソファに、癒しの観葉植物。
実はこれ、ほとんど自社商品なんだとか! 

さっきのカフェもそうでしたが、おしゃれすぎる…。 

シャンデリアまで…。オフィスとは思えない優雅さです。

このオフィスで何より驚いたのが、社員さんたちの集中力の高さ。

しゃかいか!のトレードマーク、青いヘルメットをかぶった謎の集団がガヤガヤやってきても、一切ざわつくことなく真剣にパソコンに向かっていらっしゃいます。

友安製作所では、日本だけでなく、アメリカやイギリス、台湾など、さまざまな国から集まったメンバーが活躍されています。

日本に働きに来る外国人のなかには、アニメーターなどクリエイティブな仕事がしたい人も多く、募集をかけると何百人という応募があるそう!

その多数の応募者のなかから、上澄みのクリエイティブな人を採用することで、今までのデザイナー陣にもいい刺激が生まれるのだとか。

友安製作所 …なんか、すごそう。

この「なんか、すごそう」の秘密を解き明かすべく、友安製作所 代表取締役社長の友安 啓則(ともやす ひろのり)さんにお話を伺いました!

「父と働きたい」限界町工場を立て直す

友安製作所は、1948年に友安さんのお祖父様がネジの製造会社として創業し、2代目のお父様がカーテンフックなどの製造・販売を主力に事業を成長させました。現代表の友安さんは、その3代目にあたります。

ですが、もともとは「家業を継ぐ気はまったくなかった」とのこと。高校の途中から単身でアメリカに渡り、大学院でMBAを取得したあと、アメリカの商社で働いていたといいます。

そんな友安さんの心を変えたのは、日本からの1通の連絡。
「父が倒れた」という知らせでした。

「連絡を受けて、急に幼いころの記憶が蘇ったんです。父が社員や取引先の方に『社長』と呼ばれていた姿がかっこよかったことや、周りの人たちに「跡継ぎ」と呼ばれてなんとなく嬉しかったこと…。いろいろな想いがめぐって『父と一緒に働きたい』と思ったんです」(友安さん)

そうして、友安製作所への入社を決意し、2004年に帰国。
そこで友安さんが目にしたのは、活気のあった過去とはかけ離れた、限界町工場のような会社の姿でした。

最盛期には1日600万本のカーテンフックを出荷していた友安製作所でしたが、時代が進み、安価なプラスチック製品が登場したことにより売上が激減。そのときの借金は、なんと3億円。かつて30人いた従業員は、わずか5人になっていました。

こんな状況だったため、友安さんの入社について、友安さんのお父様は猛反対。

「こんな町工場に未来はない、なんのためにアメリカに行かせたと思ってるんだ、と父から言われました」(友安さん)

それでも食い下がる友安さんに、ひとつの条件が出されます。
それは、新しく事業をはじめ、半年以内に自身の給料分の金額を稼ぐことでした。

この条件のもとで友安さんがはじめたのが、海外から輸入したインテリア商材の販売でした。

インテリアのなかでも、注目したのはカーテンレール。台湾の工場を1軒ずつ回っては交渉を重ねた結果、1社だけ取引に応じてくれる企業と出会います。そして、輸入したカーテンレールを車に積みこみ、日本全国に飛び込み営業をしました。

この輸入ビジネスが軌道にのり、友安さんは「半年以内に自分の給料分の利益を出す」という目標をクリア。ようやくお父様も入社を許してくださったといいます。

「僕の会社」から「僕たちの会社」へ

こうして会社を立て直し、事業をどんどん拡大していった友安さん。
ですがその過程では、社員との間に「考え方のズレ」があったといいます。

「25歳ではじめて人を雇用したんですが、社員それぞれに個性や価値観が違うということを理解していなかったんです。『これをやるとおもしろいのに、なぜこの醍醐味が分からないんだろう』と、自分の考えを一方的に押しつけてしまっていたんです」(友安さん)

その結果、会社は急成長していたにもかかわらず、離職率は50%にものぼっていました。

友安さんが自身と社員との間に考え方のズレがあると明確に気づいたのは、およそ15年前のこと。

ある社員との面談の場で、「5年後までに会社をどうしたいか」と尋ねました。 年商はこれくらい、社員数はこのくらい、と返ってきたその答えは、友安さんが描いていたビジョンと大きく異なっていたといいます。

それどころか、その社員から「矯正下着を売りたい」との提案を受けます。「楽天市場でランキング入りしているから、絶対売れます!」と。

その発言に衝撃を受けた友安さんは、これまで自分の考えが社員にまったく伝わっていなかったことに気づきます。そこで、自分の想いを社員と共有するため、会社としての理念やミッションをきちんと定めることにしました。

友安製作所の理念は、“Add Colors to everyone’s life”(世界中の人々の人生に彩りを)。

「アメリカから帰国したとき、日本の住宅や生活は画一化されていて、アメリカと比べて暮らしを楽しんでいないように見えました。

ひとりひとりがカラー・個性を表現して、自分の好きなインテリアに囲まれて生活してほしいと思ったんです。そうすれば、それぞれの人生も彩り豊かになり、色とりどりな明るい社会が実現するのではないか、と」(友安さん)

こうして、理念やビジョン・ミッションなどを明確にしてから2年後。

以前「矯正下着を売りたい」と言っていた社員と面談し、改めて「これからどんな会社にしたいか」と聞いたところ、「いちいちかっこいい会社にしたいです」と言われたそう。

「はじめて言語が通じた感覚がありました。自分が思い描いている未来と、同じものを社員も見てくれている。そのとき、『僕の会社』から『僕たちの会社』に変わったんです」(友安さん)

個性を表現した、自分らしい色の生き方を。
理念のもとになったこの考え方は、お客様に対してだけではなく、社員に対してもとても大切にされているそうです。

事業同士が連携する経済圏「COLORS CIRCLE」

現在、友安製作所が行っている事業を示したものが、「COLORS CIRCLE(カラーズ・サークル)」と呼ばれるこの図。

 (画像提供:友安製作所)

インテリア・DIY アイテムのインターネット販売事業を中心に、カフェ、工務店、レンタルスペース、メディア、まちづくりなど、さまざまな事業を展開しています。

友安さんによると「事業同士が連携し、経済圏をぐるぐる回している」とのこと。

「たとえば、あるお客様がメディアでカフェの存在を知り、実際に訪れたとします。そこで『この空間素敵だな、自分のお店もこんな雰囲気にしたい』と思って、工務店に依頼する。さらに『この場所を使って収益を得よう』と考え、レンタルスペースとして貸し出す。こうした流れが生まれるんです」(友安さん)

おお、なんとあざやかな…!「経済圏」の意味がよくわかりました。

「ものづくり企業」への回帰 

様々な事業を展開している友安製作所ですが、すべての根底にあるのは「ものづくり」。

2004年に友安さんが入社された際は、一度ものづくりをあきらめ、外部からインテリア商材を仕入れて販売していました。

再びものづくりを意識するようになったのは、9年前。会社のオフィスや工場を一般公開する「友安製作所フェスタ」というイベントを初めて開催したときのことでした。

「当初はオフィス空間のデザインを見ていただく目的で開催したのですが、訪れたお客様が動画や写真を撮影していたのは、祖父が作った機械だったんです。その様子を見て「うちの会社の価値はデザインだけでなく、ものづくりにもあるのかもしれない」と思ったんです」(友安さん)

そこから、再びものづくりをスタート。今では、カーテンレールやDIYアイテムなど、オリジナル商品を多数展開しています。

友安製作所の製品は、なんと現在開催中の2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)にも出展されています!

(写真提供:友安製作所)

ものづくりの製造過程で出る端材や廃材を活用した、アート作品のようなスツールとテーブルを万博会場内の「フューチャーライフヴィレッジ」の中庭に設置しています。

さらに、こんな驚きのニュースも。 

友安製作所が開発したホウキとチリトリのシリーズ「BRUSH UP(ブラッシュアップ)」が、世界三大デザイン賞のひとつ「iFデザインアワード2025」の最高賞(Gold Award)を受賞されたのです!

(写真提供:友安製作所)

「iFデザインアワード2025」は、1953年からつづくドイツの伝統あるデザイン賞。全世界の工業製品などを対象に、優れたデザインを選定しています。

世界中のプロダクトが競い合うなかで最高賞に選ばれるのは、全体のわずか1%ほどの狭き門!
すごすぎる!!おめでとうございます!!!

 「BRUSHUP」シリーズが気になる方は、コチラもご覧ください ↓
https://tomoyasu.co.jp/news/detail.php?id=299

多彩なメンバーをつなぐ “Tomoyasu Way Of Life”

年齢、性別、国籍、さまざまな価値観やバックグラウンドをもった個性豊かなメンバーが集まる友安製作所。
その多様性を大切にしつつも、同じ会社の仲間として、全員が一致団結することも必要です。

そのために作ったのが、コアバリュー “Tomoyasu Way Of Life” 。

これは、社員ひとりひとりが、会社のスローガン「生きるをあそぶ」を体現しながら働くための行動指針となるもの。10個のルールから構成されています。

たとえば、こんな内容が。

・Show Your COLORS

 多様性を認め合い、個性あふれる価値提案を

・Do With PASSION

 仕事に、遊びに、情熱を!いちいちかっこいい仕事を 

あれ?この「いちいちかっこいい」という表現、聞き覚えがありますね。
友安さんの想いが社員さんに伝わったことを象徴するあのことばも、ここに反映されているんですね!

コアバリューは、 150人ほどの全社員を巻き込み、それぞれにアイデアを出し合って決めたそう! 

これを人事考課の基準にもすることで、全員が同じ方向に向かって仕事に取り組めるようにしているといいます。

アメリカ風の「ビジネスネーム制度」

友安製作所には、こんなユニークな社内制度も!

「うちは “さん” づけや “社長”などの役職呼びは禁止。初対面でも、アメリカ風のビジネスネームで呼び合います。私は “ボス”、社員たちは “ウィル”や “キキ”と名乗っています」(友安さん)

ビジネスネーム制度、すごくいいなぁ…。

じつは、私が学生時代にアメリカに留学していたとき、先生から「アメリカ人の名前を名乗りなさい」と言われて、「レイチェル」と名乗っていたことがありました。

「レイチェル」と呼ばれると、なんだか別人になった気分になるんですよね。気持ちがオープンになったり、ちょっと勇気がいることにもチャレンジできたり。

そんなことを友安さんに伝えると「そうですよね」と。

「オンとオフが明確に分かれることがメリットですね。それに、初対面からビジネスネームで呼び合うことで、自然に心理的な距離が近くなります。そうやってコミュニケーションを円滑にして、フラットな風土をつくる意図もあって導入しています」(友安さん)

ちなみに、私がアメリカで名乗っていた「レイチェル」は、『沈黙の春』の著者レイチェル・カーソンから。

みなさん、この本読んだことあります?もしご興味あれば、ぜひこころが元気なときに読んでみてくださいね。私はちょっと病みました。

…余談でした。友安さんのお話に戻りましょう。

全社員が「デザイナー」

「うちは、全社員がデザイナーなんです」と、友安さん。

全社員がデザイナー…?どういうことでしょうか。

「私は『デザイン』という言葉を、どちらかというと『企てる』という意味で捉えているんです。なので、執行役員たちと合宿をしたときに『全社員デザイナー宣言をしよう』と決めたんです」(友安さん)

なるほど!「デザイン」には、目標達成や課題解決のために考え、行動するという意味も含まれる。そのため、どの職種の方であっても、それぞれの仕事に対して「デザインする」という意識で取り組んでいるんですね。

より良い方向に進めるために、「デザイナー」として主体的に物事を考え行動し、自分なりのワクワクを表現する。それが、新たな創造を生み出すことにつながる。

その考え方は、部署の名前にも反映されています。

「仕事や空間を 『自分たちでデザインする』という意識を持ってもらうために、部署名にはすべて “デザイン” がついています。たとえば、ソーシャルデザイン部、ワークプレイスデザイン部といったように」(友安さん)

ソーシャルデザイン部は「社会とのつながりをデザインする」という意味で、工務店事業やまちづくり事業を担当。
ワークプレイスデザイン部は「自分たちの働く場所をデザインする」という意味で、総務や経理を担当しています。

たしかに、自分のことをデザイナーだと思ったら、自分からアイデアをどんどん出すようなクリエイティブな仕事ができそうな気がする。「全社員がデザイナー」という考え方、とっても素敵…!

全社員が体現する「生きるをあそぶ」

この「全社員デザイナー宣言」の根幹にあるのは、会社のスローガン「生きるをあそぶ」

「人はそれぞれ異なる個性や価値観を持っていますよね。そこから広がる感性や好奇心、情熱、ワクワクやドキドキを自由に表現していく。これが私たちの言う『生きるをあそぶ』ということ。

くらしや仕事、人生のすべてにおいて、それぞれの個性を表現する「あそび」を楽しむことが、ほかの人を楽しませることにつながると考えています」(友安さん)

さきほど話題に挙がったコアバリュー “ Tomoyasu Way Of Life ” も、「生きるをあそぶ」を体現するための指針になっています。

「仕事のために休日も勉強しました!」って言うとニコニコされる日本で、「自由に人生を楽しむ」が評価指標になるのって、すごくないですか?

こうした文化のもとで働いているからこそ、友安製作所の社員さんたちはとてもクリエイティブで、かつ仕事に真摯に向き合われているんですね。

「世界中の人々に彩りを」友安製作所が描く未来

最後に、これから会社をどうしていきたいか、友安さんに伺いました。

「まずは、地域になくてはならない会社に絶対になりたいなと思っています。地域の人に愛され続ける会社であるために、現在はまちづくり事業にも精力的に取り組んでいます。

あとは、海外展開も進めていきたいですね。海外拠点もいくつかありますが、今年中にドイツの拠点を開設するのが目標です」(友安さん)

力強く将来を語ってくださった友安さんですが、最後にちょっと意外な本音も。

「私も60歳になったら引退したいと思っているので、あと14年ですね。この14年間は、走り切っていきたいなと。ありがたいことに、いま続々と新しいメンバーが入ってきてくれているので、その子たちにもっと世界を広げていってもらいたいなと思っています」(友安さん)

それぞれの「個性」を、何よりも大切にする。そうした環境だからこそ、主体性が生まれ、多彩なメンバーがどんどん活躍しているんですね。

世界中の人々の人生に彩りを。 
そんなビジョンを描き、友安さんたちはこれからも、私たちの人生に新たなワクワクを届けてくれるのでしょう。

友安さん、貴重なお話をありがとうございました!

◾️友安製作所さんがまちづくり事業の一環として関わる、オープンファクトリープロジェクト「FactorISM(ファクトリズム)」
そのキーマンである、友安製作所ソーシャルデザイン部執行役員の松尾さんにも「しゃかいか!」でインタビューさせていただきました!

はたらく、あそぶ、人生のあらゆる場面において、「自分」というカラーを表現すること。

友安製作所さんへの取材では、日々の慌ただしさのなかで忘れかけていた、大切なことを見つめ直すきっかけをいただきました。 

仕事も、くらしも、もっと自分らしく自由でいい。
自分の好きなこと、ワクワクすることを表現しながら、彩り豊かな毎日を生きていきたいですね!

最後に、みなさんに質問です。

あなたの「色」は、何色ですか?

株式会社友安製作所

住所:大阪府八尾市神武町1-36(大阪本社・工場)
Web:https://tomoyasu.co.jp/

友安製作所 Cafe & Bar 阿倍野

住所:大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋2-3-8 HAUS 1F
Web:https://tomoyasucafe.com/abeno/

(text:小島 千明、photo:衣笠 名津美)

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