みて、ふれて、感じた「大谷石」のリアル。世界中の人々を魅了する‘‘癒しの石”の物語をひもとく

そびえる石の壁が、幻想的な光に照らされた空間。
ここ、どこだか分かりますか?

古代遺跡? SF映画のセット?
うっかり異世界転生しちゃって迷い込んだダンジョン?
いいえ、違います!
神秘的なこの場所は、「大谷石(おおやいし)」を切り出して作られた空間です。


大谷石…?はじめて聞いた、という方もいらっしゃるかもしれませんね。
大谷石は、栃木県宇都宮市大谷町周辺で採掘される石で、約1,500〜2,000万年前の海底火山の噴出によってできたとされる凝灰岩(火山灰が固まった石)。
西暦600年頃(飛鳥時代)から古墳や寺院などに用いられ、江戸時代から建材として本格的に採掘が始まったと言われています。
長く親しまれ、今も私たちの暮らしのそばに息づいている大谷石。
その静かな存在感の裏には、知られざる物語がたくさん詰まっています。
今回は、そんな大谷石の物語をひもとくため、採掘の現場と、石とともに生きる人々を訪ねました!
知れば知るほど惹き込まれる、奥深い「大谷石」の世界。
1歩足を踏み入れたら、あなたもその魅力の虜になってしまうかも?

見どころは地下採掘場跡。大谷資料館に潜入!
最初に訪れたのは、栃木県宇都宮市にある大谷資料館。
大谷石採掘の歴史について学べる博物館です。
ここでは、1919(大正8)年〜1986(昭和61)年までの約70年間、大谷石の採掘が行われていました。採掘されなくなった今でも、その採掘跡を当時の面影のまま残しています。

「坑内見学入口」の看板。
そうなんです。ここの見どころは、なんといっても地下採掘場跡!
さきほど写真でお見せした、地下神殿のような空間です。

映画『インディ・ジョーンズ』に出てきそうな石の門。
ここから地下に潜入します!

門をくぐると、地下に続く長い階段が。
本当に財宝が隠されていそうな雰囲気です。
ワクワクして思わず足早になってしまうものの、急ぐと足をすべらせてしまいそう。
はやる気持ちを抑え、ゆっくり、ゆっくり…。

地下に到着しました!
高くそびえる石の壁、響く足音、ひんやりとした空気…。
どこか神聖さや荘厳さが漂う空間。まるで地下神殿のようです。


ここは深さ30m、広さ2万平方メートルの巨大な地下空間。これが全部掘ってできたものなんてすごい…!
壁には、至る所に石を掘り出したあとが残っています。

大谷石の採掘形態には、地下で行われる「坑内掘り」と、地上で行われる「露天掘り」の2種類があります。
ここ大谷資料館がある場所では、そのうちの「坑内掘り」が行われていました。
こんな巨大な空間、いったいどう掘ったの?と思いますよね。
その答えがちゃんと展示されていました。

この下の図のように、まず横に切り進めてから、下に掘っていったそう。
横に切り進める方法は「垣根掘り」、下に掘り進める方法は「平場掘り」と呼ばれています。
採掘は、1959(昭和34)年頃までは手掘り、それ以降は機械によって行われました。
手掘りだった時代は、ツルハシという道具を使って採掘をしていたそう。

ツルハシを使う人の様子が展示されていました。
階段1段ほどの大きさの石を切り出すのに、ツルハシをなんと4,000回も振るったとか!
腕がちぎれそう…。

壁を触ると、ざらざらした感触。
この空気を含んだような質感が、大谷石の特徴です。

よく見ると、白くてふわふわしたものがついていました。
雪の結晶のような、でも冷たくはない…。なんだろう。
これは「石の華」と呼ばれていて、大谷石に含まれるゼオライト(スポンジ状の小さな穴を持つ鉱石)が噴き出たもの。
空気が乾燥する冬場にしか見られない現象だとか。貴重なふわふわ!
クリエイティブを生み出す空間
大谷資料館は、映画やドラマ、ミュージックビデオなどのロケ地としても人気の場所。
映画『るろうに剣心』やB'zのミュージックビデオなど、数多くの作品がここで撮影されたそう!
撮影時の様子が写真で展示されていました。

各作品の写真には、解説がひとことつけられています。
いちばん右下にある写真の解説は「映画飛んで埼玉 3年Z組の教室の前で草を食べさせる加藤諒さん」。
なんかリアルに想像できる…。

アート作品も展示されていました!

非日常を感じさせる、幻想的な空間。いつまでもここにいたい…
…が、残念ながらそろそろ地上に戻らねばならない。身体がそう訴えてくる。
なぜかって?ここ、けっこう寒いんです…!
現在の気温、なんと 4℃。冷蔵庫の冷蔵室と同じくらいの冷え加減。ここは、夏でも1桁に近い気温になっていることも多いそう。
さむいし、暗いし、冷蔵庫に入ってる卵っていつもこんな気持ちなのかな…。
卵に思いを馳せつつ、地下から脱出することを決意。
さきほど降りてきた階段を、気合いを入れて登っていくと…

なにこれ!思わず笑ってしまいました。
ちゃんと現実に引き戻され、地上に戻ってきました。お疲れさまでした〜!
地下採掘場へつながる入口がある隣のスペースでは、手掘り時代の道具や機械などが展示されていました。


大谷資料館では、これまで大谷石がどのように採掘され、どんな歴史を歩んできたのかを学ぶことができました。
この大谷石、実は今でも採掘が続けられているんです。
つぎは、実際に大谷石が採掘されている現場に突撃します!
現役の露天掘り現場「カネホン採石場」

やってきたのは、カネホン採石場。
ここでは、1854年(安政元年)から現在に至るまで、なんと160年ものあいだ大谷石の採掘が続けられています!

崖…というより、もはや石の山そのもの。
その壮大さに、大自然の中にひとりぽつんと取り残されたような気持ちになります。
採石場を運営しているのは、有限会社KANEHONさん。大谷石の採石・施工・販売などをされています。
先ほど、大谷石の採掘方法は坑内掘り(地下)と露天掘り(地上)の2種類あるとお伝えしましたね。
カネホン採石場は、露天掘り。
いまも現役で大谷石の採掘が行われている露天掘りの現場は、日本でここだけなのだそう!
そんな貴重な現場を、カネホンさんでは「採石場見学ツアー」として一般公開されています。
今回は、有限会社KANEHON代表の髙橋卓さんに、場内を案内していただきました!

採石場の面積は、およそ3万平方メートル。
甲子園球場と同じくらいの大きさ。広い!

場内はかなり高低差があり、写真の建物がある場所で石の加工作業、左下の崖のような場所で採掘作業が行われています。
かなり広い採石場ですが、採掘作業は1人、採掘した石の加工作業は2人でされているそう。
取材に伺った時間帯は、石を切り出したときに出る石の粉を集めて、地面を平にする作業をされていました。


この石の粉は、土壌改良剤として農業に使われています。
粉にはゼオライトが含まれており、これが土の中のチッソやリンの濃度を調整する役割を果たすことで、栄養価がなくなった土地を蘇らせることができるとか。
ゼオライト…?どこかで聞いたような。
そうです。先ほど大谷資料館で見た、あの白くふわふわした「石の華」をつくる成分です!
髙橋さんいわく、大谷石は「捨てるところがない」のだそう。環境にやさしいですね。

こちらは、採掘のときに使われる機械。足元にあるレールに沿って、チェーンソーで石を切り出します。

あの有名人も訪れた、人気の撮影スポット
採石場の奥の方に歩いていくと、切り立った崖が!


ここは、昭和時代に採掘されていたところ。
カネホン採石場は、MV、テレビ、アパレルなどの撮影にも協力されていて、この崖の前のスペースでよく撮影が行われています。

例えば、女優の長澤まさみさんはこの崖をバックに写真集の撮影をされたそう!
私はいま、まさみ様が降り立ったところを歩いている…。なんだか急にドキドキしてきました。

このはしご、何に使われたものだと思いますか?
実はこれ、米津玄師さんのミュージックビデオ「馬と鹿」を撮る際に使用されたもの!
2019年に撮影された当時のまま残されています。
撮影する日の前に大雨が降ったことで、このあたりが一面水に浸かったそう。
そこで、はしごの一番上が水面とぴったりになるように調整し、米津さんがあたかも水の上に立っているかのように撮影したのだとか。
写真だと伝わりづらいかもしれませんが、このはしご、結構高いのです…。

カメラマンが登った時のようす。絶妙に高い…!
ちなみに、露天掘りの弱点は、雨だと作業ができないところ。
逆に、地下で行う坑内掘りよりも安全に採掘できることが最大のメリットです。
カネホン採石場でも、かつては坑内掘りが行われていましたが、髙橋さんの先代からは露天掘りに切り替えられたそう。
採掘した石を仕上げる加工場
ここからちょっと場所を移動。
これまで見学したのは、高低差がある採石場の低いところ。今度は、採石場の高いところへ向かいます。

こちらは、加工場。採掘した石を加工する場所です。


機械で石を切っています。

刃が摩擦熱で削れてしまうため、水を使って冷やしながら石を切っていきます。

こちらの機械で石を何ミリに切るかを指定すると、自動で機械が石を切ってくれます。
加工は基本機械で行い、細かい加工は職人さんが手作業で仕上げるそう。


ほんのり緑がかった、素朴な風合いが特徴の大谷石。
採掘されたばかりの大谷石は、25%ほど水分が含まれており、緑色が強く見えます。
だんだん水分が抜けてくると、白っぽい色に変わります。

みて、ふれて、味わって。五感で楽しむ大谷石
カネホンさんでは、採石場見学ツアーとあわせて、ピザ焼き体験やものづくり体験もしています。

こちらは、ピザ釜。
大谷石は遠赤外線を放出するため、短時間で食材の芯まで火が通るそう。
「ピザのほかにも、ホイル焼き、鶏の丸焼きもおいしいよ〜」と髙橋さん。
雄大な風景を眺めながら食べる、焼き立てのお料理…。
確信します。絶対においしい!

ものづくり体験では、大谷石を使ったランプシェードや表札などを作ることができます。
開成高校など、学校の生徒さんたちも体験に来るそう!

この小さめな建物、なんだと思いますか?
実はこれ、サウナです!
大谷石でできたサウナは、遠赤外線の効果によって長時間入っていても肌が痛くならず、息苦しくならないそう。
お試しにと、髙橋さんがご自宅にサウナを作ってみたところ、先代であるお義父様がたいそう気に入って、毎日サウナに入られているそう。
朝起きたらサウナのスイッチを入れ、午前中からサウナに入っているとか。優雅だぁ…。
採石場のサウナはまだ建築中らしいのですが、近々完成予定とのこと。
毎日入りたいほど気持ちいいサウナ…。公開されるのが待ちきれませんね!

これまでに見せていただいたところは、すべて見学ツアーで見ることができます!
髙橋さんがはじめて採石場を訪れたとき、非日常を感じるような壮大な光景を目の当たりにして「一般の方にも公開したい!」と思ったそう。
そして、2019年に念願の見学ツアーをスタートされました。
大谷石の魅力を熱く語ってくださる髙橋さん。
てっきり、生まれも育ちもこの地で、家業を継がれたものかと思っていたら…実は石川県ご出身で、栃木にも大谷石にも縁がなかったと言います。
髙橋さんは、どんなきっかけで大谷石と出会い、どんな想いで大谷石と向き合っているのか。
ここからは、髙橋さんにじっくりとお話を伺います!
数字の世界から石の世界へ。6代目への歩み

髙橋さんはなぜこのお仕事についたのでしょうか?
その理由は、東京の大学在学中に出会った奥様の家業だったからだといいます。
「当時、会計事務所に就職が決まっていて、税理士になろうと思っていました。なので、ここを継ぐことはあまり考えてなかったんです。
ただ、採石場の人手が足りていなかったので、休日だけ手伝っていました。そしたら、だんだん会計事務所にもこっちから通うようになって、ほとんど住んでるみたいな感じになって(笑) 1年くらいそんな生活をしたあと、会計事務所をやめて、この仕事につきました」(髙橋さん)

それからは電卓に代わり、機械が仕事の相棒に。
社員として入社した髙橋さんは、採石や加工などの仕事をみっちり教わったそう。
その2年後、当時の代表から「跡を継ぐなら継げ」と言われ、6代目として代表取締役に就任。
それから現在まで25年以上、大谷石産業に関わっています。
大谷石のいちばんの魅力は「効能」

大谷石の魅力は、どんなところにあるのでしょうか?
髙橋さんに尋ねると、いちばんの魅力は「効能」とのこと。
大谷石に含まれているゼオライトが、消臭、調湿、吸音などさまざまな効果をもたらします。
ゼオライトは、マイナスイオンや遠赤外線を放出すると言われており、癒しの効果もあるとされています。
「事務所にしているこの建物も、大谷石を壁に貼っているんですよ。毎日癒されますね」(髙橋さん)

たしかに、石に囲まれているのに、まったく窮屈に感じません。
空気を含んでところどころ穴の空いた、素朴な風合いに癒されます。
まるで木に囲まれた空間にいるようなあたたかさ。それでいて、木よりもっと安心感があります。なんだろう、「守られてる」感…。ほっこりと落ち着きます。
ちなみに、あたたかみを感じられる茶色の壁は、石を染めてつくられているのだとか。
「着物を染めるような工法で染めているんですが、他の石は全然染まらないんですよ。それに、同じように染めてもいろんな色になって、出てくる模様もさまざま。おもしろいですよね。大谷石には無限の可能性がある」(髙橋さん)

大谷石は音の跳ね返りが少なく、ハウリングを起こしにくいため、ジャズなどを演奏する音楽空間にも適しているそう。
「音楽をやっている方に、部屋を全部大谷石にしてくれと頼まれたことがあって。1台 1,000万くらいのスピーカーが置いてある部屋で、『ここを僕の憩いの場にしたいから』と。
それで、部屋を全部大谷石で貼ったんです。それから10年くらい経ったあとに『あの部屋、最高だよ!』って言われたんです。10年経ってもそう言うんだからすごいよね」(髙橋さん)
癒し効果に、音響効果、その他さまざまな効果がてんこ盛り。大谷石、万能すぎませんか?
髙橋さんによると「世界中で似たような特徴をもった石は他にない」とのこと。
大谷石、なんて貴重な石なの…。

大谷石は、著名人からも愛されているそう。大谷石を買われた方の中には、 某大企業の副会長さんやアメリカの著名な映画監督さんなどがいらっしゃるとか!
日本だけでなく、海外からも価値を認められているんですね。
こんなエピソードも。
「オブジェを家に飾りたいという方から相談があって。そのとき、 大谷石のオブジェと、草間彌生さんが作られた作品とで迷ったそうで、悩んだ末に大谷石を選んでくれた方もいました」(髙橋さん)
あの草間彌生さんと競える大谷石、すごすぎる…!
髙橋さんも「あれはうれしかったよね」と笑顔をこぼされていました。

「背伸びした」挑戦が招いた波乱
大谷石は、私たちの身近なところでも使われています。
例えば、東京スカイツリー。スカイツリー直結のイーストタワーにある飲食ブースに、大谷石が使用されています。
髙橋さんによると、この工事は「印象に残っている仕事のひとつ」とのこと。
くわしく伺うと、そのエピソードがなんとも強烈でした…!
スカイツリー建設にあたり、先方から問い合わせを受けた髙橋さん。当時、会社では新しい工法を開発していました。
スカイツリーのような公共の場で、一企業の工法を使ってもらえるのはとても名誉なこと。その話に喜んで「かなり背伸びして請け負った」そう。

職人さん7,8人を引き連れ、「行くぞー!」と意気揚々と上京した髙橋さんでしたが…
「実は、本来は200万円以上かかる仕事を、150万円ほどで請け負ってしまったんですよね。それでセーブしてやっていたら、もうトラブルばっかりで。
他の事業者とすったもんだしてケンカしたり、職人が腕を切って血を吹いて、作業が止まってしまったり。それはもう、怒られ怒られ…。『背伸びして来るんじゃねぇよ!』って怒鳴られたりもして」(髙橋さん)
ケンカに、流血事件!?
一瞬、ヤンキー漫画を想像してしまいました。どんな現場なんだ…。
「工事現場では、安全のためにルールが細かく決まっているんです。はしごの降り方ひとつとってもね。うちの職人たちは、工事はできるんだけども、そういう団体の中でのルールには慣れていなかったんです。
反省しましたね。本当に背伸びして受けてしまったので。経費もさらにかかっちゃって、結局150万の赤字でした」(髙橋さん)

石と歩む仕事の喜び

スカイツリーのお話を「あれもいい思い出」と語る髙橋さんは、このお仕事のどんなところにやりがいを見出しているのでしょうか。
「石工事って何年も残るものばかりなので、自分が提案したデザインやがんばった施工が未来に残るのは、やりがいがあります。

それに、この仕事をしていると、ふつうに生きていたら会えない方、僕が会計事務所にいたら一生出会えなかったであろう方々とお会いできるんです。
例えば、ニューヨークでミシュランの三ツ星を10年連続で取っている方から、レストランの壁に大谷石を使いたいと依頼をいただいたことがありました。その工事現場を見るために、僕もニューヨークに行ったりして。
そんな経験はなかなかできないので、幸せだなと。その業界のトップを走ってらっしゃる方々といっしょに仕事ができるのは貴重だし、この仕事をやっていてよかったなとすごく思いますね」(髙橋さん)
業界トップの方々からもオーダーがあるなんてすごい!
その道を極めた、一流の人たち。彼らに愛される大谷石もまた、一流の石なんですね。

限りある石を、世界へ。描く大谷石の未来
飛鳥時代から採掘がはじまり、今なお採掘が続けられている大谷石。
ですが、かつて100以上あった採掘場は、今ではわずか4社のみ。
「うちがどこまで頑張れるかだけどね。掘るところを拡張すればあるけど、それには数千万から1億円くらいかかるんです。
大谷石を掘る場所は、だんだん深くなっていく。そうすると、電気代や燃料代がかかって、そのぶん1本あたりの原価が上がる。だから、大谷石はどんどん値上がりしているんですけど、あまり高いと買われなくなりますよね。
それで採算が合わなくなって、廃業した会社がたくさんあります。歴史ある産業が、そういう理由でなくなるのは残念ですよね」(髙橋さん)

大谷石は、2050年頃には採掘ができなくなると予測されています。
限られた貴重な資源を、髙橋さんはどのように使っていきたいと考えているのでしょうか。
「僕は、大谷石を国内だけにとどめておくのはもったいないと思っているんです。
石は世界中で流通していて、イタリア産の大理石や中国産の御影石なんかは、日本でもたくさん使われている。なのに、どうして大谷石は世界に知られていないんだろう、とずっと疑問に思っていました。
なので、僕が社長になってから、海外で売るための努力を少しずつしていたんです。いまそれが少しずつ実ってきてるんですよ。
だから、世界中の人が『大谷石といえば日本の石』って思うくらい認知を広めて、最後は終われたらいいなと思っています」(髙橋さん)

インタビューの最後に、「何か言い残したことがあれば!」なんて質問をしてみると。
「大谷石の効能を知っている人ってほとんどいないんですよ。大谷石にはこんなにすごい効能があるってことを、もっとみんなに知ってほしいですね」(髙橋さん)
取材のさなか「とにかく効能がすごい!」と、繰り返し語ってくださった髙橋さん。
誰よりも大谷石に魅せられているからこそ、その魅力を伝えるために、次々と新たな取り組みをされているのだなと感じました。
限りある資源を、価値ある場所で、大切に使ってほしい。
そしてこの日本の石を、世界へ。
大谷石の未来を背負い、挑戦を続ける髙橋さんの姿がとてもまぶしくて、勇気をいただきました。
髙橋さん、熱いお話をありがとうございました!

今回は「大谷石」をテーマに、その歴史といま、そして石とともに未来へ歩みを進める人の想いをお届けしてきました。
ふと立ち寄ったカフェの壁に、何気なく通った神社の石垣に。
気づかないだけで、実は私たちの身近にあるかもしれない大谷石。
その石が「選ばれて」そこにあるということを、この取材で知ることができました。
もし機会があれば、ぜひ大谷石に触れてみてください。
手のひらに伝わる素朴でやさしいぬくもりから、長い時の流れや、石と生きてきた人々の息遣いが感じられるかもしれません。

大谷資料館
住所:〒321-0345 栃木県宇都宮市大谷町909
Web:http://www.oya909.co.jp/
カネホン採石場
住所:〒321-0345 栃木県宇都宮市大谷町209
Web:https://saisekijo.kanehon.jp/
(text:小島 千明、photo:篠原 豪太)
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