世界でも数少ないウィルトン織機で、伝統を紡ぎながら新たなカーペットの文化を切り拓く「堀田カーペット」

みなさん。突然ですが、カーペットのある暮らしと聞いて、どんなイメージが浮かびますか?

さあ、想像してください。
日曜日の午後。春の日差しが差し込む穏やかな陽気の日。床には一面、ふかふかのカーペットが…

ふあ〜とあくびをしながら思わずごろんと寝そべって、読みかけの本に手をかける…。

ぽかぽかの日差しがくすぐったくて、思わずウトウトしてしまうかもしれません。

ああ、なんて気持ちいいんでしょう……。

自宅がそんな環境だったら、毎日気持ちの良い朝が迎えられそうですよね。

今回は、そんなカーペットの気持ちがいい暮らしを伝える「堀田カーペット」さんを取材!大阪府和泉市にある本社工場を訪れました。

実は、和泉市を含む大阪府南部の泉州地域は、古くから有名なカーペットの産地!なんと、日本で作られているカーペットの80%以上が大阪府で生産されているんだそう。みなさんは知っていましたか?

今回取材する堀田カーペットさんは、1962年に創業して以来、60年以上にわたりウールを使用したカーペットの製造を続ける老舗メーカーです。

柔らかくて温かみのあるカーペットがどのように作られているのか、その裏側を見ることができるなんて、とってもワクワクします!

お話を伺うのは、堀田カーペット株式会社の取締役代表、堀田 将矢(ほった まさや)さん。

2017年に3代目として就任し、企業のリブランディングを行ったり、カーペットにまつわる様々なプロジェクトを立ち上げたりと活躍しておられます。

つい先日、「CARPET ROOM」という新たなプロジェクトも発表されました。

なんでも、カーペットを体感できる場所をつくっていくプロジェクトなんだとか!カーペットの魅力である気持ちのよさ空間における質感を実際に体感してもらうという取り組みです。

「え、でも、堀田カーペットってカーペットを作っている会社じゃないの?」そんな声が聞こえてきそうです。

気になる新プロジェクトについては後ほどじっくりお聞きしていきましょう!

いざ、堀田カーペットの本社工場へ!

軽快に階段を登っていく青ヘル軍団。「わくわくが止まらないぜ!」と弾む背中が語っています。

「どうぞ、中へお座りください。」と、オフィスの奥にある立派な応接間にご案内いただきました。心なしかちょっと緊張気味の取材班。

ちなみに、右の青ヘル2名は関西の大学に通うインターン生。新たな世界を知れる貴重な機会、なにごとも聞き逃すまいとメモを出して準備万端の様子!頼もしい限りです。

席につき、ふと右に目をやると・・・!

ガラス戸の奥に羊さんが!さすが、ウールにこだわりを持つ堀田カーペットさん。至る所にある羊がモチーフのオブジェを発見しては、密かに心の中で微笑んでしまいました。

応接間のガラス戸の奥は工場になっているようです。あとで見学させていただけるとのことでわくわく。

では、美人さんに見守られながらも、まずは堀田カーペットさんの行っている事業や取り組みについてお話を伺っていきます!

堀田カーペットってどんな会社?

1962年に創業し昨年60周年を迎えられた、堀田カーペットさん。

「一番気持ちが良い床」をコンセプトに、ウールを使った住宅・ホテル等の敷き込み用カーペットや、家庭用ラグ、DIYカーペットなどを展開しています。

堀田カーペットさんの主力ブランドは大きく分けて3つあります。

1つ目が、敷きこみ用ウールカーペットブランド「woolflooring」
部屋の隅から隅までをカーペットにすることができます!

堀田カーペットさんの主力ブランドであり、専門の職人による施工が必要なことが特徴です。

床全面にカーペットを敷き込むことを想定して商品を開発しており、ホテルやブティック、新幹線など、上質な空間に用いられることが多いんだとか。

ロールカーペットとタイルカーペットの2種類があるんだそうですよ。

2つ目は、床上にそのまま置いて使用できるウールラグブランド「COURT」

堀田カーペットさんが、これまでのプロジェクトで培ってきたノウハウを詰め込んだ家庭用のラグブランドです。

フローリングなどの床上にそのまま置いて使用できるウールラグなので、場所を選ばず好きなところに敷くことができます!自宅にも取り入れやすいスタイルは嬉しいですよね。

そして、3つ目が自分で床に敷き込みができる「DIYカーペット」

並べるだけでもラグとして使え、定規とカッターナイフがあれば、自宅のレイアウトに合わせて自分で敷き込みができるのが特徴です。

「敷き込みはしたいけど、部屋の全面にするのは難しい…」という方にもぴったり!

こちらの3つのブランド以外にも、ウールを使った密度たっぷりのチェアパッド世界中の羊のイラストが書かれたトランプなど、カーペットや羊にまつわるプロダクトも開発・販売されているんだそう。

『WOOL CHAIR PAD』ウールを使った密度たっぷりのチェアパッド
『SHEEP PLAYING CARDS』世界中の羊のイラストが書かれたトランプ

商品はもちろんのこと、Webサイトやメインビジュアルのデザインも洗練されていて、とっても素敵。デザインにこだわりのあるオシャレな友人に今すぐLINEしたくなりました。

そんな様々なブランドを生み出している堀田カーペットさんですが、良いカーペットの定義としてある一貫した考え方があるそうです。

それは、「長く美しく使えるカーペット」かどうかということ。

耐久性があり長く使えるだけでなく、美しさが担保されたカーペットこそが良いカーペットだという考えを持っておられます。

では、カーペットにおける美しさとはなんなのでしょう。

堀田さんは、「良いカーペット」を定義するために、素材、つくり方、密度の3つを重視しているようです。

それぞれどのような点にこだわりを持っているのでしょうか?詳しく聞いていきます!

「良いカーペット」を作るためのこだわり | その① 素材

まずは、素材について教えていただきました。

「長く美しく使えるカーペット」を前提にものづくりを行うとなると、購入後のメンテナンスがとても重要。美しさを保つためには、カーペットを構成する素材自体にも汚れがつきにくく落ちやすいという点が求められます。

でも、そんな理想的な機能を満たしてくれる素材なんてあるの?それが奥さん、あるんです。

そう、その素材こそが「ウール」です!

天然素材である羊毛には、水をはじきやすく、汚れも付きにくく落としやすいという特徴があるんだそう!

それだけではありません。「復元性がある」「保温性・調湿性が高い」「燃えにくい」など、ウールは数々の素晴らしい特徴を持っている天然繊維なんです。(いや、ハイスペックすぎるって!)

そのため、堀田カーペットさんでは、「長く美しく使えるカーペット」にぴったりなウールを素材として選択されています。

一般的にカーペットで使われるウールは、比較的供給が安定しているという理由でニュージーランド産のロムニーという種類の羊の毛を使うことが多いそうなのですが、堀田さんはロムニーだけでなく、イギリス産のブリティッシュウールやスペイン産のメリノウールなど、世界各国のウールを使っているんだとか。

ブリティッシュウールは荒々しく膨らみがあり、メリノウールは繊維が細くて柔らかいなど、同じウールでも全然特徴が違うんだそうです!面白いですね。

「へえ〜!」と不思議そうにしていた私たちでしたが、「まあ、人間と同じですよね。日本人がみんな同じ髪型ではないじゃないですか。だから羊も種によって違うというのはある程度ありますね。」という堀田さんのお言葉に、「たしかに…!」と納得しました。
そりゃそうだ。羊さんにもいろいろ個性があって当然です。

ウールを語るときの堀田さんは嬉しそう。お話を聞いていると、ウールに対する深い愛情と信頼を感じます。

しかし、必ずしもウール100%が良いという考えではないんだそう。

「ウール100%だから素敵、ではなくて、バランスを考えながら何をつくるのかを考えるのが僕らのものづくりなんです。」と堀田さん。

例えば、耐久性を高めるために、ウールを80%  ナイロン20%にしたり、意匠性を持たせたいからポリエステルを加えて光を取り入れたりなど、商品によってウールとその他の素材を組み合わせながら作られています。

また、素材から作られる糸にもこだわりを持ち、既存のものだけでなくオリジナルの糸も30種類以上開発しているんだとか。特許を取得し、文部科学大臣科学技術省受賞した糸もあるそうですよ!すごい。

素材や糸のデザインにもこだわることで、理想とするカーペットを実現しているんですね。

「良いカーペット」を作るためのこだわり | その② つくり方

続いては、カーペットのつくり方について伺っていきます!

と、その前に。皆さんの自宅や実家にあるカーペットを想像してみてください。
そのカーペット、どのように作られていると思いますか?

よくイメージされるのが、「カーペットを織る」という製法ですが、実は今や織っているカーペットは国内生産だとわずか1%しかないんだそう。

残りの99%は、織物ではなく、布の上に糸を打ち植え付ける「タフティング」と呼ばれる製法で作られたカーペットです。

おそらく、皆さんのお家にあるカーペットもタフテッドカーペットなのではないでしょうか。
織物に比べて、効率的で仕上がりも早く、大量生産が可能なため、昨今の主流はタフテッドカーペットなんだそうです。

以前、しゃかいか!が体験させていただいたTETEさんのカーペットも「ハンドタフティング」というタフテッドカーペットの仲間です。

記事ではワークショップの様子をレポートしてるので、ぜひこちらもチェックしてみてくださいね!

では、堀田カーペットさんもタフテッドカーペットなのでしょうか?

答えはNoです。
堀田カーペットさんは、残り1%にあたる織り機でカーペットを作り続けている希少な会社なのです。

「ウィルトン織機」という、イギリスの産業革命の時代に開発された、かなり歴史の古い織機を使っておられます。

現在国内でウィルトンカーペットを生産できる会社は4社ほど、織機台数は20台程度しかないんだそう。

今ではウィルトン織機を生産しているメーカーも、世界で1、2社ほどしかないため、パーツとして売っているものはほとんどありません。故障した部分は自分たちで修理したり交換したりを繰り返しながら、現在まで動かしてきているんだそうです。

そんな状況にも関わらず、現在もウィルトン織機を維持しているのは、他でもなくこの製法が「長く美しいカーペット」に最適だから

刺繍のように糸を突き刺し裏側に布を貼り合わせて固定するタフテッドカーペットよりも、縦糸と横糸によって直接織り込んでいくウィルトンカーペットの方が耐久性が優れており、長く使えるんだそうです。

また、ウィルトン織機でしか表現できない柄もあるとのこと。サンプル生地を見せていただきました。

例えばこちら。よく見ると、縦一直線に薄いラインが引かれているのが分かりますか?このような繊細な柄も表現できるのがウィルトンカーペットの特徴。

碁盤の目のように縦と横の糸で織り込まれているため、まっすぐな線で柄を出すのが得意なのです。
一方、タフティングは糸を差し込んで作るものなので、直線を用いた柄にするのが非常に難しいのだそう。

また、太い糸を使った模様がつくれるというのもウィルトン織機ならでは。

こちらのようにドットが一列に並んでいるという緻密さは、タフティングを使った量産型のカーペットでは難しいんだとか。極めて織物らしい柄なのだと教えてくださいました。

このぎゅっと詰まった高い密度が3つ目のこだわりポイントです!

「良いカーペット」を作るためのこだわり | その③ 密度

カーペットの品質において、堀田さんが重視しているのが密度という考え方。

隙間の多いカーペットはすぐにへたってしまうため、毛が寝にくく密度が高いという点を大事にされています。明らかに密度が低いと分かっているものは商品化しないと決めているんだそうです。

密度は 毛足の長さ、糸の太さ、織りの密度 という3つの要素に分けられます。これらのバランスが大事!

例えば、織りの密度が高くても、非常に細い糸を使ったり毛足の長い糸を使ってしまうと相対的に密度が失われてしまいます。

一般的に毛足の長い糸のほうが高く評価されやすいですが、踏み心地の良いギュッと詰まったカーペットにするため、堀田さんの商品は、比較的毛足が短いものが多いんだそうです。

ただ、密度と言われても表記だけではなかなかピンとこないですよね…。

密度の違いを理解してもらうためには、実際に触って実感してもらうのが一番なのだそう。触ってみるとその違いに気付けるのに、文章や画像だけではそのふかふかさや気持ちよさまでは伝わらない…。うーん、もどかしい。

3代目、堀田将矢さんがカーペットにかける想い

これまでのお話を伺い、堀田さんのカーペットへの情熱をひしひしと感じていたわけですが、意外にも初めから継ぐことを決めていたわけではなかったのだと言います。

実は、堀田さんはトヨタの元社員。新卒入社から6年間ほど、調達部でバイヤーとして働いていました。すると突然、先代のお父様から「継ぐか継がないか決めてくれ」と電話が…!

幼いころからお父様の背中を見て育ち、家業にも興味を持っていた堀田さんでしたが、トヨタの仕事はやり甲斐があり日々楽しく勤めていたため、家業に飛び込むという決断までには約1年半ほどかかったのだそう。

確かに、日本を代表する大手メーカーの社員から家業の跡取りに転身するというのは大きな環境の変化がありそうです。

「継ぐと決めたのはノリですよ」と笑っておられましたが、その背景には色々な思いもあったはず。

今では、新たなブランドやプロジェクトを次々と立ち上げ、精力的に活躍されている堀田さんですが、入社した当初は上手くいかないことも多かったのだと言います。

「当時、僕は仕事ができる人間だと勘違いしていたんです。6年もいると誰もがそうなるんですよ。慣れるしやり方も分かってくる。トヨタでは論理的に思考することをひたすら学んだので、仕事とは現状とあるべき姿の乖離をうめていくものだと思っていました。だから経営もそうだろうと。でも、全然違いましたね。」

トヨタで学んだ考え方に基づき、自社のあるべき姿を探し課題の抽出に取り組んでいった堀田さん。進めていくうちにあるギャップに気付いたそうです。

「課題なんて、見つけようとしなくてもある。それどころかここには課題しかない。限られたマンパワーの中で誰がどのように解決させるのかの方が大事なのだ…」と。

そして、自分がするべき仕事はむしろあるべき姿を考えることなのではないかと思うようになったのだそう。

自分が、会社が、本当にやりたいことはなんなのかを突き詰め、ひとつの答えが出ました。

それは「日本にもう一度、カーペットの文化をつくること」

堀田カーペットさんが現在掲げられているビジョンです。

実は、現在のカーペット業界は縮小の一途を辿っています。自宅にカーペットを敷く人が減少しており、新築住宅のうちたったの0.2%ほどだそうです。

しかし、堀田さんは現状を悲観していません。カーペットのある暮らしは、世の中にとって絶対に価値があるものだと確信しており、カーペットの文化を未来に繋げていきたいと強く語ってくださいました。

堀田さんはこちらのビジョンを達成するため、次の4つのミッションを掲げられています。

① カーペットの「気持ち良い暮らし」を伝えること
② カーペットの「ものづくり」を維持発展させること
③ カーペットを身近に「選び買える環境」をつくること
④ インテリア業界で「一番働きたい会社」をつくること

これらが循環することで「文化」になると考えているとのこと。
会社の進むべき道を誰にでも分かりやすく、シンプルに言語化していることは本当に素晴らしいですよね…!

しかし、それでもまだまだ解像度が低いと感じているのだそう。
"あるべき姿"には答えがなく、それを今もずっと探しているところなのだと語ってくださいました。

「堀田カーペットという会社の規模がどうなっているべきなのか」
「日本の文化にするというビジョンの"文化"とは何なのか」
「本当に未来に残したいものは、カーペットという"プロダクト"なのか?それとも"ものづくりの子孫"なのか、はたまた"会社"なのか、"僕自身"なのか」

ー そんな問いを繰り返しながら答えを探しているのだと言います。

「それは永遠の問いじゃないですかね。僕も死ぬまでわからないと思います。」と、TAM代表の爲廣さん。所々でうんうんと頷き、深く感銘を受けている様子でした。同じく会社を経営している立場から色々と思うところがあるようです。

その後も経営に関わる様々な質問が飛び交い、興味深いお話をたくさんお聞きしました。

堀田さんは、どのような質問に対しても、ご自身の意見を即座にはっきりと分かりやすくお答えくださるので、物事を深掘りして考え、答えを導き出すことが得意な方なのではないかと感じます。

堀田さん曰く、昔はとにかく答えが欲しい気持ちが強くてうだうだと考えることが嫌だったそうですが、最近では考える過程を含めて楽しめるようになったとのこと。

業種問わずものづくりに関わっている方々と深く話したり、このような取材を通して自分の考えを深める機会を大切にしているのだそうです。

ときには、同じくものづくりや伝統産業に取り組んでいる仲間と旅行に行くこともあるそうですよ!
ただ観光を楽しむだけでなく、その土地のものに触れ、知識に富んだ方々と意見を交換しながら学びを深める機会にしているんだとか。素敵な関係性ですよね。

そういった日々のものづくりへの真摯な姿勢が、現在の堀田カーペットさんの幅広い活躍にも繋がっているのではと思います。

さて、3代目として、新たなブランドや技術開発にも取り組んできた堀田さんですが、今後はどのような展望を持たれているのでしょうか?

なんでも、これからはプロダクトの良さだけではなく、その世界観までも伝えていくフェーズだと感じているそうです。
その思いが、冒頭で少しご紹介した「CARPETROOM」という新たなプロジェクトにも繋がっています。

果たしてどのような取り組みなのでしょう?詳しくお聞きしていきましょう!

新たな挑戦!体験型施設「CARPETROOM」

「CARPETROOM」とは、堀田カーペットさんが2023年3月に発表した、カーペットを体感できる場所をつくっていくプロジェクト。
カーペットの魅力である気持ちよさ空間における質感を感じていただくための取り組みです。

このプロジェクトの第一弾として「CARPETROOM BASE」という体験施設が2024年4月にオープン予定とのこと!

本社工場から車で5分ほどのところにある170坪の土地を買ったのだと、施設の模型を見ながらその全貌をご紹介いただきました。

「CARPETROOM BASE」では、宿泊、インテリアサロン、ショップという3つのサービスを提供されます。

…宿泊?!一面にカーペットが敷き込まれたお部屋で、ごろんと寝転びながら一日中過ごせるということですか…!?なんとも贅沢な。

2階にある客室には冷蔵庫などの家電や食器などが設置されており、実際の生活に近い形でカーペットのある生活を体感することができるんだそうです!

客室に置くものは、中量生産品を中心に堀田カーペットさんが全てセレクト。普段なかなか目にすることのできない素晴らしい品々を実際に生活の中で体験できる場にもしていきたいのだと教えてくださいました。

また、1階にあるインテリアサロンでは、これから空間づくりをはじめようとする施主様にマテリアルとカラーボードの作成サービスを提供してくれます。

なんでも、インテリアコーディネーターや建築家、工務店に相談をする前にこちらに伺うことで、住みたい空間のイメージを具体化することができるんだとか!

「こんな雰囲気どうですかね」といった相談から「この素材とこの素材を組み合わせるとこのテイストになりますよ」といったご提案まで、空間のプロによるアドバイスを受けることができます。

完成したマテリアルボードを工務店やハウスメーカーに持っていくと、かなりスムーズに施工を進められそうですね!画期的なサービスです。

さらに、別棟では宿泊を通して実際に体験した食器やシャンプーや石鹸などの水回り用品の販売も行います。見てさわって体験する場というだけではなく、その体験を家庭にも持ち帰れるなんて、嬉しいですよね!

聞いているだけでワクワクするようなプロジェクトですが、立ち上げの裏にはどんな思いがあったのでしょうか。

「カーペットって体感しないと欲しいと思われない素材なのですが、体感してもらおうと思うととても難しい。どうしたら体感してもらえるのか、この3、4年ずっと考えていたんです。」と、堀田さん。

カーペットを導入するかどうかの前に、まずカーペットのある生活を体験してもらい、「この空間すてき!」と感じてもらうことが非常に重要。その上でカーペットの素晴らしさを説明する、というステップを大切にしたかったのだそう。

まさに、この「CARPETROOM BASE」は、そのカーペットのある空間の素敵さを伝えられる場所。実際に触って実感してもらうことにこだわりを持つ、堀田カーペットさんならではの取り組みです。どんな施設になるのか、来春の完成が今から楽しみです!

いざ工場見学へ!カーペットはどうやって作られる?

さて、ここからはお待ちかねの工場見学です!
堀田カーペットさんの想いが込められたプロダクトが実際にどのように作られてるのか、気になりますよねー!

カーペットが完成するまでには、こちらの5つの工程があるそうです。

① 糸をつくる
② 染める
③ 前段取り(ワインダー)
④ 織る
⑤ 補修・加工する

基本的にカーペットづくりは分業制のため、堀田さんの場合は、①は紡績会社さんが、②は染色会社さんが行っています。

もともと、③の前段取りと⑤の加工は自社で行っていなかったそうですが、これまでお願いしていた内職さんや工場が減り、最近社内に取り込んだのだそう。

今回の取材では、社内で行われている③前段取り〜⑤加工までを見学させていただきます!

では早速行ってみましょう〜!

まずは、織る前の前段取りから

はじめにご案内いただいたのは、「木管」と呼ばれる木の芯に糸を巻き上げ、カーペットの「コマ」をつくっていく「ワインダー」という工程。

糸は紡績を経て、「カセ」と呼ばれるかたまりになった状態で入荷されます。

工場には、こちらのカセが大量に積まれていました。

ふわふわの糸で構成されていて、上に乗っかったら気持ちよさそう…と妄想してみたり。

こちらがカセを巻いていく木管です。

実は、こちらを作っている会社はすでに廃業しており、現在は手持ちの在庫を何度も利用している状況なんだとか。

近年は樹脂を使った芯に切り替える業者も多いそうですが、木管の方が滑りにくく利便性が高いので、できる限りずっと木管を使い続けたいのだとおっしゃっていました。

こちらの機械をくるくる回して、木管にカセを巻き付けていきます。

くるくるくるくる… 

出来上がった「コマ」がこんな感じ。

こちらのコマが最低1200本ないと、基本のサイズである一反3640mのカーペットは折れないんだそう。つまり、カーペットが5色でデザインされている場合は、1200本×5色の6000本はないといけないという計算に…!

糸が入ってきたらすぐ織れるのではなく、織るまでの前準備にも非常に時間がかかっているのですね。昔は内職の方が担当していましたが、現在は社内で行っているそうです。

しかーし!前段取りはまだまだ終わりません!

続いて、出来上がったコマを織り機にセットしていきます。

2階にあがると、見えてきたのが・・・
待ってました!こちらが噂のウィルトン織機です!

巨大すぎて写真に収まりきりませんでした…!

とんでもない迫力に、しゃかいか!編集長の加藤さんも「かっけー」と興奮気味に動画を回していました。

こちらの織り機の後ろ側にあるのが、「クリール」と呼ばれる、糸が設置される装置。

こちらのクリールにひとつひとつ手作業でコマを設置していきます。

中心からみるとこんな感じ。シンメトリーでかっこいい。

こちらにセットしていく作業は全て手作業です。

床には配置に1つずつ数字がつけられていて、設計図をみながら一つ一つ間違いのないようにセットしていくんだとか。1つでも間違えると柄が変わる可能性もあるので慎重に、慎重に…。
3人が丸2日間かけてやっとセッティングが終わるそうです!前段取り、大変だー。

よく見ると、ひとつひとつにおもりがついているのが分かりますか?

糸の種類や柄によって重さを変えることで、設計通りの柄を実現させているんです。ウィルトン織機はこのおもりをかけられる唯一の織り機なんだそう。

じーっと見ていると、少しずつ糸が引かれていくのが分かります。目を凝らさないと分からないほど、ゆっくりゆっくりと。

1200個以上のコマをこちらにセットすることで、やっと前段取りが終了します
「織るまでにもこんなに手間暇かかってるんですね」とみんな感心していました。

イギリス産業革命から受け継がれる織り方を見学!

さあ、いよいよ、織る工程です!

織り機へ向かいます。ガタンガタンと聞こえる機械音が近くなってきました。

おお!織られている…!!!

織る仕組みは手織りと変わらないそうですが、とにかく巨大な織り機です!

こちらは、シャトルと呼ばれる緯系を経糸の間に通すための道具。大きい!

と、ここで堀田さんからクイズ。

「カーペットって他の織物と違ってふかふかしてますよね。どうやっているか分かりますか?」

確かに、どうやって踏み心地に違いを出しているのでしょう。

その秘密を握っているのは、ワイヤーと呼ばれるこちらの長い鉄の道具

織るときにこちらのワイヤーに糸を絡めて輪っか状にすることで、ワイヤーの高さ分、カーペットをふかふかさせることができるんだそうです。

触ってみると…本当だ。手前はふかふかしてる!

ちなみに、カッターナイフのようなワイヤーで切られた場合は、毛足が切られたカット商品になります。その組み合わせで柄ができるのだそうです!

1台に対して必ず1人は職人さんが付き、糸や織り機の様子を確認しながらゆっくりと丁寧に織られていきます。

なんでも、緯糸の2往復で3mmしか進まないため、1日だと10m程度しか織れないのだそう。1反が30mのカーペットを織ろうとすると、1反織りあがるのには約3日…。機械織りと言いながらも、手織りのような手間暇がかかっているんですね…!

「産業革命時に生まれた歴史ある織り機ですが、実はカーペットに施される柄はPCで制御されているんですよ。」と、堀田さんに導かれ2階へ。

2階には、その制御を行うジャガードの織り機がありました!

規則正しく並んだ四角い緑の機械たち。これがジャガード機です。もう日本には数台しかない、貴重な装置なんだそう。

PCからどの毛を絡めるのか指示を送り、引き上げる糸を選ぶことで柄ができます。

カーペットにおける柄は、1ドット約3mmのドット絵で構成されているんだとか。
「Photoshopみたいなものですね」と堀田さん。なるほど。

こちらの針は消耗品ですが、現在製造している会社は1社しかなく、そちらの会社もようやく見つけることができたのだそう。ジャガード織り機も周辺装置も今や希少な機械となっています。

また、PCを使う以上、その進化とともにシステム開発も必須です。しかし、今や開発してくれる会社は一社しかなく、その費用も何千万レベルで必要なんだそうです。

ものづくりを継続するためには、それだけの投資をしないといけない現状なのだと、少し困ったような笑顔で教えてくださいました。

続いて、補修と加工の現場へ

こちらの工程では、製織時にできた傷や欠けている部分などを見つけて直していきます。

少しでも不具合があれば、職人の手でひとつひとつ補修。

機械の動きなどを見て、「大体このあたりに悪い部分があるかもしれない」と想定して見つけることが多いそうなのですが、この発見するということが難しいのだそう。

創業以来ずっと使い続けている古い機械のため、糸や機械にトラブルがあるのは日常茶飯事ですが、職人の目と技によって高品質なカーペットを担保し続けています。

続いて、加工の作業へ!

織ったばかりでは、まだ赤子のようにふにゃふにゃの状態。裏側にノリを塗ってパキッとさせていきます。

一反が約30mの織物を折り返しの状態で広げ、バケツでノリを汲んでモップで貼り、乾燥機で乾かしていきます。

こんなに幅の広いものを加工できる機械はもうほぼなく、今は手作業で対応しているのだそう。こちらの加工は、これまでお願いしていた工場が対応できなくなったため、一昨年から垂直統合し社内に取り入れた工程です。

カーペットづくりを続けるための必要経費ですが、こちらの工程を増やすことだけでも数千万以上はかかったのだと言います。

織りの工程でも感じましたが、現状のカーペットづくりを継続していくための費用そのものだけでも膨大にかかってくるのですね。知らなかった…。

検品・出荷され、お客様のもとへ

加工後の反物は倉庫に入荷されていきます。

倉庫にはできあがったカーペットがたくさん積まれていました!すごい迫力!

大きいもので150本以上、小さいものを含めると大体300本以上は倉庫に置かれているそうです。

カーペットは大体一本あたり300kgほどあり、とにかく大きくて重たいので運び出すのがすごく大変!専用の特殊なリフトを使って反物をおろしていくのだそう。

最終検品が終わると、要望のサイズにカットし梱包の後、出荷されていきます。

織物は必ず切る位置が決まっており、極端に経糸を分断するとほつれてしまうため、できるだけ経糸にそってカットしないといけません。技術と経験が必要な作業です。

「ものづくりって、大変やな〜」

実は、今回がしゃかいか!初取材だった爲廣さん。初めてものづくりの現場を訪れ、素直な感想がこぼれた瞬間でした。

カーペット業界が低迷していく中、「カーペットを日本の文化にする」というビジョンを掲げ、古くから受け継がれる製法を維持しながらも新たなチャレンジに日々取り組んでおられる堀田カーペットさん。

今回の取材でも分かったように、その道のりは決して平坦ではありません。

しかし、堀田さんは「大変だ」とは表立って言いたくはないのだと言います。

「ものづくりを続けるということはもちろん大変ですが、それはお客様にとっては関係のないことです。僕は、親父がこだわり続けていた丁寧にいいものをつくるというのが本質だと思っているので、それができないというのはあってはいけない。いいものを作り続けるということ、それが正しく伝われば良いと考えているんです。親父がつくったスローガン、まさしくあれなんです。」

工場には今も、堀田さんのお父様が作ったこちらのスローガンが飾られています。

<工場スローガン> エエもんどっさり グッドモラル

どんなに仕事が増えても、一番大切な"いいものを作り続ける"ということが疎かにならないよう、戒めとして現在もずっと飾っているそうです。ものづくりへの情熱はお父様譲りなのですね。

「カーペットを日本の文化にする」というビジョンの実現に向けて、これからもどのようなご活躍を見られるのか期待しています。

貴重なお話を本当にありがとうございました!

堀田カーペット株式会社
〒594-0065 大阪府和泉市観音寺町531番地

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text:前田恵莉 photo:市岡祐次郎

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