Sponsored by Kyoto Crafts Exhibition DIALOGUE
手織りのデニム⁉︎ 新しいテキスタイルのあり方を追求する「川端デニム製作所」さんに潜入!
今回のしゃかいか!は、京都府与謝野町からお届けします。
手織りデニムを制作している、川端デニム製作所さんにお邪魔しました!
こんにちは!しゃかいか!インターン生の渡辺です。
私は京都の大学に通っている二年生です。ものづくりを見学したり体験したりするのが好きで、旅行にはものづくり体験が欠かせない、と考えているタイプです。(笑)
ものづくり体験は、思い出にもなるし楽しいのでおすすめですよ~
最近では、富山でガラスの雛人形を作りました。
また、普段は経営学部でマーケティングや経営戦略について学んでおり、縮小傾向にある伝統産業の活性化についても興味があります。川端デニムさんは京丹後の織物産業とデニムを掛け合わせて取り組まれているので、どうしたら伝統産業を存続、活性化することができるのか、という視点でも学びたい!という気持ちで臨みました。
与謝野町は京都の北部、丹後半島に位置しており、冬は雪に覆われまさに銀世界…さらに取材日は大寒波が到来中ということで、
「トンネルを抜けると、そこは雪国であった―」
てきなシチュエーションにも胸を膨らませつつ、レンタカーで与謝野町へ向かいます。
(実際はトンネルの前から雪でした。)
雪による通行止めなどに見舞われながらも、なんとか到着!
今回の目的地である、「川端デニム製作所」さんです。
今回の取材では、川端デニム製作所の代表であり、手織り職人の川端晃(かわばたあきら)さんにお話をお伺いしました。
川端さんは和歌山県出身で、ストリートファッションが好きだったことから大阪の服飾専門学校に進学し、その後与謝野町の紳士服メーカーに就職。与謝野町がテキスタイルの産地ということは全く知らず、働きはじめてから初めて知ったそうです。
当時は独立したいという気持ちもなかったそうですが、「布という素材からプロダクトを作ることができる面白み」を感じるようになり、そこから与謝野町のテキスタイルメーカーに転職、2022年11月に「川端デニム製作所」を設立されました。
独立されてからまだ半年も経っていないということに驚きですね!
また、皆さんが普段手にしているであろう機械織りのデニムではなく、主に裂き織という手法を使った手織りのデニムを製作されています。
日本でデニムと言えば岡山県が有名ですが、岡山県で生産されているのは機械織りで量産型のデニム。手織りならではの魅力を伝えたいという想いから、岡山ではなく与謝野町でやっていく!と決めたそうです。
早速作業場へお邪魔します!
まず発見したのはこちら!
この機械は「糸繰機」という名前で、モーターと連動してぐるぐると動きます。これで、仕入れた糸を扱いやすくするそうです。
川端デニムさんはデニムが完成するまでのほとんどの工程をご自身でされています。織物産業は分業が主流なので少し珍しいですが、高齢化で分業が成立しづらくなっているため、そのような工場も増えているようです。
謎のしましまも発見!
こちらは裂き織のための織物を裁断している場所。
何度も何度も裁断するので、その痕で縞模様が出来上がります。
ここで皆さん、きっと、「裂き織ってなに?」と疑問に思っているのではないでしょうか。説明しましょう。(笑)
裂き織というのは、縦糸にシルク、横糸にテープ状の生地を用いる方法です。このテープ状の生地は、生地をピザ用カッターみたいな布用カッターで裂いて作ります。この工程で、縞模様ができるわけです。なんだか趣があっていいかんじ。
この裂き織、実は京丹後で生まれた方法ではなく、東北発祥です。東北は寒いので、なんとか着るものを作るために、布の切れ端などを裂いて糸の代わりにしたのがはじまりだそう。
手織りにも様々な方法がありますが、その中でも裂き織はムラ感がでるのが特徴なので、「手織りなんだな~」ということが視覚的にわかりやすいですよね。
このわかりやすさがポイント!手織りであることの魅力を伝えるのにぴったりということで、裂き織をメインの方法にすることを決めたそうです。
デニムってなんだろう?その正体と手織りデニムの魅力
2つ目の作業場にやってきました。
部屋いっぱいの大きさの手織り機!迫力がすごい…
木でできた手織り機の上で存在感をはなつジジャカードと呼ばれる部分。
ここに紋紙と呼ばれる、作りたい柄に合わせてパンチングされたカードをセットすることで織物の柄が決まります。
順番待ちで整列しているようにも見える替えの糸たち。
織機を目にする機会はあまりないのでただただ圧倒されてしまったのですが、この手織り機にもこだわりが詰まっています。通常、手織り機は和服用の反物を製造するためのものなので幅が狭く作られており、和服ではないデニムを製造するのには不向き。これを解決するために、川端デニムさんではオーダーメイドで幅を広くしてもらっているそうです。
製作中のデニム(?) を発見!
あれ、でもなんか、デニムのイメージと違う…
「これもデニムですか?」と質問してみると、
「デニムですよ!」との返答が!
これは間伐材でできたテープ状の材料を使っていて、後から染めるそうです。
紙や、粘着力のないマスキングテープのような質感でこれも糸として使うことができるのかとびっくり。
こちらがその木のテープ。
これで作ったものもデニムと言えるだなんて、デニムってそもそもなんなんだろう、という気持ちになりませんか?
というわけで、ここでデニムの説明を…
実はデニム、明確な定義がありません。近年は、綾織で縦糸がインディゴに染められているもののことを言うことが多いそうですが、他にも綿100%、硬くて重い質感などの要素があります。川端デニムさんでは、デニムに対して独自の解釈をすることで、デニムの可能性を探っているそうです。
木のテープを使ったこの製作中のデニムも、デニムの可能性を広げるための新しい挑戦のひとつ。完成したら耐久性などのテストなど行い、夏物のアウターなどにする予定とのことでした。確かに麦わら帽子のような質感と雰囲気で、夏にぴったりな予感。
木のテープで作られたデニム、完成が楽しみです!
次はお待ちかね、手織り機を使っているところを見せていただきました。
こうしてみると、本当に手のかかる大変な作業。1日で織れる布の長さは約2mで、機械織りだと約100mなので、比べると50倍以上の時間がかかっています。
機械織りにはないムラ感、裂き織という他にない魅力には、体力、集中力も含めものすごい労力が必要なんですね。
こんなに時間がかかる大変な作業、何を考えながら作業しているんだろう?夜ご飯のこととかかな?と思い質問してみると、
「仕上がりやどんな製品にしていくかなどを考えています。」
とのこと。
自分の安直な考えを猛省した瞬間でした。
わくわく!手織りを体験!
川端さんの作業を、
「やってみたいなあ」と思いながらじーっと見ていたら…、
体験させていただけることになりました!!恐縮です。
貴重な手織り機体験、心して挑みます。
足で踏んで、シャトルを動かして、引いて…
糸繰機の部屋には暖房がなく、手織り機の部屋にもエアコンはあるもののつけていらっしゃらなかったのですが、作業で動いているからあまり寒くない、とのことでした。
確かに意外と力がいります!
寒くないのかなあと不思議だったので納得です。
また、引くときの力加減がすごく難しい!
手織りならではのムラ感が魅力と言っても、あまりにも均一さに欠けるとよくないと思うので、想像以上に難しい作業ということを実感しました。
横糸は様々な種類の糸を使うので、糸によっても力加減を調整するそうです。
手織りデニムの魅力を伝えたい!熱い想いが込められたプロダクトたち
そしてそして、皆さんお気づきでしょうか?
川端さんのパーカーに注目です!
なんとなんと、こんなところに手織りデニムのワッペンが!かわいい!
気になって聞いてみると、
「その質問待ってました!」とのことで、お答えいただきました(笑)
先ほど触れたように、手織りで服を作ることができるまでの織物を仕上げるには、ものすごい労力がかかります。素材にこだわっていることなどもあり、やはり出来上がった商品は高価になりがちです。
多くの人に手に取ってもらうということを考えると、どうしてもそれが手に取るにあたってのハードルになってしまいます。
それでも、多くの人に、丹後の織物の良さを伝えたい、という想いで製作を進める中で思いついたのがこのワッペンなのです。
小さめなので、Gジャンはちょっと…と思う方でも日頃のファッションに取り入れやすく、ウェアと比べると挑戦しやすい価格帯。また、シルクを使っていると手入れが大変ですが、取り外しができることでそんな手間も解消され楽ちんに。
3月8日(水)〜11日(日)にホテルカンラ京都で開催される、「DIALOGUE」という工芸や手仕事の作り手を紹介する見本市・展示販売会でお披露目予定だそうなので、是非こちらもチェックしてみてください!
DIALOGUE 公式ホームページ:https://dialoguekyoto.com/
ちなみに私、この日デニムのボトムスで行く予定だったのですがやめたんです。
デニムを作っているところにテキトーなデニムで行けないかな…と思いまして。
でも、なんと川端さんが普通なかんじのデニムを履いてらっしゃいました(笑)
というのも、ボトムスは作っていらっしゃらないんです。
デニムと言えばボトムス(特にパンツ)がイメージとして定着しているんじゃないかなと思うのですが、川端さんではウェアを中心に製作されています。
これには理由があって…
川端デニムさんがメインで取り組んでいる裂き織という方法は、織が荒く仕上がるという特徴があります。
この手織りらしい荒さが魅力でもあるわけですが、同時に繊細でデリケートでもあるんです。
ボトムスにしてしまうと、下半身は上半身に比べて服に負担のかかる動きをするので、せっかくの手織りデニムが痛んでしまうことも。
このような理由で、ボトムスはあまり作らないそうです。
手織りらしいムラ感が魅力的なプロダクトたち
10月頃、京都伝統産業ミュージアムにも取材でお邪魔させていただいたのですが、多くの伝統産業が分業で成立しており、ひとつのものを作るために多くの人が関わっているということを知りました。
なので、今回の川端デニムさんにおいても、他の伝統産業と同様に多くの人が関わりながら作っているのかな?と考えていたんです。でも実際は、たくさん工程があるにもかかわらず、ほとんど川端さんひとりで作業されていました。
ひとつの工程だけでも大変なはずなのに、新しいデニムのあり方を追い求めて、ひとつひとつ想いとこだわりを持って製作されているのは本当にすごいことだなと感じました。
大量生産、大量消費の傾向が特に衣料の分野で強い昨今ですが、手をかけてつくられ、想いの詰まったものたちを、大切に使っていきたいと感じることができた取材でした!
手織りデニムの魅力が、少しでも皆さんに伝われば幸いです。
川端デニム製作所さん、貴重なお話と体験をありがとうございました!
川端デニム製作所
〒629-2314 京都府与謝郡与謝野町岩屋914-3
ホームページ:https://kawabatadenim.jp/
Tel : 080-9715-1409
E-mail : info@kawabatadenim.jp
対応可能時間 8:30-17:30 / 定休日 日曜・祝日
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協力:Kyoto Crafts Exhibition DIALOGUE https://dialoguekyoto.com/
(text:渡辺 photo:市岡)
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