職人さんと出会えるミュージアム!?「京都伝統産業ミュージアム」で、京都1200年の伝統を、五感で感じよう!!

今回の取材でしゃかいか!が訪れたのは、京都市左京区の岡崎にある「京都伝統産業ミュージアム」です。

みなさん、はじめまして!今回の記事を担当するのは、しゃかいか!でインターンをしている河野です。

私は、京都の大学に通う4年生です。大学では、学芸員資格の取得を目指して、博物館学の授業を履修しています。私は、幼い頃から博物館を訪れるのが好きで、今でも暇さえあれば足を運んでいます。博物館について学ぶ中で、先人たちが受け継いできた歴史を守り、伝えることの重要性を学んできました。

京都に4年間通いながらも、京都の伝統工芸についてきちんと学んだことがないなあ、と感じていた私。今回の取材で、京都の伝統文化をいっぱい学ぶぞ~と意気込みは十分に臨みました。京都の伝統産業を伝えるミュージアムで、どんな出会いと発見があるのかと、ワクワク。

「日本文化のルーツは、ここ、京都にある。」文化の中心地で、京の守るべき伝統産業を伝えるミュージアム

京都伝統産業ミュージアムは、1977年に開館した「京都伝統産業開館」が出発点です。京都の伝統産業の文化や歴史、そしてきらりと光る京のすばらしい技術を伝え続けてきたミュージアムです。1996年には、「京都伝統産業ふれあい館」として京都市勧学館みやこめっせの地下1階に移転し、2年前の2020年に「京都伝統ミュージアム」としてリニューアルオープンしました。その魅力は、やはり京都の伝統産業74品目を展示していること!

京都市営地下鉄「東山」駅から徒歩約10分のアクセス。周辺には平安神宮や東山京都市動物園が!魅力的な文化施設の多く集まる京都の中でも、屈指の観光スポットと言えそうです。

取材日も爽やかな秋晴れが広がっていて、周辺の京都らしい街並みを眺めながら、ルンルンでミュージアムに向かいました。

今回の取材では、京都伝統産業ミュージアムの館長を勤められる八田誠治さんにお話をお聞きしました。八田館長は、京都市の染織試験場で染物や織物の研究を35年続けられた後、館長として働き始められたそうです。

八田館長は、お話の冒頭で、「日本の伝統文化のルーツは京都にある。伝統産業ミュージアムは京都の伝統産業のメッカとしての役割を果たしている」と説明されました。そんな伝統文化を支えるミュージアムとは、どのようなものなのでしょうか。

そもそも伝統産業ってなに?

そもそも、京都伝統産業ミュージアムの「伝統産業」って何なんでしょうか?

私は、なんとなくのイメージはあっても、「これだ!」という明確な定義がわかりませんでした。

八田館長は、ミュージアムの解説の前に、そもそも京都の伝統産業とは何かについて、丁寧に教えてくださりました。

京都の伝統産業について知るために、まずはみなさんにクイズです。

この写真の中に、伝統産業がいくつあるでしょうか。

私たちも、八田館長に同じ質問を投げかけられて、みんなで首をひねって考えました。着物と、帯と、急須と…。うーん5つくらい?

正解は、なんと15品目!

驚きですよね!

15品目の内訳は、以下のとおりです。

このことからわかるのは、伝統産業というのは、気が付かないだけで、私たちの生活の身近な場所にたくさんあるということです!庭園や和菓子も京都の伝統産業に含まれるなんて、驚きでした。

では、「伝統産業」とは一体何なんでしょうか?「伝統産業」と近い言葉として、「伝統工芸品」がありますが、2つの言葉の違いは何でしょう?

私の中でむくむくと湧いてきた、そんな疑問にも、八田館長が丁寧に答えてくださいました。

まず、伝統工芸品は、正式名称を「伝統的工芸品」といいます。その定義は、1974年5月に施行された、伝産法(伝統的工芸品産業の振興に関する法律)という国の法律で決まっているのだそうです。

伝統工芸品ではなく、伝統「的」工芸品と呼ばれる理由は、伝統工芸品が生活様式に応じて変化していくからだとか。例えば、西陣織というと、着物のイメージが強いですが、それ以外に西陣織でつくられたネクタイも伝統的工芸品に分類されます。ネクタイという商品自体は、日本古来のものではないですが、ネクタイに使用される技術、技法には、昔から受け継がれた西陣織の技術をを使用しているからです。

伝統的工芸品となるための要件は、簡潔に言うと以下の5つ。

  1. 日常の暮らしに役立つ、普段使いのものであること。
  2. 製造工程の主な部分が手作業でつくられていること。
  3. 伝統的技術、技法によって製造されるものであること。(おおむね100年前の技術、技法が多いのだそう!)
  4. 伝統的に使用されてきた原材料を使用していること。(現在、国内で入手困難な原材料もあることから、輸入品も認められるようになりました)
  5. 一定の地域で産地を形成していること。(おおむね、10企業以上、30名以上の従業員)

国に伝統的工芸品として認められるには、こんなに多くの項目があるだなんて!そんな厳しい条件をくぐり抜けて、伝統的工芸品として認められたものが、全国に237品目あります(2022年3月時点)。そのうち、17品項目は京都で認定されているんです。

中でも、驚きだったのは、1つ目の項目。私は、伝統工芸品ときくと、「伝統文化のために使われるもの」、「高価で展示ケースの中に入れられたもの」なんてイメージを抱いていました。でも実は、伝統工芸品とは、私たちの生活の中にあり、使用されるものなのです。

そして、伝統的工芸品として認められたものには、その証としてこちらのロゴマークがついています。

みなさんも、ぜひこちらのマークを探してみてください。

しかし、国の伝統的工芸品としての枠組みだけでは、守りきれない京の技術があるんだそうです。それは、「産地を形成していること」という、5つ目の項目に関わっています。京都にはたくさんの卓越した伝統技術があります。しかし、その中には、長い歴史の中で担い手が減ってしまって、もう一軒しか残っていないなんていう伝統工芸品もいくつもあるのだと教えていただきました。八田館長は、「それらは、たしかに『産業』としては、もはや成り立っているとはいえないけれど、京都の生活に息づいた守り、伝えるべき文化だ」と説明されます。

それらの文化を守るための制度が、京都の「伝統産業」としての枠組みなんだそう!京都市は、京都市内で企画され、主要な工程が行われているものであれば、産地を形成するほどの規模の職人さんや企業が残っていなくても、京都の「伝統産業」として守っていくことを決めました。その「伝統産業」として選ばれたのが、京都伝統産業ミュージアムで展示される74品目なんです。

長々とした説明となってしまいましたが、「伝統的工芸品」は国で定められた定義に基づく分類で、京都の「伝統産業」は、国の定義からは外れるものの、京都の伝統文化として守るべき工芸品を京都市として支援するための枠組みということでした。京都市の定める伝統産業を守り、支援することが、京都伝統産業ミュージアムの仕事でもあります。

京都の伝統産業とは何かがわかったところで、さっそく、京都伝統産業ミュージアムについて見ていきましょう。

目で見て、手で触れて、耳や鼻で体感して

京都伝統産業ミュージアムには、来館者が楽しめる仕掛けがたくさん!

八田館長は、ミュージアムのコンセプトを、「日本の伝統文化のルーツを、京都の伝統産業から学んでもらうこと」だと説明されます。その言葉の通り、京都の魅力ある伝統産業を存分に伝えるミュージアムとなっています。来館される方も、京都の外からお越しになる方が7-8割と多く、コロナ禍の前には4割程度は海外からのお客様だったそうです。

2020年のリニューアルを経て、最も変化した点は、京都の伝統産業74品目にを等しく扱った展示をされているということ。

そのような新しいミュージアムのあり方を体現しているのが、「74CRAFTS WALL」と呼ばれる伝統産業74品目がすべて並ぶ国内最大規模の壁画展示です。

京都の伝統産業74品目の中には、大規模な産業もあれば、一軒しか残っていない産業もあって、産業としての規模は様々です。ですが、ミュージアムでは、そのすべてを均しく展示することで、74品目全ての展示に目が行くようになっています。バリエーション豊かな伝統産業が一同に並ぶ展示は、まさに圧巻です!

伝統産業は、認定された順に、1から74まで番号がふられています。

そんなミュージアムの特徴は、2つ。来場者が伝統産業を五感で感じることのできる仕掛けと、ミュージアムと職人さんの距離の近さにあります。これら2つの特徴が、京都伝統産業ミュージアムを他の博物館とは全く異なるものにしていました!

さっそくその中身を見ていきましょう。

まず、常設展スペースは、先ほど紹介した74品目の壁画展示が並ぶ、「74CRAFTS WALL」と、伝統産業工芸を肌で感じ楽しめる「74CRAFTS EXHIBITION」に分けられます。

壁画展示「74CRAFTS WALLでは、完成した作品のほかに、制作過程を学ぶこともできるんです。

例えば、こちら。

人形の顔、手足ができる様子を、一工程ずつ見ることができます。

ちなみに、人形を製作されるのは一人の職人さんではなく、頭を担当する頭師、手足を担当する手足師など、それぞれのプロフェッショナルが行う分業スタイルなのだそう。私は、人形が部位ごとにつくられていて、それぞれ別の職人さんが作成されているだなんて考えたこともありませんでした。プロの仕事が結集したからこそ、生き生きとした人形に仕上がるのだと納得です。そのように、様々な場所で、様々な職人さんの手によって作られていく伝統産業の製造過程を一挙に知ることができるのは、贅沢な体験だなと思いました。

製造過程については、パネル展示だけではなく、映像でも学ぶことができます。ミュージアムでは、タッチパネルが随所に置かれていて、それらを操作すると、それぞれの伝統産業について学べるビデオを見ることができます。

こちらを製作されているのは、立命館大学の映像学科の生徒さんなのだそう。私は、西陣織のビデオを拝見したのですが、かっこよくて引きこまれました。みなさんも気になる伝統産業のビデオを視聴してみてくださいね。

「74CRAFTS EXHIBITION」では、京都の伝統産業に、見て、触れて、聞いて、楽しめる仕掛けがいっぱい。例えば、こちらのおりんの展示。

実際に自分で鳴らして、その美しい音を楽しむことができます。

こちらの展示スペースでは、京真田紐を実際に結んでみることができます。

京真田紐は、茶道具を収納する箱を結ぶ際に主に用いられます。

茶道の流派によって結び方は、少しずつ異なりますが、私たちもそのうちの一つの結び方に挑戦!

結び方を見ながら、順調な滑り出し。

うーん、なかなか難しい…。

困っていると、ここで館長さんからのヘルプが!

最後は、館長さんの手できれいに結ばれました。

なかなか一発目での成功は難しかった…。

皆さんは、上手に結べるでしょうか。ぜひ試してみてください。

さらに、AR技術を用いたゲームまで!

これは、投扇興という、扇を用いた伝統的な遊びをARで再現したものです。箱の上に立てられた扇の的に向かって扇を投げ、得点を競う遊びです。2つの扇の位置や立ち方によって異なる点数表があり、より高得点を出せるように競います。

このようなアプリの導入には、お子さんも喜ぶこと間違いなしです。

ちなみに、こちらの展示も学生さんと連携してつくられたもので、ミュージアムとして学生さんとの関わりを大切にされていることがわかります。

その背景には、伝統産業に関わる若者のが少なくなってきているという問題意識がもあります。「若者が伝統産業に関わる機会を設けよう」という意識のもと、ミュージアムでは、こういった産学官の連携が積極的に行われています。

このように、京都の伝統産業の魅力を全力で伝え、五感に訴えかけるミュージアムの展示。これらの展示を見終わることには、「私(僕)もほしい!」って気持ちでいっぱいになるはず!

そんな方も安心してください。なんと、展示されている伝統産業が購入できるんです!!

展示をよくよく見てみると、値札が置かれています。基本的に、値札が置かれているものは、ミュージアムショップで購入できるのだそう。

中には、貴重な一点物の作品の販売も。

これは、京都の伝統産業を「展示物」として取り扱うのではなく、人々が生活の中で用いる「生活品」として考えてほしいというミュージアムからのメッセージなのだと思います。展示を見ながら、「自分の生活のどこに伝統産業を置こう?」と考えながらミュージアムを回ることができるのはとても楽しかったです。

ミュージアムショップをのぞいてみると、伝統産業品とコラボした素敵な作品が本当にたくさんあって、目移りしてしまいました!

普段の生活の中に、京都の伝統産業品を取り入れるだけでも、毎日が楽しくなりそうです!!みなさんも、ミュージアムを訪れた際には、お気に入りの作品を購入してはいかがですが。

さらに、こちらの場面。

なんと、職人さんがミュージアム内で、職人技を披露しています!

これも、京都伝統産業ミュージアムの特徴の一つ。ミュージアムでは、定期的に職人さんによる実演が行われており、その技を真近でみることができます。

私たちが取材したときには、京仏具の職人さんが!およそ20年の経験を積まれているとのこと。細かい職人技を実際に見ることができて、感動です!!

ミュージアムで、伝統産業について学び、その技を実際に見て、職人さんと語らう。まさに、京都の伝統産業について学ぶのに最適の環境でした!!

このような職人さんの実演を可能にしているのが、ミュージアムと職人さんの日常的なつながりです。ミュージアムと職人さんとの関係について、ディレクターの山崎伸吾さんにお聞きしました。

京都伝統産業ミュージアムでは、博物館と職人さんがお互いに協力し合う関係を大切にされています。京都の74品目の伝統産業すべてを展示し、その製作過程を伝えるには、職人さんの協力が不可欠です。展示は常に刷新され、職人さんからの持ち込み企画もあるのだそう。

そのリターンとして、ミュージアムも京都の伝統産業を活気づけるような様々な取り組みをされています。その活動は、ミュージアムの枠を超えた、多面的なものです。

その一つが、京都の作り手さんを企業の方に紹介すること。京都のお店、企業さんの中には、京都の伝統産業を取り入れたいと考えられる方も多いのだそう。そんなときに、現場の方が、ミュージアムに京都の作り手さんの情報を、たびたび聞きに訪れられることがたびたびあるのだとか。そんなときに、「ミュージアムとして、京都の職人さんの仕事につなげたい」という思いのもと、活動されています。

例えば、東急ホテルのオープンの際には、京都伝統産業ミュージアムが企業さんと職人さんの間に立って、京都らしさあるホテルの設計を支えました。また、商品開発の伴走支援をしたり、ウェブやインスタグラムの運用を援助したりするなど、多面的、立体的な支援を心がけられているんです。

「えっ、これが伝統産業!?」新しいものづくりの形を伝える企画展の挑戦

ミュージアムの企画展では、産業の「今」に注目することを心がけています。企画展のコンセプトは、「えっ、これが伝統産業!?」。そのコンセプト通り、伝統産業ミュージアムは、伝統産業の新しい形に挑戦する展示を企画されています。

例えば、2021年に開催された『スペース・マウンティング』の企画展は、表具師の井上雅博さんが企画し、空間表具の新たなあり方を伝える展示です。鉄で表具を施したグラフィティや、レーザーカットで鯉を表現した表装パネルなど、新しい伝統産業工芸のあり方を展示されていました。

また、2021年に行われた『SHOKUNIN pass/path』では、伝統産業に携われる職人さん5名が企画展のキュレーターも務められたそうです。職人さんの視点でつくられた展示は、150年近く続く老舗の歴史を茶筒の変遷で表現するなど、従来の展示とは一味違う展示となっていました。

2022年に行われた『MILESTONESー余白の図案』では、西陣織の図案をデジタルアーカイブ化する取り組みと連携した企画展です。地域の宝物である西陣織の図案をアーカイブ化することによって、世界中のアーティストやデザイナーが新たなデザインを生み出すきっかけをつくり出しました。

そして、もう一つ。ミュージアムが提供していることが、「職人さんってこんな思いでやっているんだ」という発見です。京都には、多くの職人さんがいます。ですが、伝統産業という言葉のハードルの高さに、すぐ隣にあるはずの伝統産業が見えにくくなっています。実は、同業者であってもあまり関わりがないこともあるほどに、閉ざされた商売形態になっているそうです。そのような閉ざされた伝統産業の商売形態をほどき、職人さんとお客さん、地域の人々との集まりの場を形成しています。

そのミュージアムの方針を体現している企画展が、2020年に行われた『継ぐものーIn between craftsー』です。この展示では、主従一体、家族で守り継がれている伝統産業工芸を家族写真で伝えています。

このように、京都伝統産業ミュージアムは、ミュージアムという枠組みを越えて、京都の伝統産業の中心として機能していることがわかりました。 

私は、伝統産業ミュージアムを訪れてはじめて、京都に74もの伝統産業があるということを知りました。普段馴染みのない工芸品もありましたが、どれも私たちの生活と結びついていて、日本の伝統文化にとって欠かせないものだと学ぶことができました。

また、そのような京都の伝統産業を守るミュージアムの多角的な取り組みについても知ることができました。

京都の伝統産業を守り、伝えるという仕事は、簡単なことではないと思います。しかし、それを成し遂げるために、展示の工夫や職人さんとの連携、ミュージアムの枠組みを越えた活動を行うことで、ミュージアムが京都の伝統産業の中心となって、盛り上げていることがわかりました。

今回のミュージアムへの訪問を通して、改めて京都の伝統産業の素晴らしさ、そしてそれらの文化を守るためのミュージアムという枠組みの大切さを知ることができました。

京都伝統産業ミュージアムのみなさん、貴重なお話をお聞かせくださりありがとうございました!!

京都伝統産業ミュージアム

住所:〒606-8343
京都市左京区岡崎成勝寺町9番地の1
京都市勧業館みやこめっせ 地下1階

ホームページ:https://kmtc.jp/

Instagram:https://www.instagram.com/kyotomuseumofcraftsanddesign/

Twitter:https://twitter.com/Kyoto_Mocad

Facebook:https://www.facebook.com/KyotoMOCAD

テキスト:河野萌音さん、写真:市岡祐次郎

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