綿織物の一大産地 ”遠州(静岡)” 染め織り工房見学ツアー feat. 産地の学校【後編】古橋織布&二橋染工場

こんにちは!
遠州織物会館さんと髙田織布工場さんを紹介した前編に続き、テキスタイル担当の西がレポートさせていただきます。

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“レピア織機”について髙田織布工場さんで学んだ産地の学校メンバーは次の場所へ。

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糸編セコリ荘)宮浦さんの運転で次へ向かいます。

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機屋(※)さん2件目は1928年創業の古橋織布さん!

※はたや。機を織るのを職業とする会社、家。またその人のこと。

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案内してくださったのは企画営業の濵田さん。
以前から繊維産地に興味があったという濱田さんは、専門学校を卒業後、古橋織布さんの生地に惹かれ東京から浜松にやってきたそうです。
「小さな機屋さんは、原則全員が何でもできるというのが必須。」という社長の古橋さんのお言葉。濵田さんも古橋さん率いる「チームFURUHASHI」最年少の一員として、200社を超える取引先との商談、営業だけでなく、機場に立つこともあるのだそうです。

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工場見学の前に、まずは資料を見ながら遠州産地の歴史と現状をお勉強!

遠州産地の歴史と現状
綿花の栽培と自動織機の発明により浜松の基幹産業となった繊維産業。
戦後、1950年代には1度ガチャッと織るたびに万単位のお金が儲かるといわれた「ガチャマン時代」を迎え、全国有数の浴衣の産地となりました。
1972年には生産量のピークを迎えましたが、その後、輸出規制やオイルショックによる影響により、”別珍” や ”コーデュロイ” といった特殊な生地の大流行に圧され生産量は減少していきます。1980年代に入ると輸入が輸出を上回り、海外の安価な製品が市場の中心を占めるようになります。そして遠州産地の生産量、生産額ともに激減していきました。

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最盛期から約40年、平成28年には生産量は27分の1まで減少し、遠州織物工業協同組合傘下の企業は、現在69軒と減少しています。
(参照:「浜松商工会議所報 ニューイング vol.1805」静岡県繊維協会提供資料)

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そんな厳しい現状のなか、商品開発、販路開拓など従来の商習慣に縛られないクリエイティブな取り組みをすることで 国内外に活躍の場を広げているのがこの古橋織布さん!

驚くべき機屋さんの生地がとっても気になり始めたところで、生地サンプルを見せて頂きました!

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ずら〜っと並ぶ生地、古橋織布さんでは200種類を超える生地を織っているそう。
そのほとんどが平織りの生地。
シンプルな平織りだけでこんなに風合いの違う生地が織れるなんて!!

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同じ平織りでも素材や密度、糸の太さ・撚り、色、加工方法などを変えることで、様々な表情を生むことができるのだそう。
「同じ綿100%の生地でも、綿の産地を変えると、綿花の繊維の長さの違いで生地の風合いにも変化が出ます。」と濵田さん。
普段、生地の生産地を知ることはあっても、さらにその素材の産地まで知ることはなかなかありません。素材の産地で生地の仕上がりが変わる、というのは現場ならではのお話ですね!

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そして私が「どういうこと〜?」ととっても気になって、思わずこの表情になったのはこの生地!!

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色がじわ〜っとしみ出したような、ちょっと変わったストライプ。
「変わってるでしょ〜」と濵田さん。
どのように模様ができているのか気になり、お伺いしました!
失敗から生まれたオリジナル生地
この生地の面白い工夫は、織る前の糸を染める工程にあるんです!
糸を染めた後、普通は色止めという工程をして、洗っても色が落ちないようにしますが、この生地はその工程をせずに織ってしまうんだそうです。
そして織りあがってから洗うと、色止めをしていない糸からじわ〜っと色が出て、写真のように不思議なストライプができるのだそう!自然に染料が滲むのを利用しているので、機械生産ですが生地のどこをみても全く同じ模様がないというのも面白いポイント。もちろん、その後にしっかり色止めをするのでこれ以上滲んだりはしません!

また、この生地はこの後見学させていただく、二橋染工さんとのコラボレーションで生まれたのだそう。以前、二橋染工さんで染めた生地が色落ちしてしまうという失敗があり、そんな時この生地をひらめいたんだとか。
染め屋さんだけでも、機屋さんだけでも作ることのできない、それぞれの交流からうまれたとってもおもしろい生地ですね!

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これは「タイプライタークロス」という、古橋織布さんの特徴的な生地。
触ってみると、しっかりと密度がありシャキッとした印象なのに、肌に触れる感覚はふんわりとやわらかい印象。なんだかかっこいい!
ゆっくりなシャトル織機だからこそ
そんなかっこいい生地を織っているのは50年前から使っているという旧式のシャトル織機。シャトル織機は先ほど見せていただいたレピア織機のように速く織ることはできません、しかしゆっくり織るシャトル織機だからこそ独特の風合いが出せるのだそう。

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古いシャトル織機で織ると一体なにがそんなに違うの??ということで実際に機場を見学ささせて頂きました!

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入ってすぐ目にしたのは、機械や工具、部品の数々…
50年前の織機を使い続けていると故障はつきもの。もう市販されていない部品がほとんどのため、古い織機からもってきたり、自分たちで作ることもあるのだそう!

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織機にも性格があるんです
「織機にもそれぞれ性格があるんですよ」と濵田さん。
同じ種類の織機でも、それぞれに個体差があり、同じように扱っても上手くいかず、織り傷が出来てしまうことも。
それぞれの織機の性格を知って、”その子” に合った調整をしてあげるのだそう。織機との長年の付き合いがないとできる仕事ではありません。また織機の部品は、金属・木・プラスチックと様々、消耗の早さも違ってきます。
織機ひとつひとつと丁寧に向き合ったたくさんの経験と知識によって50年前の織機が今も現役で働いているのです。
古橋織布さんでは、今後もこの織機たちが働き続けられるよう、メンテナンスをできる76歳の職人さんに週に何度か午前中だけ来て頂いているのだそう。そしてメンテナンスだけでなく、次の代への技術指導にも取り組んでいるそうです。

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ガッチャンガッチャンガッチャンガッチャン
機場へ入ると先ほどの髙田織布さんとは少し違う、大きな音がします!

シャトル織機とは?
シャトル織機はシャトルと呼ばれる部品に緯糸(よこいと)を入れ、シャトルが経糸(たていと)の間を左右に動くことで、1本1本織っていきます。
このとき、ハンマーのような部品がシャトルを叩くことで反対の端まで運ぶので、レピア織機とはちがう大きな叩く音がします。
実際に見てみると、手織りに近いような仕組みでゆっくりと織られているのがわかります。

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シャトルならでは?独特の風合いの秘訣
先ほど見せていただいた生地のあの風合いの秘訣は2つ!

1つ目は、緯糸(よこいと)を運ぶとき、レピア織機のように糸を引っ張ることなく、シャトルが運ぶため、糸の断面が丸いままつぶれず、空気も一緒に織り込むようにふんわりとした生地が織れるそうです。

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2つ目は、経糸(たていと)の「開口(かいこう)」の大きさ。
開口というのは、経糸(たていと)を上げたり下げたりしたときにできる隙間のこと。その隙間をシャトルが通って緯糸(よこいと)を運んでいきます。
シャトル織機は、ゆっくりと織るので開口を大きく開けることができます。そうすると、緯糸(よこいと)を奥までしっかりと織り込むことができ、密度の詰まった織物を織ることができます。

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この2つの秘訣のより、ぎゅっと密度は詰まっているけれど、ふんわりかろやかな生地が生まれるのだそうです。

またシャトル織機はレピア織機と違い、1本の緯糸(よこいと)が糸が行き来しているため、生地のみみがしっかりと織られているというのも特徴です。

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機場の奥へ進むと、柔らかな光の中で何やらひとり黙々と作業している女性が!

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これは経通し(へとおし)という作業。
織機にセットする前の経糸(たていと)を、ドロッパー、綜絖(そうこう)、筬(おさ)という部品に通す、織物の準備の作業です。

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このときは、古橋織布さんで扱う中でも1番細い経糸(たていと)5,300本を、1本1本手作業で通していました。
5,300本、、、気の遠くなる作業です、

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思わずどのくらい時間がかかるのか聞いてみたところ
「今3日目です〜」と明るくおっしゃっていました…
とても真似できない集中力です!!
しかし、ベテランの経通し屋さんになると、1連の作業を2日ほどで終わらせてしまうのだそう!

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この経通しの作業は女性たちが内職としてやることが多いそう、平均年齢は70歳!

織り物の工程でとても重要なこの経通しですが、どこの産地でも後継者不足が問題になっているそうです。
そんななか、今年の4月から「経通しがしたい!」ということで古橋織布さんで働きはじめた府川さん、今後を担うとても貴重な存在です。

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「なんで経通し職人になろうと思ったんですか?」
「やる人がいないから!!」と、きっぱり!
「あと、経糸(たていと)がたくさん並んでるの見ると綺麗ですよね、」とやわらかい笑顔をみせてくれた府川さん。

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昔ながらの織機で織る生地に新しい価値を見出し、それをチームFURUHASHIで大切に守る姿がとても印象的でした。そしてその想いがしっかりと次の代に引き継がれ、新しい動きを作り出している古橋織布さん。
とってもわかりやすく、親しみやすくお話してくださり、自社の生地への誇りと愛を様々な場面で見ることができました!ありがとうございました!

ちなみに、今回の遠州ツアーでは写真を撮る時みんなで「やらまいか!」と掛け声をかけています。「やらまいか!」とは遠州の言葉で「やってみようじゃないか!」という意味で、まさに「やらまいか精神」がみなさんのものづくりに反映されていると実感しています!

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そして最後は浜松駅周辺へ戻り、

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二橋染工場さんへ!
「にはし」と読みます、こちらも静岡に多いお名前だそう。

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案内してくださったのは代表の二橋さん。
浜松は、水が豊富ということと「遠州のからっ風」と呼ばれるほど風がふくことから、染め物に適した地でした。そのため、大正時代関東大震災により仕事場を失った東京の浴衣の職人たちが、新しい環境を求めて移り住み、浜松の浴衣生産が発展しました。

二橋染工さんは昭和2年創業。現在2つの工場を持ち、浜松の伝統である「注染」を続けながら、ローラー捺染や糸染め、製品染めなど幅広い染色ができる機械を持ち、ニーズに合った染めの提案をしているそうです。

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「浜松注染」とは
浴衣を着る方なら1度は「注染」という言葉、聞いたことがあるのではないでしょうか?!
「注染」は、型紙をつかって布の染めない部分に特殊な糊をおくことで防染し、糊のないところを染料で染めていく「型染め」という技法の一種です。
それまで「長板染め」という方法でやっていた型染めをより効率的に、生産性を考えできたのが「注染」
その特徴・プリントとの違いは、
・柔らかな色のグラデーション
・裏表がないこと
・通気性、吸水性の良さ
なぜこのような特徴がでるのか、染色工程をたどりながら教えていただきました!

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まず見せていただいたのは「板場」ここで型置きの作業をします。
生地の上に型紙をおき、その上から大きな木のヘラを使って特殊な糊を置いていきます。
この糊は、ベンナイトという粘土ともち米、海藻が入っていてます。模様によって堅さを調整するなど、オリジナルでつくっているのだそう。
糊が乗った部分には染料が入り込まず、生地に色がつきません。
海藻が入っているから少し緑色なのですね!

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これが型紙。水に強い紙を切り抜いたものに、「紗」と呼ばれる網が貼ってあります。型紙は三重県の伊勢で作られているそう。

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そして糊を置いた生地の上に、また生地を重ねて行きます。
これを繰り返して、布・糊・布・糊・布・糊とミルフィーユのように重ねていきます!25mの長い生地を2本、浴衣4着分を3cmくらいの厚さに重ねていきます。
職人さん、手早くすいすいと繰り返していますが生地は端までピッタリと重なってます!!

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続いて「紺屋(こうや)」と言われる染色の工程。
生地と糊を重ねた物を、下にバキュームがついた台の上に移動します。
この後の作業で染料が広がらないように、色ごとに糊で土手を作っていきます。

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ケーキのクリームを絞るように、こちらもとっても手早い作業!

注染の職人さんはそれぞれの持ち場が決まっていて、板場の人はずっと板場、紺屋の人はずっと紺屋といったかんじで、技術を極めていくのだそうです。

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そしていよいよ染色です!
じょうろのような道具に染料を入れて、生地の上に染料を注いでいきます。これが「注染」と言われる由来!

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この時、さきほど作った土手があるので色が混ざらず染め分けることができます。

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そして反対に、この土手を作らずに2色の染料を同時に注いでいくと、注染の特徴である独特の柔らかなグラデーションができるのです!

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染料を持った反対の手で操作しているレバーはバキュームのスイッチ!
スイッチを入れるとシューっと染料がしみ込んでいきます!
染料を注ぎながら下からバキュームの力で染料を吸い込むことで、何層にも重なった生地に染料をしみ込ませていきます。

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一面染めたらおがくずなどを混ぜた粉を振って、

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裏返します!

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裏まで色が吸い込まれていたのがわかりますね!

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裏返してからもう一度同じように土手を作り、染料を注ぎます。
このように両面から生地の中まで染料を通すため、2つ目の特徴にあげた裏表のない生地ができます!

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最後に色を定着させるための、酸化剤や色止め剤を注ぎます。
色によって使っている染料の種類を変えているので、定着の薬品もそれぞれに合ったものを注いでいるのだそう。そのため、この時も土手を作ってから注ぎます。

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昔は、浴衣といえば寝間着や湯上がり着として着ることが多く、今のようにカラフルな色使いではなく白地に紺などが定番でした。
そのため落ち着いた色を得意とする、スレン染料というものなどをつかっていたんだそう。この染料は空気に触れることで酸化し発色するという特徴があり、バキュームで布に空気を通す工程がある注染には向いた染料でした。
その後ファッション浴衣ブームが起きたことで、現在のようにお祭りなどの外出時に浴衣を着るようになり、浴衣はより華やかで鮮やかな色使いを求められるようになったのだそう。
そこでより華やかな浴衣を作るため、様々な工夫をし、反応染料という鮮やかな色を染められる染料を注染でも使えるようにしました。
二橋染色さんでは現在、模様の色や柄に合わせて、4種類の染料を使い分け、それぞれの特徴を考えた染料選びをしているのだそう。

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こちらはナフトール染料というもので染めています。この染料は2つの薬品を順番に合わせることで発色するのだそう。写真は黄色に見えますが、、

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染色の工程を終えると紺色に発色しています!

ちなみに、何層にも生地を折り返して染める注染では、生地を広げた時に柄がリピートするように、折り目がずれないようにすることがポイントだそう。見せてもらった生地の柄はもちろんぴったり!こんなところにも職人技!

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染色の工程の次は洗いです。
工場の奥まで続く長ーい水場で、手作業と機械を使いながら振り洗いをし、糊と余分な染料を落とします。
手前から少しずつ糊を落として行くので、奥に行くほど水が綺麗なものになっていて、奥まで洗い進んでいくと完了です!

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次の工程は階段を上った先!

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どーーーーん!!
糊を洗い落とした生地はここで自然の光と風にあてて乾かします。

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スタスタと上っていく職人さん!

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下で見ている私たちの方がドキドキ!

上の足場までは7m!建物の2階くらいの高さです!高い干場がない工房では蛇腹にして何度も折って干すそうですが、干す作業の効率化、生地の速乾性を高めるためこのような干場を作ったそうです。生で見ると圧巻!

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染め上がった生地を紐にひっかけて引っ張り上げていきます。

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上と下で生地の絡まりを直しながら、干していきます。

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カメラマンも職人さんに続いて上らせていただきました。足場が丸く、隙間から下が見えるのがなんともドキドキです!
実は職人さん、元々高所恐怖症なんだそう!
「この仕事で高いところにも慣れましたよ」と笑っていました。

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このように丸太に並べていきます。
日差しの入り具合やその日の雨がぜ、干す時間をみて場所を決めるのだそう。
外壁は風が通るようになっている分、雨も振り込みます、そんな日は奥の壁側に干すそうです。

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通気性、吸水性の秘訣は、シャトル織機!晒し!注染!
通気性、吸水性の秘訣は、「シャトル織機・晒し・注染」この3つのキーワードにあるのだそう!

まずはシャトル織機!
この前に見学させていただいた古橋織布さんで教えていただいたように、シャトル織機はゆっくりと空気と一緒にやわらかな風合いの生地を織れるのが特徴です。

そして次に晒し!
これは織ったあとの生地から、糊や汚れなどを洗い、漂白する工程のこと。この工程を行うと、糊が抜けたことで糸の撚りも緩みより柔らかな生地になります。

そして注染!
染料を注ぎ下に通す工程でプリントは違い、糸と糸の間を空気が通るため繊維一本一本に染料が浸み込み、生地本来の通気性を損なわずに染めることができます。
この3つが揃った生地は本当にやさしい手触りで、通気性、吸水性に優れているのだそう!

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また、生地が柔らかく柔軟性があるため、浴衣になった時の着心地もよく、表面のけばの効果で着崩れもしにくいという良いことだらけの浴衣になるのだそう!
そんな理にかなった制作工程を知ると、なんだか一段と着てみたくなりますね!
染色にまつわる機械たち
そして注染の他にも様々な染めを行なっている二橋染工さん。染めや後処理の機械を紹介して頂きました!

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これはパドル染色機、ウールなどニット製品を染める時に使うそうです。

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こちらはTシャツを染めるための機械。グラデーションを染められるように改良してあるんだそう。

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他にもローラーの版を使ってプリントするローラー捺染機や、

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染め上がった生地の幅を整たり、シワをのばして、糊をつける大きな機械も。

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このように二橋染工では様々な染めや後処理ができる機械をいれて製品染めなど幅広い染めや一貫した生産を行ってきました。
浴衣の需要が多かった頃、たくさんの職人さんが注染で浴衣を染めていました。しかし浴衣の需要が減少すると、それに伴い仕事の数も減ってしまったそう。そんな時、少しでも自社の中での仕事を増やし、1つの仕事の工賃を上げようと、注染だけに留まらずその前工程や後工程の、糸染めや製品染めも請け負うようになったのだそうです。
こうした業種の垣根を越えたたゆまぬ努力と挑戦が、創業から約90年間染色を続けてこられた理由なのですね。

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また、浜松伝統の注染の技術を伝え、その魅力を伝えていきたいという二橋さん。
地域の子供たち向けのワークショップや工場見学、授業での取り組みなど、「注染」を広め、続いていくための活動にも力をいれているそうです。写真は地域の中学生の型染めのデザイン。
工場の中でも次の世代の若者が、働く姿をみることができました!

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量産のための技術とはいえ、そのほとんどが手作業の注染の工程、どの工程にも職人さんの光る技がありました。とても理にかなった伝統的なこの技術に驚かされました。
「注染の浴衣着てみたい!」というのが1番の感想かもしれません(笑)
全国でも減ってきている注染の工場、実際に染める姿を間近で見学させていただき、工程をたどって丁寧に解説してくださり、ありがとうございました!

最後に
産地の学校、初の遠征として訪れた遠州産地。ぎゅっと詰め込まれた充実の遠征でした!
仕組みや技術を知ると、ものを作る人も買う人ももっと楽しくなるなと実感した1日でした!

【詳細情報】

産地の学校

URL:http://sanchinogacco.com/

古橋織布有限会社

住所:静岡県浜松市西区雄踏町山崎3574
TEL:053-592-1249
URL:http://www.furuhashi-weaving.jp/

二橋染工場

住所:静岡県浜松市中区常盤町138-14
TEL:053-452-2686

(text:西、photo:市岡)

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