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産業観光ツアー「セメントの道」は日本の産業発展の道!宇部興産

ダブルストレーラー

大迫力のトレーラーが走る、ここは山口県の道路!
見た目は高速道路だけど、実はここは高速道路でもなくバイパスでもない、この道路は山口県宇部市と美祢市までをつなぐ「宇部興産専用道路」という名前の紛れもない「私道」なんです。

宇部本社建物

名前にもある通りこの道路の所有者は「宇部興産」という、山口県宇部市発祥の総合化学会社。セメントや医薬品なども生産していてその事業は多岐にわたります。

専用道路の鳥瞰

今日はこの宇部興産専用道路を勉強します。
宇部興産専用道路は、なんと全長約32km!この道のりは「セメントの道」という産業観光コースにもなっていて、鉱山で採掘された石灰石が、セメントになるまでの道のりを見学することができます。年間に10回程度しか一般公開されておらず、宇部興産さん全面協力のもとお邪魔させていただくことができました。

河野さん

出発地は宇部興産の宇部本社です。
今日ガイドいただく宇部興産渉外部の河野さん。よろしくお願いします!

専用道路看板

宇部興産専用道路の入り口。いよいよここからが私道の始まりです。
ここからは一般車は通行不可。入り口には守衛さんが居てチェックされます。

トレーラー側面

私道なので、走る車ももちろん全て宇部興産に関係する車。
宇部興産のトレーラーがしゃかいか!カラーに似てて少し嬉しい。

興産大橋

こちらの橋は「興産大橋」。専用道路の中にあるのでもちろん宇部興産の所有物。橋まで作っちゃうなんですごいな!

興産大橋

宇部興産専用道路は1967年着工、1975年にこの興産大橋を除く区間が完成、7年後の1982年に、約15年の歳月をかけ、全線開通しました。

石炭

ここから見える工場はだいたい宇部興産のもの。海岸線が埋め立てられ、宇部市の主要産業である重化学工業が発展していきました。

これはダブルストレーラー

これはダブルストレーラーといって、セメントの原材料を鉱山から工場へ運ぶ車両。全長約30mで、積載車両が二つ連なっているから「ダブルス」トレーラー。100tの車両は圧倒的な存在感!よくアメリカ映画のロードームービーで見るような大きな車両ですが、大きすぎて一般道を走行することはできません。

整備場

途中の整備場でダブルストレーラーを近くで見せてもらうことができました。
でかい、かっこいい。

ナンバープレート

このトレーラーは専用道路しか走ることができないので、一般車両とは異なるものがあります。
それはナンバープレート。3桁の数字だけでシンプル。

乗り込むシーン

乗り込ませてもらいます。

ダッシュボード

ダッシュボードも大型仕様。

ブイブイ

なんだかブイブイいわしたくなる。

防音壁

気持ちがよくなったところで、再び出発。
一般家屋が近い場所では防音壁が設けられています。

この区間は専用道路のお隣に県道も並走しているのですが、その県道はもともと宇部興産専用道路だった車線の一部を山口県が買い上げたものなのだそうです。

追い抜き

トレーラーが走る。この日はあいにくの雨でしたが、水しぶきを上げながら走るトレーラーはかっこいい!

橋を渡る一般車両

一般道の橋を車が横切る。

何もない道

私道なので、一般の交通法規は適用されません。しかし、制限速度が70kmをはじめ、いろいろとルールがあります。この道路を通行するには宇部興産の社内の講習を受講し、専用のライセンスの取得が必要。今日のように取材の場合も通行証を持つ宇部興産社員の方が助手席に同乗しないと通行することができません。

そして、私道とはいえ、速度を図るためのネズミ捕りや、定期的に巡回している宇部興産輸送管理チームのパトロールカーでチェックされ、スピード違反の車両には厳しい罰則があるのだそうです。
安全第一!

センターへ

センターに寄りなさい、というサインが点灯。
民家が近い区間では騒音・振動対策のため、車線の中央側を走らなければなりません。

数字の標識

「60」という数字の標識は道路の区間を番号で示しています。
宇部興産道路は一部のカーナビにも登録されているそうですが、私道であり周りが山がちで場所を特定しにくいため、何かあった時には「何番〜何番の区間で事故!」などをすぐに伝達しやすくするための番号なのだそうです。

トンネル対面

伊佐トンネルは宇部興産専用道路で一番標高の高いところにあります。
このトンネルを越えるとセメントの原材料を採掘する宇部興産伊佐セメント工場が近づいてきた証拠。ゴール間近です。

緊急避難所

緊急避難所には...

砂山

停まれないくらいなら突っ込め!
これは下り坂で、例えばブレーキの故障等でスピードを抑えられなくなった事態になった場合に、突っ込むための砂山。
つまり「停まれない・減速できなくなって、民家や工場で事故を起こすくらいなら、ここへ突っ込みなさい」という場所。安全第一!

工場看板

専用道路の出口を抜けると工場の煙突も見えてきて、一般道へ。
そして、伊佐セメント工場に到着。

河野さん

なぜこのような大規模な道路を作ってしまったのですか?
「かつては、国鉄の美祢駅から宇部港駅の間にこの伊佐セメント工場から伸びる貨物専用線を接続して、鉄道によって石炭や石灰石を輸送していました。昭和40年代から石灰石の輸送量が増大して国鉄の輸送能力を超えたため効率的な輸送が必要となり、専用道路が計画され昭和の後半にできあがったというわけなんです」と河野さん。

開きぱなしの踏切

工場近くの今は使われていない踏切。貨物列車は走らない。でも、一旦停止しないといけない。
開かずの踏切ならぬ、開きっぱなしの踏切。

漫画

この専用道路は推理小説にも登場します。
「地元の漫画家さんが書いた本に私もちょっとだけ登場するんですよ」と河野さん。

ヘルメット着用

いよいよ鉱山を見学!工場内なのでヘルメットを着用します。
構内専用の車両に乗り換えて、移動します。

構内イメージ 戻ってきたトレーラー

荷物を降ろして宇部工場から戻ってきたトレーラー。

洗浄 洗浄のヨリ

洗浄機でタンクの中をきれいに洗い流し次の荷積みに備えます。(この洗浄後の水は専用の汚泥設備でキチンときれいになりますのでご安心を!)

働く車

大型車両が行き交う。働く車がいっぱいです。

記念写真

これがセメントの原料を採掘する鉱山!

鉱山のスケール

まるで、古代遺跡。
エメラルドグリーンの水面が美しい。
このような美しい造形が、工業によって生み出されたことにびっくりです。

鉱山とミニカーみたいに見える車

約1.2kmの幅の広大な鉱山からセメントの材料となる石灰石が採掘されます。
ショベルカーやダンプがかわいらしいミニカーに見えるほどのスケール感!
営業日の12時に発破が行われ、ショベルカーで掘り、ダンプで運ぶ。
安全かつ効率的に採掘し運ぶため角度や計算された結果、このように段々な風景になりました。

緒方さん

「濃い茶色は粘土質の部分であとの白っぽいところはすべて石灰石です」
と宇部興産の緒方さん。

発破

発破の際には作業員が退避するためのサイレンが鳴ります。

石灰石

石灰石!これが掘り出されます。
この石灰石を酸化鉄などの材料とミックスして高温で焼成し、クリンカー(セメントの材料)という半製品に仕上げるまでが、この工場の役割です。

クリンカー

これが、セメントの原料となる「クリンカー」と呼ばれる半製品。
これを宇部市の工場に運んで石膏他と混ぜ合わせ粉砕、粉状のセメントに仕上げます。

嗅ぐ

とりあえず嗅いでみますが、石の匂いがしました。

採掘現場からは、さまざまなものが掘り出されています。

鹿の化石 サイの化石 化石 下ろす

ダンプから採掘された石が下され、

設備

セメントを生産する設備へ。

ロータリーキルン

原料を焼成し、クリンカーを生成するロータリーキルンという機械。近くに行かなくてもほんのり暖かい。

積み込み

「ゴロゴロゴゴゴー」
出来上がったクリンカーは、ダブルトレーラーに積み込む。

積み込みヨリ

一つのトレーラーの上部に4つの口がついていて、これが設備の吐き出し口とぴったり同じサイズになっています。
吐き出し口とトレーラーの口を合わせるため、トレーラーの運転手は数センチ単位で停止位置を調整しなければなりません。でもみんな一度ですんなり出て行きます。さすがです。

洗浄

出て行く際には車両の足元もきれいに洗浄。
採掘場の土や泥を道路に撒き散らさないための配慮。近隣住民のみなさんへの気づかいです。

洗浄1 洗浄2

僕らの車両も窓を閉めて、プシャー!!

ちょっと寄り道します。
伊佐セメント工場を後にして、宇部市へと戻ります。
「伊佐セメント工場が見渡せるところがあるから、ちょっとだけ連れて行ってあげるね」と河野さんのご厚意で通常のセメントの道のコースにはない展望台に寄り道することになりました。

山へ

山を登る、雨が激しくなってきた。

ガードレール

ちなみにガードレールが黄色なのは、山口県の花である夏みかんにちなんだものなのだとか。
山口県の皆さんは小さい時にはガードレールは黄色だと思っていて県外に出ると白いガードレールをみてびっくりすることもあるんだそうですよ。

展望台

展望台に到着。
いよいよここから絶景が、と期待に胸を膨らませますが、ある予感が...



やっぱり〜

霧で見えない

霧で見えない。

風強

風で飛ばされそー
なかなか過酷なロケになりました。だけど楽しいぞ!

桜山展望台

晴れてると展望台はこんな感じです。

あいさつ

帰り道。途中出会う車に手を上げて挨拶しているのに気付きました。
働く人の挨拶ってなんだかかっこいい。
でも、これは「ご苦労さん!」という挨拶のほかにも「寝てないよねっ」とお互いにチェックし合うための目的もあるのだそうです。

神社

ここは専用道路の出口近くにある牛岩神社。宇部興産の工場の敷地内にあります。

神社の碑

「沖の山の沖合には以前より「ウシワ」「ウシュウ」と呼ばれていた、牛の形をした六畳ほどの広さの岩礁がありました。あるとき、漁好きな男がこの牛岩にタコを取りに行き岩穴に手を差し入れて岩を剥いだところ、ザクリと石炭が出たという伝説が伝わっています。
それがのちの本格的な海底採掘のきっかけで、炭鉱夫はこの牛岩を目指せば鉱床に到達できる、験の良い岩と考え沖の山炭鉱の起点となりました。」と河野さん。

お参り

その牛の形の岩があったところを祀ろうということで、宇部興産の炭鉱従業員の寄附で1934年にこちらの牛岩神社が建立され、炭鉱、宇部興産を守護する存在としてこの場所にあります。

トレーラーと神社

牛岩神社の鳥居の前もダブルトレーラーが走ります。

石炭記念館

宇部興産本社から車で15分ほど、常盤公園には「石炭記念館」という施設があり、石炭の採掘の様子や炭鉱夫の暮らしぶりなどを学ぶことができます。
(石炭記念館は「セメントの道」のコースには含まれていませんのでご注意を!)

装備 鉱夫の生活 UBEDOG

「おかえり〜」
と、宇部興産のキャラクターであるUBE Dog(ウベドッグ)がお出迎えしてくれました。
体全部が宇部興産の製品でできています。

PLAZA

宇部興産本社のロビーのお隣にある見学施設「UBE-i-Plaza(ユービーイー アイ プラザ)」を見せてもらいました。宇部興産の現在の製品が所狭しと並びます。
こんなものも、あんなものもというものばかり。
「宇部興産の製品は原材料が中心でさまざまなものに形を変えて使われているので、一般の方にはぱっと目に付きにくいと思います。このスペースでは、あんなところにも使われているの!」と
びっくりされることもよくあるんですよ、と河野さん。

車の製品

車の部品になるのではなく、その型を作る機械を作っていたり、

宇宙開発

宇宙開発にも使われている製品の原料を供給しています。
一言で説明するのはなかなか大変。

宇宙開発 渡辺祐策

創業者で初代頭取の渡辺祐策さん。
先ほどの炭鉱から始まった宇部興産ですが、「興産」という社名は特定分野の事業や製品を指すものではなく、「地域社会に有用な産業を次々に興す」という思いが込められているのだそうです。

炭鉱の開発・輸送を目的とした宇部港を築いたり、現在も宇部市にある山口大学医学部附属病院、山口県立宇部工業高等学校ももとは宇部興産が設立したもので、宇部市・山口県の社会インフラの整備にも貢献してきました。

50年代の宇部

しかし、地域に貢献していた宇部興産も、戦後復興期には工場の煙突から石炭を燃やす際に排出されるばいじんが問題になった時代がありました。干している洗濯物は汚れ、窓も開けられない、健康に及ぼす影響も心配され、宇部市議会で反ばいじんの動議が可決。
その後、ばいじんを排出している当事者である宇部興産は、宇部市民と連携し、ばいじんの排出量の調査、集塵装置などの設備改善や生産方法の見直しなど、ばいじん濃度の目標達成に向け、積極的に改善対策に取り組みました。

歴史ゾーン

びっくりなのは、公害が日本全国で問題になる高度経済成長期よりも前に宇部市ではこの取り組みが始まったこと。当時から「宇部方式」と呼ばれる環境対策は、政官学民が連携した町づくりの先進地として注目されることになります。

中安閑一

「ダスト・イズ・マネー」
経済が優先される時代の中、大きな決断をしたのが、宇部興産4代目社長である中安閑一さん。
副社長時代の1954年にスモッグの町から緑豊かな町へ変容を遂げたピッツバーグ市を視察。
社内で「ダスト・イズ・マネー」を合い言葉に、全社一丸となって、公害対策に取り組む道筋をつけることになりました。掛け声だけではなく「宇部ポゾランセメント」という新製品を開発し、集塵装置の資金をまかなったのだそうです。

河野さん説明

「当時、中安の自宅は工場からも近かったのですが、庭に干している洗濯物にばいじんが少しでも付いていると『今日の操業責任者は誰だ!』と呼び出されたというエピソードも残っています」と河野さん。

そして、宇部興産専用道路を計画したものこの中安さん。
国鉄による石灰石輸送の切り替えの際にも、ベルトコンベヤー・鉄道・道路という3つの案があるなかで、もっともコストの高いのが道路。しかし「道路づくりは地元の経済活性化につながる」という理由で、32kmにも及ぶ宇部興産専用道路が生まれることになりました。

記念写真

今日、大きなトレーラーや古代遺跡のような鉱山、かっこいい工場の設備を見せてもらってびっくりした産業観光の見学ツアー「セメントの道」でしたが、企業と町と市民が一緒になって町を発展させてきた道のりを最後に学ぶことができました。専用道路は市民と企業の結びつきを示す歴史の中のひとつのシンボルなのだなと感じました。

ぜひ、みなさんにも体験してほしいツアーです。

旅する新虎マーケットもぜひ行ってみてくださいね!

【詳細情報】

宇部興産株式会社

電話番号: 0836-31-2111(渉外部)
住所:山口県宇部市大字小串1978-96
URL: http://www.ube-ind.co.jp/

大人の社会派ツアー「セメントの道」のお申し込みはこちらから

https://www.csr-tourism.jp/tours/01/

(text:西村、photo:市岡、三浦 ※一部の写真は宇部興産さん、宇部市さん提供)

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