温泉を科学し進化する入浴剤!研究努力の賜物 バスクリン

バスクリン

入浴剤で有名なバスクリンさんのつくば研究所へやってきました!!(バスクリンなど入浴剤を生産する工場は静岡県にあります!)

バスクリン

ついつい研究所の前でいい湯だなポーズもとりたくなります!
バスクリンさんは、1893年(明治26年)に「津村順天堂」として創業、1988年(昭和63年)には株式会社「ツムラ」へと社名変更しました。2006年(平成1年)に家庭用品事業を分社し、ツムラライフサイエンス株式会社となり2008年(平成20年)には独立。2010年(平成22年)に、今の「株式会社バスクリン」に社名を変更し、「私たちは自然との共生を原点として、身体と心と環境の調和を図り、健やかで心地よい生活を提供します。」を基本理念として、さらなる進化を続けています。

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おお!なんだこのたくさんの緑は、まるで、森に迷いこんだようです。この緑の正体は…。

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100年積み重なる生薬研究の礎
この緑は、生薬のようです!研究所の入り口スペースには、生薬が青々と茂っています。高麗ニンジン、センブリ、タンポポいろいろと育てられています。すごいですね、家にスペースがあったらすぐに再現したい効果的なお庭です!バスクリンさんは、ルーツである津村順天堂が創業した年から約120年以上、生薬の研究や生薬エキスを配合した製品開発を行っています。

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6,000種類の生薬エキスライブラリーを保有し、日々生薬の栽培から新製品の開発に取り組んでいます。
身近なタンポポも栽培されていました。タンポポの根っこのエキスは、髪にいい作用をもっているらしいですよ。びっくり!身近な植物から見たこともない植物まで体に良さそうな自然が勢揃いです。

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いざ、つくば研究所へ潜入してみましょう!扉をあけるとすぐに何種類もの生薬を発見しました。うへー!!蝉の抜け殻(生薬名:蝉退)から、マンモスの骨(生薬名:竜骨)までいろいろな生薬が陳列されています!

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「中将湯温浴」と書かれた年季の入った看板を発見!こちらは、1897年(明治30年)に発売された日本初の入浴剤の看板です。一般家庭でお風呂が浸透していない時代は、銭湯で「くすり湯 浴剤中将湯」として販売されていました。

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日本初の入浴剤は薬の開発産物
「浴剤中将湯」とは、「中将湯」という婦人薬を開発していたときの「生薬の残り」を社員が持ち帰り、たらいに湯をはり子供を入れたところ、いつまでも体が温かく、また湿疹がなくなったなどの効果がみられたため、銭湯向けの入浴剤として商品化されました。その後、「夏の暑い日のお風呂あがりもポカポカでたまらない…」という声を受けて、夏向けの入浴剤として開発され誕生した商品が「バスクリン」でした。成分も温泉成分が主成分になり香料を加え清涼感をだしました。パッケージには、きれいな女性と香水風呂の文字が。お風呂に入るたびにきれいになっていきそうですね!

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戦争で一時商品も販売を中止せざるを得ませんでしたが、1950年(昭和25年)に「バスクリン」も販売を再開することができました。ブリキの入手が難しかったのでガラス瓶の商品です。しかし「バスクリン」を入れた銭湯は人気があったのですが、安い商品では無かったので「バスクリン」を使用した銭湯の中には、お風呂のお湯を取り替えないという異常事態が起きることもありました。

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家で温泉気分を味わえるように
1960年(昭和35年)になると、銭湯から徐々に家庭に販売するようになり、高度成長期にはお風呂付きの公団住宅も販売され、多くの家庭で利用されるようになりました。また、販売当初の「バスクリン」のパッケージは、ブリキ缶を使用していましたが、スパイラル缶という真ん中が紙でつくられた容器へ改良され、大量生産が可能になりました。このころにはテレビも普及されはじめ「遠くの温泉より、我が家で温泉気分」というキャッチコピーのテレビコマーシャルも放映されました。家のお風呂で温泉気分を楽しめるのもバスクリンさんのお陰なんですね!

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本日は、奥からバスクリン銭湯部部長の高橋正和さん、製品開発部開発2グループ グループ長の松本圭史さん、製品開発部マネジャーの栗原公さん、開発管理部販売促進課マネジャー広報責任者でお風呂のことならなんでも知っている「お風呂博士」こと石川泰弘さんにご案内いただきます。よろしくお願いします!

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バスクリンさんは現在、入浴剤8割、育毛剤や化粧品を2割の割合で製造販売しています。日本人が長生きなのは、温泉や、お風呂のせいじゃないかといわれてはいますが、なかなか十分な証明がされていません。しかし、あったまるという温浴効果の他、睡眠、時差ボケにも良い効果があったりといろいろな効果が期待できます。1930年(昭和5年)の「バスクリン」の発売以来、温泉が持つさまざまな意味に着目して、温泉の研究や入浴剤の開発を進めています。

また、ベースに生薬を研究し続けてきた歴史があるため、生薬を生かした研究開発にはこだわっています。生薬は天然素材なので、同質の素材が毎回手に入るわけではなく取り扱いかいにも知見が必要なんです。

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きき湯は「機能」、日本の名湯は「温質」「情緒」を研究
「入浴剤成分の効果を科学的に評価研究している商品が現在の“きき湯”と“日本の名湯”です。“きき湯”は機能、“日本の名湯”は温質・情緒に着目して開発されています」と、製品開発部の松本さん。
こちらの施設では、機能性、温質、情緒などなどを研究開発している現場を見られるそうですよ!

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あっ!棚に日本の名湯シリーズ、「加賀の湯」「南紀の湯」「奥飛騨の湯」たくさんありますね〜!

「日本の名湯シリーズ」は、温泉地さんが認める入浴剤にしたいという思いから、2009年(平成21年)に全面リニューアルをしています」と石川さん、商品の歴史を語ってくださいます。すべての「日本の名湯」には、必ずモデルになる源泉があり、その源泉の上位3成分を配合しています。入浴剤なので同じ量を配合することは出来ませんが配合比率を合わせています。ですから風呂釜や給湯器のことを考えると、つくりたくてもつくれない温泉地が実は、たくさんあるんです。

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登別カルルス温泉は白濁していない!?
「例えば、草津は強酸性の温泉しかなく、浴槽への影響を考えると商品化することができませんでした。登別温泉も商品化できなかった温泉地のひとつです。ですが、登別市の北側にあるカルルス温泉は、商品化できる温泉でした。そこで、登別温泉協会からの許可も得て『日本の名湯 登別カルルス』という名で商品化しています。『日本の名湯 登別カルルス』の色は、探索へ行った季節が冬だったので、スキー場の白い色がイメージとしてあり、北国の雪をイメージさせる白濁した色になっています。日本で初めて白濁する入浴剤として開発された商品が、この『日本の名湯 登別カルルス』なんです。」と石川さんの語る「日本の名湯 登別カルルス」の事実に驚きを隠せません!実際のカルルス温泉へいくと無色透明の温泉が待っているんですね!

温泉探索メモ

こちらは、温泉メモです。開発企画担当者は、年に3回温泉を探索しにいきます。1回に2泊3日の温泉探索で、30箇所も温泉に入浴して温泉メモを作成していくそうです。どひゃーすごい数ですね。

温泉地ならではの体験を入浴剤に盛り込む

温泉メモには、実際に温泉に入って肌で感じたこと、製品を開発するにあたっての気づきなどを記入していきます。調香師さんは、温泉地で感じられた香りだけでなく、周りの情景や、温泉宿、特産物、その土地での体験を参考にしながら、家庭のお風呂でその温泉地をイメージ出来る香りをつくっていきます。ですから、「日本の名湯 登別カルルス」の香りも、単に「ゆずの香り」というようなものでは無く、「日本一のオゾン地帯・オロフレ峠の原生林から漂う、澄み切った大気の香り。」となっているんです。

どうやって香りに体験を盛り込んでいるのか知りたくなってきましたね!それでは、香りづくりの現場へいってみましょう!

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こちらが香りを作っているフレグランス室です。ご案内いただく調香師の佐々木大輔さん、前職では食品の香料(フレーバー)づくりを担当されていました。

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いざ、扉をあけるとたくさんの香りが充満しています。いい香り〜。

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求められている入浴剤の香りをつくるために、約1,000種類の香料の中から最適な組み合わせをつくりだす作業に取り組んでいます。国内には、120人くらい調香師(パフューマー)と呼ばれる香りをつくる人がいます。バスクリンさんには、調香師さんが3名いらっしゃいますが、入浴剤専門の調香師を抱えている企業はバスクリンさんしかないそうです。

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佐々木さん、さすがいい鼻をお持ちですね。

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入浴剤の他、香水なども並んでいます。香りの業界では、有名な香りをつくると、あの香りをつくった人ね、として知られていくという話です。

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こちらのデスクの上には、約300種類程の香りがぎっしりと並んでいます。

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それでは、香りづくりの作業を見学させて頂きます。まず最初に香りの処方箋をつくっていきます。今つくっている香りでは、46種類の香料原料を使用していて各々の量をどのくらい入れたか記載していきます。

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調香師さんは、たくさんの香りを記憶しています。日頃から、この香りとこの香りを混ぜればあの香りができるということを考えて生活してしまうのだとか。日々の鍛錬で鍛えられた鼻の勘と、香りの記憶で香りを調合していきます。商品の香りづくりが完成するまでには半年ぐらいかかり、その間、テストし修正を繰り返します。

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香料には、化学的につくられた合成香料と、天然香料の2種類があります。こちらの調香室には、2,000種類以上の香料が存在していますが、その他1,500種類ほどまだまだ香料原料はあるそうですよ。

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即席でカレーの香りも、カレーのスパイスの香料さえあればすぐに再現できるそうですよ。さすがです!私に合う香りをつくってくださいという無茶振りなリクエストには…。代わりに、トレンドの香りを嗅がせてくださいました。

香りのトレンドはフェミニンな甘め

香りも時代時代に流行り廃りがあり、その時代ごとにトレンドがあります。今の流行りは、ベリー調の甘めの香りなんだそうです。香料にはいろいろな種類があります。原料の状態が粉でしかない香料や結晶の状態でしか存在していない香料など様々です。高い香料は、ローズの天然オイルで、1リットルで150万円ほどするそうですよ。天然ローズってなんて高級なんでしょう!

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マツタケオイルという香料を嗅いでいます。この香り、まつたけのお吸い物等に使用されているあの匂い!あーきのこっぽい香りがする!

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最近の佐々木さん自信作をご紹介いただきました。パッケージにくまモンのにっこり笑顔がプリントされた「バスクリン 熊本から 晩白柚(ばんぺいゆ)の香り」です。熊本の温泉街一帯の冬の風物詩に、世界最大級のみかん、晩白柚(ばんぺいゆ)を入れたお風呂があり、そのお風呂で香る“晩白柚(ばんぺいゆ)の爽やかな香り“をモデルに香りがつくられています。

同じテーマでも調香師さんによって、完成する香りに違いがあるそうです。「高原の香り」がテーマの時は、実際に高原へ出向き香りを採取することも多々あるそうです。艶のある香りという難しい依頼がある時は、まずイメージをつくり、試行錯誤を繰り返して香りづくりをしていくそうです。

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容器の研究もいろいろとされています。家庭でお母さんが入浴剤を入れるシーンや保管場所を想定し、重さや持ち易さ、製剤の出やすさや耐久性などを様々に工夫された容器になっていました!!

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次は、こちらの入浴剤評価室へ行ってみましょう!すでに、お風呂の準備がされています。

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入浴剤評価室では、FRPという一般的な浴槽のほか、ホーロー、人工大理石、ステンレス、ヒノキ材の浴槽と明かりも蛍光灯と白熱灯とライトを切り替えて、入浴剤の色味や、溶け方、香り立ちや持続性など多角的に評価しています。

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入浴剤が、家で使用されるシーンを想定して、容器から入浴剤をお風呂へ投入します。

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40度、160リットルから200リットルという一般家庭の湯量で入浴剤評価をしています。「バスクリン」だと20グラム~30グラムが一回の使用量で、4時間程度は香りが持続するように香りづくりに工夫をこらしています。最後に入る人も大丈夫ですね!!また異なる浴槽でも入浴剤が問題無く利用できるか素材の違う浴槽で確認しています。

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ピンク、青、白の色の異なる浴槽で、入浴剤の色味の見え方や、香り立ちや持続性を実際の家庭に近い浴槽と空間で入浴を試験しています。

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こちらは青い浴槽です。佐々木さんも被験者として入浴試験をされています。

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照明の違いで溶解色(溶けた時のお湯の色)がどのように見えるかという確認もしています。

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温浴効果を高める入浴剤は「薬機法」に則して製造販売されていて、実は、種類によって狙った効果が違います。ただ温まるというだけのものではないんですよ!!ですから、その日の体調に合わせて入浴剤を使い分けるとより良い効果が期待できます。

・「バスクリン」は、保温、硫酸ナトリウムを含み、保温性に効果!
・「薬用ソフレ」は、流動パラフィンをメイン原料とした生薬配合の乳液ベースの保湿剤。保湿効果がメイン!
・「バスクリンクール」は、重曹がメインの原料で、さらに、メントールパウダーが加えられているので、さっぱりして清涼感が得られます。夏に最適!
・「きき湯」は、炭酸ガスで血流をよくするのと温泉ミネラルで保温するダブル効果で肩こりや腰痛に効果的!

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自分の一押し入浴剤を手にパチリ!浴槽の色もまるでレインボーカラーのようにカラフルです。

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夏と冬、季節を逆転する人工気候室
次の有用性を研究する人工気候室では、入浴や入浴剤を使ってお風呂に入った時に人体へどのような影響や効果を与えるのかを分析しています。普段は室温25度、湿度50%に常に設定されています。しかし夏に冬の入浴剤の評価をしなければいけない時は夏でも冬の環境をつくり、逆に冬に夏の入浴剤の評価をしなければならない時には冬でも夏の環境をつくって研究をしています。

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ご自身も被験者になって試験をすることもしばしばあるという吉岡涼介さん。寒くなると血管が収縮したり、暑いと発汗したりと環境による影響を調査しています。

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手や足のみといった部分での入浴試験も行うことがあります。いい湯だな、あはは♪

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肌の水分量を計測していただいています。「50、60の数値、普通です。安心してください、乾燥していませんから」と吉岡さん。
ほぼ毎日午前中に誰かしらのデータをとっています。テーマによってデータを取るタイミングも入浴前、入浴中、入浴後といろいろあります。

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壁に並んだ研究成果がずらり。日々、新しい商品を生み出すため、バスクリンさんは研究成果の学会発表も大変多いそうです。
トップアスリートを支える研究も!
バスクリンさんは、赤ちゃんのオムツかぶれの予防に関する研究に始まって、今は高齢者に関するオムツかぶれの予防の研究や、お風呂に入ることでヒートショックプロテインが増加するという研究からトップアスリートに対する疲労回復に対する効果研究など、数多くの研究をしています。

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おおー、大きな「きき湯 ファインヒート」を見つけました!多くのトップアスリートたちのサインが書かれていますね。マラソン女子日本代表のサインもあります。

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きき湯のこちらのサインは、女子レスリング金メダリストの吉田沙保里さんのサインですね!

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フィギュアスケートの羽生結弦さんは、普段からきき湯をはじめ「バスクリン」の入浴剤を使用していたこともあり、現在広告契約を結んでいるそうです。羽生くんがきき湯マグネットに!レスリングの伊調馨さん、スキージャンプの高梨沙羅さんもバスクリンさんの商品で疲労回復しているそうですよ〜!バスクリンさんは、トップアスリートを支える影の立役者ですね!

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家でのバスタイムが楽しく、快適なひとときになっているのはバスクリンさんのおかげですね!「エクセレントイノベーター、そういう社員をつくりたい。」というバスクリンの古賀社長のお言葉も身に沁みました。新しい発想でチャレンジをし続けるバスクリンさん、体も心もポッカポッカになった一日をありがとうございました!家に帰ったら今日は、きき湯に入りたいと思います。

【詳細情報】

株式会社バスクリン つくば研究所

住所:茨城県つくば市東新井29-9
URL: https://www.bathclin.co.jp/

(text:坂田、photo:市岡)

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