そうめんの総本山!三輪素麺の里で見る手延べの技 亀屋植田製麺所

細い日本三大そうめん産地のひとつ三輪そうめんの亀屋植田製麺所さんにお邪魔しています。ちなみにあと二つは播州素麺(兵庫)、小豆島素麺(香川)。伺ったのはそうめんづくり真っ最中の1月初旬。食べるのは夏だけど、作られるのは冬真っ最中のそうめん。

植田製麺所看板亀屋植田製麺所は奈良県桜井市にあります。

植田製麺佇まい趣ある佇まい。歴史を感じます。

ソーメン二郎今日は心強い助っ人とご一緒させてもらいます、その名も「ソーメン二郎」さん。

紙面

12751746_10153482300297098_1570643603_oソーメン二郎さんはそうめんレシピの開発やイベントの開催などそうめんをもっと食べよう!と啓蒙活動を推進中。
実は亀屋植田製麺所はソーメン二郎さんのご実家です。

ご夫妻ソーメン二郎さんのお姉さまご夫妻です。今日はよろしくお願いします!

三輪そうめん箱三輪そうめんは三大産地の中でも一番歴史が古く、もともとは1,200年ほど前の遣唐使の時代に鑑真が伝えたと言われています。当時は索餅(さくべい)と呼ばれていて、形もドーナツ状。当時は、うどんよりも太く、梅干しと一緒にいただいたり、味噌の原型である醢(ひしお)や山椒をまぶして、ちぎりながら食べていたんですって。天皇を始めとする高貴なみなさまへ献上されていた高級品。七夕に索餅を食べると病にかからないという中国の故事から、宮廷では七夕の行事の時のお膳に並んでいたんです。ツルツルすする麺状になり、庶民にも広がり今のそうめんスタイルになったのは、元禄時代ころと言われてます。

ではさっそく工場の中にお邪魔します!

そうめん待機そうめんの原料は小麦と水、それに油。
小麦粉を塩水でこねていきます。塩はその年の天候に合わせて量を調節します。この塩加減がそうめんの熟成具合や味、コシなどを決めるので、そうめん作りにはとても大切。こねた後は足で何度も踏み固めて平たいかたまりの状態にします。その後、よくこねたそうめんの生地は、おおよそ幅10mm程度の帯状の麺にし、 桶に巻き込んでいきます。この時、ワタの種子を原料とする食用油「綿実油(めんじゆ)」を表面に塗りつけてしばらく寝かして次のステップを待ちます。この油を塗っておく作業は、乾燥と麺同士がくっつくのを防ぐため。

製麺所付近の風景そして、さらに大切な原料は、お天気!
そうめんづくりには、冬寒く、湿度が低く、水がきれいという気候の条件が大切です。そうめんは湿度を嫌うので、保管するために雨が少ないことも必要条件。

伸ばすここで行われているのは「こより」という、麺を細くしていく工程。こちらのマシンで、撚り(より)をかけながら、ひも状に細く長く延ばしていきます。

吸い上げられるねじねじされながらスルスルっと吸い上げられ

伸ばしマシンローラーローラーをいくつも経て延ばされていきます。

出てくる少し細くなってでてきます。

室(むろ)これをさらに細くし、麺を八の字状(「かけば」といいいます)にした後、室(むろ)と呼ばれる箱に入れて数日熟成。この室の中で麺はしなやかになっていきます。

手延べマシン干される室から出された麺は、そうめんと呼ぶにはまだ早い太さ。さらにマシンに麺を移し替え、

ビヨーン少しずつ引き延ばして乾燥させていきます。

ビヨーン室の中では腕一本くらいの長さだった麺が、人の背丈以上の長さになっています。

細い三輪そうめんの特徴はその細さ。JAS規格で「手延べそうめん」と呼ぶことのできる太さは直径1.3mm以下のものですが、三輪そうめんはそれよりさらに細い0.8〜1mmの直径で、コシが強く歯切れのよい食感なので、ツルっといけます。そして、真っ白透明ではなく、少し黄みがかったくすんだような色が特徴です。

手延べ一定の長さ・細さになった麺を

干す機機(はた)という器具にセットしていきます。

そうめん干されるそして、そうめんは機ごと乾燥室へ。

空調が大切温度・湿度や天井の空調からの風の流れを見ながら向きを変え、乾燥させています。

お守りこのまま置いておけば完成、ではなく時々お守りも必要です。

手延べ均一に乾燥するようにハシを入れ、さばいていきます。

ソーメン二郎さんとお話し「とっても手をかけているでしょ」
そうめんといっても産地によって実は味わいもさまざま。「そうめん本来の小麦の風味を深く味わいたいなら、オリーブオイルを少したらし、その上に天然塩をまぶして食べるのがオススメ」とソーメン二郎さん。
産地やブランドごとに食べ比べすると違いがわかるのだそうですよ。みなさんもぜひ!

お守りまた、お守りの巡回。

箱詰め作業へそうめんの箱詰め作業の現場へ。

マシンこれがそうめんを束ねる機械。なんとこちらは亀屋植田製麺所専用に開発されたオリジナルマシン!

箱詰めマシン三輪そうめんの規格である19cmの長さに切り揃えられたそうめんを機械へ投入。

そうめんマシン機構そうめんマシン機構計られ、束にされ、

そうめんマシン帯締め後切りそろえ(アップ)帯も巻かれたものが運ばれていきます。三輪そうめんの帯の色は、組合でランクや細さが決まっています。規格外のものは、もちろん三輪そうめんを名乗ることはできません。

切りそろえ(引き)箱詰め作業検品作業。こちらの工程は人の手で行われています。ハカリにのせ、重いものはシュッと数本抜き、不足しているものは後で足すため箱づめせずによけられます。重さと同時に色も点検。決まっている範囲の色味(白すぎるや黄色すぎる)も目視でチェック。だから机の上だけライトで明るくなっているんですね。
こんなに厳格に検査されているとは思わなかった。お疲れさまです!

保管三輪そうめんラベルそして、無事検品を通過したそうめんは、箱詰めされ出荷を待ちます。三輪そうめんは、木箱に詰められ梅雨をまたいだ期間保存されます。この高温多湿の期間ねかすことで、そうめんに味わいが増していきます。このことを「厄をこす」といって、油と生地の成分が反応することで、そうめん内の脂質の組成が変化し、より旨み成分が深くなるのだそうです。
そうめん好きの人の中には、さらにもう1年熟成させることで、より熟成されコシの強い「ひね」を箱買いするそうめんマニアもいるんですって。

三輪そうめんの製造風景の動画もどうぞ!

豚汁そうめんソーメン二郎さんのご実家でお母様特製の「豚汁そうめん」をご馳走になりました。身も心も温まります。このように豚汁やお味噌汁にそうめんを入れていただくのは、本場桜井市ではメジャーな食べ方。

豚汁そうめんを食すいただきます!

記念写真記念の「はい、ソーメン!」

売り場1

売り場2ソーメン二郎さんは、新しいそうめんカルチャーを生み出すことを企んでいます。
「そうめんの認知はあるのに語る人が少ない」とソーメン二郎さん。
三輪そうめんだけではなく、兵庫県の揖保乃糸、香川県の小豆島そうめん、長崎県の島原そうめん、徳島県の半田そうめん、宮城県の白石温麺といった全国の産地のそうめん製麺所が集い、そうめんのさらなる可能性を追求する「JAPANそうめんサミット」の開催や、東急ハンズでとコラボしたそうめん売り場の提案を計画中。
また、冬には食べないそうめんを一年を通して食べることのできる新しいレシピの開発や、お店で提供できる食べ方、さらにパスタに変わる素材として海外へ打って出たり、と需要を掘り起こしも活発に行い、そうめんの可能性に飽くことなくチャレンジし続けています。

1,000年以上の歴史をもち、庶民の夏の定番メニューのそうめん。
これからはどんな食べ方が生まれてくるのか楽しみです。

【詳細情報】

亀屋植田製麺所

電話番号:0744-43-6115
住所:奈良県桜井市河西645

(text:西村、photo:市岡)

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