人類史上初!地球の過去・現在・未来の姿を描く 地球探査船 ちきゅう

ちきゅう今日の見学は、船です!もちろん、こちらの船はただの船ではありません。地球深部探査船といって、巨大地震・津波のメカニズムや地球規模の気候や環境変動、生命の誕生や海底資源の生まれる環境、といった地球の奥深く多くの謎を解き明かすことを目的に作られた船。その名も「ちきゅう」!

集合場所2015年の11月に行われた「ちきゅう」就航10周年記念イベントに参加します。

こども編集員今日はしゃかいか!こども編集員も登場です。

バスに乗っていくよ横浜港の赤レンガ倉庫のとなりの大きな臨時駐車場に集合し、多くのバスが連なって出発。
15分ほどで岸壁に到着しました。

前から見たちきゅうデカッ!
バスの中からも見えていましたが、到着するとその大きさに圧倒!降り立つ参加者のみなさんからもも、「オオ〜ッ」と驚嘆の声がもれなく上がります。
全長210m(新幹線の車両約8両分)、幅は38m(フットサルコートくらい)、最大速力は自転車の速度と同じくらいの12ノット(約22キロ)です。さらに、航続距離は地球半周以上。スゴイな!

ちきゅうロゴ「ちきゅう」って書いています。

JAMSTEC船体の横には大きく「JAMSTEC」(ジャムステック)の文字!国立研究開発法人の海洋開発研究機構(略称JAMSTEC)が運営していて、世界26カ国が参加する国際研究プログラムの国際深海科学掘削計画(IODP)の旗艦として、ちきゅうは活躍しています。
IODPは従来のアメリカ主導で進められていた深海掘削計画を、アメリカと日本で対等にイニシアチブをとる計画として、2003年に発足。このちきゅうは2005年に完成、運用を開始しました。

この大きなちきゅうは海底下から7,000mの深さまで掘り進むことが可能で、なんと!マントルへ到達することもできます。みなさん、マントルって深いマグマのドロドロした液状のものを思い浮かべませんか?実はマントルは、かんらん岩という個体が流動しているしているのですって。
この深く掘ることのできる設備を生かして、巨大地震の発生のメカニズムをはじめ、隕石衝突、火山噴火、津波、異常気象といった私たちの命に影響する気候や地殻変動を測ったり、生命誕生の謎を調査するのが役割。つまり、ちきゅうの名の通り、地球の今を見ることで、過去と未来を探っていこう!というとても壮大なミッションを与えられた船なんです。

見てみて!あれ見てみて!
ちきゅうのすごいところは、掘削船と掘削孔の間を「ライザー管」という管で接続し、その管の中にドリル付きのパイプを通して、掘削流体(泥水)を循環させながら、安定して掘削を行う方式「ライザー掘削技術」を世界で初めてで採用したこと。
このライザー掘削は、深く掘るにつれて高まる地層の圧力を掘った泥水を循環させることで押さえ込むことが一つ目の利点。次に、従来の方法では掘削孔が崩れてしまっていたので到達できなかった海底何千メートルといった深さも、ライザー掘削では孔壁(掘った孔の側面)を保護しながら掘り進むことができるようになりました。

無人探査機海底の掘削の際に様子を見るための無人探査機も装備されています。

JAMSTEC波のマークがシンボルです!

いよいよ乗船いよいよ乗船。

進んでいく列に並んで、進んでいきます。

階段を上っていくよ階段を上っていくと、

居住エリア居住スペース(おやすみになっているクルーもいてる)の横を通り抜けてさらに登る。

船内では全部英語乗員のみなさんは、さまざまな機関の研究者やちきゅうの面倒を見るエンジニアなどたくさんの専門家が乗っていて、日本人とは限りません。したがって、会話は全部英語。ちきゅうの乗員になるなら、まず英語を覚えないといけないゾ!

操舵室ブリッジに到着。操舵やちきゅうの航行をコントロールするところ。かっこいい機器がたくさんあります。見学者のみんなも、船に乗ってる感でテンションアップ!

いろんな設備や機械地球を深く掘るにはバランスが大切!自動船位保持システム
ちきゅうの場合、ライザー掘削で7,000m以上の深さに到達することができるので、船の全長の何倍もの長さのパイプと地底で繋がることになります。いわば、釣り針がそこに引っかかったの時のウキのようなイメージで不安定。風や波、海水の流れなどに影響され不安定になるので「自動船位保持システム」でバランスをコントロールしています。

機器があるよ機械がたくさん。

触らへんわ!「さわらない!」と書いているのでもちろん触らない、というか、なんだこのマシンは!

レーダーもこれはレーダーですね!

海図も海図。

ハンドルを握らせてもらうハンドルを握らせてもらう。気分は船長だね。

座りたいなぁ座りたいなぁ、と思うけど我慢がまん。

満員御礼ブリッジから見る外の景色も素晴らしい。見どころたくさん過ぎる。

外に出た外に出ると…

手を振ってくれるボートだ。手を振ってくれました。

近づいてもでかいなー大きなやぐら(デリックといいます)へと近づいていきます。

上っていきます船の見学は構造が難しいので、降りたり登ったりが連続。迷子にならないようにしないといけません。

デリックきた!デリック。
大きなやぐら「デリック」は、水深深くに供給したパイプ(最大1,250トン!)を吊り上げることができます。このやぐらの高さは121メートル(横浜マリンタワーより少し高い)で、船底からの高さは、130メートル。30階建てのビルに相当する高さ。深く掘るので、高くないといけない。

デリックを見上げるおっきいなぁ。

奥がパイプを供給するところデリックの下に何か秘密がありそう。

デリック正面デリックの下の部分には「ドリルフロア」といって、パイプが組み立てられる設備があります。パイプを保管しているところから、「パイプトランスファー」という運搬システムを使ってパイプを供給します。

ロボット供給されたパイプは「パイプラッカー」という仕組みで、ロボットアームでつかんで立てられ繋がれていきます。かしこい設備。

心臓部パイプラッカーは写真の奥にあります。

見上げるこども編集員今度はデリックを下から見上げる。

大人編集員も見上げる大人編集員も見上げる大人編集員も下から写真をとる。

パイプがあるパイプが並んでいます。

パイプ原寸が、実物はこんなにも大きい。

コア資料切断エリアこの区画は「コア試料切断エリア」といって、海底下から掘削し移送されてきた試料「コア」を、切断するところ。海底から掘ってきたサンプルは、長いので一定の長さに切る必要があります。コアの中には、ガスやその他にもわからないものが含まれている可能性があり、安全に作業できるよう、ガス検知器・強制換気装置、洗浄などさまざまな設備を完備!

コアビットこれが最先端の先端!
「コアビット」というパイプの先端に装着する鋼鉄製の刃先。これがぐるぐる回転して掘り進んでいきます。真ん中の空洞の部分(70mm)で筒状にサンプルを採取していきます。

ぐりぐり掘っていくんやコアビットは、地層や岩盤の硬さに応じて付け替えられます。硬い岩盤に対しては、硬さや摩擦による高温に耐えうる素材が使われます。

CTスキャナー掘削の設備や道具を勉強した後は、研究区画へ。
掘削した試料「コア」は層を検査されたり、ガスモニタリングや半裁されて中の成分(微生物や古地磁気)が分析されデータベースに保管、残りの半分が冷蔵保管されます。CTスキャナーではコアの断層が解析されます。

半裁されたコア
半裁されたコアの断面アップ

コアのレプリカが展示されています。

コアのスキャンこれが、コアをスキャンしたもの。

コア半裁機コアを縦に半裁する機械。

嫌気グローブボックス「嫌気グローブボックス」という設備。海底から採取されたコアは空気に反応して、その状態が刻々と変化してしまうので、酸素他の気体を遮断し、代わりに窒素を充填して作業を行う必要があります。

コア
こちらが本物のコア。
ほんもののコア東北地方太平洋沖地震のメカニズムを調査。
これは、下北八戸石炭層という調査ポイントから採取されたコアです。2011年の東北太平洋沖地震が発生したと思われる地点で、地震が発生する際の温度を測定しました。

なぜ温度を測るのかというと、地震が発生する際の、プレート同士が擦れる摩擦熱のわずかな余熱を調べるため。
この調査の結果、地震発生のエネルギー源である摩擦熱の高い固着域だけではなく、熱(エネルギー)の低い固着域から距離の離れた地点でも、想定していたものより大きなズレが生じていることが発見され、このズレの大きさが東北地方太平洋沖地震の力をより強大にした原因の一つであることがわかってきました。

また、同時に調べられた断層部分のコアの成分に、地層同士の隙間にある薄い層「スメクタイト」が他の海域に比べて多く含まれていることを発見。このスメクタイト層は、粘土のように水を多く保持する一方、大量に含まれる水は移動しない、という特性があります。このスメクタイトに、断層のすべりが伝わり、摩擦熱によってスメクタイトの中の水分の温度が上昇・膨張し、保たれていた水圧のバランスが崩れ、急激に滑りやすくなった結果、大きな地震を引き起こしたのではないか?と推測されています。

このように海底の温度や地層の成分を測定することで、巨大地震を引き起こしたメカニズムの解明に、わずかずつですが確実に近づきつつあります。この発見も、ちきゅうの掘削技術があってこそ。

超純水生成装置海水から調査に利用する超純水(余計な成分がない)を生成する装置。

遠心分離機遠心分離機。

沖縄のコアこれは沖縄の熱水噴水域で採取されたコア。文字通り高温の水が噴き出しているところがあるのですが、この熱水湖の存在が意味していることは何か?それは生命の誕生の秘密です。
この熱水湖は高温・高圧・無酸素という極限状態。そんなところに生命がいる!というだけでも僕にとってはビックリなのですが、近頃の海底下ではもっと驚くべき調査が進められています。

分析された物体生命の起源も調べます!
これは沖縄の熱水噴水域で採取されたコア。文字通り高温の水が噴き出している湖に似た環境があるのですが、この熱水湖の存在が意味していることは何か?それは生命の誕生の秘密です。この熱水湖は高温・高圧・無酸素という極限状態。そんなところに生命がいる!というだけでも僕にとってはビックリなのですが、近頃の海底下ではもっと驚くべき調査が進められています。

調査物のアップ最近の調査で分かってきたのは、地球が供給する物質をむしゃむしゃと食べる生態系が海底下にあるのではないか?ということ。ちきゅうは、青森県八戸沖や沖縄、インド洋、マリアナ海溝、ペルー沖などで掘削をしながら、海底下の極限環境と生命の関係の研究を続けています。
これまで、太陽エネルギーが生命の条件と考えられ、生物の住むことがない「死の世界」と考えられていた海底下。ひょっとすると、最初の生命が生まれたのは海底下だった!という発見があるかもしれません。ロマン広がりすぎる!

潜水艇潜水艇も吊るしてあります。

噴出防止装置ブワーッを防止!噴出防止装置
掘削孔内からの突発的な圧力上昇をコントロールするための設備。ライザー掘削では掘削したものを循環しながら掘り進んでいくので、パイプの中の圧力をコントロールする必要があります。
石油ブシューってなっている光景を映画で見たりすることはありませんか?海底下は石油に限らず、さまざまな物質が含まれているので、あのプシューッ!状態を防ぐための装置がちきゅうにはキチンとあります。

パイプ格納庫パイプを格納してるところ「パイプラック」

パイプたくさんパイプが幾つも並んでいます。

長い長い。
このパイプはケーシングパイプといって、長さは27m。掘削孔の保護や後壁の安定のために孔の中に設置されるパイプ。覗きたくなる気持ちわかる!

係員さん設備から研究の成果まで満腹、見せてもらってようやくゴール!内容濃かったし、難しいところもあったけど、楽しかったー。

ピンバッチ付き船を降りるとピンバッチ付きの素敵なプレゼント。

記念写真最後に記念写真。
石が大好きなこども編集員、係員のみなさんと「大きくなったら、今度はまた一緒に働こうね!そのために英語の勉強頑張らないとね!」という硬い約束を胸に、現場を後にしました。

ちきゅう遠景巨大地震発生のメカニズム、生命誕生の秘密の他にも、海底下から7,000メートルを掘り抜くこるちきゅうのライザー掘削技術は、人類未踏のマントルへと到達することもできます。まだ見ぬ地下資源や火山活動などその活動範囲は、まさに地球並みの大きさで計り知れません。
地震のメカニズムや生命の謎に迫る研究成果や最新の設備に圧倒された今回の見学。「人類初の挑戦」をいくつも身近に感じることのできた体験でした。

【詳細情報】

JAMSTEC 横須賀本部

電話番号: 046-866-3811(代表)
住所:神奈川県横須賀市夏島町2番地15
URL: http://www.jamstec.go.jp/chikyu/j/

(text:西村、photo:市岡)

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