農場全体がまるっと魅力!自然・食・歴史・文化を大満喫 小岩井農場物語ガイド付きバスツアー

小岩井農場

自然を思う存分満喫しながらの楽しいガイド付きバスツアーがあると聞きつけしゃかいか!編集部はここ緑広がる岩手の小岩井農場にやってきました。本日はあいにくのお天気ですが、真ん中の牛さんは気持ちよさそうにくつろいでいます。くつろぎたくなるその気持ち十分にわかります。

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小岩井農場のまきば園の入り口です。切符はこちらで購入できます。

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入場口を見上げると、124周年の数字が目に入ってきます。1891(明治24)年に創業した小岩井農場の長い歴史を感じさせますね。今回のツアーは、自然を満喫するだけでなく、小岩井農場の歴史や文化について触れられるツアーとのことなので、自然を前に大変テンションが高まっています。

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牛乳好きの私は、ついつい牛を見るといてもたってもいられなくなり絶好のポイントで撮影です。敷地内には、見学や体験できる場所だけでなく食べる場所もいろいろな建物があります。バスツアーの開始時間まで少し時間があるのでお昼ご飯の時間です。

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広大の自然に囲まれた牧場館ジンギスカン食堂で見て満喫、さらに食べて満喫です。

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エネルギー補給も十分に終えて、ようやくバスに乗り込みます。

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気持ちのよい声と素敵な笑顔で始まるバスツアー、本日は小岩井農場物語ガイドの斉藤慎さんがご案内してくださいます。よろしくお願いします。

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不毛の原野を開墾
小岩井農場の3分の2が森林です。小岩井農場の森となっているこの場所はその昔、湿地帯でした。この近くに住む農家の人たちが畑にもできないと言って放置していた不毛の土地をある人物がさまざまな工夫をして湿地帯を生まれ変わらせていきます。手で木を植え始め1世紀以上、畑にできない湿地帯は今や森となり林業として機能していきます。と物語風に軽快に話す斉藤さんに引き込まれていきます。

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それでは、バスツアー小岩井農場めぐり歴史編がスタートです!入り口に掲げられた文字でも見ました「124」の数字。小岩井農場は1891(明治24)年に創業し、今年で124年を迎えました。

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第1次産業分野での国の登録有形文化財、現在日本全国に111ある内の9つ、約1割が小岩井農場にあります。小岩井農場本部とかかれた看板が立つその場所に創業当時からの歴史ある建物は並んでいます。

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宮沢賢治がうたった建物
この建物は、今から112年前、1903(明治36)年に建築された「農場本部事業所」です。事務スタッフの仕事場として使用されています。昔は建物の2階から全長13キロの小岩井農場の全長が一望できていたそうです。

詩人、宮沢賢治も小岩井農場の景色に魅せられたひとりで、小岩井農場を気に入りたびたび来ていたそうです。600行にもおよぶ長編詩『小岩井農場』の中でこの建物のことを「本部の気取った建物」と紹介しています。

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赤い屋根は仕事をする場所、緑の屋根は人が住んでいる社宅、福利厚生施設です。昔は、500人以上の人が住んでいたので郵便局、診療所、託児所、私立小学校を建設し、小岩井農場本部一帯は一つの村になっていました。

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地名からも、ぬかるみ
風が強いこの土地に防風林を植えて風を遮る工夫がされています。この地の畑は火山灰土に覆われ、非常にやせこけており、小岩井農場の住所(番地除く)にある、岩手県岩手郡雫石町丸谷地の「丸谷地(まるやち)」からもここが、ぬかるんだ土地だったということが簡単に推測されます。

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普段は一般通行できない場所ですが、ガイドの斉藤さんと一緒に入っていきます。ここの湿地帯を緑に変えるために桑の木を4万5千本植えたり、漆の木を3万本植えたりといろいろな失敗を繰り返しながら森林を作りあげていったそうです。

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夏はアジサイストリート
素敵なシャッターチャンスです!天にも届きそうな緑は3カ年計画で植えられた木です。心洗われる緑に生き返ります。8月の1週目頃まで、3キロに渡って植えられているアジサイが咲き誇る色鮮やかな道が出来上がっているそうですよ。

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きれいな水が流れ、森が林が生きていると教えてくれます。

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黒いぬかるみに足を取られて、この地が湿地帯であることを思い出させます。

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斉藤さんと一緒に大自然を歩きたくもなります。

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斉藤さんの着用していらっしゃる制服は、小岩井農場の戦前の制服です。制服のラインの色によって、緑は山、黄は畑、白は事務、赤は育馬と何の分野で仕事をしているのかわかるようになっていました。昔の小岩井農場の会社のマークは、三菱の菱形に小岩井農場の小のマークが組み合わさっていました。

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ここからは紙芝居で小岩井農場の誕生をご紹介いただきます。引き込まれる物語ガイドは、このツアーの見所の1つです!

農場の誕生は網張温泉が切掛け
124年前の小岩井農場が誕生する3年前、2人の男が網張温泉へ向かうためにこの道を通りました。当時の岩手県知事、石井省一郎と鉄道庁長官だった井上勝です。

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井上勝は、山口県萩市出身で長州ファイブと呼ばれたメンバーの一人でした。長州藩士の5人、伊藤博文、井上馨、遠藤謹助、山尾庸三、そして井上勝はともにヨーロッパへ留学します。井上勝は、明治元年に鉄道の勉強をして帰国しました。
明治5年の新橋ー横浜間の鉄道を開通させ、次に東海道線をつくり、さらには、東京から青森の盛岡駅まで東北線を開通させるため下調べに盛岡駅までやってきます。井上勝は岩手県知事に招待されて網張温泉へと向かっていきます。

ここ網張街道にはまったく木が生えておらず、今とはまったく別の景色がありました。井上勝は鉄道を敷くためにたくさんの田畑を潰してきたので、このような誰も手を付けない荒地があるならば開墾してその埋め合わせをしようと思いました。

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ところが、広大な土地を前に資金が必要になりそうだったため、スポンサーを探していたところ、三菱で重要な仕事もし、岩崎家をよく知っていた日本鉄道会社副社長小野義真は、三菱社社長、岩崎彌之助を井上勝に紹介します。井上勝は「このような土地のためにお金を出してくれませんか」と岩崎彌之助に相談へ行きます。すると、岩崎が「もしかするとこの事業は国家、公共の事業になるかもしれない。ならば3人でやりませんか」と話が進んでいきます。出資金は当時で1万円、今の金額でいうと1億円です。
3人の頭文字を組み合わせ
明治24年、保証人は小野義真、出資人は岩崎彌之助、農場主は井上勝。3人の苗字の頭文字「小」「岩」「井」を合わせて小岩井農場が誕生しました。

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畑を耕すのに30年
創業時は、牧草の畑は十分に機能するまで30年もかかったといわれています。創業時の最初は、雑種の牛や農耕用の馬がいましたが事業がうまくいきませんでした。ここの畑もトウモロコシを育てる前は、えん麦、ジャガイモ、ダイズなどいろいろな食物を植えていたことあります。
牧畜に転業し優秀な牛を輸入
農場長の井上勝は8年間の農場の開墾を進めますが、現在の金額で約7億円を使いましたが収入は3千万円の大赤字でした。事業がうまくいかないため出資者の岩崎家へ相談しにいきます。井上勝から経営を引き継いだのが岩崎彌之助の兄、岩崎彌太郎の長男の岩崎久弥。彼は小岩井の厳しい環境では農業より牧畜という思いを持っていました。そこで2人の外国人、長崎にいた英国商人のトーマス・グラバーと北海道にいた米国農学者のエドウィン・ダンに相談を持ちかけて小岩井農場へ連れてきます。そして「このような厳しい環境ならばヨーロッパのような牧畜主体の農場にした方がいい」とアドバイスをもらいます。

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ここは小・中学校の跡地です。人が集まり、こどもが生まれ、明治37年に小学校が創られましたが、車の発達により社宅に住む人が減ったため昭和60年に小・中学校は閉校しました。最初は学校の先生がいなかったので、各部の部長が先生を担当していたそうです。

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大正5年、ヨーロッパの建物を真似て建築
右手に見えてくるのが、国の有形文化財に指定されている1916(大正5)年建築された木造四階建ての「四階倉庫」です。主に馬の飼料用穀物を乾燥倉庫として使用されていました。盛岡の街にやっと電気が入り始める頃、小岩井農場はいち早く電気を導入し、電動エレベーターで穀物やトウモロコシ、えん麦などを運び、「四階倉庫」の細かくわけられた部屋に穀物を仕分けていました。日本にはない倉庫で、当時の小岩井の農場長が、ヨーロッパ視察へ行ってオランダで見つけました。欲しくなって写真と自分のイラストだけで再現した倉庫です。

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母牛からは牛乳を搾り、牛乳缶に入れて商店で小分けされて販売していました。その後、明治30年代にバターの生産も開始し、東京の明治屋で販売、宮内庁へもお届けしていました。夏場になると、バターは溶けて、乳製品は腐ってしまうため保管する場所が必要になりました。そこで、「天然冷蔵庫」をつくりました。

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氷室の天然冷蔵庫
電気を使っていない「天然冷蔵庫」は、6畳ほどのコンクリートの部屋と右手に氷も積める3畳と4畳の小部屋でつくられています。鉄のパイプが部屋の奥の地中に入っており、地中の冷気を入れて暖かくなった空気を上に抜けるように設計されています。

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明治41年の最も古い牛舎が残っています。牛舎は全て文化財です。母牛の体重は、600キロ以上あります。建築当時は、30年経過しても恥ずかしくない牛舎を作れといわれてつくったそうですが、80年経った今も使い続けています。

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岩崎久彌は、明治30年代にヨーロッパから牛を70頭輸入します。どの種類の牛が小岩井に適しているのか分からなかったため、オランダからホルスタイン、スイスからブラウンスイス、イギリスからエアーシャーの3種を導入しました。最終的に、ホルスタインが大きくなってミルクもたっぷりとれるので、ホルスタインを選定して飼育していきます。今では、最初に小岩井農場に輸入されたホルスタインの25代目くらいの牛がいます。

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「牛さん、目線を下さい」とお願いしました。牛はとても優秀で人間の動きに敏感な生き物ですね。ちなみに牛の1日の糞は50キロ以上にもなるそうです!

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これは、昔利用されていた馬車軌道トロッコ鉄道のレールです。

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牛の飼料はレールを使い運んでいました。

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運良く今日が誕生日の牛に出会うことができました!今朝、生まれたばかりのほやほやの赤ちゃん牛です。まだうまくは歩けません。とてもかわいい目をしています。

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牛は1回のお産で牛乳を1万リットル出します。1頭当たり約5回の出産を経験するので、成長すると1頭で合計で5万リットルもの牛乳をつくりだします。

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こちらは、牛の大好物のえさ「サイレージ(発酵飼料)」を作っている水平型サイロです。現代は機械を使って発酵飼料をつくっています。今年の飼料は1年分で1万トンくらいだそうですよ。

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ラップの色でえさを管理
年3回刈り取る牧草は「白」「黒」「白黒」と色分けされてます。刈り取り時期が一目でわかるようになっています。白いラップは6月に収穫された一番草。小岩井農場の搾乳牛、お母さん牛にはこの栄養価が高い一番草しか与えないそうです。

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体重の約5パーセントの牛乳
小岩井農場の牛舎には600頭以上の母牛がいます。650キロの母牛が1日で約15キロから約20キロの飼料を食べて、水は100リットル以上飲んで、30リットルの牛乳を出してくれます。母牛の体重の約5パーセントの牛乳にあたります。

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今朝生まれたばかりの赤ちゃん牛も16ヶ月目で人工授精により、2歳ほどで母牛になり牛乳を出すようになります。

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小岩井農場では土づくり、草づくりに何十年もの歳月をかけトウモロコシなどの飼料もつくっています。小岩井農場の牛乳は小岩井農場の自然なおいしさを詰め込んだ味なのです。

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排泄物をエネルギー循環
小岩井農場では、牛が2.000頭、ニワトリが6万羽を飼育しています。動物たちが毎日する排泄物は60トン以上です。
この施設「バイオマスパワーしずくいし」は、動物たちの排泄物をメタン発酵処理し、その過程で得られるメタンガスを利用した発電を行っています。また、堆肥として利用し循環型農業を実践しています。

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今年で10年目の「バイオマスパワーしずくいし」には、給食センターや市場であまった植物性残渣が運ばれてきます。このバイオマス施設の発電量は、1日当たり4000kwhです。

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小岩井農場の一本桜
牛は暑さに弱いため日陰をつくるための日よけの木を数多く植えていましたが、牛の牧草地から牧草をとる牧草地にしたため木が不要になり桜だけを残して他の木を切ってしまいました。

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春からゴールデンウイークには、樹齢100年にも及ぶ一本桜が綺麗に咲き誇りますが、春先に雪が溶けたり、降ったりと天気が不安定だと山の餌がないため、鷽(ウソ)という鳥たちがお腹をすかせて桜の木の上を食べてしまう年もあるそうです。小岩井農場は動物保護区に指定されています。ツアーの最中に、キツネや野ウサギ、ニホンカモシカに遭遇できることも!動物たちがやってきて森がさらに育っていきます。6月の下旬には、ゲンジホタルによる光の演出を楽しめます。

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毎年成長する実験林の森
この小岩井の地に、毎年木を植えている森があります。毎年0.1ヘクタールの土地に300本の苗木を植えています。昭和39年から開始し、今年で51年経過しています。あと49年で100年の森が誕生しますね!自分と同級生の木を見つけました。テッペンが天空に近いところにあります。とても大きく育ちましたね。

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斉藤さんから森の香りのプレゼント、山椒を頂きました。山椒の他にクルミやクリなど木の実のつく木も植えられているそうですよ。

ミルク館

小岩井農場には、お菓子をつくる工場もあります。鶏の飼育をしているので「卵」、乳製品「バター」、畑には小麦もまいているので砂糖などは買ってチーズケーキやバターケーキも生産しています。バスツアー終了後、毎朝小岩井農場のしぼりたての生乳が届くというミルク館へすぐさま向かいました。

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どうしても食べたくて仕方がなかったソフトクリームを早く食べたいです。濃厚ミルクが大変おいしゅうございました。

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ミルク館にはチーズをつくっているところを窓越しに目の前で見ることができます。

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しぼりたての生乳をその場で味わうこともできます!

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今回参加した小岩井農牧のガイド付きツアーは、第7回エコツーリズム大賞の特別賞、第8回の優秀賞を連続受賞したツアーです。ツアーの生みの親であるエコツーリズム(小岩井物語)担当マネージャーの濱戸祥平さんからお話をお聞きします。濱戸さん、実はツアーを担当する前は羊の飼育を担当していました。濱戸さんは、今では3.000回もガイドを経験されています。

ガイド付きツアー誕生
小岩井農場遊園地というカタチで観光部をつくるところから始まり、平成20年にトラクターパレードを開催したところ大変好評だったそうです。小岩井農場100年を迎えて小岩井農場らしい観光とは何かを考えていきます。そこで、目に見えないものを目に見えるようにするプレミアムツアーを平成21年に開始します。

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斉藤さんは自然観察指導員という資格も持っていらっしゃいました。斉藤さんの他5人のガイドさんがいらっしゃいますが、ガイドさんは各々のシナリオで自作自演されます。魅力もガイドさんごとに違って、ガイドさんごとの味が出ています。

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目に見えるものだけではわからない。目に見えないものまで紹介
お客様が知的好奇心をそそるようなプログラムは一体何かを調べるために、18のプログラムを計画し、実際にツアーに参加したお客様の声を何度も反映させて、目に見えるものだけではわからない。目に見えないものまで紹介する「インタープリター」という考えを売りにした今のプログラムツアーを作り上げていったそうです。

ツアーに参加して小岩井農場に憧れて、入社された従業員の方もいらっしゃるほど!

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観光部の企画担当の土谷のぞみさんは、地元のラジオで小岩井農場の魅力を話されている日もあります。のぞみさんが一番好きなお土産はグルメファンクッキー(大地の恵み)だそうです。しゃかいか!編集部は、グルメファンクッキー(大地の恵み)を直ぐに買いに走りました。

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本日は、時間を完全に忘れてしまう楽しいツアーを本当にありがとうございました!今回のツアー以外のトラクターバスで行くツアーやプレミアムツアーを体験するためまた小岩井農場へしゃかいか!編集部は足を運びたいと思っています。

【詳細情報】

小岩井農場まきば園

小岩井農牧株式会社
住所:岩手県岩手郡雫石町丸谷地36-1
電話番号: 019-692-4321
URL:http://www.koiwai.co.jp/makiba/index.html
Facebookページ:https://www.facebook.com/KOIWAI.makiba

(text:坂田、photo:市岡)

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