世界に誇る究極の刀を生み出す刀鍛冶の名門、4代目吉原義一

刀鍛冶 吉原義一

思わず息を呑む研ぎ澄まされた刃文の美しさ。その輝きに魅了された世界の人たちから刀鍛冶、吉原家4代目の義一さんに注文の依頼が舞い込みます。

刀鍛冶 吉原義一

東京葛飾区にある吉原さんの自宅兼工房にお伺いしました!海外からお越しになる方が喜びそうな日本庭園を思わせるお庭です。はじめまして!吉原義一さん、本日はよろしくお願いします。

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部屋に通されて、まず目に入ってきた額に収められた「現代刀匠人気大番附」という昭和16年頃に作られたポスター、まるで大相撲の番付表です。

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刀剣界の横綱
横綱の欄に義一さんの曾祖父「吉原國家(武蔵住國家)」さんの名前を見つけました。戦時中、日本の刀鍛冶を取りまとめていた刀剣界の重鎮です。戦前、大正から昭和の始めにかけて、義一さんの曾祖父の代から刀をつくり始めました。義一さんの父、義人(よしんど)さんの名刀は、日本の刀匠の芸術品としてメトロポリタン美術館に並べられています。義一さんの叔父は、映画「ラストサムライ」に刀鍛冶役として出演されています。

日本刀自体は美術品として登録されているため、美術品の登録証が付いている日本刀であれば、銃のような所持許可は無しでも所有できるそうです。

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義一さんは、父が刀をつくる様子を間近にみて育ってきたので、小学生のころから鉄をひっぱたき小刀をつくったり、熱い鉄を素手で握って大火傷したりと刀鍛冶の真似事を小さいころから経験されていたそうです。

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史上最年少の無鑑査認定
高校を卒業してから本格的に修行の道に入った義一さんは、修行を始めてわずか5年で、刀匠の資格を取得します。日本美術刀剣保存協会の「新作名刀展」コンクール初出品にして、努力賞と新人賞を受賞。その後、10年連続で特賞を受賞し、史上最年少の36歳の若さで鑑査なしで展覧会へ出品できる「無鑑査」の認定を受けます。

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さらに、義一さんは葛飾区の指定無形文化財の認定も受けていらっしゃいます。先祖代々受け継ぐ技術とセンスは義一にしっかりと受け継がれているようです。

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この塊は刀の材料の玉鋼(たまはがね)です。鉄や砂鉄を原料とした玉鋼の塊を小割りにして、炉で叩いて延ばしての鍛錬を繰り返し、よく切れて硬い刀に成型されます。

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義一さんの工房は、葛飾の他茨城、シアトル、サンフランシスコにあり、今までのお弟子さんの数は8人にも。

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研ぎ澄まされた刃文には、丁子の花が文様として焼き入れされています。焼き入れによって派や刀工などが示されます。

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日本刀が完成するまでの道のりはとっても長い!
日本刀の行程
玉鋼(刀の原料)→水減し→小割り→小割りされた鋼を選別→積沸し→「鍛錬」→折り返し→皮鉄→革金を曲げる→造り込み→素延べ→火造り→土置き→焼入れ→鍛冶砥ぎ→研磨

今日は、丈夫な強い刀を生み出すために大切な「鍛錬」の工程を見学します。工房では、お弟子さんたちが修行されています。

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炉で熱され真っ赤になった小割りの鋼を前に慎重な面持ちのお弟子さん。温度は上昇とともに赤、オレンジ、黄、白と変化していきます。

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鋼を叩く、叩く。10回から15回繰り返し鍛錬を行います。

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鋼が燃えないように藁半紙を当て、酸素の量を遮断し、温度を調整します。

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鋼を燃やす沸かしの工程です。ばちばちと火花が飛ぶ中、ふいごを動かし空気の量を調整します。

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温度は700度〜800度まで上昇します。工房内での温度もぶわっと上昇していきます。

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鬼平犯科帳の時代劇に憧れて、刀鍛冶の道に入った4年目のお弟子さんが懸命に金槌を振りかざし叩きます。

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「相槌を打つ」の語源
トントン、カン、トントン、カン、トントン、カン、トントンとリズムの良い相槌が聞こえます。

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鍛錬は、一人では出来ない行程なので、向こう鎚と一緒に行います。向こう鎚は、合図に合わせてトントンと叩き、合図に従ってトントンと打ちます。相手の話に合わせて反応する「相槌を打つ」の語源はここからきています。
鍛錬の行程を動画でご覧ください。

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鋼を鍛錬し、不純物を叩き出して炭素量を平均化させた後、タガネを入れて鋼を2枚に折り返し、平らに打ち延ばし形を整えていきます。

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この金槌かなり重いです。持つ手がプルプルします。

刀鍛冶 吉原義一

世界に誇る名刀を生み出す工房を後にして、日本刀の工程を一から義一さんに詳しくお聞きしていきます!
これは、日本刀の原料となる塊の玉鋼です。

2玉ヘシ

玉鋼を小割りにするために水減しの工程です。

3つぶした玉鋼を焼き入れ

つぶした玉鋼を焼き入れします。

4小割(割ってみて鋼の状態を把握、選別)

鋼を小割りします。

5積み沸かし

小割りして鋼の状態を把握し、硬さで選別します。テコ台に隙間なく、鋼を積み重ねます。

6積み沸かし

テコ台に積み重ねた鋼を泥汁をかけ炉へ入れます。泥汁をかけるのは芯まで沸かすためです。

8鍛錬

鍛錬を繰り返します。

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鋼を平たく延ばします。

9折り返し

タガネを入れて鋼を折り返します。

10皮鉄

軟らかい心鉄をくるむ硬い鉄、皮鉄が鍛錬によって生まれました。

11革金を曲げる

切れ味が鋭く、折れず、曲がらない日本刀をつくるために、違う素材を鍛錬し多重構造をつくります。鉄質の違う材料、皮金を曲げて鍛着させます。

12皮鉄を曲げる

刀身の中心に入れる柔軟な芯鉄を外側から包む皮鉄を曲げます。

13造り込み

柔らかい鋼(心鉄)を硬い鋼(皮鉄)を包み、造込みという工程です。

14素延べ

熱して平たい棒状に打ち延ばす素延べの工程です。

15火造り

素延べの次は火造りです。小槌で叩き、造込み形状を整えます。

16火造り17火造り18火造り完成

ヤスリで肉置きという膨らみ部分を整えて火造り終了です。

19生仕上げ(ヤスリなどで表面を平らにする)

ヤスリなどで表面を平らにする生仕上げをしていきます。

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削って、

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さらに削っていきます。

23焼き入れ(土置き)

名刀に命を吹き込む
緊張の焼き入れです。刀に焼きを入れる工程は、土置きとも呼ばれ、高温の刀に木炭や砥石の粉などを混ぜて作られた粘土を置いて文様を描いていきます。限られた時間での最後の真剣勝負です。

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厚く土が置かれた部分は、ゆっくりと冷却されるため柔らかく、

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薄く土が置かれた刃部との硬度差によって、研磨をすると刃紋が表われます。

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量に変化をつけて刀の上に文様を描き出します。

28焼き入れ
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刀を700度~800度まで熱して焼き入れします。刀の温度を色で見分けるため焼き入れは暗闇で行います。焼き入れ後は、刃紋を確認して粗く研ぎながら形を整えます。

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刀鍛冶 吉原義一

全行程の説明では、義一さんの父、義人さんの製作行程を元にご説明いただきました。年に24本ほどしか作ることができないという美しき名刀が輝きを放っています。

刀鍛冶 吉原義一

最後に、吉原さんの名刀を持たせて頂きました。緊張のため名刀を持つ手のみならず、顔まで強張ってしまっています。持つ手に力が入り、なんだか心の中に刀が宿ったような気持ちです。今回の貴重な体験から工房見学まで、吉原さん、本当にありがとうございました!

【詳細情報】

刀鍛冶 吉原義一

日本刀鍛錬道場
電話番号:03-3607-5255
住所:東京都葛飾区高砂8丁目17-11

(text:坂田、photo:市岡、一部写真は吉原さんからご提供)

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