Sponsored by 京都市伝統産業未来構築事業 & Kyoto Crafts Exhibition DIALOGUE
日常を飾る、煌びやかな錺金具の世界!親子2世代で新たなチャレンジを続ける「錺金具竹内」
皆さんこんにちは!
いきなりですが、「錺金具(かざりかなぐ)」をご存知ですか?
錺金具とは、この写真に写っている煌びやかな装飾たちの総称です。
皆さんの身近ですと、お仏壇の装飾品として飾られているのを目にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回はこの錺金具を作っている「錺金具竹内」さんの工場を訪問してきました!
今回記事を担当させていただくのはインターン生のりこです!
私はこの春京都芸術大学を卒業いたしまして、大学では建築、インテリア、ランドスケープ、環境デザインと幅広く学んでまいりました。
私は実家が愛媛県にありまして、京都に越してきたのはちょうど4年前。大学の4年間を京都で過ごしていくうちに京都の伝統工芸に興味が芽生えました。ですので、このように伝統工芸に触れ、取材させていただける環境がとても有難いです。
今回の取材では、実際に錺金具職人の皆さんの技術を直近で見学できたり、竹内の強みでもある機械作業の現場にもお邪魔させていただけるということでとてもワクワクしています!
いざ、錺金具竹内の工場へ!
京都市伏見区にある、錺金具竹内さんの工場に到着しました!
駅から歩いて向かっていると、道中には自動車の整備会社や発電所、運輸会社や鉄工所などものづくりの現場が沢山ありました。付近には、任天堂の本社があることでも有名です。
今回は、お父様の後を継いで錺金具竹内の二代目社長となられた竹内 直希さんにお話を伺いました。
1967年に吊灯篭を作る会社として創業した、錺金具竹内さん。
創業から50年以上経過した現在は、「錺金具」と呼ばれる主にお仏壇を飾る仏壇金具や仏具、寺社仏閣に使われている社寺金物を製造しておられます。
みなさんの生活の中にあるもっと身近なものですと、襖の取手である襖引手やお仏壇を飾る金色に輝く飾りたちが錺金具と呼ばれます。
夏に京都で行われる祇園祭の山鉾など、お祭り事の装飾としても使われているそうです。煌びやかな見た目はめでたい催事にピッタリですね!
また、創業から50年以上培われた錺金具の加工技術を用いて「錺之-KAZARINO-」というオリジナルブランドを作っておられます。
錺金具をもっと沢山の人に知ってもらい、錺金具の力で人々を幸せにしたいという思いから、二代目の竹内直希さんが生み出したブランドです。
ラインナップはマネークリップやバングル、マスクバンドやドアスコープ、オーバルボックスやスマホケースなど私たちの生活でも馴染みのあるものがたくさん!
今回は、「錺之-KAZARINO-」の製品も実際に見せていただけるとのことで楽しみです!
煌びやかな錺金具たちがお出迎え
それでは皆さん、お待ちかねの工場見学です。
実際に錺金具がどのように生み出されているのかとっても気になります!
工場の中へお邪魔すると・・・
視界に入ってくるのは、煌びやかな錺金具たち!
お寺や神社、お仏壇でよく見るような、たくさんの錺金具が展示されていました。
普段から寺社仏閣巡りが好きな私、今まで見たことがあるものを発見しては大興奮!
こんなに近くで見られるなんて、とても嬉しかったです。
なかには見たことのない金具もたくさんあり、インターン生の質問が止まりませんでした。
特に気になったのがこちら!
大量のメダルのように並ぶこの金具たちは、仏壇金具に使われるもの。家紋と呼ばれる代々伝わってきた家系や家柄を表す家の紋章が彫られていました。
一見同じように見えて少しずつ異なっている家紋たち。ものすごくたくさんの種類があるんだなぁと圧倒されました。ふと、自分の家の家紋ってどんな文様なんだろうと気になりました。今度実家に帰省したら祖父母に聞いてみよう。
「錺之-KAZARINO-」の製品も実際に見せていただきました!
こちらはお札をまとめることができるマネークリップ。
リン青銅と呼ばれる素材で作られているので、使用していくと酸化していき経年変化を楽しめます。手に馴染んできた頃には色が変化しているはず!使えば使うほど味がでてくるというのは、なんだか愛着が湧きそうです。
他の製品も実際に近くで手に取って見せていただいたのですが、どれも輝きが素晴らしい!
私は中でもこちらのバングルが欲しくなってしまい、実際に試着させていただきました。
見た目から固いのかなと思っていたのですが、真鍮板でできているため意外にも簡単に曲げられるようです。
軽い力でバングルのサイズを調整できるので、簡単に自分の腕にフィットさせることができます。
いや〜この輝き格好良すぎます!
錺之の製品は、今まで私達の生活に取り入れられることがなかった錺金具をより身近に感じさせ、その魅力に気づかせてくれる製品となっています。
では、これらの製品たちはどのように作られているのでしょうか。早速ものづくり現場を見学していきます!
まさに職人技!緻密な手仕事によって作られる錺金具
錺金具竹内さんは、職人たちによる手仕事と機械仕事を両立されています。
まずは職人さんの手作業を拝見させていただきました!
皆さん、見て下さい!
大量の引き出しが、入り口から部屋の奥まで続いていました。
聞くと、これまで作ってきた錺金具が入っているのだそう!
自社で金型を製作しておられる竹内さん。
全国各地からオーダーがあるそうで、これまで作ってきた金具の種類は全部合わせると数千程種類はあるとのこと。
要望を受けて、依頼に合った金具をこの棚の中から探し出します。
こんなにあったら探している金具を見つけるのも一苦労だなと思ったのですが、なんと職人さんたちはおおよその場所を覚えていらっしゃるんですって!すごすぎます!
こちらにも無いデザインの依頼が来たときは、職人さんたちが新たに彫っていきます。職人さんたちのこういった努力があって日本の伝統は守り受け継がれているんだなぁと改めて実感しました。
棚の向かい側では職人さんたちが手作業で錺金具を製作しておられました。
まずは銅板に基準線を引いていき、線が引けたら柄を掘っていきます。
カンカンと銅板に釘のようなものを打ち付ける音が聞こえてきました。
この釘のようなものは「タガネ」と呼ばれる道具で、錺金具作りには欠かせない道具となっています。タガネの先端には模様がついており、それらを組み合わせていくことで柄が作られていきます。
木製棚の引き出しを開けると大量のタガネが!
タガネは数えられないくらいあるそうなのですが、この引き出しの中だけでも恐らく2000本はあるとおっしゃっていました。ここから職人さんたちは、柄に応じて対応したタガネを探し出して使っているそうです。
実際に職人さんの手元を見せていただくと、細かな粒のような模様を打ち付けておられました。
この模様のタガネは魚々子(ななこ)と呼ばれており、魚の卵のような見た目が所以とのこと
魚々子は数違いや大きさ違いのタガネが何種類もあって、柄を打ち付ける場所の広さによって使うタガネを変えています。
大きさや数違い、カーブの曲がり具合など、細かな違いがあるそうです。
今ではこのようなタガネを作れる職人さんは日本でたったお一人だそうで、今後はタガネを手に入れるのも困難になるだろうとおっしゃっていました。
真剣な面持ちで、緻密な柄をひとつひとつ丁寧に打ち付けている様子はまさに職人技。その姿にすっかり魅了されました。
竹内さんの錺金具は、このように職人さんの手作業で作り出されるものと機械の技術によって作られるもの、2種類の製法があります。
先代のお父様がいち早く機械の導入を始めたことで大量生産の受注も可能になり、これが今の錺金具竹内の強みにもなっています。
金型を必要としない少量のご注文の場合は手仕事、量産が必要な場合は機械仕事などと、上手く使い分けることで、様々な依頼に対応できるようになったのだそうです。
それでは、先代のお父さまが作り上げた機械の工場も実際に見学していきましょう!
迫力満点!先代が作り上げた機械作業場へ
見てください!この迫力満点の空間!
奥に進むにつれて、大きな音と大きな機械に囲まれていきます。
中に入って最初に気になったのがこの機械。
ハンドルを回して、銅板に穴を開ける機械なのだそう。
「どうやって動かすんだろう?」と話していると、実際に穴を開けるところも見せてくださいました。ガシャンと音が鳴ると、おお〜と声をあげる私たち。
竹内さんは、私たちが興味を持った機械や事柄に対して丁寧に説明してくださいました。
次に見せていただいたのは、切断する前の大きな銅板!
ドーンと迫力満点!
まだ何も加工されていない状態の銅板はとてもツルピカで綺麗なのですが、一度切断の機械に通すとそれだけで傷がついてしまうそうです。堅いものではあるけれど、それくらい繊細な素材でもあるのですね。
銅板は用途に合わせて厚みを使い分けているらしく、作る製品の大きさや厚みによって加工のしやすさや、「なまし」と呼ばれる熱を加える工程の回数も変わるそうです。
臨機応変に対応している職人さんって流石だなぁと感じました。
続いてこちらは、先代の時からずっと使っている手動の切断機。
チョークで書かれた「毎回掃除する」という文字が可愛らしくて気になってしまいました。
現在は自動で切れる機械も導入されているのですが、少しカーブがあるものや小さいサイズのものなど、手動の機械でないと切れない製品もあるため、今でも大事に使われているそうです。
最新の機械も高性能ですごいなと思いますが、昔の人がその時々で知恵を振り絞って作り出した機械が今でも使われていることは、もっとすごいことのように私は思います。
奥に進むと1番大きな機械が現れました。
遠目からでも凄いオーラを感じていたこの機械。見た目も音も全てが迫力満点です。
この日は、先代のお父様が実際に作業しておられました!
実際に金型をセットして銅板を彫る工程をみんなで見学。
ガッタンと大きな音を立てて、銅板に模様が彫られます。
完成したものがこちら。輝きがとても美しいです!
機械を導入しつつも金型の原板は職人さんの手作業で作り出しているので、機械で生成されたものでも職人さんの手彫りの風合いに近い仕上がりになっています。
この機械は先代のお父様が導入したもので、大量生産のためにこの機械を自分で整備、カスタムしながら設置したそう。
手作業もとても価値のあることだとは思いますが、現代社会でニーズのある大量生産や、コストの問題を考えるとこのような機械での作業はとても画期的ですよね。
なんと、先代のお父様はこの技術を昭和の時代から取り入れていらっしゃったそうです。手仕事だけでは限界が来ると見越しておられたのでしょうか。なるべく錺金具を先の未来でも残していきたいという思いが感じられました。
他にもあたりを見渡すと、手作り感満載のワゴンに作業道具たちが収納されていました。
お父様に話を伺うと、この工場はほとんどお父様が自身で作り上げたのだそう。
なんと、大型の機械を設置する際には、自ら地面を掘って置き場所を整備したんだそうです!
「できることはなんでも自分でやる」といったお父様の人柄にとても驚かされました。
私は機械の扱いは専門の方にお任せするものだと思っていましたが、お父様の時代はこういった機械の整備等もみんな趣味の一つとして楽しみながら行っていたのだそうです。
先代から受け継がれる「なんでも自分でやる」チャレンジ精神
お父様の作り上げた工場を見て分かる通り、「なんでも自分でやる」というのが錺金具竹内のカラーなのだと竹内さんはおっしゃいます。
そのマインドを受け継ぎ、竹内さんが立ち上げたのが「錺之-KAZARINO-」です。
「できることは自分たちで」というお父様譲りの考え方のもと、一から製品をデザインし、改良を繰り返しながら新たな製品を生み出し続けています。
竹内さんの「何事もまずはやってみよう」というお父様譲りの行動力とチャレンジ精神、とても素敵だなと感じました。
「錺金具をもっと多くの人に知って欲しい」「これからも残していきたい」という熱い思いから、「錺之-KAZARINO-」の展開に力を入れておられる竹内さん。
2023年3月8日〜11日にホテルカンラ京都にて開催された、工芸・手仕事の作り手を紹介する展示販売会「Kyoto Crafts Exhibition"DIALOGUE"」にも出展されていました。
私も会場にお邪魔したのですが、展示ブースでは錺之の製品を見られるだけでなく、職人さんが実際に作業している姿が見られたりと展示の仕方が工夫されていたりと、見に来るお客さんたちも興味津々の様子でした!
これから錺金具の世界がもっと盛り上がっていくと私も嬉しいです。
貴重なお話や体験をありがとうございました!
錺金具竹内
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協力:京都市伝統産業未来構築事業
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協力:Kyoto Crafts Exhibition DIALOGUE
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text:横尾莉子 photo:市岡祐次郎、本田コウイチ、町田益宏
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