Sponsored by Kyoto Crafts Exhibition DIALOGUE

繕って、染め直して、永く着続けるという選択肢を。アパレルブランド「MITTAN」が提案する“現代の民族服”とは

6月に入り、じんわりと暑さを感じる季節になってきましたね。

ぶらりと街中を散歩すると、「夏物入荷!」の文字も目立つようになってきました。

「もうそんな季節か・・・」と思いながら、今年で三十路を迎える心の準備を始めています。今回は、そんなしゃかいか!の大人女子代表・前田が京都よりお送りいたします。

さて、本日お伺いするのは、“現代の民族服”をコンセプトに服作りを行っている「MITTAN」さんのアトリエです。
MITTANは、「ワンシーズンではなく、永く着られる服を」という思いから、2013年にデザイナーの三谷武さんによって生まれたアパレルブランド。

MITTANは世界に遺る衣服や生地にまつわる歴史を元に、現代の民族服を提案しています。
平面的な構造を再解釈し、天然素材が持つ
本来の機能性と組み合わせることで、
一過性の時代の流れにとらわれることの無い、
永く続く服を目指しています。

【MITTAN 公式WEBサイトより】

永く続く服というコンセプトのもと、流行りに関係なく着られる古典的なパターンの定番商品をつくり続けているそうです。

シンプルかつジェンダーレスなデザインが多く、幅広い年齢層やライフスタイルを持つ方々から支持を受けています。

【Instagramより @mittan.asia

また、MITTANは購入後の製品の修繕や染め直しも行っている、珍しいブランドでもあります。

【Instagramより @mittan.asia.repair

MITTANの衣服を着続ける中で、裾がほつれたり、穴が開いてしまったり…と修繕が必要となった場合、購入した時期や店舗に関わらず、同社の縫製スタッフが修繕をしてくださるそうです。

「破れたら捨てる」消費する服ではなく、具合の悪いところは繕いながら生き続ける衣服。素敵なブランドコンセプトですよね!

今回の取材では、そんなMITTANの衣服が生み出されているアトリエに伺い、永く着続けてもらうための取り組みやその想いに迫りたいと思います!

さあ、京都・上京区にあるMITTANのアトリエへ、レッツゴー!

(※取材は2023年2月に実施。現在アトリエは、左京区に移転をしています。)

MITTANの製品が生まれるアトリエはどんなところ?

やってきました!こちらがMITTANを主宰・運営する合同会社スレッドルーツさんのアトリエ。

ちなみに、青いヘルメットを被った真ん中の3名はしゃかいか!インターン中の大学生たち。「服が大好き!」と張り切るフレッシュガール&ボーイたちを連れて、早速お邪魔していきます!

こんにちは〜!

ドキドキしながら引き戸をガラリ。

天井が高い・・・!思わず見上げてしまいました。

こちらのアトリエは、元々西陣織の「織屋(はたや)」だったそう。

仕切りのない開放的な空間は、穏やかで落ち着いた空気を纏っています。まさに、私がMITTANの製品を見て感じた雰囲気に近いのかも。

ぞろぞろと入ってきた私たちを優しい笑顔で迎え入れてくださったのは、営業担当の鈴木さんと岩倉さん。本日はよろしくお願いします!

普段はアトリエ内の公開はしていないそうですが、今回は特別に、内観やお顔を載せないという条件で取材をさせていただけることに。貴重な機会をいただきありがたい限りです。

しかも、今回はアトリエで行っている修繕の様子も見学させていただけるとのこと。
普段は見れない裏側を見れるってこと!?MITTANファンの皆さん、必見ですよ〜!

繕って、染め直して、新たな製品へ

「まずは、MITTANの衣服からご紹介しましょうか」と、鈴木さん。
玄関付近のラックにかけられたシャツやパンツを手にとってご紹介してくださいました。

どれもシンプルなシルエットで、研ぎ澄まされた美しさを感じます。深みのある自然な色合いがどれも素敵…!

実は、こちらの衣服は既製品ではなく、それぞれの個性が際立った1点もの。

何らかの事情があり、お客様が着られなくなったMITTAN製品を買い取り、必要に応じて染め直しや修繕を行い再販をしているものなのだそう。

2021年から開始したという、こちらの買取サービス。なんと、購入店舗や時期、商品のコンディションに関わらず、当時の小売価格の20%(税別)でMITTAN製品を買い取っていただけるそうです。ずいぶん太っ腹な取り組みですよね…!

「再販品」として生まれ変わった製品は、今まで年に数回行われるオープンアトリエにて販売されてきましたが、移転する社屋の一角に、今年の秋「再販品」をメインにご紹介をする直営店をオープンする予定なのだそう。購入の機会が増えるなんて、嬉しい情報です!

ここで、気になる再販品をいくつかご紹介。

こちらは、買取時は藍色だったシャツに松煙染を施し、襟元とカフス部分には、オリジナル仕様のステッチを加えたもの。松煙を染め重ねることで、より深い陰影が生まれています。

続いて、こちらの鮮やかな黄色が美しいシャツは、買取時は胡桃色(胡桃染)だったシャツを福木(フクギ)という木の枝葉を使って染色したもの。

ものの状態を見て新たな染色を加えることで、既製品には見られないような色の仕上がりになるのだそう。

自然界のもので、こんなに鮮やかな黄色になるとは。驚きです!

こちらは藍染のシャツに胡桃染を染め重ねたもの。

裏返してみると、タグも少し胡桃色に染まっていました。

買取をした製品は、お客様それぞれの着方や着年数によって状態がほとんど異なるため、毎回どのように修繕や染め直しをするのか、デザイナーと縫製スタッフ間で相談しながら対応しているそうです。

基本的には、当て布をして補強し、染め直すという流れが多いのですが、同じ形の衣服が2着返ってきた時はそれらを組み合わせて1つの衣服にしてみるなど、その時々で最適な方法を模索し提案しているとのこと。

今までに聞いたことがないユニークな取り組みですが、その背景にはどのような想いがあるのでしょうか。

服作りの根底にある、アパレル業界への想い

ここまでのお話からも強く感じる、MITTANの「永く続く服をつくる」という理念。
どのような背景や想いを持って続けられているのか、改めてMITTANのブランドについてお聞きしていきます。

MITTANが設立されたのは、2013年。

デザイナーである代表の三谷さんは、ファッションで巨額の資金が動く生産の背景に不当な労働を強いられている人々の存在を知り、従来の大量生産・大量消費・大量廃棄ではなく、ひとつのものを長く着られ、引き継がれるような“現代の民族服”を作りたいと考えるようになったんだそうです。

そのため、生地を選ぶ際には、「長く着続けていけるかどうか」という素材そのものの視点だけでなく、「その素材を使うことで背景に関わる生産者が豊かになるのか」という点も考慮しているんだそう。

また、テキスタイルにもこだわりを持ち、独自の素材開発にも取り組んでいます。

遠州、播州、尾州といった日本各地の機械織りの産地をはじめ、インド、ラオスといったアジア圏の手織りのものも使用。生地を選ぶ際には、デザイナーが可能な限り直接工場に赴いています。

例えば、パッチワークのような織り柄が特徴的なこちらのハンカチ。

生地に柄をプリントするのではなく、織り機で生地の模様や柄を直接織り込む「ジャカード織り」という製法で作られています。

肌掛け用に作った大きなサイズの生地を裁断してハンカチにしているため、切るところによって色や柄が異なるんだそう。

素材は絹と麻ですが、緯糸には絹紡紬糸を、経糸にはリネンシルクとシルクの糸を使用しています。様々な素材が合わさっているため、生地が薄くなってくると違う色が見えてくるという楽しみも。まるで生地が生き物のように、使い続けるごとに変化し新たな顔を覗かせてくれます。

「実は、このデザインを織れる工場は国内にはほとんど残っていないんです。」と、鈴木さん。

生地開発時には、尾州に二台だけある織機のうちの一台で織ったそうです。

しかし、その織り機は古く、故障した場合に替えの部品が入手困難であるため、もし機械が壊れたらこの生地を織ることができなくなってしまう可能性もあるとのこと…。

MITTANでは、工場を存続させ技術を守るためにも、継続的な定番品展開を意識した商品開発を行っているのだと言います。

また、製品を作る際に余ってしまう「残布」を活用した製品も積極的に企画をしています。

こちらは、元々コートに使っていた2色のウール素材を継ぎ合わせ、腰巻として生まれ変わったもの。

触ってみると、フェルト生地のように柔らかくて暖かい!恐るべし、元コート。

巻いてみるとこんな感じ!肌寒く温度調節が難しい季節に大活躍すること間違いなし。
今年の秋物の商品になる予定だそうなので、要チェックです!

ひとつのものを永く着続け、着れなくなったときは新たな形へ。私たちにこれからの衣服との付き合い方を提案してくれるMITTANの取り組みは、ものにあふれ、消費することに慣れてしまった現代の私たちに新たな気付きを与えてくれます。

様々な取り組みの中でも、修繕や染め直しはブランド設立当初から続けているそうです。
今回は特別に、修繕の様子も見学させていただきました!

ひとつひとつ手作業で、お客様に合った修繕を

アトリエの奥にあるミシン台へご案内いただきました。

縫製スタッフさんの手によって、破れたりほつれたりした箇所がゆっくりと丁寧に繕われていきます。

聞くと、大体月に20〜30着ほど、お直しのため商品が返ってくるとのこと。

こちらは、実際にお客様から依頼を受けた修繕前のパンツ。

亜麻苧麻パンツといって、亜麻(あま)と苧麻(ちょま)を掛け合わせたMITTANの定番パンツですが、見ての通り股の部分に大きめの穴が…!

なんでも、柔らかく履き心地が良いため、デニムのようにアクティブに履かれる方が多く、修繕を必要とする方が多いそうです。つまり、それだけ気に入ってリピートしてくれているということ。さすが、人気商品です!

衣服の状態によっては、破れていない箇所に当て布をして補強する場合も。

こちらの藍色の羽織は、破れてはいないものの肘のあたりが白く薄くなっている状態だったため、当て布をして補強しています。

ときには、このようにあえてハンドステッチを施すことも。

手を加えた部分をデザインのように残すことで可愛いワンポイントになるなんて!オリジナル感が増して嬉しくなっちゃいますね。

同じ形のパンツが2枚帰ってきたときは、2つを掛け合わせて1本にすることもあるんだそうです。
ものの状態をみて、ひとつひとつ丁寧に補修を行っておられました。まさに職人技です!

ここで、ふと思ったことが…。
もしかして、衣服の状態をみたらその人のことが分かったりするのかも。

質問してみると、「そうなんです」と頷く縫製スタッフさん。

「コーヒー屋さんの制服として使ってる方の衣服は、利き手側の肘部分が破れていたり、お店でひざをつくことが多い方はそこだけが破れてたりと、普段の生活が見えることが多いですね。自転車によく乗ってる人は巻き込みで裾がボロボロになってる方も多いんです。」

衣服の状態だけを見て、その方の生活まで想像ができるなんて面白い!MITTANの衣服が、お客様の日々の生活に馴染んでいることが分かります。

しかし、なかには修繕が難しいものもあるそうで…。

何度も着続けられていたり漂白されていたりと、生地自体が弱くなっているものになると、5、6時間ほど作業をしても終わらないこともあるんだとか。

お客様の使い方によって衣服の状態が異なるため、どのように修繕をするべきか毎回デザイナーと会議し、頭を悩ませながら考えることも多いのだそう。

聞いているだけでも骨が折れる作業ですが…どんな状態でも「着続けたい」というお客様の気持ちを尊重してお断りはしていないのだと言います。

「“長く使い続けること”がMITTANのポリシーなので、捨てるという選択肢はないですね。」と、真っ直ぐな瞳で語ってくださいました。

また、修繕や染め直しの実施により、長く着続けてくれるお客様が多い一方で、目に見えないところで衣服が廃棄されていたり、タンスの中にずっとしまわれていたりと、着てもらえていない衣服があることも事実。

「作った限りは責任を持って、新しい形で届けていきたい」という思いから、初めにご紹介した「買取」の取り組みを始められたそうです。

MITTANのブランドで生き続ける「長く着続けてもらいたい」というシンプルな願い。様々な取り組みの中からも、その想いを強く感じさせられます。

ブランドの意義や想いを伝える、MITTANの新たな取り組み

さて、みなさん。ここまでのお話からすっかりMITTANが気になる存在になってしまったことでしょう…!

オンライン販売も行っておられますが、やっぱり手にとって手触りや着心地を実感したいところ。

現在は直営店を持たれていないため、取り扱いしているセレクトショップや、年に数回行われるオープンアトリエ等でしか直接手にとることはできないのですが、近年はイベント出展も積極的に行っているそうですよ。耳寄り情報!

2023年3月8日〜11日にホテルカンラ京都にて開催された「Kyoto Crafts Exhibition"DIALOGUE"」にも出展されるとのことで、しゃかいか!取材班もお邪魔してきました!その様子をちらりとご紹介しちゃいます。

「Kyoto Crafts Exhibition"DIALOGUE"」は、ホテル カンラ 京都の客室やエントランスを会場とした工芸・手仕事の作り手を紹介する展示販売会。

2018年より毎年開催されており、様々な商品や作品で彩られた各客室では作り手が自ら来場者と“対話”し、より深くそれぞれの考え・思いを伝えられる場となっています。

MITTANの会場は、414号室。

中に入ると、ずらりと並ぶMITTANの製品たち!

お客様から買取をした製品に、修繕・染め直しを施した再販品を中心に展示販売をされていました。(記事内でご紹介した福木染めの黄色いシャツも発見!)

これまで再販品は、オープンアトリエでのみ販売をしていたため、イベントで直接手にとって購入ができるというのはとっても貴重な機会です!

また、衣服のひとつひとつの下げ札には、このようなQRコードがついていました。

スマホで読み込んでみると・・・

このように、衣服の生産地や素材の詳細を伝えるページを見ることができます!

実はこちらのQRコードが付いた下げ札も、2021年に始めた新たな取り組みのひとつ。

これまでMITTANでは、お客様と直接コミュニケーションをとり、ブランドの意義や想いを伝えることを大切にしてきましたが、コロナ禍により直接お客様に会える機会が減少…。

「直接お話ができなくても、作られた背景をお客様へ伝えたい」という思いから、購入前や購入後にQRコードを読み取ることで、その製品の背景を知ってもらえる仕組みを作ったのだと言います。

「生まれた背景を知ることでより愛着がわき、長く着続けてもらえるのでは…」そんな期待も込めて。

後日談

MITTANを取材し、すっかりファンになってしまった私。
なんとなんと。先日、大麻シャツを買っちゃいました!

嬉しさのあまり、こんなポーズに。

今後染め直しをすることも考え、色はベンガラ白にしました。
ゆったりとしたシルエットが使いやすくお気に入りです。

ちなみにベンガラとは、土から採れる天然の染料のことらしいです!また新たな知識をゲット。

購入後、下げ札にあったQRコードを読み込んでみると、縫製は岐阜で、染色は大阪・羽曳野との表記が!

様々な方の手を伝って生まれ、私のもとへ届いたと思うと感慨深いものがありますね。生まれた背景を知ると愛着が生まれるというのは本当だ…!

これからも着続けて、破れてしまったときは修繕したらいい。
生活に寄り添い、永く着続けられる“現代の民族服”

相棒を手に入れたような晴れやかな気持ちです。

MITTAN
〒606-8227 京都府京都市左京区田中里ノ前町89(移転後)

Web:https://mittan.asia/
Tel :075-203-9014
Mail :mitani@mittan.asia

Instagram:https://www.instagram.com/mittan.asia/
Facebook:https://www.facebook.com/mittan.asia/about

協力:Kyoto Crafts Exhibition DIALOGUE
https://dialoguekyoto.com/

text:前田恵莉 photo:市岡祐次郎、本田コウイチ

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