下水道の魅力を、クリエイティブの力で若者が再発見!東京地下ラボ by東京都下水道局
みなさん、こんにちは〜!
突然ですが、下水道に対してどんなイメージを持っていますか?
「臭い、汚い、知らない」って思っていませんか?
まさにそのイメージを「すごい、面白い、楽しい」に変えていく、それがこのプロジェクト「東京地下ラボ」です!
東京地下ラボは今年度で2年目を迎えます!
下水道は当たり前すぎて普段は意識することがないインフラのひとつです。
実際に東京都における20代の下水道事業に対する認知度は10%程度となっています。
恥ずかしながら私も東京地下ラボに参加するまで下水道を意識することのない生活を送っておりました・・・。
そこで!認知度の低い学生に、下水道の魅力を再発見するコンテンツを考えてもらい発信してもらう!という取り組みが行われているのです!
昨年度は、学生たちがチームごとに「ZINE」と呼ばれる自主制作の少部数冊子を制作したそうです!
プロが作ったような仕上がり・・・!
おしゃれで可愛らしいデザインだけでなく、サンドイッチと下水道事業を掛け合わせた内容など斬新な切り口が面白く、端から端まで読んでしまいます。
昨年度の「ZINE」の作品はこちらから閲覧できますよ〜!
http://www.gesui.metro.tokyo.jp/business/kanko/chikalabo/
今年度は、”下水道の魅力を『クリエイティブ』の力で若者が再発見” をテーマに動画を制作!
約半年間かけて行われるこのプロジェクト。
今回は、8月26日に行われたフィールドワークの模様をお伝えします!
フィールドワークは、動画制作において多様かつクリエイティブなアウトプットが出るように、インフラ、食、自然という多角的な視点から環境保全や下水道について考える機会。
どんな1日になるのでしょうか?
では、早速フィールドワークの模様をどうぞ!
おはようございます!午前9時に東京都庁都民広場に集合しました。
参加学生のみんなも顔を合わせるのは2回目、まだ少し緊張を感じますね。
何人かの学生にお話をお伺いしたところ、デザインの学部だけでなく理学部や経営学部など様々な分野の学生が集まっていました。
参加理由は「去年先輩が参加していた」、「インフラに興味があった」、「単純に面白そうだった」などの答えが。
「マンホールが大好きだから」という学生も!
それぞれの個性がぶつかりあってどんなものが生まれるのでしょうか。
なんだかとてもワクワクしてきました!!
では、バスに乗り込んでいきます。
しゃかいか!もお邪魔させていただきます!
ご紹介が遅れました、大学4年次に橋梁のたわみ検出の研究をしておりましたぐっちゃんです!
生活を裏で支えるインフラは縁の下の力持ち、私にとってはとってもかっこいい存在。
研究では陸上でしたが今回は地下のインフラ。
見えにくいからこそ、しっかりリポート頑張ります!
バスに乗り込んだら早速、下水道事業の基礎知識をDVDで学んでいきます。
下水道は私たちの生活で出た汚れた水を水再生センターまで運び、綺麗にした水を川や海に流しています。
街中で目にするマンホールを開けて人が入り修復や掃除をしてくれているそう。
もし彼らがいなければ下水道が詰まったり、雨が流れなくなって浸水してしまいます。
下水道や下水道局で働く人たちのおかげで普段の生活が送れているんですね・・・!
下水道のありがたさを噛み締めているうちに目的地に到着!
到着したのは日本の下水処理発祥の地!三河島水再生センター!
まずは三河島水再生センターについてお話いただきます。
この施設は大正11年3月から運転している日本で最初の近代下水処理場で、その敷地内には国指定重要文化財である旧三河島汚水処分場喞筒(ポンプ)場施設があります。
約100年の歴史をもつ三河島水再生センターが1日で処理する下水の量はなんと約41万トン!!!
東京スカイツリーが約4万トンと言われているので東京スカイツリー約10個分にもなります!
ん〜壮大すぎて想像しにくいです・・・。すごい。
説明のあとはいよいよ見学開始です!
まずは国指定重要文化財である旧三河島汚水処分場喞筒(ポンプ)場施設を見学します!
写真の奥にあるレンガ張りの可愛らしい建物が喞筒(ポンプ)室です。
大正11年3月の設立当初から運転をしていましたが、平成11年3月に別系統のポンプ施設に切り替え引退しました。
喞筒(ポンプ)室の周辺施設を案内していただきます。
写真の真ん中にある地下空洞は東・西沈砂池になります。
都内から運ばれてきた下水を左右(東と西)の池の中でゆっくり流すことで、下水中の土砂を沈殿させて取り除くことができます。
次はヘルメットを被って地下に潜って行きます。
洞窟のような空間が現れました。
ここは先ほど東と西に分かれて処理された下水が合流し、ポンプで下水を地上に持ち上げるために各ポンプ井に分水するところ。
実際に下水が流れていた場所を歩くことは人生で初めて!
もちろんにおいもせず、地下のひんやりとした空間が不思議でみんな興味津々です。
地上に戻り、次の施設へ。
こちらは下水から取り除いた土砂やゴミを積んだ土運車を電動で巻き上げる機械を操作していた部屋です。
床に当時置かれていた機械の跡を見ることができます。
そして、メインの喞筒(ポンプ)室へ!
垂直線と水平線を用いた平坦な面で構成されている外観は当時国内で流行っていた様式の影響を受けているそう。
赤レンガと芝生のコントラストが素敵だ〜。
中に入ると、天井がとってもたか〜い!
作業するために上部の空間が必要なので天井が高く、アーチ型になっているそう。
この喞筒室には10台のポンプが設置され、地下から下水を吸いあげていたそうです。
関東大震災の被害も受けず、当時の状態で残っています。
色鮮やかでヨーロッパのような雰囲気ですね〜。
これで重要文化財の喞筒場施設の見学は終わりです。
運転を開始した大正11年から97年の月日が経っているにもかかわらず、とても綺麗に保存されていました。
日本で初めてできた近代下水処理施設がこんなにおしゃれだったのは驚きですね!
次は現役で活躍している水再生センターの施設を見ていきましょう!
三河島水再生センターは荒川・台東区の全部、文京・豊島区の大部分、千代田・新宿・北区の一部の下水を処理しています。
まずは第一沈殿池を見ていきます。
第一沈殿池では2〜3時間かけて下水をゆっくり流し、下水に含まれる汚れを沈殿させます。
まだこの段階では水は茶色くツーンとするにおいがしました。
次は水再生センターの中でも特に重要な役割を持つ反応槽に移動です。
反応槽では下水中の汚れを微生物が分解し、細かい汚れも微生物に付着させて沈みやすいかたまりにします。
この中にはクマムシなどを含む数10種類の微生物がおり、なんと1cm角のサイコロに1万匹の数の微生物が!
2週間に1回、何の種類の微生物が何匹いるのか数え、季節によって元気がなくなった時は空気をたくさんあげてパワーアップさせてあげるそう。
ここで微生物のお世話をしてくださっているんですね〜。
みんなも微生物が中にいると聞いて興味津々です。
真ん中のシリンダーに入っている水が反応槽で得られた水で、下に沈殿している泥は活性汚泥といいます。
上部は綺麗な水と比べると若干黄色いですがかなり綺麗になっているのが分かります。
微生物の力ってすごい・・・!
第二沈殿池にやってきました。
第二沈殿池では反応槽でできた活性汚泥を3〜4時間かけて沈殿させ、上澄み(処理水)と汚泥とに分離します。
上澄みの水を観察させていただきました!
透視度は1m以上のようで、確かに目で見ても透明なのが分かりました。
においも第一沈殿池と同じ水とは思えないほど全くにおいません。
あらゆる汚れと混ざってしまった水をここまで綺麗な水に生き返らせるなんて、本当にすごい・・・。
きれいに処理した水を川や海に流す前に、塩素消毒を行います。
大きな花火大会が行われる有名な隅田川の両国橋付近における水の約60%が下水処理水だそうです。
使った後の水の処理だけでなく、川や海などの身近な存在にも下水道事業との関わりがあったんですね。
分かりやすくご説明いただいた水環境案内人の皆さまありがとうございました!
次は水再生センターから放流された水が流れる隅田川をクルーズします。
隅田川に到着です。
東京に住んでいても隅田川をクルーズすることは滅多にありません。
みんなもこれからどんなクルーズになるのだろうとワクワクしている様子。
隅田川を案内してくださるのはプロ・ナチュラリストの佐々木洋さん。
佐々木洋さんは「自然の面白さや大切さを多くの人と分かち合い、そのことを通じて自然を守っていきたい」という思いのもとに、30年以上にわたって、自然観察指導、自然に関する執筆・写真撮影、講演会、TV・ラジオ番組の出演・企画・監修、エコロジーツアーの企画・ガイド等を通して自然を案内されている方。
そんな佐々木さんによるユーモア溢れる自然クルーズツアーが始まりました!
まずは川のにおいを嗅いでみます。
くさくないですね〜。
本来、夏は暑く植物性プランクトンが増えるため臭くなることが多いそう。
佐々木さんが子供の頃は隅田川は汚い川というイメージだったようで、
早速、下水道事業の恩恵を感じます。
「みなさん鳩はどこで繁殖しているのでしょうか?」
佐々木さんよりクイズが始まりました。
正解は・・・橋の裏側だそうです!
だから浅草には鳩が多くいるんですね〜。
さわさわ〜。優しい風に癒されます。
また鳥が見つかりましたよ!
柵の上に止まっている白い鳥はウミネコ。
カモメの仲間でニャーニャーと鳴くことからウミネコと名付けられたそうです。
世界的には日本とその周りにしか生息せず貴重な鳥とされています。
みんなも空や川に目を向けて動植物を探します。
ビルの上にも目を向けてみましょう。
ビルの角、高速道路の街灯の上などにはカラスくらいの大きさで、ねずみ色のはやぶさがいるそうです。あのビルの角にはいなさそうですね〜。
なんと世界で一番早く飛べる鳥だそう。
ここで佐々木さんより問題。
「はやぶさの最高時速は何キロでしょうか?」
陸上の王であるチーターよりもずっと早いそう。
学生の答えは「300km」!
なんと大正解でした!みんなから感嘆の声が上がります。
はやぶさの最高時速は300kmから400kmと言われており、400kmだとすると新幹線をも抜いてしまうということですね〜。
あんな小さな体でそんなにも早く飛ぶなんて驚きです。
みんなでとんびを探していると・・・、また違う鳥を見つけました!
今回一番多く目にすることになったカワウです。
魚を1日に何匹も丸呑みするため魚が多く生息しないと生きていけません。
つまり綺麗な水のシンボル。
ちなみに川に生息するためカワウというのですが、この「鵜(ウ)」という魚の呑み方から、人の話を聞かず丸呑みすることを「鵜呑み」というようになったそう。
佐々木さん曰くこれだけ多くの鳥が見られるようになったのは平成になってからということ。
いかに下水道事業によって水質が改善されたかがわかります。
すれ違ったおじさんも手を振ってくれます。
水際に何かがたくさんついている!
こちらはフジツボです。
イソギンチャクの仲間で、なんと食べることができ、さらに美味しいとのこと!
ぜひ挑戦してみたいですね〜。
この他にも水際にはムール貝と呼ばれるムラサキイガイや牡蠣なども生息していました。
まるで東京とは思えないような景色ですね〜。
そしてあっという間の隅田川クルーズが終わりました。
鳥や貝類だけでなく、カニが見えたり、ボラがジャンプしていたり。
都内の川とは思えないほど多くの自然と動植物を目にした1時間半。
図鑑を見るのとは違って、生きている動植物を目の前で観察しながら佐々木さんのユーモアのあるお話を聞ける時間はとても贅沢でした。
船に揺られ、さわやかな風を浴び、みんなリフレッシュした様子。
水が綺麗になり、魚が増え、魚を食べる鳥が増え、その鳥を食べる鳥が現れる。
水が綺麗になることで豊かな自然が育まれることを体感しました。
さあ、本日最後のプログラムはビーチコーミングビンゴです。
葛西海浜公園に向かいましょう!
ビーチコーミングとは海岸などに打ち上げられた漂着物を収集したり観察したりすること。
学生達はビンゴの紙に佐々木さんから出されたお題を記入していきます。
与えられた9つのお題は
「貝殻」、「野鳥の羽」、「海藻」、「陸上の植物の実」、「海外から来たもの」、「山から来たもの」、「人が捨てたもの」、「綺麗な水のシンボル」、「スペシャル」。
お題を聞いただけで何が集まるんだろうとワクワクしてきますね〜!
さあ、葛西海浜公園に到着しました!
ここからは班ごとに分かれて行動します。
軍手と袋を支給されて、ビーチコーミングスタートです!
さて、どんなものが集まるのでしょうか?
みんながビーチコーミングをしているタイミングで・・・
突然ですが、独占インタビュー!下水道局総務部広報サービス課長 井上さん
綺麗な浜辺を背景に広報サービス課の取り組みや今回の東京地下ラボについてお伺いしました!
Q. 広報サービス課ではどのような取り組みをされていますか?
A. 下水道に関心をもっていただけるように下水道局が環境に優しい事業をしていたり、浸水から街を守るなどの下水道の役割を都民やお客様にPRしています。
Q. なぜ東京地下ラボを開催されたのですか?
A. 下水道の認知率、関心度は世代別でみると20代が低くなっています。なぜかというと生まれた時から下水道があることが当たり前で、もう普段目にすることもそんなにないからです。彼らに下水道事業に興味を持って、もっと下水道のことを知ってもらって、円滑に下水道局の仕事が運営できるように若者に下水道の魅力を発信してもらうことがこのプログラムの趣旨です。
Q. 今日のプログラムの感触をお伺いしたいです。
A. 陸上の設備やセンターの見学は学生にとって初めての経験だったかもしれないですね。自然と触れ合いながら環境がどれほど改善しているのかを体感してもらいました。みなさん楽しげにしてもらえていたと思います。
Q. 三河島水再生センターの廊下の壁に、子供達が下水道事業について書いた壁新聞を見かけました。
A. 小学校4年生をターゲットにした教育事業に力を入れております。都内の小学校に直接出向いて出前授業をしており、今年は約400校の小学校をまわります。7月、8月は親子見学ツアーを行いました。小学生のお子さんと親御さんに一緒に水再生センターを見学していただいたり、今回のプログラムにもあった三河島の重要文化財を見ていただいたりして、下水道について学んだことをポスター、標語、新聞にしてもらっています。
井上さん、お忙しい中ありがとうございました!
東京都下水道局が様々なイベントを行っていることを初めて知りました。
大人向けのイベントも開催されることもあるみたいですよ〜。私も行きたい・・・。イベントは要チェックですね!
さて、ビーチコーミングに戻りましょう!
みんな楽しそうに探していますね〜。
何が見つかったのでしょうか?
なにかの羽が沢山落ちていたようです!
私も早速、ライターを発見!
これは「人が捨てたもの」というお題に当てはまりそうです!
班ごとの活動でさらに仲が深まっている様子!
これから半年間、一緒に動画を作り上げる仲間達。
学校も学んでいる分野も違う仲間同士で一つのことを成し遂げる面白さは言葉には言い表せません。
もしかしたら今後の人生を共に鼓舞し合える大切な仲間になるかも・・・。
新しい仲間と何か挑戦するということに憧れを持つ私にはみんながキラキラして見えます。
そしてタイムアップの時間になりました!
班ごとに集めたものを並べます。
紙に乗っている魚が気になりますね〜。
こちらの班には謎のポイントカードらしきものが!
班ごとに個性が出てきました。
それでは全体発表です。
お題ごとに佐々木さんに見てもらいます。
お題は「野鳥の羽」。
先ほど、隅田川で見つけたカワウの羽が出てきました。
多くの班が見つけて来たので、葛西海浜公園にもカワウが多く生息するようです。
次のお題は「海外から来たもの」。
ある班が醤油刺しを見つけたのですが、よく見るとキッコーマンと書かれていました。
残念ながら海外から来たものではなさそうだということが判明しました。
興味深かったのは「綺麗な水のシンボル」というお題。
ボラの骨や小さいカニなどが集められました。
隅田川でもジャンプしているのを見かけたボラ。
本日学んだばかりの綺麗な水のシンボルであるボラの存在を示す骨を、偶然にもほとんどの班が集めていました。
これで濃密な本日のプログラムがすべて終了しました。
1日を通して下水道事業によってどれだけの恩恵を受けているかを体感し、みんなとても勉強になった様子。
私も東京下水道の魅力を凝縮した1日を過ごし、まさに下水道事業へのイメージが「すごい、面白い、楽しい」に変わりました!
下水道事業の見えにくかった恩恵を施設で話を聞くだけでなく、川や海で体感することで「あたりまえ」がどれだけの労力で支えられているかを知り、この事業について情報発信する重要性を再確認しました。
今回のフィールドワークを終えた学生たちは、チームごとに分かれ動画制作を開始します。
そしてそして!このプログラム最後の成果報告会が2月12日に行われます!!
異分野の学生が発見して形にする下水道事業の新たな魅力。
どんな作品が出来上がるのか楽しみで仕方ありません!
あ〜、今からとてもワクワクしますね!
(text:水口、photo:高田)
関連するキーワード