越前漆器の町、河和田の漆器作りの今はどうなっているのか? 河和田漆器ツアー! RENEW 2016

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お椀のポーズでハイチーズ!
福井県鯖江市河和田のものづくり体験マーケットRENEWに今年も参加してきました。

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RENEWは、福井県鯖江市河和田地区一円で行われるものづくり&体験型のイベント。こちら鯖江市の主な産業である漆器や眼鏡を中心に製造現場の展示や普段は入ることができない製造現場を見ることができます。総合案内所は鯖江市河和田地区のうるしの里会館。お椀の形をした旗でお出迎えしてくれます。

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こちらに来るまでの道でもうるしにまつわる看板がたくさん。町全体でうるしをPR!
ということで、今日は漆器の町、河和田について、学びたいと思います。

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河和田にはそのものズバリ!「漆器神社」がある。
河和田町の西北、うっそうとした山腹に敷山神社があり、その境内の中に「漆器神社」もあります。この漆器神社では、毎年職人さんがの道具の供養やさまざまな関連行事が漆器の産地らしく行われているそうです。そして、河和田のおとなり片山町にも「漆器神社」がもうひとつあります。いかにこの地域で漆器づくりが古くから盛んだったかがわかるってものです。

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今日はよろしくお願いします。

河和田で漆器づくりがはじまったのは1,500年前!
河和田の漆器のはじまりは約1,500年前の第26代継体天皇の頃、といわれています。
実はこの継体天皇は鯖江市もある越前の国にゆかりが深く(生まれは近江の国、現在の滋賀県)まだ継体天皇が皇子のころ、こわれた冠の修理を現在の福井県鯖江市片山町の塗師に命じ、塗師は、冠を漆で修理するとともに黒塗りの椀を献上。皇子はその見事なできばえにとても感動し、片山集落で漆器づくりを行うよう奨励。これが今日の越前漆器の始まりと伝えられています。
その後、江戸の後期には京都から蒔絵師を、輪島から沈金の技術を取り入れ、明治期には「丸物」とよばれる椀類から、重箱、お膳など「角物」にまで製品を拡大。生産エリアも河和田地区全体に広がり越前漆器の一大産地になりました。
その後、河和田を含むこの辺りの地域で作られる越前漆器は、工芸品にとどまらず旅館や飲食店向けの業務用として東京、大阪、名古屋といった大消費地に供給しつづけました。
こうした歴史の中で、たくさん作る量産技術、工程ごとの分業体制が構築され、町全体で漆器に携わることになりました。
(参考:越前漆器協同組合のホームページより)

漆器ができるまで

木地から完成まではこんなにステップがあります。技術が進歩した現在でも、河和田では、原料から完成まで一貫でつくります、という会社は少なく、木地づくりから、塗り、磨き、加飾という工程ごとに職人さんが分かれていて、さらに丸物、角物でも職人さんが違います。河和田の漆器産業に携わる人たちはみんな「漆器屋さん」ですが、それぞれ木工加工を行う木地づくりのお家、塗り、蒔絵などの加飾、できた品物を売る問屋さんなど、いろいろなお家があります。

うるしの木

もちろん原料となる漆も必要。
古くからたくさんいた漆かき職人は、全国に散らばり「越前は全国の漆かきの半数を占めた」のだとか。こうした漆かき職人は、漆と一緒にさまざまな技術や文化も持ち帰り、河和田の人たちが外に対して比較的おおらかな姿勢なのも、このおかげかもしれません。

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それでは、いよいよ漆器ツアーの始まり始まり。自転車に乗ってスタートです!

即位の礼の漆器

さあ、どんな漆器の現場があるのかな?とワクワクしてお邪魔したのは、KORINDOというブランドを展開する、越前漆器株式会社さんです。1938年創業の老舗。ブランドの元となった屋号「光琳堂」は、あの尾形光琳さんにちなんだものなのだそうです。
なんと今上天皇陛下の即位の礼の饗宴の儀で使用された膳や椀などの漆器(陶器・ガラス類は別メーカー)を制作納入!すごい問屋さんのお家なのです。

ブローチ引き ブローチヒキ

でもかわいい〜。「うるしピンズ」というアイテムは女性の見学者に大人気です。

麗しグラス

漆椀のお隣にあるのは「麗しグラス」という冷酒グラス。
RENEWのレセプション「SHIKKI BAR」にも登場しお客さんにも大好評。素敵な器で越前のおいしい日本酒にしこたまいただいてしまいました。美しい器でお酒が進む進む。その節はごちそうさまでした!

KORINDOさんでは、うるし塗ブローチのワークショップを体験。
KORINDOは昨年のRENEWにも参加しましたが、昨年は製品の展示のみでした。イベント後の報告会でワークショップを実施した他の出展者の成果を耳にして「もっとやっときゃよかった」と悔しい思いをしました。ですから、今年はリベンジすべくワークショップを開催。
そして、今年は大盛況!

バッチ原料

ということでしゃかいか!もうるし塗りブローチに挑戦。
丸、八角形、三角といろんな色のバッチがある中で、しゃかいか!編集員は三角をチョイス。
ブローチに手描きで絵付けをした上に、本金箔を蒔いて仕上げていきます。 

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どんな柄にしようかな。
先生の森下洋輔(もりした ようすけ)さん、今日はよろしくお願いします!

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シマシマ大好きのしゃかいか!編集員。下絵を元に金箔を蒔く部分に、印刷用塗料を接着剤代わりに塗っていきます。本来漆器の場合は、金箔を蒔く時に漆を使用するのですが、今回は漆かぶれなどの恐れもあるので、塗料を接着剤代わりに使用。細かいところはマスキングテープを貼って、作業を進行します。
接着剤は金色になっていますが、この金色がそのまま仕上がりになるのではなく、出来上がりをイメージしやすくするために接着剤に金粉を混ぜてくれています。

こども編集員

こども隊員は青い丸型のブローチをチョイス。手書きで進めます。
作業で集中すると取材を忘れて無言になってしまうしゃかいか!のみんなでした。

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下絵の接着剤の塗りを終えると、金粉をたっぷり贅沢にまぶし、蒔く。

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「隅っこまで忘れずに塗ってね」と丁寧にご指導を受けます。

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でーきーたー。
みんな、なかなかの仕上がりです。下絵がんばったからね、と森下さんに褒めてもらいました。

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蒔絵を少しだけ体験できたワークショップ。素敵な思い出の品もできてみんないい笑顔です。

漆器久太郎

自転車を数分こいで「漆器久太郎」さんへ移動。RENEWの移動に車は要りません。見学先が密集しているので、時間があればさいあく徒歩でもオッケー。この近さも楽しいです。

曽明富代さん

漆器久太郎さん?
お話を聞かせてくださったのは曽明富代(そうめい とみよ)さんです。
漆器久太郎さんは代々受け継がれている名前。現在の社長が三代目で、おじいさまが久太郎。
久太郎さんは蒔絵だけじゃなくどちらかというと卸でプロデューサー的役割を担うお家です。

塗り箸

塗り箸もお美しい。
いろんな柄があるんだなぁ。昔はベースの色は朱色や黒の単色がメインでしたが、最近ではカラフルな漆器が好まれる傾向があるのだとか。グリーンや黄色などカラーが増えて、商品のバリエーションも増えてきているそうです。

うさぎとクマ

もう一つの特徴は、子供さん向けの漆器が増えてきていること。
漆器というと昔は大人が使う器がほとんどでしたが、子どもたちにも漆器で食べさせたい、という親御さんの声をよく聞くようになりました。

お盆

可愛らしい柄も好まれるそうです。

ヨーロピアン

目を奪われてしまったのは、ヨーロッパな漆器!
漆の器に唐草模様っぽい柄がデザインされていますが、よくみるとアールデコ調。
和とヨーロピアンテイストが、しっくりきていて漆器久太郎オリジナルのシリーズなんだそうです。

ナチュラルな風合いの箱

他にも、漆じゃないけどこういうナチュラルなものが好まれる傾向にあります。
外国製の原料を木地屋さんで加工して、風合いを生かすために漆ではなく塗料は食品衛生法に合格したウレタンを使用して作られています。

流行のない方だとは思う。しかし、ゆっくりとではあるが確かに変化している漆器
「デパートに出す場合は、デザインを新調して新しいシリーズを提案してきましたが、一方で定番の色や形は生き続けています。
塗る対象も増えている時期は終わったのかな、と思ったけど、10年くらい前からペンたてなどステーショナリー系は増え始めています。最近は一段落しましたが、色や漆の使い道もまた増えてはじめています。同じものばかりでは先細りになるのかなぁと思うし、一つのものを心を込めてずっと深く掘り下げてPRしたりいいところを宣伝するとそれはそれでわかってくだすって改めて『こういう風にいい商品だった』と再確認して手にしてくださることもある。そこらへんは行ったり来たりです。
たとえば、ステーショナリーで漆を知った人が器に心をよせたり、その逆、漆器を使っている人が新しいものにたどり着く、ということもあると思います。
漆の持っている魅力というのは日本人にすると、付加価値なのかな、と思いますね。」と曽明さん。

素材や加工法など技術面での進化はもちろん、新しい使い道や子どもさん向けなど、やはり、時代に敏感でしたたかな河和田の漆器。注文で受けたものを作るだけではなく、作り手側からも新しい価値を生み出そうという姿勢が、これまで長く続いていきた証なのではないか、と感じました。

だるま屋看板

次にお邪魔したのはだるま屋さん。

だるま屋全景

だるま屋さんのバックグラウンドはは県内随一の百貨店「西武福井店」の前身である、だるま屋百貨店の家庭用品部・漆器取次所として起こした問屋さん。屋号も「漆器のだるま屋」となりました
だるま屋さんは漆器の問屋さん。単に製品の仲介業者というだけではなく、商品企画も行っています。いわば漆器のプロデューサー的お立場の会社です。
たとえばデパートなどから「こんな柄の商品がいい」「業務用なので強度が必要」と話をし、それぞれの工程に最適な職人さんを手配して製品を作っていきます。逆に、職人さんからのアイデアや提案を商品化していくのも問屋さんの仕事で、パイプ役と言えます。

何か特徴のある商品はありますか?と尋ねてみたところ「問屋なので、あまり偏った商品群ではいけない」のだとか。越前漆器の特徴として、床の間に飾る伝統工芸の作品というよりもご家庭や業務用として実際に使ってもらうことで残ってきたという経緯もあり、問屋の立場としては、新しいものもスタンダードなものもバランス良く、スマホケースなどの新しい使われ方をするものも敏感に素早く取り入れていかないといけません。
「流行は漆器の業界でもアパレルと同じようにあります。移り変わりは緩やかですが、柄にも流行の周期があるそうで、昔は売れたものもいっとき止まる、逆に、昔売れた伝統的なものが斬新に見えるのか、動きだすこともあります」

明月盆

たとえば「明月」という柄。この桜の花びらのことを明月と呼び、お椀につけたら「明月椀」、お盆につけたら「明月盆」。すごく現代的でかわいらしく見えますが、実はこの桜の柄は平安時代からあるのだそうです。
いっとき出回ることはありませんでしたが、最近つけてみると「花びらがハート形でかわいい♪」という声があり、一度すたれてしまったものもでも、伝統的な柄をアレンジしてネクタイピンや小物に使われる、ということがあるそうです。柄は変わらなくても、見る人が変われば流行が生まれるのかもしれませんね。

銀のコースターセット

こちらは珍しい銀の漆器ですね!
この銀のコースターセット。いったいどんな漆を使っているのですか?と聞いてみると、実はこの器は漆器は漆器でも素地は合成樹脂で、モダンなデザインにするため塗料も漆ではなく顔料を含んだ合成塗料が使われています。「漆器」はそもそも素地には木製の「木地」を、塗りには漆を使っていましたが、耐久性やメンテナンスしやすさ、形状や色彩などデザイン面の自由度から、原料や加工技術の発展に伴い、このような漆器(区別するために合成漆器と呼ばれます)も生まれました。昔ながらの木地で漆塗りの漆器は「木製漆塗椀」と認定されています。

「この銀の漆器は中塗りの状態で研ぎ出すという技術が必要なのですが、残念ながら今の河和田では技術的に難しく、外に出しています。これまでは産地間で『教えないぞ』というのがあったが、今は『そんなこと言ってる場合じゃないだろう』という状態。 これまでは産地の間で技術の交流というのはなかったが、今後必要になってくると思います」とだるま屋のご主人。

お茶します

申し訳ありませんが、お茶します!
漆器で飲むコーヒーがひと味違うから一度飲んでみたら?というお話を聞いたので喜んで!
今回のRENEWのポイントは、展示販売だけではなく、各出展者が趣向を凝らしたワークショップや催しを積極的に行おう、という点。
だるま屋さんは卸担当なので、職人さんはいません。どうしようか?と頭をひねった結果、漆器を使ったカフェをすることにしました。僕らがお茶させてもらっている間にも、お隣の福井市から来たご家族が来て「どこ回りましたか?」「こないだ運動会があったんだけど、そこに漆の重箱にお弁当詰めているご家族がいていいなー、って思ったんです」などなど情報交換させてもらうことができました。
漆器に囲まれてお茶をしながらたくさんの人が交流できる場を、問屋として橋渡しの機能を果たしてきたであるだるま屋さんが提供している、というのはなんだかわかるなぁと納得しました。

漆器でコーヒー

漆器でコーヒーをいただきます。
おいしい。

漆のカップでコーヒーを飲んだことがなかったので新鮮です。コーヒーと色合いが合うな、いつも陶器で飲んでいるので、軽いなぁ、というのが第一印象。漆器から伝わるコーヒーも持ち手がないにもかかわらず、手に伝わるの温度は緩やか。根拠を明確に述べよ、といわれると困るのですが、確かにひと味違います。トゲトゲした感じがないというか、やわらかな印象。
基本的に熱湯はダメなのだそうですが、手に持っても熱く感じない、にもかかわらず中身の温度を保つのが長い、口当たりがやわらかくなる、という特徴があるそうです。朝のお味噌汁を陶器ではなくお椀でいただくのも、こういう理由があるのかもしれません。

チーズケーキ

チーズケーキも漆器で。
河和田の学校では給食も漆器が使われているそうです。ご当地の越前漆器協同組合が、従来は食洗器に不向きとされていた漆器を独自の製法で開発。学校では消毒保管もオッケーな器が使われているそうですよ。

お腹一杯になったー、ごちそうさまでした!

下村漆器看板

お腹も満足して次に来たのは、下村漆器店。

下村漆器のみなさん

営業を担当している下村一希(しもむら かずき)さん。奥様とは京都で知り合いました。仲良し!

下村漆器伝統柄 伝統柄

下村漆器店のショールームには伝統的な漆のお椀が飾られています。
中には皇室御用達のものや、職人さんが「もう二度とできない、というか、もうしたくない」と音を上げたとっても細かい細工を施された器、京都の旧家から発見されたン千万円級の器(非売品)が並んでいます。

病院用漆器

さすがは、創業百年以上の老舗が誇る伝統ぅ〜とこのように続けたいのですが、下村漆器店のウリは最新の技術!
旅館や料亭、飲食店向けの業務用漆器の製造が盛んな河和田の漆器の中でも、下村漆器店は新商品や新素材の開発に特にどんよくなメーカーです。
こちらの一見すると普通の漆器に見える器と御膳はIHに対応したもの。熱に強い素材と塗料が採用されています。この製品は病院向けの業務用食器として開発されました。
病院向けの食器で大切なのは、繰り返し使うことのできる耐久性と冷めない保温性。これまでも合成素材を素地に使った漆器で対応可能でした。しかし、この製品の特長は加熱調理に対応できること。下処理をした食材を投入し、加熱を行うカートに入れておけば、患者さんの手元に暖かいお料理が運ばれる、とこういう仕組みを実現する食器とお盆なんです。
耐熱性容器というと機能性一辺倒で味気ない印象がありますが、装飾も可能なので病院での食事にも少しだけ彩りが添えられる気がします。高齢者の患者さんには喜ばれるのだそうです。

試験設備

1階には試験用の設備があり、何度も耐熱の試験が繰り返されました。
150~200度の高温で特定部分を集中的に熱するIH調理は、熱によって食器のゆがみ、塗装のはがれが課題でした。
これまでも構想はあったものの、漆器のIH向け食器の実用化は難しいと言われていましたが、下村漆器店の参加する研究チームは伝統の木製漆器の塗装法に注目。
耐熱性が高いセラミックの粒子を塗装に採用。これを何層にも塗ることで高温でも塗装のはがれを軽減する技術を開発しました。

福井大学サテライト研究室

この最新技術が施された器は福井大学との共同開発。
実は下村さんのお母様が福井大学のドクターとして、研究した成果として生まれた製品が、このIH対応高機能漆器なのでした。下村漆器が参加した研究チームは「ものづくり大賞」にも認定され、この製品は30~40ヵ所の医療施設で採用。
「鯖江の隅っこの中小企業が選ばれた、って当時はびっくりされました」と下村さん。
さらに、この塗装技術は、原子力発電に使う部品の腐食防止材や自動車などに使う炭素繊維部品の強化塗装など、食器を超えた用途への応用が検討されています。

しかし、このような技術の発展は最近始まったものではありません。
河和田の漆器に関連する技術はこれまでいくつも発明され、この土地から全国的に広まっていきました。

真空ろくろ

河和田から生まれた漆器の技術は、他にもたくさん。
たとえばこちらの塗りの工程で使用する、真空ろくろ。
これまでのろくろは回す際に高台部分を抑えていたので、作業できるのは片手でした。しかし、この真空ろくろは名前の通り接点を真空吸着して回すので、両手での可能になりました。

回転風呂

そして、回転風呂。
漆は湿気で乾燥します。湿気で乾燥?うん、おかしい気がしますが、漆は空気中の湿気を吸って液状から個体へと硬化します。この硬化させる際に使う機械が漆風呂。液状の漆は垂れてくるので、一定時間がたつとムラにならないよう回さなければなりません。塗り師の職人さんのお家では、二階にこの漆風呂を設置し、綱で一階のお弟子さんたちが時間ごとに引っ張って中の漆器がついた車を回転。「おいーまわせー」という声が聞こえていたのですが、この漆風呂を電動で一定時間たつと定期的に回転する機能を装備することで、お弟子さん達のお仕事が軽減されました。
真空ろくろや自動回転電動ろくろはいずれもここ河和田で開発され、全国に広まっていたのだそうです。作る漆器は伝統的でも、技術はたえず発展。こうして河和田の漆職人達は安定的に品質をたもつ手段を絶えず頭をひねってきました。河和田の漆器が1,500年したたかに続いてきた理由を覗かせてもらったような気がします。

先ほどの久太郎さんはデザインで和洋の融合にアプローチしたり、こちらの下村漆器さんは技術で最新技術に挑戦したり。なんだか漆器の進化をジンジン感じます。河和田の漆器ってすごかった。

ろくろ舎にお邪魔しました

次は、漆器の土台となる木地やオリジナル商品を作っている、ろくろ舎さんに来ました。
RENEWその他でいく度もおじゃましています。何度も来ちゃってすいません。今日もよろしくお願いします!!

こちらの記事もぜひ読んでみてくださいね。

ろくろ舎の外

ろくろ舎さんは丸物師としてお椀の木地をつくりながら、杉の間伐材(河和田産)を丸太から削り出して作られたTIMBER POT(ティンバーポット)という鉢も製作。傷みや割れ、経年変化など木の持つ間伐材に新しい価値を与えた製品です。

オーダーの仕方

「傷んでいく過程を価値とする 傷みや腐りは自然の営み」
TIMBER POTの最初のスケッチも見せてもらうことができました。
最初からしっかりした考えに基づいたものづくりが行われてきたあかし。

お椀オーダー会の説明

ろくろ舎さんではRENEW 期間中は「お椀オーダー会」を実施。
お好みの形を伝えてその場で職人さんが削り出してくれる姿を見ることができます。

選ぶことができる

自分だけのオリジナルのお椀を作ってもらえるなんて素敵だ!「でも、どうしようー、悩むぅ〜」という方には、指定のサイズや形を選んでお椀を作ってもらうこともできます。
お椀の木地が出来上がった後は塗師さんに後を託して、実際のお椀になっていくのだとか。

職人さんが

僕たちがふだんお店で目にするのは塗って研がれて磨かれたお椀たちですが、こうやってお椀の土台が木材から削り出され形になる、そして 塗師さんへとリレーされていくのを知ることで、町のみなさんで漆器を作っていることを実感できます。
漆器の町、河和田らしい素敵な取り組みです。

ということで、見学も塗師さんへバトンタッチ!

店内全景

漆器ツアーのトリを飾るのは昨年もお世話になった漆琳堂さんです。
こんちわー、と扉を開けるとおお!お店ができている。

昨年お邪魔した時はこんな感じでした。

前回来た時に「これからいろんなことに挑戦する予定。自社ショップを作る計画がある」とお聞きしていましたが、その言葉通り、漆琳堂の展示室だったスペースはお店になっていました。

aisomo cosomo

カラフルな器が特長の漆琳堂さん。自社ブランド「aisomo cosomo(アイソモコソモ)」が人気でたくさんの人に普段づかいしてほしい、という思いでお椀を作り続けています。

お椀や 内田 お椀や うちだヨリ

そして、自社の新ブランド「お椀や うちだ」もスタート。
一年の間にいろいろ進んでる。八代目内田さんのスピードにびっくりです。
新しく生まれた「お椀や うちだ」は真塗り椀、色拭き漆椀のふちに塗りわけの技術を用いたツートンカラーのふち塗り椀、色漆と拭き漆を塗り重ねた色拭き漆椀、と「漆度」の違いを楽しめるカラフルなお椀を展開。塗りの工夫を楽しめるラインナップになっています。
そして、aisomo cosomoは木の粉と樹脂を固めた木地を使用、「お椀や うちだ」は木製と使用している木地も違います。

ワークショップ全景

漆琳堂ではワークショップを開催。
お箸、もしくはスプーンの木地磨きという工程と「拭き漆」という技法の漆塗りを気軽に体験することができます。

スプーンにします

スプーンにします。

ワークショップ全景

こちらが先生の嶋田希望(しまだ のぞみ)さん。今日はよろしくお願いします。

お話する

あれれ、初めましてですよね。お名前は?と先輩風をめいっぱい吹かせて聞いてみました。
実は嶋田さんは、去年の10月にここ河和田にやってきました。

もともとうるしに興味がありました。
嶋田さんは東京都内のセレクトショップでお椀や うちだに出会い、漆琳堂を知ったのが、ここへ来たきっかけ。大学で専攻したのが漆芸科だった嶋田さんは、こんなの作りたいなー、塗りたい塗りたい!と内田さんに電話でいきなり弟子入り志願。そして採用が決定。
その後、トントン拍子でお話は進み、内田さんが住むところも確保してなんと一週間ほどでここ河和田の地にやってきました。
「東京からわけのわからない女の子がいきなり電話をかけてきて、ほとんどの生活のサポートをしないといけないのがわかって引き受けてくださったので、それを思うと、ほんとすごいな、と思います。住むところも、お給料も、町の人に受け入れられるか、というところも全部面倒みてくれるなんて、本当にびっくりしました。」と嶋田さん。

サンドペーパー

お話しながらも手を動かします。サンドペーパーで木地を研ぎ表面を滑らかにしていきます。
自分の好みの滑らかさにするまで磨く。

シュシュシュ

シュシュシュッ!

漆の種類

次に塗りの作業。赤、生漆(きうるし)、黒の中から一つを選ぶことができます。
「うるしで塗っても木目がでるのが面白いところです。木目がいちばん出やすいのが生漆。
生漆は下地によく使って、うるしを掻いて荒こししたもの。『生』と書くようにうるしの中で一番純度が高く色も乳白色なんです。うるしは攪拌したり、熱を含ませたり、酸素を含ませることで、精製したうるしが出来上がります。それに顔料を混ぜると色がつく。
木地が見えているのに表面がテカッとしているのは、きれいに精製されたうるしで塗ったものです。」とうるし大好きに語ってくれた嶋田さん。

うるしの赤

「木の感じがそのままでて素朴な感じなので、私は生漆が好き」と嶋田さん。
人気と教えてもらった赤をチョイス。

漆は肌がかぶれることもあるので、手袋をはめて作業します。
はじめは我々と同じ漆初心者だった嶋田さん。
一度漆が飛んで、お顔全体がかぶれて大変なことになったこともあるのだそうです。
「でも職人だから、一度くらいは経験しとかないと!」と超前向き。

うるし塗布

すみずみまで丁寧に入念に、思いを込めて布に染み込ませた漆を塗っていく。
木地の部分が塗り残しがないように結構豪快に塗っていきます。

粘っこさはアクリル絵の具そのままな感じ。うるしというとサラサラかと思ったけど、もっとネバネバ。
「ネバネバなのは樹液だからです。もともとねばいうるしに顔料の粉を入れているので、モッタリした感じになるんです。水に小麦粉を入れるみたいなイメージ。」と嶋田さん。

漆にも、種類によっては乾く時間が長い短いという違いがあるそうです。乾きが遅いほうが嬉しい場合もあるし、その逆もある。塗る技法や塗るものによって使い分けます。職人さんの刷毛の早さや癖も関係しているのかもしれません、とのこと。
単に早く乾けばいい、ってものではないのだそうです。

紙で拭く

塗り終わったら、荒拭きと仕上げ拭き。紙でよく拭き上げていきます。
今は、塗り跡残ってムラになっているところもありますが、今の時点では気にしなくてオッケー。豪快に拭いてください、と指示が飛びます。
「短い時間なのに、すごいこんなしみ込んでいる」とうるしの力にちょっと感動します。

完成

どうですかー?
上手だと思います!

完成したスプーン

最後に表面の余計な漆を拭き取り、乾燥のため板の上へ。
実はまだ、この後、これを2~3回繰り返し、一回一回乾かさないとツヤが出ないので、嶋田先生に後を託すことになります。完成品は乾燥後、自宅へ届く。楽しみです。よろしくお願いします!

嶋田さん

これからも職人目指して頑張ります!
今はまだ高台を塗ったり下地塗りの作業を習得中の嶋田さん。これからも頑張ってください!

1q2a6834 漆琳堂のお椀 お椀を見る

お店の中を見せてもらいながら、どの器がいいのかなぁ、と想像が膨らみますが、こちらの棚にあるお椀は文様の細工が複雑でとても高価なのです。

お椀を見る

お箸やスプーンのワークショップでお椀が欲しくなる、というそういう仕掛けか!
しかし、まんまと作戦通りにaisomo cosomoのお椀を購入。飯碗とスプーンのセットが完成しました。

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アンディウォーホルとコラボの作品も展示してある。

石原さん

おやおや、こちらにもニューフェースがいらっしゃいます。
この方はショップ店長の石原和香(いしはら のどか)さん。もともとデザインの道を志していた石原さん、自らの腕を活かすべく、漆琳堂の門をたたきました。

ショップカード

石原さんはお店での販売のほか、ディスプレイなども担当。素敵なショップカードもデザインしました。

石原さん.

「これまでに、変わった柄をということで、一度だけデザインをお受けしたこともありますが、まだまだ修行中です。将来的には漆器自体のデザインもできるようになりたい」と石原さん。これからも頑張ってくださいね!

漆琳堂のみなさん

職人さんとお話をしているとよく耳にする後継者問題。漆琳堂さんは二人も若いお弟子さんを得てどこ吹く風です。内田さんいわく「ショップの開店や新ブランドの開発とちょうど新しいことに挑戦している時期に、二人から連絡をもらえて。こちらとしてもとても嬉しかったです。タイミングが良くてこれもご縁なのかな、と思って来てもらうことにしました」とのこと。
製品がつないだご縁って大切なのだなぁと実感。

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今日は漆器屋さんをいくつか訪問し、楽しい時間を過ごさせてもらいましたが、一口に「漆器屋」さんといってもその取り組みは実に多彩でした。1,500年も前からしたたかに生き残り続けてきた越前漆器の、変化を柔軟に受け入れる姿勢、そして、確実に進化するために続ける力、を肌で感じることができました。
これからも、もっともっと変わっていきそうな予感。来年も訪れるのが楽しみになりました。
今日、お話を聞かせてもらったみなさん、有難うございました!

【詳細情報】

越前漆器協同組合

電話番号:0778-65-0030
住所:福井県鯖江市西袋町37-6-1
URL: http://www.echizen.or.jp/

KORINDO(越前漆器株式会社)

電話番号:0778-65-1525
住所:福井県鯖江市莇生田町16-19
URL: https://korindo.stores.jp/

漆器久太郎(株式会社曽明漆器店)

電話番号:0778-65-0071
住所:福井県鯖江市西袋町67-13-3
URL: http://www.rakuten.ne.jp/gold/qtarou/

株式会社 だるま屋漆器店

電話番号:0778-65-0068
住所:福井県鯖江市片山町7-8-1
URL: http://www.shikki-darumaya.com/

ろくろ舎

電話番号:0778-42-6523
住所:福井県鯖江市西袋町512
URL: http://rokurosha.jp/

株式会社 下村漆器店

電話番号:0778-65-0024
住所:福井県鯖江市片山町8-7
URL: http://www.shimomurashikki.co.jp/

株式会社 漆琳堂(お椀や うちだ)

電話番号:0778-65-0630
住所:福井県鯖江市西袋町701
URL:http://www.shitsurindo.com/

(text:西村、photo:市岡、室谷、西村)

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