手加工の技術を次世代に!職人技光るガラス細工工房 HARIOランプワークファクトリー

HARIOランプワークファクトリー

1921年(大正10年)に創業し、理化学用ガラス器具製造・販売を開始したHARIO(ハリオ)は、コーヒーサイフォンやコーヒードリッパー「V60」など数々のヒット商品を生み出しつづけています。

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本日は、東京・日本橋に設立されたHARIOのガラス細工工房、HARIOランプワークファクトリーへやってきました!こちらでは、2013年10月の開所から、職人よる手加工で主にアクセサリーやテーブルウェアを生産しています。

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店内に置かれたガラスの東京タワー!細かい技には圧巻です。

ガラスの王様「玻璃(はり)王(おう)」
HARIOさんの耐熱ガラスを加工したガラス製品は、コーヒーや紅茶、日本茶用の耐熱ガラスを使ったキッチンウェアなど幅広く展開され、ジャパンクオリティとして海外からも高い評価を受けています。HARIO(ハリオ)の名は、ガラスの別名「玻璃(はり)」の王、「はりおう」から名付けられています。

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HARIOランプワークファクトリーでは、工房の外から窓越しに作業されているガラス職人の姿が見えます。そして、工房内に入るとガラスをあぶるバーナーの「ゴゴォー、ゴゴォー」という音が響くなか、工房に並べられたアクセサリーがつくられる様を見られます。

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炎を直にみると危険なので、ガラス職人は目を保護するためのメガネをかけて作業しています。

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本日は、HARIOランプワークファクトリー所長の根本新さんと、ガラス職人の櫻田寛子さんにご紹介していただきます。本日は、よろしくお願いします!

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HARIOさんの新しいショップとしてHARIOランプワークファクトリーが誕生したお話を根本所長にお伺いしていきます。

職人仕事をつくり、職人仕事を守る
「HARIOランプワークファクトリー設立の目的は、ガラスの手加工技術の継承と職人の育成・意識向上です。ガラス職人の仕事をつくり、ガラス職人の仕事を守るという役目をもっています」と所長として熱い思いを語る根本さん。

かつては、HARIOさんには100人ほどのガラス職人が手加工でガラス製品をつくっていましたが、だんだんと機械による自動化で、効率の良い生産をするようになり職人仕事で生み出すガラス商品は減少していきました。HARIOランプワークファクトリー設立前は、指導にあたるガラス職人とガラス製造を担当する職人の3人でガラスの手加工を担当していました。

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技術が無くなると新しいものは生まれにくい
ある酒造メーカーの特徴的なガラスボトルは、昔、HARIOさんの職人が手加工でつくっていました。お酒のコンテストでの受賞をきっかけにガラスボトルのお酒の生産数は増え、HARIOさん側のガラスボトルの加工が間に合わなくなっていきました。そこで、安定した生産確保のため、ある時からロボットを導入し、手加工でガラスボトルはつくられなくなりました。もともとは、ガラス職人の技術があったからこそ、ガラスボトルの機械化ができたように、手加工の技術が無くなると新しいものは生まれにくくなるという危機感を感じ始めます。

職人仕事にしかできない商品企画
ガラスメーカーが新商品を生み出すためには、手加工によるガラス職人の技術継承が必須、そのためにできることをHARIOさんは考え始めます。職人仕事にしかできない商品企画をすることで職人の仕事をつくり、雇用を守り、技術を継承する、機械ではできない手加工による付加価値のある商品を市場に提供するビジネスモデルを構想します。

HARIOLWFのビジネスモデル

2014年(平成26年)根本さんらは、グッドデザイン賞(GOOD DESIGN AWARD)「ビジネスモデル・ビジネスメソッド」の分野に「職人の仕事をつくる」というテーマのビジネスモデルを提出し、グッドデザイン賞2014を見事受賞します。ガラス職人の腕が上がり、新商品が売れる循環を生み出すビジネスモデルは、職人・お客様・メーカーの3方向に還元するトライアングルになっています。

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ガラス職人を100人に増やす
HARIOランプワークファクトリーの管理のもと、3方向に還元するトライアングルを現在は全国8ヶ所の事業所で実践しています。

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事業所の1ヶ所、北海道上川町の町役場では、冬の仕事減少という問題を抱えており、町役場の方々とともにHARIOランプワークファクトリーのアクセサリーやキッチンウェアを手加工する環境を上川町に整え、地元のガラス職人を雇い、地域の雇用を創出しています。目下の目標は、ガラスの手加工ができる事業所を全国に10ヶ所、ガラス職人を100人に増やすことだそうです。

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こちらのピアスも一つ一つ丁寧に手加工で作られています。透き通ったガラスが耳元で清々しさを演出してくれます。しゃかいか!取材中にも彼女に贈り物として購入していく男性客が多数目に留まりました。

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優しい空気感に包まれる櫻田さんは、HARIOさんの工場でガラスの手加工をされていた職人さんです。HARIOランプワークファクトリー設立と同時に部署を移動されて現在に至ります。実は櫻田さん、ガラス職人になる前は一般企業のOLとして勤務していましたが、ガラスに関わる仕事がしたいという想いから、専門学校でガラスの加工を学びました。その後、縁あってHARIOさんに就職します。

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繊細で芸術的なこのアクセサリーも職人さんがガラスの粒ひとつひとつを丹念に加工しています。

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クリスマスベルをモチーフにしたアクセサリー。

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艶やかに耳元を演出します。

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重なり合うとガラスたちが輝きを増していきます。

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それでは、2階のHARIOランプワークファクトリーの工房へ行ってみましょう!

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女性のガラス職人さんたちがバーナーの炎を出し、真剣な表情でガラスと向き合っています。

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今日の業務は、お客様からコップの持ち手部分を会社の頭文字「S」でつくってほしいというご依頼です。しゃかいか!の「S」でもある「S」をコップの持ち手部分に取り付けていく作業を見学します!まずは、熱いガラスを掴み、バーナーで加工するための「カッパ」と呼ばれる道具にイニシャル「S」のガラスをはさみます。

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職人さんがバーナーの炎を調節し、ガラスを溶接していきます。

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くっくっついた!コップをはさんでいる「カッパ」は改造されたものです。加工したガラスを挟みやすいように改造したオリジナルカッパが何種類もあるそうです。

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チャキーン!他にもガラス職人の道具はまだまだあります。しゃかいか!編集部もガラス加工をやってみたい!

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櫻田さんはいつも優しい表情で見守ってくれています。現在工房では、櫻田さんの他ガラス職人さんが16人ほどいらっしゃるそうです。

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櫻田さんの道具ボックスから、毎日使う道具を紹介していただきます。

左から先ほどの「カッパ」、ガラスに穴をあける「タングステン棒」、ヘラ、ヤスリ、ノギス、ピンセット目を保護するメガネ、ガラス切りはさみ、コテ。

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これらの道具を使って、繊細な形を生み出していきます。

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本日は、櫻田さんにガラス加工ワークショップ(不定期開催)でつくっている、マドラーをつくっていただきました!

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バーナーのオレンジ色の炎が高く上へ上へと伸び上がります。しゃかいか!編集部が前髪を燃やしてしまいそうと思っていたら、櫻田さん、前髪を燃やしてしまったことがあるそうです。わー大変!

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ガラスの棒の形状があっという間に変化していきます。その時間は、1分間も経っていないくらいです。

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バーナーの炎量を調整していきます。

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ガラス棒の先端に丸いガラス玉をつくり、テコを使い形を平たく加工していきます。

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さらに、炎であぶりつづけます。

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コテ!あぶる!コテ!あぶるを繰り返します。

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あっ!

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一瞬で形状が葉っぱの形になりました。

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葉脈をつけていきます。

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左右の葉脈も丁寧に丁寧につけていきます。

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数分で葉っぱのマドラーが完成しました!

櫻田さんのアクセサリーづくりを動画でご覧ください!

水滴でできたレースをデザインにしたアクセサリー「アール」が出来上がっていきます。

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葉っぱの他にもガラス加工された作品が展示されていました。職人さんたちが、休み時間につくった雪だるまや貝殻、ヴァイオリンまでかわいい作品が並んでいます。

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こちらガラスの道一筋のベテラン職人の西野金作さんです!HARIOランプワークファクトリーでは、日頃からガラス職人の育成のためにベテランの職人2人に週3日ほど工房にきてもらっています。西野さんは今年で78歳、割れにくいガラス製品に仕上げていく工程の順番など色々なコツを若い職人さんに教えているそうです。

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西野さんには、こちらのお酒を注ぐ道具として利用される地炉利(ちろり)の注ぎ口をつくっていただきます。

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細い注ぎ口の加工には、繊細な技が必要です。まずは、耐熱ガラス管をバーナーであぶります。

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あっという間に伸びます。

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まだまだ伸びます、伸びます。伸ばしてガラスを切断します。

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注ぎ口部分の形を整えていきます。

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西野さんが息をふっと吹き込むとガラスもプッと膨らみます。一瞬でカタチが変わる西野さんの魔法の息には驚きです。

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コテで注ぎ口の本体付着部分を整えていきます。

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同じサイズ、同じ美しさの注ぎ口が誕生していきます。同じ品質の商品を手加工でつくり続ける難しさも繊細な職人技です。

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「ほらっできたよ」と西野さん、細かな作業も慣れたものです。西野さんは、若い職人さんの技術面の相談を聞いたり、難しい依頼が舞い込んでくるとまず試作をしたりと、西野さんはまるで工房のお父さんのような存在です。

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伝統を守るために動き出したHARIOランプワークファクトリーは、職人、お客様、メーカーと3方向で機能する役割をもった重要な場所でした。本日は、根本所長、ガラス職人の櫻田さん、HARIOランプワークファクトリーの皆さま、ありがとうございました!
しゃかいか!編集部、大人気のアクセサリーをゲットできて大大大満足です。

【詳細情報】

HARIOランプワークファクトリー株式会社

住所:東京都中央区日本橋大伝馬町2-10
電話番号:03-5623-2143
URL:http://www.hario-lwf.com/
Facebookページ:HARIO-Lampwork-Factory-Facebookpage

(text:坂田、photo:市岡、室岡)

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