若き漆掻き職人と品評会、漆のふるさと浄法寺へ〜
「漆の国いわて産地取材ツアー」レポート後編

雲海

朝、起きると窓の外に広がる雲海。
おはようございます!!
10月下旬、岩手県北部二戸市の今日の最低気温は4度。秋を超えて冬の手前にも思えてくる気温ですが、本当の冬が来ると、この地区一帯は雪が積もり色がない世界になってしまうのだそうです。
そして、雲海のできる条件は、前日雨が降るなどで地表の湿度が高いことや日中の温度差が大きいこと。これって漆が乾く(硬化する)条件とぴたり重なるんですって。
ということで、「漆の国いわて産地取材ツアー」の2日目がスタートです!

第1日目のレポートはこちら!

朝食

朝食をいただく。

漆の器でコーヒーもおいしくいただいて、

朝の風景

そしてツアーに出発!

漆の森

今日の最初の見学先は、漆の森。

立花さん

こちらは二戸市漆産業課の立花幸博さんです。
浄法寺のある二戸市は「漆産業課」という専門の部署があり、伝統的な浄法寺塗りの技法の継承、漆掻き職人、塗師・木地師などの人材育成、浄法寺漆ブランドの確立のための認証制度や、イベントや催し、家庭で行うような小さな寄り合いにも漆器を貸し出すなどの利用促進、そして漆製品の製造販売や職人の育成、PR機能も持つ施設「滴生舎(てきせいしゃ)」の運営などさまざまな施策を進めています。

国産の漆が足りません。
日本国内で一年間に消費される漆の国内産の割合はなんと2%。
2017年の日本国内で生産された漆は1.4トンで、ここ浄法寺では約1トンを生産しています。つまり国産漆の7割をここ浄法寺の漆が占めています。この圧倒的な生産量が漆の国と呼ばれる理由の一つです。
また、ここで採れる漆は柔らかさ、のび、発色など品質が高いことでも知られており、今年(2018年)の3月に「平成の大修理」が完了した、日光東照宮の陽明門や二荒山神社、輪王寺といった貴重な文化財の修復にも浄法寺漆は使われています。
また、先ごろ決定した文化庁の、国宝・重要文化財建造物の保存修理には原則として国産漆を使うこと、という決定によってさらに国内漆の利用が拡大、必要となる国産漆の量は2.2トンとなり、日本屈指の漆の産地である浄法寺にはさらなる漆の増産が期待されています。

漆の木

漆の森。
この場所も「漆の森」として、二戸市漆産業課が漆の原木の栽培を進めています。文化庁からも「ふるさと文化財の森」を指定を受けている森ですが、この森以外にも官民一体となって国産漆の増産に向けた資源創生の取り組みを行っています。

漆の木

漆の採取が可能な成木となるには10〜15年という時間が必要です。
漆の木にはオスメスがあり、雌から種を採取し育てた苗を、「実生苗(みしょうなえ)」と呼びます。15〜20cmの高さに育つと、場所を変えて植え直し徐々に大きくしていきます。その後40cmくらいまで育つと植樹をすることができます。
また、種から苗へと育てる方法の他にも、漆の根を採取し芽を出させて育てる「分根(ぶんこん)」という生育法もあります。
分根は選抜しながら育てるので、個体差が少なく質や生育が安定する反面、一つの木が病気になると一気に枯れてしまい、時には数千本単位でダメになってしまうリスクがあります。一長一短といったところです。

この漆の森に植えられているのは、4,000本ほど。漆の適正な立木密度は1haに1,000本程度で、生育には日当たりがよく、肥沃で水はけが良い土地が適しています。

漆の木は漆を採取するのが目的なので特用樹として扱われ、一般的な農地を使うことができます。最近では二戸市が漆の木の植樹に力を入れていることもあり、植えていいよ、という土地の所有者も徐々に増えてきていますが、採取できるほどに育つまでは長い歳月がかかるので、じっと我慢が必要です。

ということで、漆掻きの現場へ移動。

漆の木の印

表面の掻き取られた線の跡があるのが、漆の木。

漆掻きの現場

おはようございますー。朝早くから頑張ってるな、と思っていると、知った顔。

長島さん

埼玉からやってきた地域おこし協力隊で歴史好き漆掻きガールの長島さん!
「朝から精が出ますね!」

漆掻きの様子

漆掻きのシーズンは6月から10月。
漆のシーズンは葉が大きくなりはじめてから、落葉の頃までです。漆の樹液を作るには葉の光合成が必要だからです。

採取する時期によって呼び方や品質、利用目的などが違います。
6月から7月中旬頃に採取したものを「初辺(はつへん)」、7月中旬から8月いっぱいくらいを「盛辺(さかりへん)」、9月から10月中旬のものを「末辺(すえへん)」と同じ木から取った同じ漆でも、呼び方が変わります。
採った時期によって柔らかさや伸びや色合いなどが時期によって変化するので、呼び方も変わります。

そして最後に掻いて採るのが裏目漆(うらめうるし)。丸干しになってるのはうるめいわし、お間違いなく。
この裏目漆は、末辺の漆を採った後、漆の木の幹の裏側(まだ傷をつけていない)に傷をつけて採る漆のことです。末辺までの漆と比べ品質は少し落ちてしまいますが、下塗りなどに使われます。しかし、最近では裏目まで漆を採取されることは少なくなったのだそうです。

漆を採り尽くされた漆の木はこの後、伐採されます。15年ほどで生育した木は1年をかけて、漆を出し尽くして一生を終えます。このように、1年間漆を採って伐採してしまう方法を「殺し掻き(ころしかき)」と言います。

血の一滴

こうして採られた漆は「血の一滴」と呼ばれています。
そもそも漆とは漆の木から出る樹液。
「漆を掻く」とはすなわち、傷をつけてそこから出てきた液体を集めることです。人間でいうとお腹かどこかに傷をつけて、そこから出てきた血液。だから血の一滴と言います。
一本の木から取れる漆の量は200g(小さい方の牛乳パックくらい)だから貴重なんです。

喋る

長島さんの漆掻き教室がスタート。
まずは鎌で皮を剥いで、カンナで木に傷をつけて、メサシという道具で奥に深く、樹液が出る樹液道まで届く深さに傷をつけ、ヘラという道具で漆を掬いとります。

鎌

鎌の刃は特殊な形状をしていて、角度や向きを変えれば、木の直径に関わらず作業ができ、傷をつけたい大きさに削ることができます。

カンナ

カンナでつける傷は浅めに。

メサシ

先端が特徴的な形をしているメサシで深く刃を入れ、漆の樹液が傷から滲み出てくるのを待つ。

滴る

「一滴も無駄にしない」

これらの道具の柄は職人さん自ら自分の使いやすいように、グリップ部分を自らカスタマイズ。長島さん専用の道具たちです。刃の部分は今では一軒だけになってしまった青森県田子町の職人さんが作ってくれたものです。

血の一滴...
漆の木の立場になるとちょっとかわいそうな気がしますが、だからこそ漆掻き職人は木のことを気遣いながら、掻いていく必要があります。

傷

それを証明するのはこの掻き傷の形。
逆三角形になっていますが、下から上に傷をつけながら掻いて行きます。一本掻いたら次の一本までは4日空けます。この空ける期間が短いと木が弱って樹液を作る能力が減退してしまいます。逆にこの期間が長くなってもダメなのだそうです。

最初の1〜2本の傷から漆は掻きません。
逆三角形の下の部分、傷の長さが短いのは「今から漆を採らせてもらいます」という木への合図。「一度にたくさんとってやろう」と欲張って最初から大きな傷をつけてしまうと、漆の木が長持ちせずすぐに弱ったり枯れてしまいます。だから最初につける傷はわずかに数センチ、数本は傷をつけても漆は採らずに、合図だけにとどめておくと、コンディションが整い8月の盛辺の時期によく漆を出してくれるのだとか。これを「漆の木を仕立てる」と言います。人間と木が対話しているようです。この方法を見つけた先人に頭が下がります。

タカッポ

タカッポという道具に漆を貯めて行きます。
この道具も自作。
側面はホウノキもしくはシナノキの木の皮をするりと剥いで作ります。円筒形になっているのが木の皮だったことの名残です。底面との接着に使うのはやはり漆!採取した液状の漆が漏れ落ちないように、側面と底面は麦漆を塗ってぴったりとくっつけます。

長島さんが、1日に掻く木の数は40本ほど。4つのエリアに区切り、回っていくとちょうどローテーションになるという仕組みですね。作業は晴れの日のみ、雨の日は漆が取れないのでお休みです。昨年(2017年)は雨の量が多く、採取量も減ってしまいました。

10月だからこんなに厚着なんだな、ということではなく、夏場は虫が多いため同じ格好で作業をします。汗だくになりながら、蚊取り線香を腰につけながら。

ラジオ

熊よけにラジオをガンガンにかける。
長島さんは幸い、まだ熊に遭遇したことはありません。

漆の木

浄法寺では最盛期には300人いた漆掻き職人も20名程度まで減少しましたが、長島さんのような若い職人さんが参加するようになり、今年も職人数が増加しました。浄法寺漆は前年より約2割り増しの1.2トンを生産する予定です。

おはよう長島さん漆掻きガールとお別れして、さらに漆の旅は続く…

共進会導入

続いて向かった先は、二戸市立浄法寺小学校の体育館。

会場

ここで行われているのは、漆の品評会です。
この漆の品評会は「浄法寺漆共進会」といって今年で40回目。

品評会の前に漆工芸家で全岩手県立工業技術センター理事の町田俊一さんの講演。町田さんは今回の品評会の審査員でもあります。

町田さん

町田さんがこの浄法寺漆共進会に参加したのは38年前。当時の浄法寺漆は「良いものは良い、悪いものは悪い」とはっきりとした品質の違いがありました。約40年経った現在は、違いがあまりなく技術が均質化した結果、品質も安定してきました。産地で技術が安定することは漆産業にとって非常に重要です。

漆の品質のポイントは、塗った時の滑らかさや使用感(液状の漆を垂らした時にひく糸のつながり方や切れ方、粘度)、肉厚、発色の良さやツヤ、硬化するまでの時間、強度などなど。
塗り職人である塗師さんたちは、塗る部位や使い方、下地なのか中塗りなのか仕上げなのか、どんな色にしたいのかなどによっても、漆を使い分けます。

国産か中国産か。
町田さんが以前岩手県の工業試験場で漆の木から採取した樹液の成分分析をしてみたところ、実はウルシ成分、水分、糖分など国産と中国産の成分はそんなに違いはなく、塗った後の強度に差が出たくらい。
ロイド(鏡面)磨きをする時に国産漆の場合は磨くまでにかかる時間が1週間程度であったのに比べ、中国産だと2ヶ月以上も時間が必要だったこと、朱漆を作る際に発色が良いことなど、実際に使ってみてわかった違いがありました。
塗りをしている人の立場からは「国産漆でないとダメ」という声が高く、今も下地塗や中塗りには中国産、仕上げは国産漆と使い分けられることが多いのだそうです。

さらに国産の中でも浄法寺産はというと、透明度が高く、刷毛目が出にくく滑らかになる、ムラになりにくいので薄塗りに使いやすい、淡く深みのあるつやになる、といった特徴があります。また、精製加工でかき混ぜて均質にする「クロメ」という工程の直後はサラサラで使いにくい、という特性もあります。

共進会ヒキ

このように漆は産地や育つ環境によって数値に現れにくい差があるので、年に一度の漆の品評会を行い、その年に採取された漆の品質を審査し優秀な漆に対して表彰を行うというのが、この共進会です。

漆って奥深いのだなぁと感心したところで、いよいよ品評会。

会場内の雰囲気

浄法寺の漆掻き職人、そして塗師さんや漆産業に関わる人たちが全国からきています。

この品評会の対象は、この日までに採取された漆の中から出品されます。その数は80樽ほど。それらの漆は「初辺」「盛辺」「末辺」の3部門に分かれて審査されます。初辺はボトボト落ちる、盛辺は乾きや肉持ちが良くサラサラ、末辺は粘度が高くなるなど、その採取された時期によって性質が異なるためです。

審査対象の樽

名前がわからないように番号で出品されます。

審査風景 掬い上げる

樽の中の生漆をヘラですくい上げて、

審査風景

色やツヤ、粘り気(持ちがいいかサラサラか)などが審査されます。

素人目にはその差は正直わかりません。しかし、審査されてる樽の周りはちょっと雰囲気がピリっとしてるのだけはビンビン感じます。

長島さん

先ほど漆掻き娘姿だった長島さんも到着。もちろん出品しています。

長島さんの漆

これが長島さんが掻いた漆。
こっちまでドキドキします。

お茶碗

目視検査が終わった後はお椀にとって分析に回されます。

このように審査された漆は、それぞれの部門で金賞、銀賞、銅賞と上位者が表彰されるのですが、時間が来てしまったので、ツアーは次の訪問先へ急ぎます。

鳥居

ここは浄法寺歴史民俗資料館。
浄法寺漆の資料や展示のほか、この地域の風俗がわかる道具やすぐそばの天台寺に関する展示もあります。

中村弥生さん

お出迎えしてくれたのは、資料調査員の中村弥生さん。

天台寺の額

浄法寺歴史民俗資料館は天台寺の麓にあります。
天台寺は、奈良時代に創建されたと伝わる古いお寺。
本尊は観音様ですが、参道の大きな桂の木の根元から湧き出ていた清水にちなんで「桂泉観音」「御山の観音」と呼ばれ、その信仰が霊場となったものと言われています。

見事な黄葉

桂の木は見事な黄葉。

清水の湧水

その根本の清水からは今も水が湧き出しています。

桂清水

お邪魔した時、ちょうど天台寺の本堂と仁王門は保存修理工事中でしたが、2019年中には完成の予定です。

中

そして、歴史民俗資料館の中へ。

この小さな(すいません!)資料館が収蔵している資料のうち3238点が一括して国の重要文化財に指定されています。漆に関する展示では国内で一位と言われていて、中にはここにしかない貴重な品もあり、全国から見に来られるそうです。

説明する中村さん

漆と人類の関わりは約12,600年前から、縄文人が接着剤として使っていたと言われています。他にも、土器やくしなどのアクセサリーへと使われていました。漆の朱は古代の人たちにとって特別な色だったと考えられ、魔除けやまじないにも使われていたようです。
縄文人というと狩をしたり野生的なイメージがありますが、その印象が少し変わりました。

奈良時代の文書にも「陸奥殿漆(むつどのうるし)」と書かれた石山寺(滋賀県)の文書が見つかっており、すでに古くから浄法寺周辺が漆の産地として、他の地域に知られていたことがわかっています。

仏教文化の最北端と言われる天台寺には重要文化財や史跡もたくさんありますが、実は今回のツアーのテーマである漆にも大変縁の深いお寺さんで、浄法寺の漆器は天台寺の僧侶が日常使いの器として作りはじめたのが始まりと言われています。
ああ、だから!この山深い場所に歴史民俗資料館があるのか、と納得!
この地区には「漆沢」や「漆畑」という名前の字名もあります。
漆にまつわる歴史を感じるものがすぐ近くにあるので、本当にここは漆のふるさとなんだなぁと感慨深くなります。

展示物

江戸時代に入り、浄法寺がある現在の岩手県北部は南部藩領(北部だけど南部藩って覚えてね)に含まれ、大きな財政基盤のひとつであった漆産業は「漆の木は殺さずに植えろ、そして増やせ」という政策のもと、大切に保護されました。

天然の樹脂塗料だけではなく、実や幹も木材として使われていた漆。
若き漆掻き職人の長島さんに教えてもらったように現在は漆の樹液を取り尽くすとその木を伐採する「殺し掻き」という採取方法が主流ですが、江戸時代は伐採しない「養生掻き(ようじょうがき)」と呼ばれる方法が採用されていました。

それは、漆の木はたくさんの恩恵をもたらす木だったからです。
木の幹からは漆、実から「ろう」が採れたため、たくさんの実をならせるためにも漆の木をできるだけ元気に長く生かそうとする養生掻きが採用されていました。しかし、明治になり次第に生活様式も変わり、、ろうそくが生活の必需品でなくなると、漆は樹液を採るための木へとその役割は変わっていきました。

そこへちょうどやってきたのが、出稼ぎにきた越前の漆掻き職人。
いっぱい早く採ることができるよ、ということでこの方法をこの地方の職人に伝えます。養生掻きは、8月までに漆掻き作業を終え伐採もしないので、毎年漆を採取することができますが、採取できる量が少なくなってしまい効率的ではありません。
一方、樹液を取り尽くして伐採、次の年には別の木から採取するこちらが効率的、ということでこの方法がこの地域で採用された、というわけです。人間の生活習慣や経済とあわせて漆の木の一生も変わってきた、ということですね。

漆の実

漆の実。
昔は小学校の廊下を漆の実で磨いていたよ、とはこの辺りのお年寄りのお話。
加熱して蒸すとろうを取ることができます。

ろう

漆から採られたろうは灯りの他にも口紅や鬢付け油(いまのジェルとかヘアワックスのようなもので、お相撲さんの髷に使われています)としても使われていました。

しゃべる アバギ

漆を採った後の幹は木材として使われ「アバギ」と呼ばれる、漁の際の漁網のウキにもなりました。
漆の木は余すところなく使われていたんですね。

漁網 ろくろ

木地を削り出すろくろ。
こちらは会津で開発された水車ろくろ。会津から秋田を経て伝わったものと考えられています。このろくろは「鈴木式ろくろ」と呼ばれ、両側から伸びた軸の先に木材をセットし、ベルトなどで動力を伝えながら、削り出します。2本あるのは内と外を付け替えずに削るため。
画期的なのは台のようなところに、貝型(写真の下の方に並ぶ木の板状のもの)をセットし、そこに刃物の軸を添わせて削ります。型があるために一定のサイズや形の器を大量に作ることができます。

一方、古くから使われてきたのは人力で動かす手挽きろくろ。

昔の木地職人さんはろくろを背負って、器の材料となるブナやトチの原木を求めて歩き回ったそうです。

商家の写真

漆で財をなすお家もたくさんありました。
これは昭和12年頃の写真。豪商といっても良いくらい。漆の掻き子を15〜16人ほど抱え、漆を採取し出荷していた商家。右下の子供が遊具にまたがっているのがわかりますか?この時代に子供がぜいたくな遊具を持ってたというのが、このお家が裕福だった証拠。

このように、昔から根づいていた漆の文化は、気候がきびしくコメの取れにくいこの地域の大切な産業や文化として残ってきました。

器の展示

ここでは、さまざまな漆の器を見ることができます。
ここ浄法寺塗は前日見た秀衡塗りと比べると装飾が少なく素朴な風合いで、お坊さんたちの日常使いの器が起源だったことがなんとなくわかります。お粥と菜のものとお汁、これがお坊さまのお食事の標準です。

ヒヤゲ

大きな片口。この地方では「ヒヤゲ」と呼ばれています。

漆皿

浄法寺では、お椀だけではなく漆の皿も多く作られていました。

くるみのお皿

胡桃の実を脚に使った、野趣に富んだお盆。

漆の文化と歴史を満喫。ずーっと人間と漆の関係は変化しながらも、ずっとつながっている。

そば

歴史資料館を後にして、「かつら庵」というお店でお蕎麦のお膳をいただく。
第1日目は平泉でもち文化でしたが、岩手県北部はコメが取れにくく雑穀料理が得意なのでソバ文化。
わんこそばは、岩手県北部の盛岡か花巻が発祥と言われています。漆器の柄も食文化も北と南で違う岩手県、広さを実感しながら、目の前のご馳走をいただきました。

滴生舎外観

ツアーもいよいよ終盤。続いての見学先は「滴生舎」さん。官民共同で浄法寺漆の魅力を発信し、若手職人さんを育成、そして漆器の販売も行う施設。昨晩、うるしびとトークでお話を聞いた小田島さんもここで働いています。

店内 話

浄法寺の漆の良さや浄法寺塗の器の製造方法などのお話を聞きます。
浄法寺塗では、削り出した木地を、乾燥させお椀にする作業を始めるのは約半年後。塗りの前に行うのは「木固め」という作業。塗りの前に木地を生漆を染み込ませた砥石や紙やすりで研ぎ上げ、「木が暴れ(反りや割れなどが生じる)」ないようにこの作業をします。
その後、下地、中、上塗りと合計6回塗りを繰り返し、完成するまで約3ヶ月。乾くときに縮むので、顔料を混ぜた漆を薄くかつ均一に塗っておくことが必要です。

ビフォーアフター

浄法寺塗の魅力は...「使うとわかります」
この溜まりの器。左が未使用で右がいつも使っているものです。
使用済みの方がツヤが出て輝きが増しているのがわかりますね。これは使っているうちについた脂が磨かれて生まれます。大事なお客様が来たり、ここぞという場面に登場して、使い終わったらすぐ仕舞う、浄法寺塗にかかわらず高価なものは大切にするのが日本人の美徳です。しかし、天台寺のお坊さんの毎日の器としてはじまった浄法寺塗はその起源の通り、毎日使ってあげるのが良いみたいです。

汚れがひどくなければぬるま湯と手で洗うだけでオッケー。こびりつき汚れは水につけておき、油汚れがひどい場合には、薄めた洗剤で優しく洗います。他の器と分けて洗う方が傷がつきにくいので、面倒でなければ分けて洗いましょう。水もしくはぬるま湯ですすいだ後は、自然乾燥でもOKですが、水垢が気になるときはふきんで拭いてあげましょう。何と言っても毎日使うのが何よりのお手入れなんだそうです。

磨き体験

漆のツヤ出し体験!
秘密の液体(水)に秘密の白い粉(研磨剤)を染み込ませたガーゼで、漆のキーホルダーを磨き上げて行きます。

なでる

ゴシゴシというか、指の腹でひたすら丸く撫でる。撫でまくる。くすんでいた柄が少し浮かび上がって来ます。

3分ほど無心に磨いた後、もういいですか?と尋ねると「もうちょっとね、頑張ってみましょうか?」と、優しい顔してなかなかスパルタな先生。

完成

やっと完成!
さらに3分ほど磨いてOKをもらいました。
柄が浮かんでくるのがうれしい。

このキーホルダーをお土産に、最後はみんなお買い物です。

棚の商品 お買い物風景

見学したりお買い物をしたり。

滴生舎の皆さん

滴生舎の皆さん、ありがとうございました!

ツアー最後の地は...

喫茶店

喫茶店。
その名も「桂泉」と言います。
桂の木の泉、そう天台寺の泉を店名に冠する喫茶店です。

うるしの実コーヒー

飲むのは「うるしの実」コーヒー

女将さん

浄法寺漆の職人さんからもらった漆の実の皮をむいた実を焙煎。粉状にしたものをペーパーフィルターで濾していただく。

みんな待つ

どんな味だろう。

美味

きっと美味。

コーヒー

淹れたて。
透き通った琥珀色をしていますが、ボディはしっかり目、燻した感じの香りです。

いただきます

いただきます。

飲んだ後の顔

飲んだ後はこんな顔。

車内 二戸駅 記念写真

こうして平泉の世界文化遺産センターから出発して、中尊寺の仏教美術や金色堂と漆の関係、秀衡塗の職人「翁知屋」の佐々木さんのお話、うるし人たちとの交流、漆描き職人の現場見学、漆の品評会、浄法寺地区の歴史民俗資料館での勉強に、漆文化を守り伝える「滴生舎」と漆まみれ漆づくしの岩手の旅はいよいよゴールへ。

このツアーに参加するまでは、岩手と漆って全然結びついていいなかったのですが(岩手のみなさんゴメンナサイ!)、
この地に育つ漆たちを見つけて作ってはじまった天台寺のお坊さんの器から、平泉の装飾豊かな漆器へと工芸品として発展していっただけではなく、今もこの地の人たちの生活や経済を支え続けていることを実感。

そこに漆の木がある産地だからこその、生活に根ざした漆と人の深い結びつき。2日間の旅を通して、まるで漆がジュワーっと体に染み込んでいくようでした。

工芸好きな人は素敵な器を見つけたり、歴史好きな人は中尊寺の金色堂を見たりと、いろんな楽しみ方で体験できる岩手の漆。もっと深く知りたい人はぜひ漆の国岩手に来てみてくださいね!

【詳細情報】

平泉文化遺産センター

住所:岩手県平泉町平泉字花立44
電話番号:0191-46-4012
URL:http://hiraizumi.or.jp/archive/sightseeing/bunka.html

平泉レストハウス

※通常「秀衡塗」でのお食事は、提供しておりません。
住所:岩手県西磐井郡平泉町平泉字坂下10-7
電話番号:0191-46-2011
URL:http://www.hiraizumi2011.jp/

中尊寺

住所:岩手県西磐井郡平泉町平泉衣関202
電話番号:0191-46-2211
URL:http://www.chusonji.or.jp/index.html

翁知屋(おおちや)

住所:岩手県西磐井郡平泉町平泉字衣関1-7
電話番号:0191-46-2306
URL:http://www.ootiya.com/

稲庭交流センター 天台の湯

住所:岩手県二戸市浄法寺町野黒沢133-1
電話番号:0195-38-3222
URL:http://ninohe-kanko.com/kanko_spot/2155 
※通常「浄法寺漆器」でのお食事は、提供しておりませんのでお問い合わせください。

浄法寺歴史民俗資料館

住所:岩手県二戸市浄法寺町御山久保35
電話番号:0195-38-3464
URL:http://www.edu.city.ninohe.iwate.jp/~maibun/j-index.html

かつら庵

住所:岩手県二戸市浄法寺町御山中前田23-8
電話番号:0195-38-2125

滴生舎

住所:二戸市浄法寺町御山中前田23-6
電話番号:0195-38-2511
URL:http://urushi-joboji.com/

瀬戸内寂聴記念館・漆絵皿展示室(二戸市役所浄法寺総合支所内)

住所:岩手県二戸市浄法寺町下前田37-4
電話番号:0195-38-2211

桂泉(かつらしみず)

住所:岩手県二戸市浄法寺町漆沢中前田216
電話番号:0195-38-3514

tricolabo(トリコラボ)

住所:岩手県二戸市石切所森合68 カシオペアメッセ・なにゃーと3F
電話番号:0195-23-7210
URL:https://www.facebook.com/tricolabo/

(text:西村 photo:市岡)

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