ひらいてみて!持つ人まで美しくする伝統の美 金沢和傘
「弁当忘れても傘忘れるな」
金沢は天候が変わりやすくこんな言い伝えが残るほどです。
雨の中に花がパッと咲いたかのように心晴れやかな気分にしてくれる「金沢和傘」。
今回は、金沢の伝統工芸の一つでもある「金沢和傘」の美しさ生み出す技にせまります!
明治時代、金沢には100軒以上の和傘屋があったといわれていますが、
現在は、金沢和傘の職人さんが松田弘さんたった1人。
松田さんがご高齢なことと、和傘職人として生計を立てていくことが大変困難な時代だからとしてお弟子さんをつけず、和傘制作を続けてこられたそうです。
金沢和傘の存続危機に立ち向かう
このままでは金沢の伝統文化が無くなってしまう。
そんな危機の中、後継者の育成、伝統技術を継承していこうと
表具、木工職人さんなど7人をメンバーに「金沢和傘伝承研究会」が発足しました。
今回は、金沢和傘伝承研究会のメンバー、山田ひろみさん、村上誠一さんにお話をお聞きしました。
メンバーの皆さんは、和傘とは別の本職の傍ら制作をしていらっしゃいます。
和傘の産地で有名な岐阜の和傘職人さんのところへ修行へ出向いたりして技術を磨いています。
1本の制作に3ヶ月
和傘の工程は100近くあるといわれています。
本来は、分業で作っていた和傘を研究会メンバーの職人さんは全工程をすべて自分たちで行っているそうです。
【和傘の制作工程】
1.骨作り→ 2.大ため→ 3.ハジキをつける→ 4.繰り込み→ 5.つなぎ→ 6.寝かせる→ 7.張り→ 8.乾燥→ 9.畳み→ 10.寝かせる→ 11.毛伏せ→ 12.油をひく→ 13.漆かけ→ 14.仕上げ→ 15.かがり
たくさんの工程の中でも、傘の骨格になる重要な「つなぎの骨」の準備を山田さんに実演して頂きました。
これが使用されているロクロ。たくさんの種類がありますね。
まずは、ハジキとロクロを取り付けた柄竹の手元ロクロに小骨をつないでいきます。
傘の骨組みを組み立てていきます。
親骨4本をひとまとめに、軒穴と呼ばれる穴に糸を通していきます。
骨の間を配ることから、この工程を「まくわり」といいます。
等間隔に間を配っていないと仕上がりに最も影響してきます。
ここからが、親骨と小骨を接続し、締輪をはめ1ヶ月ほどねかせた後の「張り」の工程です。
和紙を張るための糊。原料はタピオカです。
つなぎを終えた竹骨に、軒を補強するためのテープ状の紙「軒紙」を張っていきます。
軒紙を2つ折りにして軒糸を挟んでいきます。
和紙が繋ぎ合わされ鮮やかな彩り
竹骨に糊をつけて、扇形の紙を骨4本分ごとに張っていきます。
慎重に慎重に!
外側の紙(平紙)を張り終えたら天井部分を張る、天井紙の準備です。
ガラス板にのせて糊をつけます。
一度張ると後戻り厳禁
金沢は雨、雪が多いため、天井紙を厚くして、耐えられるような強い作りになっています。糊づけされた和紙を一度できまった場所に綺麗に張り付けていく技は、さすがです!すごい!
和傘の中はカラフルな世界
金沢和傘は外だけではなく中にも工夫があります。金沢和傘の一番の特徴として、カラフルな糸で作られた世界が存在します。
自分だけのお楽しみ
さした傘を下から見上げたときに見える飾り糸を「かがり糸」といいます。
このかがりをつくる作業を金沢では「千鳥がけ」と呼びます。
まさに、傘をひろげたときの自分だけのお楽しみですね!
金沢百万石行列にお松の方の大傘
金沢で有名なお祭り「百万石行列」に
なんと研究会メンバーの大傘が、お松の方の傘として登場するそうです!
一足お先に、今年のお松の方役、菊川怜さんを包む大傘の下でにんまり。
傘を閉じた後は…‥
最後に和傘の扱いについても、多くの方が間違えていることを教えて頂きました。
「傘を閉じた後は、傘の上を持ってください。洋傘のように下を向けないでほしい」と山田さん。下を向けると傘の中に雨粒が入ってしまうので、痛みやすいそうです。
和傘を閉じた時に、濡れた和紙の部分が中側に織り込まれるため、洋傘のように濡れることがないんです!
色鮮やかな金沢和傘の世界を
2足のわらじで継承活動に切磋琢磨されている研究会の山田さん、村上さん本日はありがとうございました!
【詳細情報】
金沢和傘伝承研究会
山田ひろみさん、村上誠一さん
Facebookページ:https://www.facebook.com/kanazawa.wagasa
和傘・水引工房 明兎(山田ひろみさん)
住所:石川県金沢市長土塀3-8-51
TEL:090-2125-7256
Web:http://wagasayaminto.blog.fc2.com/
(text、photo:坂田)
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