”ヨソモノ”たちが切り拓くものづくりの未来! TSUGI

1Q2A0211※写真左から新山悠さん、永富三基さん、新山直広さん

「鯖江をものづくりの“創造的産地”に!」

そう熱く語るのは、若手によるものづくりユニット”TSUGI(ツギ)”のディレクター・新山直広さん。彼らが見据える、これからの地域のものづくりに迫りました!

TSUGIとは“次・継・注・接”

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「“次”の世代である若者である若者がものづくりや文化を“継ぎ”、新たなアイデアを“注ぐ”ことでモノ・コト・ヒトを“接ぐ”」

自分たちの想いをその名に込めたTSUGIとは、関西から福井県鯖江市に移住してきた若手によるデザイン+ものづくりユニット。木工職人、眼鏡職人、デザイナー、エディターなど様々な職種の面々が揃い、なんとメンバー6名中5名が移住者!役割分担はガチガチには決めておらず、それぞれができること、やりたいことに挑戦しています。

「単に請負仕事をするだけではなく、これからのものづくりには作り手・経営者・デザイナーの3つの視点を持つことが大切」と話す新山さん。とはいえ、TSUGIとしてもそうしたことが最初からすべて上手くいっていたわけではなかったそうです。

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「まずは自分たちができることから始めよう。その中で、これからのものづくりに必要な像を描き、そこに近づこうと活動を始めたんです。いまできることは限られていても、自分たちが中堅になったときに産地を勢いづかせられる人材になっておきたい」(新山さん)

未来を見据え、いまできることを少しずつ積み重ねていく。移住者として覚悟をもって産地にコミットしているからこそ、その言葉には重みを感じます。

目指すは10年後の産地の担い手

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TSUGI代表の永富三基さんは、普段はヤマト工芸で木工職人として働いており、将来は木工作家としての独立も視野に入れているそうです。「TSUGIの活動をしていくためには、ヤマト工芸や地域の方々の理解・協力が不可欠」と話す永富さんにとってはどちらも本業で、2つの仕事はお互いに絡み合っています。

「自分も仕事に身を投じながら周りの職人さんに目を向けると、課題点も次第に見えてくる」と永富さん。ものづくりがものを作ることに終始しており、何かを作って売りたいとなっても、「販路がない、そもそも商品の見せ方がわからない」ということが少なくない。

木工職人として技術を、そしてTSUGIで伝え方を試行錯誤しながら学んでいく。自ら企画・製造・販売までプロデュースすることができる、それが永富さんの描く理想の職人像。いまは多忙を極めていて、いわゆる田舎のスローライフとはかけ離れた生活をされているそうです(笑)

必要なのは産地からの発信

re-10690176_1564790743749234_723527546884537213_n提供:TSUGI

TSUGIが活動の拠点とする鯖江市河和田地区は、自然の恩恵を受けながら漆器や眼鏡をつくり、常に手を動かしてきた町。さらに半径10km圏内には繊維産業や、越前和紙・越前打刃物・越前焼・越前箪笥といった伝統的工芸品が集まる、まさに地場産業の集積地!

たくさんの技術や知恵、文化を背景に“いいもの”がつくられていても、その多くはまだまだ知られていないのが現状だそうです。海外製品との価格競争、知名度の低さ、さらには人材育成不足といった産地が抱える課題を前に、必要とされていたのは産地からの発信。

ですが一般的な事情としては、産地の中にいる人たちは自分たちの身の回りにあるものの価値に気づきにくく、外にいる人たちは情報が発信されるまではなかなかその存在を認識しにくいものです。移住者というニュートラルな立ち位置だからこそ、産地の魅力を再発見・発信していけるんですね!

鯖江を創造的産地に!

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提供:TSUGI

TSUGIが最初に手がけたのは、自分たちの拠点と仲間づくり。錦古里漆器店
(河和田の老舗漆器店)の一角をセルフビルドで改装して生み出したのが、縦や横の世代が交流できる場所"TSUGI Lab"。

仲間づくりの呼び水として開催した、ものづくりをテーマにしたワークショップやトークイベントなどをきっかけに、地元に可能性を感じた志を同じくする仲間が爆発的に増えたそうです。移住当初は「こんなことができたらなぁ」という妄想でしかなかったことが、仲間が増えたことで少しずつ現実味を帯びてきました。

いまのTSUGIのモチベーションとなっているのは、「鯖江を創造的な産地にする」ということ。「ものをつくるだけでなく、この町でしかできないライフスタイルや体験価値を発信することができれば、産地に人を呼びこむ大きな布石になる」と語る新山さん。

FUKUI FOOD CARAVAN vol.02「かわだ くらしの晩餐会」の動画。制作:福井新聞社「 まちづくり企画班」& TSUGI、映像:ホオズキ舎の長谷川和俊さん

“かわだ くらしの晩餐会”はTSUGIが最も力を入れたイベントの一つ。「食、ものづくり、自然」をテーマに、自分たちでつくった漆器とスプーンを使って地元の食材を使った料理を食べるという、河和田の魅力が満載の体験型イベント。地域の持つポテンシャルを存分に引き出したこのイベントに、「まるで河和田じゃないみたい!」と驚きの声も多かったそうです。河和田を訪れたくなること間違いなしなので、ぜひ動画もご覧ください!

地域と関わるバランス感覚

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提供:TSUGI

「移住者として地域と関わる上で大切なのはバランス感覚」と話す新山さん。地域に習い、敬意を払うことは前提として必要ですが、それで身動きがとれなくなっては本末転倒なことになりかねない。地域の事情も思いやれる存在になりたいけれど、あくまで移住者としての視点は自分たちの存在価値として常に持ち続けたいそうです。

自分たちが楽しむという姿勢も大切。まちづくりとは結果のことであって、まずは個々人がその地域で楽しく暮らせる環境をつくっていくことからスタートする。自分たちが楽しい、やりたいからやっている。自分発の自然なスタンスだからこそ、TSUGIの周りにはたくさんの仲間や協力者が集まってくるんですね!

2015年春、いよいよ法人化へ

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2015年春、TSUGIはいよいよ合同会社として動き出し、活動範囲をさらに広げていきます。まずは新山さんが現職を離れ、第一号専属スタッフとしてTSUGI一本でやっていく。事業内容としては、①産地の企業向けのデザインワーク、②自社商品の企画・製造・販売、③イベントの企画・運営、の大きく3つ。

1Q2A0136TSUGIオリジナル商品”Sur(サー)”は、福井県鯖江市の眼鏡工場で生まれたアクセサリーブランド。

企業が新商品を作るというとき、それらはなかなか既存の流通ルートには乗りにくいそうです。いい商品が作れても販路がない…ではなく、販路までをきちんと道先案内できるようにならなくてはいけない。

自分たちで商品を作って売っていくからこそ、それがクライアン向けのデザインワークにも生きてくる。細切れの仕事ではなく、点と点を線や面にしていくスタイルが、これからのものづくりの未来を切り拓いていくのかもしれません!

「福井は面白いんだということを、目に見えた形で作る。それがこの産地で自分たちのやれること。いままで知らなかったけど、福井ってこんな魅力があるんだと感じてもらいたいですね!」と熱く語る新山さん。

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これからのTSUGIの動きに大注目ですね!

TSUGIのみなさん、ありがとうございました!

【詳細情報】

TSUGI

住所:福井県鯖江市河和田町19-8(錦古里漆器店内)
Web: http://tsugilab.com
Sur Web: http://sur-j.com

(text:清谷、photo:市岡)

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